• 検索結果がありません。

3. ドライバーの情報利用特性に関する調査

3.1 調査の概要

調査の目的と調査内容および本研究での活用場面について表- 3.1に示す。

まず、ドライバーが出発前及び運転中にどのような情報を利用しているか、道路案内標識の利 用実態を把握するため、「道路案内標識とカーナビの情報利用特性の実態調査」、「外国人ドライバ ーの情報利用特性に関する調査」を実施した。調査時には、日本人だけでなく、近年利用が増加 している外国人の利用特性も把握した。調査結果は、ドライバーの行動プロセス全体の流れに関 する概念(ドライバーモデル)の構築【第4章】や、道路案内誘導手法の検討【第6章】に活用 した。

次に、ドライバーが分岐点で必要とする情報を把握するため、「ドライバーが分岐点を同定する 際に必要とする情報の種類に関する調査」を実施した。道路案内標識の案内誘導効果に関する評 価モデル(推論モデル)の構築【第4 章】の際、ドライバーの情報利用特性のパラメータは本調 査結果を用いた。

事前情報の違いが予定経路の決定に与える影響の把握するため、「重複路線における路線番号案 内の効果に関する実験」を実施した。ドライバーの行動プロセス全体の流れに関する概念のうち、

計画モデルの概念を導入する思考に至った【第4章】。また、事前情報の提供が案内誘導効果に有 効であることを把握できたことから道路案内誘導手法を検討する際に活用した【第6章】。

ドライバーに提供される情報の違いがドライバーの「迷い」や「心的負荷」に与える影響を把 握するため、「道路案内標識とカーナビとの機能連携による案内効果に関する実験」、「案内情報の 不整合によるドライバーの心的負荷に関する実験」を実施した。調査結果は、評価モデル(推論 モデル)の構築、特に交差点名称を項目として追加したことや、「迷い」や「心的負荷」が発生す る条件やタイミング等を考察する際に参考とした【第4章】。また、特に地図やカーナビなど他の 情報との連携の重要性を把握できたため、道路案内誘導手法を検討する際に活用した【第6 章】。

50

表- 3.1 調査の目的と調査内容および本研究での活用場面

調査の目的 調査内容 本研究での活用場面

道路案内標識の利用 実態の把握

1) 道路案内標識とカーナビの情報 利用特性の実態調査

2) 外国人ドライバーの情報利用特 性に関する調査

・ドライバーの行動プロセス全体 の流れに関する概念(ドライバ ーモデル)の構築【第4章】

・道路案内誘導手法の検討【第6 章】

ドライバーが分岐点 で必要とする情報の 把握

3) ドライバーが分岐点を同定する 際に必要とする情報の種類に関 する調査

・評価モデル(推論モデル)の構 築(ドライバーの情報利用特 性)【第4章】

事前情報の違いが予 定経路の決定に与え る影響の把握

4) 重複路線における路線番号案内 の効果に関する実験

・ドライバーの行動プロセス全体 の流れに関する概念(特に計画 モデルの概念)の構築【第4章】

・道路案内誘導手法の検討(事前 情報の提供)【第6章】

ドライバーに提供さ れる情報の違いがド ライバーの「迷い」や

「心的負荷」に与え る影響の把握

5) 道路案内標識とカーナビとの機 能連携による案内効果に関する 実験

6) 案内情報の不整合によるドライ バーの心的負荷に関する実験

・評価モデル(推論モデル)の構 築(交差点名称を項目として追 加、迷いや心的負荷が発生する 条件やタイミング等)【第4章】

・道路案内誘導手法の検討(特に 地図やカーナビなど他の情報 との連携手法)【第6章】

ここでは、上記の計6種類の調査を実施した。各調査の目的と概要を以下に示す。

(1) 道路案内標識とカーナビの情報利用特性の実態調査1)

著者らが運転者を対象として実施した調査(以下、2003 年調査という)では、案内標識とカーナ ビのルート案内の利用実態や信頼度に関して、案内標識とルート案内の情報が食い違った場合に は、案内標識を信頼する運転者が多く、カーナビの利用頻度が高い運転者ほどその傾向が強いこ となどの知見を明らかにした。

