6. 道路案内標識データベースを用いた案内誘導効果の評価及び
6.2 道路ネットワーク全体の案内誘導効果の評価
第 5 章で作成した道路案内標識データベースを基に、福岡市の中心部周辺の道路ネットワーク 全体における道路案内標識の案内誘導効果を定量的に評価する。
6.2.1 対象範囲
対象範囲は、道路案内標識データベースを作成した福岡市の中心部周辺の図- 6.12に示す範囲を 対象とする。
図- 6.12 対象範囲
6.2.2 ドライバーの情報利用特性
(1) ドライバーのタイプ
本検討ではドライバーの情報利用特性を、基本型として設定した(図- 4.14を参照)
(2) ドライバーが走行中に持っている情報
本検討では、ドライバーは、分岐点までの距離と交差点名(各ブランチ終点の交差点名)の情 報のみを使用することを前提とする。
対象範囲
187
6.2.3 案内誘導効果の評価方法
福岡市の中心部周辺の道路ネットワーク全体における道路案内標識の案内誘導効果は、以下の 順番で実施した。
(1) 予定経路の設定
予定経路は、図- 6.12に示す範囲において複数の起点(O)、終点(D)、計1,712通りのODを設定 し、各ODに対して最短経路法(ダイクストラ法)により最短経路を求め、予定経路として設定 した。
(2) 到達率の算定
上記で選定した各予定経路で目的地までの到達率を算定した。
a) 使用する評価モデル
予定経路を走行する際の道路案内標識の案内誘導効果は基本型を使用する(推論モデルの詳細 は、4.3 を参照)。
b) 予定経路の到達率の算定方法
予定経路の到達率の求め方については、出発地から数えて k 番目のブランチにおいて正しく進 路選択した割合をP(k)とし、n個のブランチからなる予定経路の到達率Qは式(1)で算定する。
(1)
これをブランチごとに繰り返し、予定経路に沿ってドライバーは目的地に向かう(図- 6.3)。
図- 6.13 予定経路の到達率算出イメージ図(再掲)
c) 最後のブランチでの評価方法
出発地から目的地までの走行経路が複数のブランチで構成される場合は、最後のブランチでは 道なりに進めば目的地に到達するため、到達率は変化しないこととする。
分岐点 (ノード)
直線経路 (ブランチ)
予定経路の 到達率Q 分岐点 分岐点
出発地O
目的地D
通過点
P(1) P(2)
P(n-1) P(n) )
( ) 1 ( )
( )
2 ( ) 1
( p P k P n P n
P
Q= × ×× ×× − ×
188 d) 計算方法
各予定経路の設定、到達率の算定は、プログラム(使用言語はFortran)を作成して実施した。
対象地域内の道路ネットワークデータを読み込み、それぞれ指定したODについて最短経路を 計算、5章で作成した道路案内標識データベース情報に基づき、各経路の到達率を算定した。
(3) 案内誘導効果の評価方法
道路ネットワーク全体の案内誘導効果は、指定した予定経路の到達率の平均値(全体の到達率)
を算定し定量的に評価を行うとともに、「迷いやすい交差点」と「重要な交差点」を抽出した。
「迷いやすい交差点」とは、予定経路上を走行する際に、到達率が手前の交差点時から3割以 上低下する交差点と定義する。
「重要な交差点」とは、1,712通りの予定経路のうち、300回以上の経路で通行している交差点 と定義する。ただし、起終点の交差点は除く。
表- 6.12 算定指標と算定方法
算定指標 算定方法
道路ネットワーク全体の到達率 指定した予定経路の到達率の平均値
迷いやすい交差点 予定経路上を走行する際に、到達率が手前の交差点時 から3割以上低下する交差点
重要な交差点 1,712 通りの予定経路の うち、300 回以上 の経路
(17.5%)で通行している交差点
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6.2.4 道路ネットワーク全体の案内誘導効果
(1) 迷いやすい交差点
対象範囲内の予定経路上を走行する際に、到達率が手前の交差点時から3割以上低下する交差 点(迷いやすい交差点)を抽出した。
対象範囲内には、231箇所の「迷いやすい交差点」が存在することがわかった(図- 6.14参照)。 対象箇所は、地域内のあらゆる箇所に点在している。
図- 6.14 迷いやすい交差点
190 (2) 重要な交差点
1,712通りの予定経路のうち、300回以上の経路(17.5%)で通行している交差点(重要な交差
点)を抽出した。
対象範囲内には、14箇所の「重要な交差点」が存在することがわかった(図- 6.15参照)。対象 となる交差点は、国道202号など幹線道路に抽出している。通過するのみではなく、各方面から 分岐点ともなっていることが考えられる。
図- 6.15 重要な交差点
191 (3) 重要かつ迷いやすい交差点
上記の結果を用いて、「重要な交差点」かつ「迷いやすい交差点」である「重要かつ迷いやすい 交差点」を抽出した。
「重要かつ迷いやすい交差点」は10箇所存在した。優先的に改善が必要な箇所は、「重要な交 差点」かつ「迷いやすい交差点」であると考える。本研究で作成した評価モデルを用いて、道路 案内標識のデータベースがあれば、このような箇所を定量的に抽出することができる。
各指標の閾値を変化させることで、重要度を変化させることも可能となる。
図- 6.16 重要かつ迷いやすい交差点
192 (4) 道路ネットワーク全体の到達率
a) 現況値
今回対象とする範囲内で、1,712通りの ODに対して予定経路を設定し、到達率を算定した結 果、道路ネットワーク全体の到達率(平均値)は41%であった。
b) 改善効果
前項で算定した231箇所の「迷いやすい交差点」に案内標識(交差点名)を設置したときの改 善効果を算定した。
対象範囲内の道路ネットワーク全体の到達率(平均値)は、90%となり約50ポイント改善する ことがわかった。「迷いやすい交差点」を抽出し、抽出された箇所に案内標識を設置することで道 路ネットワーク全体の到達率が大幅に改善できることがわかった。
今回の結果からも、全ての交差点に道路案内標識を設置するのではなく、分岐点となる交差点 を選定して設置することで、道路ネットワーク全体の到達率は一定の水準を確保することができ ると考える。
今研究で作成した評価モデルの有効性は、このように道路ネットワーク全体で考えたときに、
どの交差点が利用者の分岐回数が多く、かつ道路案内標識が設置されていなく改善が必要な箇所 であるかを定量的に把握することができることにある。また、抽出した交差点に対して道路案内 標識を設置したときの効果も定量的に把握することができる。
図- 6.17 道路ネットワーク全体の到達率
約 50 ポイント改善
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