Lubricating Performance of Commercial Biodegradable Hydraulic Fluids and Greases
3. 生分解性グリース
いわれているが,粘度だけで考えると試験油種間の油 膜形成性に差はないので,生分解性の作動油では油の 種類の影響が大といえる。
2. 4 耐スミアリング性
転がり−すべり接触部に発生するスミアリング損傷 性に及ぼす影響を,ピーリング試験と同様に二円筒試 験機により調査した。表5に試験条件を,表6にスミ アリング発生時の駆動側円筒の回転速度と発生時間を 示す。
なたね油と鉱油はほぼ同等の耐スミアリング性を示 したが,合成エステル油は銘柄により大きく異なった。
これは耐スミアリング性に添加剤が大きく影響したも のと思われる2)。
生分解性作動油・グリースの性能評価
図5 グリース高温耐久試験機略図と試験条件 Test rig for grease life test
ヒータ
試験軸受 負荷用コイルバネ支持軸受
図6 硫黄定量値とグリース寿命 Sulfur content vs grease life
グリース寿命(150℃),h
Sの定量値,wt%
1000 800 600 400 200 0
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
試料名 添加剤*) 寿命L50,h 蒸発量 ちょう度 全酸価,mgKOH/g 100℃ 150℃ % 放置前 放置後 放置前 放置後 B-1 S,SP系 165 20 2.7 252 236 3.3 4.2
B-2 ― 65 17 3.3 238 184 2.9 13.6
B-3 S,SP系 57 33 1.1 248 224 1.4 2.7 E-1 S,SP系 7247 860 3 242 238 2.7 1.6 E-2 ZnDTP 373 36 2.9 246 276 4.6 3.7 E-3 S,SP系 2827 273 1.6 246 240 1 0.3 E-4 S,SP系 1107 106 2.3 248 244 2.3 1 E-5 S,SP系,Ca系 2363 96 3.6 248 241 2.1 1.8
E-6 S系 1354 469 1 270 268 0.6 0.8
表8 生分解性グリースの性能 Performance of biodegradable greases
試験軸受 6204ZZ
グリース封入量,g 1.8±0.1
試験温度,℃ 100±2,150±2 回転速度,rpm 10000
荷重,N Fr=Fa=67
表8に結果を示す。蒸発量,ちょう度は植物油系と合 成エステル油系で大きな差は見られないが,全酸価の 変化の傾向が異なる。植物油系では全酸価が増加の傾 向にあるのに対し,合成エステル油系では減少傾向で ある。植物油系では酸化が進行しているのに対し,合 成エステル油系では酸化が進んでいないことがわか る。
図6にLi石けん-合成エステル油系グリースでのS
(硫黄)の定量値と150℃のグリース寿命との対応を 示す。S(硫黄)の定量値と150℃グリース寿命には 相関が認められ,添加量の多いグリースほど長寿命の 傾向が見られる。添加剤によりグリースの酸化防止能 が向上し,長寿命になったものと考えられる。
3. 3 耐ピーリング性
作動油の場合と同様に二円筒試験機により油膜形成 能と耐ピーリング性を調査した。評価方法,条件など は2.3項と同様である。
図7に金属接触率の時間変動,図8に従動側円筒表 面に発生したピーリングの面積率を示す。いずれの試 験グリースにおいても,時間の経過と共に金属接触率 は低下しているのがわかる。また,植物油系と合成エ ステル油系を比較すると,植物油系の金属接触率が大 きく,植物油系グリースは転がり接触部の油膜形成能 が劣っていることがわかる。油膜形成能とピーリング 面積率はほぼ対応がつき,植物油系の耐ピーリング性 は合成エステル油系よりも劣るといえる。合成エステ ル油系は一般グリースと比較してそん色ない耐ピーリ ング性を有するといえる。
また,耐ピーリング性には潤滑油の粘度が影響する といわれているが,基油粘度とピーリング面積率に相 関は認められなかった。2.3項の作動油と同じ傾向を 示しており,なたね油(ないし,植物油)は粗面転動 での油膜形成能,耐ピーリング性が劣るといえる。
