タンパク質は細胞のすべての活動をになう働き手
5-1.
タンパク質の“はたらき”には“かたち”が重要「タンパク質の複雑な立体構造」
mRNA から翻訳されたポリペプチド鎖は、自発的に折りたたまれ、疎水性 領域をコアにもつ複雑な立体構造を形成※ 1します。それぞれのタンパク質に 特有の立体構造は、基本的にポリペプチド鎖を構成するアミノ酸配列の順序 と種類によって決まります。タンパク質の立体構造は階層的に考えられてお り、ポリペプチド鎖のアミノ酸の配列順序を一次構造、ポリペプチド鎖の部 分的な螺旋構造やシート構造を二次構造、二次構造をもったポリペプチド鎖 がさらに折りたたまれて形成する立体構造を三次構造といい、それらが複数 集まって作る構造を四次構造と言います。
生体内のタンパク質はそれぞれ特定の働きをもっており、代表的なものが 酵素として働くタンパク質です。酵素は生物が必要な物質やエネルギーを作 る際の反応を触媒しています。酵素が働くことによって、生体内のような比 較的おだやかな条件で円滑に化学反応が進むのです。
酵素は特定の基質にしか作用しない基質特異性をもち、酵素の決まった立 体構造の一部にある特有の構造(活性部位)に特定の基質が結合し、化学反 応が触媒されます。熱などによってタンパク質の立体構造が崩れると基質は 酵素に結合できず、酵素の触媒作用は失われます(失活)。タンパク質の働き には立体構造が不可欠なのです。
自然界のタンパク質の中には、よく似た機能と配列をもつアミノ酸配列が 共通して使われているケースが多くあります。このアミノ酸配列をドメイン といい、50 〜 200 残基程度の長さのアミノ酸配列です。ドメインは進化的
※ 1 ここでは省略していますが、分子シャペロ ンも立体構造形成に関与します。分子シャ ペロンとはタンパク質が正しい構造をとり、
正常な機能を発揮できるようにさせるタン パク質です。
Pick Up from MBL
タンパク質同定・比較定量解析 組織・細胞・培養上清や免疫沈降サ ンプルおよび電気泳動後のゲル片 などに含まれる粗精製タンパク質画 分をトリプシン分解し、得られたペ プチド断片を一次元あるいは二次元 のナノ液体クロマトグラフィーによ り 分 離 し ま す。 そ の 後 TripleTOF® 5600 system (Q-TOF 型質量分析 装置)を用いてペプチド情報を決定 し、データベースと照合することで 網羅的にサンプル中のタンパク質を 同定します(ショットガン解析法)。
また iTRAQ® や SILAC を用いること により、 異なるサンプル間でのタン パク質発現比較相対定量を行うこと ができます。この結果から疾患や機 能により変動するタンパク質を定量 的に調べることが可能となります。
に無関係なタンパク質にも見られます。ドメインを切り出して発現させると、
一定の立体構造を形成し、他のタンパク質に結合するなどの機能も保持して いる場合が多くあります。ドメインはタンパク質の構造・機能の単位であり、
タンパク質は複数のドメインで組み立てられた構造体として理解する事が出 来ます。
5-2.
タンパク質のはたらきは相手と結合することからはじまる「タンパク質の相互作用」
タンパク質と結合する(相互作用する)物質をリガンドといい、タンパク 質、核酸、糖、脂質二重膜、低分子など様々なリガンドがあります。相互作 用の強さ(リガンドとどれだけ強く結合しているか)や特異性(限られたリ ガンドにしか結合しないのか、それともある程度幅広いリガンドに結合する のか)、リガンドとタンパク質が結合したり離れたりする速度などは、タンパ ク質によって異なります。特に、広い特異性と弱い相互作用をもつタンパク 質の相互作用は、解析が困難である一方、生物が生きる上で必要な場合が多 く、これらの解析は、現在の生物学における課題の一つとなっています。
5-3.
タンパク質のはたらきの調節「タンパク質の翻訳後修飾」
タンパク質のアミノ酸配列の中には、細胞内の行き先を示す短いシグナル 配列を含む場合があります。シグナル配列のないタンパク質は細胞質内に残 りますが、シグナル配列がついているものは特定の細胞小器官(核※ 1、ミト コンドリア※ 2など)に運ばれます(図.タンパク質の行き先を示すシグナル 配列)。行き先が小胞体※ 3のタンパク質はゴルジ体を介して他の細胞小器官 や細胞外に送り出されます。また、タンパク質は翻訳後、小胞体やゴルジ体 で様々なアミノ酸残基側鎖の修飾を受けます。
※ 1 核への移動は核膜孔を通して行われます。
※ 2 ミトコンドリア内への移行は、一度立体 構造を解いた後に、膜にあるタンパク質 輸送装置によって行われます。
※ 3 タンパク質が小胞体から移動する場合は 小胞体の膜に移動するタンパク質が集合 します。膜の細胞質側にコートタンパク質 という分子がつき、移動するタンパク質 を包み込んだ小胞が形成されます。この 小胞が別の細胞小器官の膜に到着すると、
膜どうしが融合して、タンパク質が受け渡 されます。
核
ペルオキシソーム ゴルジ体
ミトコンドリア
核膜孔 小胞体
シグナル配列を もったタンパク質
タンパク質の行き先を示すシグナル配列
Pick Up from MBL
タンパク質相互作用を生きた細 胞でリアルタイムに観察できる Fluoppi
F l u o p p i ( F l u o r e s c e n t b a s e d technology detecting Protein-Protein Interactions) は、生きた細 胞 内 で タ ン パ ク 質 間 相 互 作 用
(Protein-Protein Interaction, PPI)
