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第 4 章 通行挙動特性の基礎的分析

4.3 通行位置の違いによる見えの特性の比較分析

今回の調査対象交差点の進入路を対象として,通行位置の視点から,交差点接近時の見えの 特性を分析する.見えの特性としては,交差点通行時の安全性に影響すると考えられる「交差 道路の見通し距離」,「自転車運転者の注視行動」に着目する(図4.9).

通行位置

① 左側路側帯(歩道も含む)

② 車道左端

③ 車道左側

④ 車道右側

⑤ 車道右端

⑥ 右側路側帯(歩道も含む)

交差道路の見通し距離        自転車運転者の注視行動

どこを「見な」がら接近?

通行位置ごとに・・・

X

yL yR

X : 交差点原点からの距離 yL : 左側の見通せる距離 yR : 右側の見通せる距離

どこまで「見え」る?

通行位置ごとに・・・

図4.9 見えの特性の分析項目

4.3.1 見通し距離の比較

見通し距離は,交差点形状に大きく依存する.ここでは,標準的な交差点形状を有する「西 葛西①西側進入」を用いて,接近時の見通し距離の特性を分析する.その他の進入路について は,参考として付録に整理した.

通行位置ごとに見通し距離を算定した結果を図 4.10(付図 4.12)に示す.図 4.10 は,横軸に 交差点原点からの距離(X),縦軸の正方向に左側交差道路の見通し距離(yL),縦軸の負方向に右 側交差道路の見通し距離(yR)をとり,各通行位置におけるXごとのyLおよびyRの位置を線 で結んだ.

見通し距離は,15m付近まではほとんど変化が見られない.それ以降,交差点に近づくほど 拡大する.特に隅切り手前から急激に拡大する.路側帯では左右の差が大きいため見通し距離 に偏りが生じる.車道端や車道中央付近では,それが緩和される.見通し距離の偏りは,交差 道路側の視認のための首ふり量の増加が予想される.他進入路でも同様の傾向が見られる.

-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20

-20 -15 -10 -5 0 5 10

交差点角からの 距離(m) [X]

( m)[

]Y

左側路側帯 車道左端 車道左側 車道右側 車道右端 右側路側帯

左側 [yL]

右側 [yR]

西葛西①西側進入 [ 非優先 / 逆走 / 有り(カラー 化) ]

鉄道高架

1.2+(0.0)+3.1+(0.0)+1.2=5.5

1.5+(0.0)+3.0+(0.0)+1.5=6.0

1.5+(0.5)+2.0+(0.5)+1.5=6.0 1.5+(0.5)+2.0+(0.5)+1.5=6.0

西葛西① 0 5 10 20m N

2.3

2.3 2.3

2.3 西葛西①

5.0 5.0 5.0 5.0

0 2 4 8m N 6.0

6.0

6.0

6.0

図4.10 通行位置ごとの左右の交差道路の見通し距離

交差点から5mの位置で,車道左端の見通し距離を左側路側帯と比較した場合,右側見通し 距離は1.5m程度の減少に対して,左側見通し距離は3m 程度増加する.車道左側では,右側 見通し距離はさらに1.5m程度の減少に対して,左側見通し距離はさらに 2m程度増加する.

これをすべての地点で計算したものを図4.11(付図4.13)に示す.この図は,左側路側帯の見通 し距離を1とした時の比率を示している.

車道左端や車道左側は,右側見通し距離が左側路側帯に比して 10%~20%減少するだけで,

左側見通し距離は隅切り付近では1.2倍~1.5倍程度とやや小さいもののそれ以外では2倍~3 倍に改善する.車道左端や車道左側の通行位置では,右側見通し距離の減少以上に左側見通し 距離の改善がみられる.他進入路でも,比率に違いはあるものの同様の傾向が見られる.