注*)当社での分析データ
NTN TECHNICAL REVIEW No.67(1998)
3. 4 耐スミアリング性
転がり−すべり接触部に発生するスミアリング損傷 性に及ぼす影響を,ピーリング試験と同様に二円筒試 験機により調査した。評価方法,条件などは2.4項と 同様である。
表11にスミアリング発生時の駆動側円筒の回転速 度と発生時間を示す。耐スミアリング性は,植物油系,
図7 生分解性グリースの金属接触率 Metal-to-metal contact ratio of greases
金属接触率,%
100 80 60 40 20 0
B-1 B-2 B-3 E-1 E-2 E-3 E-4 E-5 E-6
時間,h
0 1 2 3 4 5
図8 生分解性グリースの耐ピーリング性 Peeling performance of greases
ピーリング面積率,%
グリース種 50
40 30 20 10 0
B-1 B-2 B-3 E-1 E-2 E-3 E-4 E-5 E-6
合成エステル油系とも試料により大きく異なっている が,一般のグリースに比べ高い値を示す。
耐スミアリング性には添加剤の影響が大きいといわ れており,今回の結果にも基油の種類よりも添加剤の 影響が大きく現れたものと思われる。
表12に植物油(なたね油)と合成エステル油の生 分解性潤滑油としての比較を示す。生分解性潤滑油の 使用が主にヨーロッパで始まり,ヨーロッパでは植物 油(なたね油)は合成エステル油より低価格で,容易 に入手できるため,生分解性の潤滑油としては植物油 の利用が進んでいるが,生分解性を有しながら,かつ,
長寿命による環境への負荷の低減が図れる,これまで も潤滑油として多方面で使用されているという実績が ある,という点から現時点では合成エステル油をベー スにした方が信頼性が高いと考える。
試料名 スミアリング発生時期 回転速度 発生時間 B-1 1300rpm 8分39秒 B-2 1000 6分52秒 B-3 1600 9分46秒 E-1 1600 9分37秒 E-2 1000 6分43秒 E-3 1600 9分40秒 E-4 1300 8分20秒 E-5 1300 7分50秒 E-6 1300 8分01秒 表11 スミアリングの発生状況 Smearing performance of greases
注)作動油は鉱油を基準とした。グリースは汎用グリースを基準とした。
植物油 合成エステル油 鉱油
作動油 グリース 作動油 グリース 作動油
転動疲労寿命 常温120℃ ○〜◎ ○ ○
× ◎ ○
耐ピーリング性 × × ○ ○ ○
耐スミアリング性 ○ ○ ×〜◎ ○ ○
グリース寿命 × ×〜○
表12 生分解性作動油・グリースの性能比較 Comparison of vegetable oil and synthetic ester oil
生分解性作動油・グリースの性能評価
4. まとめ
生分解性作動油やグリースの転がり軸受用潤滑剤と しての実用性を検討するため,植物油(なたね油)と 合成エステル油をベースにした市販の生分解性作動油 5種,生分解性グリース9種について転動疲労寿命,
油膜形成能,耐ピーリング性,耐スミアリング性及び グリースの高温寿命を調査した。
1)作動油の常温での転動疲労寿命は,合成エステル 油と植物油(なたね油)で差は見られなかったが,
120℃では合成エステル油の方が長寿命であっ た。
2)グリースの寿命は,合成エステルの方が植物油よ り長寿命であり,モータ用の汎用グリースに近い 水準のものもあった。
3)耐ピーリング性(粗面転動に対する耐はく離性)
は作動油,グリースとも合成エステル油をベース にした方が高かった。
4)耐スミアリング性は銘柄間の差が大きく,植物油 と合成エステル油間での明確な差はみられなかっ た。添加剤の影響の方が大きいといえる。
5)コストを無視した場合,合成エステル油をベース にした潤滑剤の方が植物油ベースよりも信頼性が 高いと考える。
6)用途,使用環境に応じた生分解性潤滑油・グリー スの開発は今後とも引き続き行われると思われる が,長寿命化による環境への負荷の低減を考慮す ると合成エステル油をベースにすることが望まし いと考える。
参考文献
1)大川等,油圧と空気圧,(1992-11)23,7,18-24 2)徳田等,ベアリング エンジニア No,45,(1977)
8-19