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軸受運転試験と結果

ドキュメント内 NTN Technical Review No.67 (ページ 57-61)

Operating Characteristics of Ultra-High Speed Cylindrical Roller Bearing Operating at 3.5 Million DN

4.   軸受運転試験と結果

高温高速条件で円筒ころ軸受を運転すると,熱や遠 心力によるすきま減少3)のため,寿命低下や,転動体 のすべりによるスキッディング損傷4)の問題が生じる ことがある。そこで,本運転試験では内外輪温度(軸 受すきまの変化)や転動体のすべりに着目した性能評 価を行った。

4.1  標準軸受

4.1.1  転動体のすべりに及ぼすラジアル荷重の影響 転動体のすべりに及ぼすラジアル荷重の影響を調べ た。

転動体のすべりは,直接測定が難しいので,下記の 式で表される保持器すべり率Csによる評価が一般的に 行われている5)

Nc

Cs=

1−―――Ntc

×100 (%) (1)

Nc :保持器実測回転数(rpm) Ntc:保持器理論回転数(rpm)

Ns dw

Ntc= ――×2

1−―――Dp

(2)

Ns :主軸回転数(rpm)

Dp:転動体ピッチ円径 dw:転動体の径

ラジアル荷重と保持器すべり率の関係を図4に示す。

dn値350万 超高速円筒ころ軸受の運転性能

回転速度の影響もあるが,ラジアル荷重が大きくな ると保持器すべりが減少することがわかる。この特 性はHarrisが示した傾向6)と一致しており,荷重によ り内輪と転動体の接触荷重の増加が駆動力を増大さ せた結果と考えられる。

ガスジェネレータ用軸受は軽負荷であることを考 慮すれば,保持器すべりの大きいラジアル荷重0の条 件で運転評価する方が適切と考え,以下の試験は無 負荷で行った。

4.1.2 軸受温度と保持器すべり率

組込前すきま93μmの軸受を給油量6R/minで潤 滑した時の回転速度と軸受温度の関係を図5に示す。

回転速度と共に軸受温度は上昇し,内輪温度145℃,

外輪温度210℃でdn値350×104の運転を達成し た。この時の保持器すべり率は図6のように高速運転 時ほど小さくなるが,全般的に5%以下で安定してい た。図5の軸受温度による軌道輪の熱膨張と内輪の遠 心膨張から計算した運転すきまを図7に示す。dn値 150×104から250×104の中速域では図5に示し たように外輪温度が内輪温度より高くなるため外輪 の熱膨張によりすきまは増加しプラスとなる。それ 以上の高速では,遠心力による内輪膨張のため逆に すきまは減少し,dn値350×104において約−25μ mの負すきまとなった。

図4 ラジアル荷重と保持器すべりの関係 Effect of shaft speed on cage slip for various radial loads

回転速度×10dn

保持器すべり率 %

25

20

15

10

5

0

100 150 200 250 300 350

荷重  Fr=0 kN 荷重  Fr=3 kN 荷重  Fr=6 kN 荷重  Fr=9 kN 標準軸受

組込み前すきま183μm 給油量 8R/min

図5 回転速度と軸受温度 Bearing temperature during operations

回転速度×10dn 標準軸受

組込み前すきま93μm 給油量 6R/min

内輪 外輪

温度 ℃

100 150 200 250 300 350 400 220

200 180 160 140 120 100 80

4.2 ハイブリッド軸受

4.2.1 転動体材質と軸受の寿命

運転中の転動体荷重の解析モデルを図8に示す。内 輪や外輪の熱膨張や転動体に働く遠心力,内輪の遠心 膨張によるすきま変化を考慮して転動体荷重を求め,

Lundberg  &  Palmgrenの理論式から軸受寿命を計 算できる。

運転すきま0と仮定して,転動体の遠心力のみによ る標準軸受とハイブリッド軸受の計算寿命を図9に示 す。軸受転動疲労寿命比は目標寿命に対する計算値の 比率を示している。M50製転動体を使用するとdn値 330×104以上では目標寿命を満足できなくなり,

dn値350×104では目標の30%となる。一方,ハイ ブリッド軸受は,転動体が軽量であるため,dn値 400×104でも目標寿命を満足している。標準軸受 は,図5に示したようにdn値350×104の運転はで きたが寿命の問題がある。したがって,本研究の最終 目標であるdn値400×104での寿命を達成するため には,Si3N4ころを使ったハイブリッド軸受は必須で ある。ハイブリッド軸受は,長寿命だけでなく,耐焼 き付き性,耐摩耗性および耐スキッディング損傷にも 優れており7)高速運転に適している。

