Operating Characteristics of Ultra-High Speed Cylindrical Roller Bearing Operating at 3.5 Million DN
4. 軸受運転試験と結果
高温高速条件で円筒ころ軸受を運転すると,熱や遠 心力によるすきま減少3)のため,寿命低下や,転動体 のすべりによるスキッディング損傷4)の問題が生じる ことがある。そこで,本運転試験では内外輪温度(軸 受すきまの変化)や転動体のすべりに着目した性能評 価を行った。
4.1 標準軸受
4.1.1 転動体のすべりに及ぼすラジアル荷重の影響 転動体のすべりに及ぼすラジアル荷重の影響を調べ た。
転動体のすべりは,直接測定が難しいので,下記の 式で表される保持器すべり率Csによる評価が一般的に 行われている5)。
Nc
Cs=
(
1−―――Ntc)
×100 (%) (1)Nc :保持器実測回転数(rpm) Ntc:保持器理論回転数(rpm)
Ns dw
Ntc= ――×2
(
1−―――Dp)
(2)Ns :主軸回転数(rpm)
Dp:転動体ピッチ円径 dw:転動体の径
ラジアル荷重と保持器すべり率の関係を図4に示す。
dn値350万 超高速円筒ころ軸受の運転性能
回転速度の影響もあるが,ラジアル荷重が大きくな ると保持器すべりが減少することがわかる。この特 性はHarrisが示した傾向6)と一致しており,荷重によ り内輪と転動体の接触荷重の増加が駆動力を増大さ せた結果と考えられる。
ガスジェネレータ用軸受は軽負荷であることを考 慮すれば,保持器すべりの大きいラジアル荷重0の条 件で運転評価する方が適切と考え,以下の試験は無 負荷で行った。
4.1.2 軸受温度と保持器すべり率
組込前すきま93μmの軸受を給油量6R/minで潤 滑した時の回転速度と軸受温度の関係を図5に示す。
回転速度と共に軸受温度は上昇し,内輪温度145℃,
外輪温度210℃でdn値350×104の運転を達成し た。この時の保持器すべり率は図6のように高速運転 時ほど小さくなるが,全般的に5%以下で安定してい た。図5の軸受温度による軌道輪の熱膨張と内輪の遠 心膨張から計算した運転すきまを図7に示す。dn値 150×104から250×104の中速域では図5に示し たように外輪温度が内輪温度より高くなるため外輪 の熱膨張によりすきまは増加しプラスとなる。それ 以上の高速では,遠心力による内輪膨張のため逆に すきまは減少し,dn値350×104において約−25μ mの負すきまとなった。
図4 ラジアル荷重と保持器すべりの関係 Effect of shaft speed on cage slip for various radial loads
回転速度×104 dn
保持器すべり率 %
25
20
15
10
5
0
100 150 200 250 300 350
荷重 Fr=0 kN 荷重 Fr=3 kN 荷重 Fr=6 kN 荷重 Fr=9 kN 標準軸受
組込み前すきま183μm 給油量 8R/min
図5 回転速度と軸受温度 Bearing temperature during operations
回転速度×104 dn 標準軸受
組込み前すきま93μm 給油量 6R/min
内輪 外輪
温度 ℃
100 150 200 250 300 350 400 220
200 180 160 140 120 100 80
4.2 ハイブリッド軸受
4.2.1 転動体材質と軸受の寿命
運転中の転動体荷重の解析モデルを図8に示す。内 輪や外輪の熱膨張や転動体に働く遠心力,内輪の遠心 膨張によるすきま変化を考慮して転動体荷重を求め,
Lundberg & Palmgrenの理論式から軸受寿命を計 算できる。
運転すきま0と仮定して,転動体の遠心力のみによ る標準軸受とハイブリッド軸受の計算寿命を図9に示 す。軸受転動疲労寿命比は目標寿命に対する計算値の 比率を示している。M50製転動体を使用するとdn値 330×104以上では目標寿命を満足できなくなり,
dn値350×104では目標の30%となる。一方,ハイ ブリッド軸受は,転動体が軽量であるため,dn値 400×104でも目標寿命を満足している。標準軸受 は,図5に示したようにdn値350×104の運転はで きたが寿命の問題がある。したがって,本研究の最終 目標であるdn値400×104での寿命を達成するため には,Si3N4ころを使ったハイブリッド軸受は必須で ある。ハイブリッド軸受は,長寿命だけでなく,耐焼 き付き性,耐摩耗性および耐スキッディング損傷にも 優れており7)高速運転に適している。
図10はdn値400×104で運転すきまと寿命の関係 を示している。運転すきまが−5μm以下で寿命は急 激に短くなるので,これ以上大きな運転すきまを確保 する必要がある。すきま−5μm以上で寿命が一定と なるのは,遠心力による転動体荷重が外輪のみに作用 し,内輪側の荷重が0となるためである。
NTN TECHNICAL REVIEW No.67(1998)
図6 保持器すべり率 Effect of shaft speed on cage slip
回転速度×104 dn 標準軸受
組込み前すきま93μm 給油量 6R/min
保持器すべり率 %
20
10
0
100 150 200 250 300 350 400
図7 運転すきま
Radial clearance during operations
回転速度×104dn 標準軸受
組込み前すきま93μm 給油量 6L/min
運転すきま μm
100 150 200 250 300 350 400 30
20 10 0
−10
−20
−30
図8 軸受寿命解析モデル Analysis model
外輪転動体荷重 外輪
内輪転動体荷重 内輪 遠心力
ω転動体r
ωc
ωi
図9 転動体材質と軸受転動疲労寿命 Effect of roller material on bearing fatigue life
回転速度×104 dn 計算条件
荷重 0 運転すきま 0
軸受転動疲労寿命比
200 250 300 350 400
100
10
1
0.1
標準軸受
ハイブリッド軸受
