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第 4 章 TCP 、 MAC 、物理レイヤの動作を考慮したアドホックネットワークの性能評価

4.3 建物内におけるアドホック伝送実験

4.3.2 通信実験1

この実験のノードの配置を図 4.13に示す。図に示すように電通大 IS棟は、建物中央に エレベータホール、エレベータ、階段などが配置されており、図の横方向の長さが約 50

図 4.13: 通信実験1のネットワーク構成 その1

メートルである。この通信実験は、建物内における直接通信の性能を評価するためのもの であり、一方のノードをエレベータホールから続くオープンスペースの端に設置し、他方 のノードを同じ階の階段の踊り場に配置した。ここで、エレベータの周りの壁は鉄筋コン クリートであり、この実験の2つのノードは互いに見通し通信ができない位置にある。ま た、図中の写真のようにいすの上にパソコンを設置することとし、ノードの床からの高さ は約50センチメートル程度とした。

ファイル転送の結果を図 4.14 と図 4.15 に示す。図 4.14 では、ファイルデータの転送 の際の転送されるTCPセグメントのシーケンス番号の時間的変化を、折れ線グラフで示す。

また、TCPの再送箇所を折れ線グラフ上に「x」で示す。図 4.14ではあわせて、無線LAN によるフレームの転送回数の時間的変化も示す。図 4.14 の棒グラフは、一定時間の間で 何回の送信で ACK フレームが受信されたかの平均値を示している。再送がまったくない 場合は1の値をとる。また、図 4.15では、通信中のすべての無線LANフレームを送信す るのに、何回の再送が必要であったかのヒストグラムを示す。これはファイルのデータを 転送する方向(TCPデータ)と、そのTCPレイヤでの受信応答を転送する方向(TCP ACK)の 両方向について計算している。

図 4.14 から、時間の経過とともに比較的順調にファイルの転送が行われていることが わかる。ただし、時々TCPでのデータ再送があり、また5秒付近ではTCPにおけるタイム アウト再送が発生しており、その関係で、0.5 秒程度まったくデータが転送されていない 時間が生じている。これは無線 LAN で再送リトライアウトが発生していることを意味す る。図 4.15から、TCPデータおよびTCP ACKで4回の再送が必要であったのが、それぞ れ30回と2回あったと示している。このうちの何回かで、4回目での再送でもMACレイ ヤのACKフレームを受信することができず、その結果TCPデータまたはTCP ACKが破棄 された。図 4.15 から見ると、このようなリトライアウトの数は全体のフレームの総数に 比べて小さいが、この少ないフレームの消失がTCPレイヤのスループットの影響している ことがわかる。

しかし全体的に見ると、3.4Mbpsのスループットが得られており、図 4.13に示した位置 関係では2つのノードの間で、十分安定した通信を行うことができたと考えられる。

次に階段のノードを 7階と 6階の間の踊り場に移して同様な実験を行った。図 4.18に ノードの位置を示す。階段は 1階分が 3.6メートルであり、実験ではその中間の踊り場に 置いたため、図 4.13の実験から1.8メートル下がっている。

ファイル転送の結果を図 4.16 と図 4.17 に示す。図 4.16 では、ファイルデータの転送 の際の転送されるTCPセグメントのシーケンス番号の時間的変化を折れ線グラフで、無線 LANによるフレームの転送回数の時間的変化を棒グラフで、それぞれ示す。また、図 4.17

には、無線LANのフレーム送信回数のヒストグラムを、TCPデータとTCP ACKの送信方 向のそれぞれについて示す。図 4.16 では、その前の実験結果と異なり、通信開始から 90 秒ほどまったく通信ができない状況が続いている。この間はTCPにおける再送が連続的に 生じており、タイムアウトの間隔も数十秒にまで拡大している。その後、90秒以降に無線 LANを介した通信が可能になった模様で、それから連続的にデータの転送が行われている。

無線 LAN の再送回数のヒストグラムを見ると、前の実験に比べると 4回の再送まで行っ たケースが60フレーム程度まで増えていることがわかる。しかし、それでも全体的な割合 から見ると、リトライアウトのフレーム数は小さい。この実験ではリトライアウトが、90 秒間にわたって発生したと考えられる。いずれにせよ、階段を 1/2 階分下がったことによ り、十分な通信が不可能になったといえる。

ただし、この位置を少しずらすことにより、安定した通信が行えた場合もあった。した がって、この位置が不安定な状況であり、場合によっては通信可能であり、場合によって は不可能となる状況であった。さらに、階段を 1/4 階分 (9 メートル)降りて実験を行った が、この場合は通信がまったく不可能となった。すなわちping通信においてもまったく通 信が不可能であった。

また、ノードの高さによっての通信可能性を確認するために、図 4.13 の位置で、床の 上にノードを配置した実験を行った。この場合は、まったく通信ができなかった。したが って、建物内においてアドホック通信を行う場合は、ある程度の高さにノードを配置する 必要があることが明らかとなった。

0 1000000 2000000 3000000 4000000 5000000 6000000 7000000

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

時間 [sec]

TCPンス番号

0 1 2 3 4 5 6 7 8

MAC再送率

MAC再送率 TCPシーケンス番号 TCPの再送箇所

3.37Mbps

図 4.14: 通信実験1 TCPシーケンス番号とMAC再送率の時間的変化

3844

294 108 55 30 0 0 0 0 0

2313

200 101 20 2 0 0 0 0 0

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

再送回数

フレー

データセグメントに対する再送回数 ACKセグメントに対する再送回数

図 4.15: 通信実験1 無線LANの再送回数のヒストグラム

0 1000000 2000000 3000000 4000000 5000000 6000000 7000000

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

時間 [sec]

TCP

0 1 2 3 4 5 6 7 8

MAC再

MAC再送率 TCPシーケンス番号 TCPの再送箇所

0.43Mbps

図 4.16: 通信実験1の2 TCPシーケンス番号とMAC再送率の時間的変化

3321

549

259 108 61 0 0 0 0 0

2291

293

126 37 2 0 0 0 0 0

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

再送回数

フレ

データセグメントに対する再送回数 ACKセグメントに対する再送回数

図 4.17: 通信実験1の2 無線LANの再送回数のヒストグラム

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