を測定するための新しい基盤技術で す。 Fluoppi は全く別の視点から蛍 光タンパク質を利用した技術であ り、PPI を細胞内の蛍光輝点 (foci) として検出します。PPI の存在を示 す foci は PPI が発生した場所で直 ちに形成され、PPI の解離とともに 分散します。 Fluoppi の最大の特徴 は系の構築が簡便であり、また、得 られるシグナルが明瞭である点で す。特殊な装置を必要とせず、蛍光 顕微鏡さえあれば PPI を検出するこ とができるため、イメージングを専 門とする研究者以外の方々にも幅広 くご利用頂けます。
こちらから動画をご覧頂けます。
http://ruo.mbl.co.jp/
product/fl protein/
fl uoppi.html
Induction
inhibition 分単位のリアルタイムな系です。
調べたいタンパク 間相互作用の阻害 剤を添加すると、
速やかに Foci が 解消されます。
調べたいタンパク質間 に相互作用があると蛍 光輝点(Foci)が形成 されます。
糖鎖修飾
小胞体やゴルジ体で、タンパク質のアスパラギン酸残基のアミド基の窒素 原子やセリンおよびトレオニンの水酸基の酸素原子に糖鎖が付加(グリコシ ル化)されます。(図.糖鎖修飾)
糖鎖とは、各種の糖がグリコシド結合によって鎖状に繋がった化合物を指 します。身近な例としては、デンプンに代表されるアミロースや植物の細胞 壁を構成するセルロースがあります。糖鎖は、タンパク質や脂質、その他の 低分子と結合して多様な分子を作り出し、生体内で重要な生理作用を担って います。生物の重要なタンパク質のほとんどに糖鎖が結合しています。糖鎖 が結合したタンパク質や脂質は、それぞれ糖タンパク質、糖脂質と呼ばれ、
細胞表面に発現しています。例えば、ABO 式血液型は、赤血球の表面の糖鎖 の違いによって A、B、O、AB の 4 種類の型に分類されています。糖鎖は細 胞膜タンパク質の機能に重要な役割を果たします。
リン酸化
タンパク質キナーゼによって、セリン、トレオニン、チロシンなどのアミ ノ酸残基の側鎖にリン酸基が付加され、立体構造の変化が起こります。リン 酸基の除去はホスファターゼによる加水分解によって行われます。キナーゼ とホスファターゼの働きのバランスによって、生体内のリン酸化のレベルが 調節されています。
いきものコラム 「 海藻ミルの糖鎖結合タンパク質(レクチン)が虫歯予防に効く!?」
レクチンとは、糖鎖を特異的に認識し結合する、抗体や酵素とは異なるタンパ ク質の総称です。現在では、植物をはじめとして動物、真菌、細菌やウイルス など幅広い生物種に存在することが知られています。
MBL では、岡山大学との共同研究で、2010 年に海藻ミルのレクチンが虫歯菌 のバイオフィルム形成を阻害する働きを発見して以来、口腔細菌・腸内細菌の 研究、消化管免疫の分野での研究開発に力を入れています。
タンパク質
脂質
糖鎖
細胞膜 細胞
糖鎖は細胞表面に発現している
△
ABO 式血液型は糖鎖によって決定している
O 型 A 型 B 型 AB 型
糖鎖赤血球
△ △
△
△
Pick Up from MBL 糖鎖構造受託解析
MBL のネットワーク企業である株 式会社グライエンスは 600 種を越 える糖鎖データベース "GALAXY"
と 3 種類の分離モードの HPLC(3 次元 HPLC 法)を駆使し、糖鎖の詳 細な構造を解析することを可能とし ました。例えば、質量分析によって 得られる糖鎖の分子量測定だけでは 糖の種類や結合様式、糖鎖分岐まで 明らかにすることはできませんが、
グライエンスの 3 次元 HPLC 法で は完全な構造同定ができます。また、
組織や細胞を丸ごと定量的に糖鎖プ ロファイリングできるため、疾患に 関わる糖鎖バイオマーカー探索が可 能です。創薬シーズとなるバイオ マーカーの探索や生物製剤の品質管 理などの幅広いニーズに応えており ます。
人工レクチンを用いた 糖鎖構造受託解析
グライエンス社保有の 13 種の人工 レクチンを用い、複数サンプルの糖 鎖構造の変化を同時に解析致します。
OH CH2OH O
O
NHCOCH3 NH CO CH2CHCO
NH
N OH
CH2OH O
NHCOCH3 CHONH HO
DEAE ODS Amide
3 次元 HPLC マップ
データベース「GALAXY」
グリコアミダーゼ A (E.C. 3.5.1.52)
2- アミノピリジン
ODS column Mono-sialyl
Di-sialyl Tri-sialyl
Neutral Amide column
糖鎖構造解析スキーム
健常者血清
蛍光強度
0.0 2.5 5.0 7.5 10.0 12.5 15.0 17.5 20.0 22.5 25.0 27.5 min min
Ta’
Ta
Tb’ Tb
Tc’ Tc 蛍光強度
0.0 2.5 5.0 7.5 10.0 12.5 15.0 17.5 20.0 22.5 25.0 27.5
Ta’ Ta
Tc’ Tc
肝がん患者血清 肝がんマーカー糖鎖 (Tb)
が完全に消失
糖鎖解析例
代表的な肝細胞がん患者の血清糖鎖プロファイリングでは、
肝細胞がんマーカー糖鎖(Tb)が完全に消失しています。
Pick Up from MBL
リン酸化ポリクローナル抗体作製 エコノミーセット
抗原検索からリン酸化及び非リン酸 化ペプチド合成、免疫、Affi nity 精製・
非リン酸化抗体吸収作業までのセッ トサービスです。
糖鎖修飾
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