鉄道高架

1.2+(0.0)+3.1+(0.0)+1.2=5.5

1.5+(0.0)+3.0+(0.0)+1.5=6.0

1.5+(0.5)+2.0+(0.5)+1.5=6.0 1.5+(0.5)+2.0+(0.5)+1.5=6.0

西葛西① 0 5 10 20m N

2.3

2.3 2.3

2.3 西葛西①

5.0 5.0 5.0 5.0

0 2 4 8m N 6.0

6.0

6.0

6.0

-1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0

-20 -15 -10 -5 0 5 10

交差点角からの 距離(m) [X]

左側路側帯

車道左端 車道左側

左側

右側 西葛西①西側進入 [ 非優先 / 逆走 / 有り(カラー

化) ]

図4.11 左側路側帯の見通し距離に対する比率

以上のことから,車道左端や車道左側は,見通し距離の偏りを緩和できること,右側見通し 距離をほとんど悪化させずに左側見通し距離を大きく改善できること,が明らかとなった.(◆ 成果:車道左端の見通し距離に関する利点)

4.3.2 交差点接近中の注視行動の比較

通行位置の視点から,交差点へ接近中の自転車運転者の注視行動の傾向を分析する.標準的 な交差点形状を有する西葛西①および葛西①・葛西②において計測された通行位置ごとの注視 点変移のデータを用いる.分析対象区間は,交差道路の左右の見通し距離が大きく変化し始め る交差点原点から15m付近から交差点原点までとする.

しかし,取得できた交差点進入走行のサンプル数は,交差点からの距離ごと注視位置の傾向 や時間的変化,注視順などの詳細分析には十分とは言えない.このため,ここでは交差点進入 走行全体としての傾向を捉えることとした.また,7種類の注視エリアは,左エリア(交差側左

+進入路左)・中央エリア(交差点+対向路+進入路中)・右エリア(交差側右+進入路右)の3種 類に集約した.

注視エリアごとの注視時間構成比を図4.14に示す.図4.15に注視エリアごとの注視回数を 示す.

注視時間構成比は,車道通行時には通行位置に関わらず,左側エリアに30%程度,中央エリ アに40%程度,右側エリアに30%程度,である.注視時間は,交差点全体をほぼ均等に割り当 てられ,左右どちらにも短い移動量で視線変化可能な中央エリアに10%程度長く割り当てられ

ている.一方,左側路側帯通行時は,左側エリアが40%程度,中央エリアが35%程度,右側エ リアが 25%程度,である.右側路側帯通行時は,左側エリアが 30%程度,中央エリアが 20%

程度,右側エリアが50%程度,である.路側帯通行時は,中央エリアの注視時間が15%(左側)

~20%(右側)程度,「見えにくい側」のエリアの注視時間に割り当てられている.

1回の進入走行における平均注視回数の総数は,車道通行時には通行位置に関わらず,6.7 回程度である.路側帯通行時は8.3回で,車道通行時に比べ20%程度多い.車道端と比較した とき,「見えにくい側」のエリアの増加が顕著である.

路側帯通行では,車道走行に比べ「見えにくい側」を1.5回程度多く注視している.そのた めに,左右への視線移動に有利な中央エリアの注視時間から15%~20%程度割いている.つま り,路側帯通行は,車道通行に比べ,この「見えにく側」を注視してる間に,対向路からの他 通行者や「見えにくい側」の反対側の通行者の発見遅れの危険性を15%~20%程度高めている 恐れがある.

(◆成果:注視時間は3等分・視線移動に有利な中央に+10%・路側帯通行では見えにくい側 を1.5回多く注視・左右への視線移動に有利な中央エリアの注視時間を利用・それに伴い通行 者の発見遅れの危険性が15%~20%程度増加).

3.4 2.3 2.2 2.3 2.4 2.5 2.5

3.3 3.7

4.2 3.4 3.8 2.0

3.4

2.6 2.7

2.4 2.5

2.5 4.5

2.8

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

左側路側帯 n=4 (9.2) 車道左端 n=4 (8.6) 車道左側 n=4 (8.8) 車道右側 n=4 (8.2) 車道右端 n=4 (8.7) 右側路側帯 n=4 (8.9) 全体 n=24 (8.7)

通行位置

n:サンプル数 (秒)

左側エリア 中央エリア 右側エリア 1回の進入走行で

の平均注視時間

()内:合計

図4.14 通行位置ごとの注視時間構成比

2.8 1.8

2.0 2.3

2.5 2.5 2.3

3.0 2.5

2.5 1.8

2.0 2.0 2.3

2.5 2.3

2.3 2.5

2.5 3.8 2.6

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 左側路側帯 n=4 (8.3)

車道左端 n=4 (6.5) 車道左側 n=4 (6.8) 車道右側 n=4 (6.5) 車道右端 n=4 (7.0) 右側路側帯 n=4 (8.3) 全体 n=24 (7.2)

通行位置

n:サンプル数 (回)

左側エリア 中央エリア 右側エリア 1回の進入走行で

の平均注視回数

()内:合計

図4.15 通行位置ごとの注視回数

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