図10 ハイブリッド軸受の運転すきまと転動疲労寿命 Effect of radial clearance on bearing fatigue life
運転すきま μm 計算条件
ハイブリッド軸受 dn値400×104 ラジアル荷重 0
軸受転動疲労寿命比
−20 −15 −10 −5 0
10
1
0.1
0.01
dn値350万 超高速円筒ころ軸受の運転性能
図11 ハイブリッド軸受の運転温度に及ぼすすきまの影響 Effect of radial clearance on hybrid bearing temperature
回転速度×104 dn 組込前
すきま 93μm
組込前 すきま 138μm
組込前 すきま 183μm
給油量 8R/min 図中の白抜きポイントは 内輪温度,塗りつぶし ポイントは外輪温度。
軸受温度 ℃
100 200 300 400
200
150
100
50
運転中止
図12 ハイブリッド軸受の保持器すべりに及ぼすすきまの影響 Effect of radial clearance on cage slip of hybrid bearing
回転速度×104 dn 組込前
すきま 93μm
組込前 すきま 138μm
組込前 すきま 183μm
保持器すべり率 %
100 200 300 400
50
40
30 20
10
0
運転中止
給油温度:100℃
給油量:8R/min
図13 ハイブリッド軸受の運転すきま Radial clearance of hybrid bearing during operations
回転速度×104 dn 組込前
すきま 183μm 組込前
すきま 138μm
組込前 すきま 93μm
運転すきま μm
0 100 200 300 400
120 100 80 60 40 20 0
−20
運転中止 給油温度:100℃
給油量:8R/min
図14 ハイブリッド軸受の最大接触面圧 Maximum contact stress of hybrid bearing
回転速度×104 dn 組込前
すきま 93μm
組込前 すきま 138μm
内輪軌道面最大接触面圧 MPa
0 50 100 150 200 250 300 350 400 1 000
800
600
400
200 0
運転中止 給油温度:100℃
給油量:8R/min
組込前 すきま 183μm
4.2.2 ハイブリッド軸受のすきまの影響
給油量を8R/min一定とし,ハイブリッド軸受のす きまを変えた時の運転温度,保持器すべり,運転すき まおよび最大接触面圧をそれぞれ図11,図12,図 13,図14に示す。
最高回転数はすきまが大きい軸受ほど高く,組込み 前すきま93μm,138μmおよび183μmで,それ ぞれのdn値で240×104,280×104,350×104 であった。dn値350×104に到達しなかった軸受は,
モータ過負荷のため運転を停止したものである。この 時の最大接触面圧は図14から900MPaであった。
dn値350×104における軸受(組込み前すきま183 μm)温度は内輪で180℃,外輪で160℃であった。
保持器すべり率は,概ねすきま大ほど大きくなる傾 向が見られる。dn値350×104ではすべり2%で特 に異常はなく,試験後の軸受に摩耗等の損傷も認めら れない。このすべりが大きくなるとスキッディング損傷 を生じることがある。経験値としてすべり10%以下 であれば問題ないと考えられている3)。この判断基準 に照らしても,今回のdn値350×104の運転は問題 ないと考えられる。保持器すべりが10%以上の運転 条件については,図10に示したようなすきまと寿命 の関係も考慮した軸受すきまの設計が必要となる。
NTN TECHNICAL REVIEW No.67(1998)
4.2.3 ハイブリッド軸受の必要潤滑油量
軸受すきま183μmの軸受を使い潤滑油量を変え た時の軸受温度を図15に示す。給油量4R/minと 6R/minの条件では,振動大のためそれぞれdn値 300×104とdn値330×104で停止した。dn値 350×104運転には8R/min以上の給油量が必要で あることがわかった。
図15 ハイブリッド軸受の潤滑油量と最高回転数 Effect of lubricating oil flow rate on hybrid bearing performance
回転速度×104 dn
温度 ℃
100 200 300 400
200
150
100
50
給油量4R/min,内輪 給油量4R/min,外輪 給油量6R/min,内輪 給油量6R/min,外輪 給油量8R/min,内輪 給油量8R/min,外輪
運転中止
5. あとがき
ガスジェネレータ用円筒ころ軸受のすきまやアンダ ーレース潤滑油量の適正化により,内径140mmの 軸受を給油温度100℃,内輪温度180℃で,dn値 350×104の運転を達成することができた。そのた めの条件と運転特性を以下にまとめる。
1)ラジアル荷重が大きくなると,転動体のすべりは 小さくなる。
2)従来材料を使った軸受でも運転は可能であるが,
軸受寿命を考慮すると転動体にSi3N4を使用した ハイブリッド軸受が必要である。
3)ハイブリッド軸受の潤滑油量は8R/min以上必要 である。
4)ハイブリッド軸受は,すきま183μmでdn値 350×104の運転ができたが,今後の更なる高温 高速運転を可能にするためには,寿命と転動体す べりの両方の問題を解決するすきま設計が肝要で ある。
引用文献
1)F.T.Shuler,NASA TP-1413(1979)
2)M.Itayama他4名,Yokohama International Gas Turbine Congress(1995),Ⅲ-231
3)藤井他2名,日本トライボロジー学会トライボロジー 学会予稿集,(1996-10),417
4)J.V.Poplawski,Journal of Lubrication Technology, Vol.94 No.2(1972),143
5)B.A.Tassone,J.Aircr.,Vol.12 No.4(1975),281 6)T.A.Harris,ASLE Trans.,Vol.9 No.3(1966),229 7)F.D.Slaney,ASME Paper 94-GT-112(1994)