第 5 章 高密度アドホックネットワークに適した AODV プロトコルの提案
5.5 性能評価
5.5.2 ノードがランダムに移動する場合の評価
5.5.2.1 シミュレーション条件
5.5.1.1 節で述べたシミュレーション条件と同様の条件で、無線ノードが移動する場合の
シミュレーション評価を行った。ノードの移動モデルとしては、人が歩行もしくは走る速 度を想定し、0m/sから 5m/s の間でランダムに選ばれた一定速度でシミュレーション開始 からランダムな位置へ移動し、移動完了後に停止する。また、無線到達範囲を半径 200m とした。
5.5.2.2 特定のノードペアによる通信の性能評価
ネットワーク内のノード総数を 1000 個とし、20個のノードペアをランダムに選択し、
それらの間で通信を行わせることとした。測定時間を30秒間とし、シミュレーション開始 から前節で述べた移動モデルにより移動を開始し、10秒以内にノードペアがランダムに通 信を開始するという形でシミュレーションを行った。このときネットワーク全体で送信さ れた経路制御メッセージの総数と全宛先ノードで受信されたデータパケットの総数を図 5.22と図5.23に示す。図5.22より提案方式ではRREQメッセージ、Helloメッセージとも に従来の AODV より少なくなっていることがわかる。ノードが移動していない場合の図 5.7に比べると全体の制御メッセージが多くなっているものの、RREQメッセージに関して は従来方式で84491個、提案方式で33528個と提案方式によるRREQメッセージの送信数 が半分以下に軽減されている。また Hello メッセージは提案方式では 2939 個と従来の
AODVの29529個に比べて10分の1程度になっている。
これら経路制御メッセージの軽減により、図5.23で示されるように受信データパケット 数が、送信データパケット数4950個に対して、提案方式で3621個、従来のAODVで2870 個と提案方式の方が効率的にデータメッセージを転送していることがわかる。
0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000 80000 90000
0 5 10 15 20 25 30
測定時間 [sec]
送信経路制御メッセ ージ 数
HELLO (original) HELLO (proposed) RREQ (original) RREQ (proposed)
図5.22:ネットワーク内で送信された経路制御メッセージの総数の時間的変化、
ノード数:1000個、通信ノードペア数:20個、0-5 m/sで移動
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000
0 5 10 15 20 25 30
測定時間 [sec]
受信データ パ ケ ット 数
original proposed send packets
図5.23: 宛先ノードで受信されたデータパケットの総数の時間的変化、
5.5.2.3 ノードがランダムに移動する場合に、通信ノードペア数を変化させたと きの性能評価
次に、ノード総数を1000個としたときの、通信ノードペア数を10 個から40個まで 10 ずつ増加させ、それぞれのペア数で異なるノード配置を10種類ずつランダムに選び、シミ ュレーションを行った。その結果の平均を図 5.24 と図 5.25 に示す。横軸に通信ノードペ ア数を示し、縦軸にそれぞれ送信経路制御メッセージ数と受信されたデータパケットの総 数を示している。図5.24より、ノードが移動しない場合の実験結果の図5.14に比べHello メッセージはあまり増加していないことがわかる。しかしながら提案方式では Hello メッ セージ数が若干増加している。一方、RREQメッセージの送信数はノードが移動すること でどちらもかなり増加していることがわかる。これはノードが移動することにより経路の 切断が発生し、再び経路を確立するためにRREQメッセージがフラッディングされたため と考えられる。さらに提案方式では経路を確立したノード間で Hello メッセージが一定間 隔で送信されるため、経路を再確立したノードで Hello が送信されたと考えられる。しか し提案方式のRREQメッセージとHelloメッセージの数は従来のAODV方式に比べて以前 少ないことも確認できる。
全宛先ノードで受信されたデータパケットの総数を示した図5.25を見ると、通信ノード ペア数の多い環境で従来のAODVを用いるとデータパケットの受信率は2割程度、提案方 式でも5割程度しか受信できないことがわかる。高密度アドホックネットワーク内で無線 ノード移動するような環境では、通信要求が多く発生した場合には大域が確保できないこ とが起こりうることがわかる。
0 40000 80000 120000 160000 200000
通信ノードペア数
送信制御メッセージ数
HELLO (original) HELLO (propsoed) RREQ (original) RREQ (propsoed)
図5.24: 通信ノードペア数に対するネットワーク内で送信された経路制御メッセージの総数、
ノード数:1000個、0-5 m/sで移動
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000
0 10 20 30 40 50
通信ノードペア数
受信データパケット数
original proposed send packets
図5.25: 通信ノードペア数に対する宛先ノードで受信されたデータパケットの総数、
ノード数:1000個、0-5 m/sで移動
5.5.2.4 ノードがランダムに移動する場合に、ネットワーク全体のノード数を変 化させたときの性能評価
次に、通信ノードペア数を20個としたときに、ネットワーク全体のノード数を250個か ら1000個まで250個ずつ増加させそれぞれ異なるノード配置で10回ずつシミュレーショ ンを行った。その結果の平均を図5.26と図 5.27に示す。従来のAODVではネットワーク 内のノード数が増加すると、RREQメッセージ、Helloメッセージがともに増加し、受信デ ータパケット数もノード数1000個のときに2742個と送信データパケット数9840個に対し て約半分しか受信できていない。一方で提案方式では Hello メッセージはほとんど増加し ておらず、RREQメッセージが増加しているもののその割合はあまり大きくない。受信デ ータパケット数もネットワーク数1000個の時に3584個と7割以上が受信できている。
0 20000 40000 60000 80000 100000
0 250 500 750 1000 1250
全ノード数
送信経路制御メッセージ数
HELLO (original) HELLO (propsoed) RREQ (original) RREQ (propsoed)
図5.26: 全ノード数に対するネットワーク内で送信された経路制御メッセージの総数、
通信ノードペア数:20個、0-5 m/sで移動
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000
0 250 500 750 1000 1250
全ノード数
受信データパケット数
original proposed send packets
図5.27: 全ノード数に対する宛先ノードで受信されたデータパケットの総数、