しかし、2012年現在において、2003年調査から9年が経過し、この間のカーナビの普及と性能 向上を考慮すると、案内標識とカーナビのルート案内の利用のされ方も変化している可能性があ ると考えられる。また、2003年調査の対象地域が九州地域に限られていたため地域的な道路交通 の特性が影響している可能性があり、より一般的な分析結果を得る必要性があると考える。

そこで、本調査では2003年調査と同様の内容の意識調査を全国10地域を対象にして実施し、

全国各地域における利用実態の分析を行った。

51 (2) 外国人ドライバーの情報利用特性に関する調査

訪日外国人旅行客は近年増加しており、2015年で1974万人と年間約2000万人となっている。

外国人のレンタカーの利用者も増加傾向にあり、2011年と2014年を比較すると約2.8倍となって いる。ドライバーに対する案内誘導は、日本人以外への対応も考慮する必要が生じている。

既往研究では、日本人のドライバーを対象として、初めて訪れる際の情報収集の程度、道路案 内標識とカーナビの利用実態等について調査を実施しているが、外国人の利用実態に関する調査 は、実施されたものが無い。

そこで、本調査では、外国人計 30 名を対象としてアンケート調査を実施し、ドライブする際、

事前に情報を収集する程度や交差点で必要とする情報、困ったことや運転する際に欲しい情報に ついて調査を実施した。

(3) ドライバーが分岐点を同定する際に必要とする情報の種類に関する調査2)

ドライバーは出発前に調べた情報をもとに走行中に得られる情報も活用しながら、目的地へ向 かう際の分岐点を判断している。しかし、実際にドライバーが走行中にどのような情報を利用し て分岐点を判断しているのかという調査は実施されたものがない。

そこで本調査では、ドライバーが分岐点の位置を同定する際にどのような情報を必要としてい るかを把握するため、2015年1月にインターネット調査サービスにより全国2,000人のドライバ ーを対象としたアンケート調査を実施した。

(4) 重複路線における路線番号案内の効果に関する実験3)

案内標識による案内の体系には、地図を確認しながら目的地まで走行することとされているが、

案内標識に記載される路線番号は、重複路線の場合、地図上での記載は数字の値が小さい方のみ が記載されることが多く、路線番号が途中で途切れるという問題がある。本実験は、ドライバー に提供する情報を正確に伝えることが、予定経路を設定する上で影響を与えるのか、また、走行 中の迷いや不安に影響を与えるのかを把握することが目的である。本実験は、ドライバーを正確 に目的地まで案内誘導するプロセス(後述するドライバーモデル)全般に係る問題でもある。

まず、実在する道路網の地図を作成し、それを被験者に見せた上でアイマークレコーダーを用 い、重複路線を表示した場合と非表示の場合で被験者の予定経路の決定がどのように影響される かを考察した。次に、パソコン上で道路案内標識を表示するドライビングシュミレータを被験者 に走行させ、予定経路通り走行できた割合、走行中地図で確認回数などの走行実績から重複路線 の案内効果を考察した。

(5) 道路案内標識とカーナビとの機能連携による案内効果に関する実験4)

近年カーナビが普及し高度化しており、案内標識が無くても目的地まで到達できるという考え もあるが、案内標識があることによりドライバーに対する案内効果にどの程度差があるのかを把 握すること、また、カーナビと標識の機能連携による効果はどの程度あるのかを把握することで、

52

案内標識の役割や求められる機能を把握することを目的とする。

ドライバーが目的地を目指す過程で交差点での進路選択時の位置同定に着目し、案内標識とカ ーナビの機能連携による案内効果を把握するために室内実験を実施した。

(6) 案内情報の不整合によるドライバーの心的負荷に関する実験5)

本実験は、案内標識の情報とカーナビの情報の整合性がドライバーにとってどの程度重要なの かを把握することを目的とする。

ドライバーが目的地を目指す過程で交差点での進路選択時に、①ドライバーは曲がるべき交差 点が特定出来ない場合、心的負荷が掛かる、②ドライバーは、標識とカーナビの情報が違うと心 的負荷が掛かるという心理面に関する仮説を立て、被験者の視線の動きや瞳孔径等を測定できる 視線計測装置(以下、アイマークレコーダーとする)を用い、注視点と生理心理学の観点から、

客観的、定量的に計測した。

53