図10はdn値400×104で運転すきまと寿命の関係 を示している。運転すきまが−5μm以下で寿命は急 激に短くなるので,これ以上大きな運転すきまを確保 する必要がある。すきま−5μm以上で寿命が一定と なるのは,遠心力による転動体荷重が外輪のみに作用 し,内輪側の荷重が0となるためである。

NTN TECHNICAL REVIEW No.67(1998)

図6 保持器すべり率 Effect of shaft speed on cage slip

回転速度×10dn 標準軸受

組込み前すきま93μm 給油量 6R/min

保持器すべり率 %

20

10

0

100 150 200 250 300 350 400

図7 運転すきま

Radial clearance during operations

回転速度×104dn 標準軸受

組込み前すきま93μm 給油量 6L/min

運転すきま μm

100 150 200 250 300 350 400 30

20 10 0

−10

−20

−30

図8 軸受寿命解析モデル Analysis model

外輪転動体荷重 外輪

内輪転動体荷重 内輪 遠心力

ω転動体r

ωc

ωi

図9 転動体材質と軸受転動疲労寿命 Effect of roller material on bearing fatigue life

回転速度×10dn 計算条件

 荷重 0  運転すきま 0

軸受転動疲労寿命比

200 250 300 350 400

100

10

1

0.1

標準軸受

ハイブリッド軸受

図10 ハイブリッド軸受の運転すきまと転動疲労寿命 Effect of radial clearance on bearing fatigue life

運転すきま μm 計算条件

 ハイブリッド軸受  dn値400×104  ラジアル荷重 0

軸受転動疲労寿命比

−20 −15 −10 −5 0

10

1

0.1

0.01

dn値350万 超高速円筒ころ軸受の運転性能

図11 ハイブリッド軸受の運転温度に及ぼすすきまの影響 Effect of radial clearance on hybrid bearing temperature

回転速度×10dn 組込前

すきま 93μm

組込前 すきま 138μm

組込前 すきま 183μm

給油量 8R/min 図中の白抜きポイントは 内輪温度,塗りつぶし ポイントは外輪温度。

軸受温度 ℃

100 200 300 400

200

150

100

50

運転中止

図12 ハイブリッド軸受の保持器すべりに及ぼすすきまの影響 Effect of radial clearance on cage slip of hybrid bearing

回転速度×10dn 組込前

すきま 93μm

組込前 すきま 138μm

組込前 すきま 183μm

保持器すべり率 %

100 200 300 400

50

40

30 20

10

0

運転中止

給油温度:100℃

給油量:8R/min

図13 ハイブリッド軸受の運転すきま Radial clearance of hybrid bearing during operations

回転速度×104 dn 組込前

すきま 183μm 組込前

すきま 138μm

組込前 すきま 93μm

運転すきま μm

0 100 200 300 400

120 100 80 60 40 20 0

−20

運転中止 給油温度:100℃

給油量:8R/min

図14 ハイブリッド軸受の最大接触面圧 Maximum contact stress of hybrid bearing

回転速度×10dn 組込前

すきま 93μm

組込前 すきま 138μm

内輪軌道面最大接触面圧 MPa

0 50 100 150 200 250 300 350 400 1 000

800

600

400

200 0

運転中止 給油温度:100℃

給油量:8R/min

組込前 すきま 183μm

4.2.2 ハイブリッド軸受のすきまの影響

給油量を8R/min一定とし,ハイブリッド軸受のす きまを変えた時の運転温度,保持器すべり,運転すき まおよび最大接触面圧をそれぞれ図11,図12,図 13,図14に示す。

最高回転数はすきまが大きい軸受ほど高く,組込み 前すきま93μm,138μmおよび183μmで,それ ぞれのdn値で240×104,280×104,350×104 であった。dn値350×104に到達しなかった軸受は,

モータ過負荷のため運転を停止したものである。この 時の最大接触面圧は図14から900MPaであった。

dn値350×104における軸受(組込み前すきま183 μm)温度は内輪で180℃,外輪で160℃であった。

保持器すべり率は,概ねすきま大ほど大きくなる傾 向が見られる。dn値350×104ではすべり2%で特 に異常はなく,試験後の軸受に摩耗等の損傷も認めら れない。このすべりが大きくなるとスキッディング損傷 を生じることがある。経験値としてすべり10%以下 であれば問題ないと考えられている3)。この判断基準 に照らしても,今回のdn値350×104の運転は問題 ないと考えられる。保持器すべりが10%以上の運転 条件については,図10に示したようなすきまと寿命 の関係も考慮した軸受すきまの設計が必要となる。

NTN TECHNICAL REVIEW No.67(1998)

4.2.3 ハイブリッド軸受の必要潤滑油量

軸受すきま183μmの軸受を使い潤滑油量を変え た時の軸受温度を図15に示す。給油量4R/minと 6R/minの条件では,振動大のためそれぞれdn値 300×104dn値330×104で停止した。dn値 350×104運転には8R/min以上の給油量が必要で あることがわかった。

図15 ハイブリッド軸受の潤滑油量と最高回転数 Effect of lubricating oil flow rate on hybrid bearing performance

回転速度×10dn

温度 ℃

100 200 300 400

200

150

100

50

給油量4R/min,内輪 給油量4R/min,外輪 給油量6R/min,内輪 給油量6R/min,外輪 給油量8R/min,内輪 給油量8R/min,外輪

運転中止

5.  あとがき

ガスジェネレータ用円筒ころ軸受のすきまやアンダ ーレース潤滑油量の適正化により,内径140mmの 軸受を給油温度100℃,内輪温度180℃で,dn値 350×104の運転を達成することができた。そのた めの条件と運転特性を以下にまとめる。

1)ラジアル荷重が大きくなると,転動体のすべりは 小さくなる。

2)従来材料を使った軸受でも運転は可能であるが,

軸受寿命を考慮すると転動体にSi3N4を使用した ハイブリッド軸受が必要である。

3)ハイブリッド軸受の潤滑油量は8R/min以上必要 である。

4)ハイブリッド軸受は,すきま183μmでdn値 350×104の運転ができたが,今後の更なる高温 高速運転を可能にするためには,寿命と転動体す べりの両方の問題を解決するすきま設計が肝要で ある。

引用文献

1)F.T.Shuler,NASA TP-1413(1979)

2)M.Itayama他4名,Yokohama International Gas Turbine Congress(1995),Ⅲ-231

3)藤井他2名,日本トライボロジー学会トライボロジー 学会予稿集,(1996-10),417

4)J.V.Poplawski,Journal of Lubrication Technology, Vol.94 No.2(1972),143

5)B.A.Tassone,J.Aircr.,Vol.12 No.4(1975),281 6)T.A.Harris,ASLE Trans.,Vol.9 No.3(1966),229 7)F.D.Slaney,ASME Paper 94-GT-112(1994)

[ 論 文 ]

低速条件下の転がり軸受寿命

赤 松 良 信*

Rolling bearing life tests were conducted to study the effect of low speed on the fatigue life of

30 mm bore cylindrical roller bearings at inner race speeds from 19 to 3725rpm and EHL oil film

parameter LAMBDA (Λ) from 0.09 to 1.2. Under the boundary lubrication conditions, bearing

life was directly related to transit time (TT). As TT increases, life also increases. That is,

bearings which run slower have longer lives in terms of bearing revolutions. Both TT and the

total number of stress cycles affect the decomposition of retained austenite on the inner-race

surface, the microhardness distributions of the inner-race and the magnitude of the inner-ring

surface residual stress. A transit time life factor is suggested for slow moving industrial

equipment roller bearings operated in the boundary lubrication regime.

ドキュメント内 NTN Technical Review No.67 (ページ 57-61)