Characteristics of NTN Bearings with Solid Grease
3. 一般用ポリルーブベアリングの特長と性能
3.1.特長
ポリルーブをベアリングに封入し,焼成・固形化 したポリルーブベアリングの例を写真1〜3に示す。
吸熱
温度,˚C
発熱
80 160 180 200 220
LP05
130˚C 124˚C
LP03 LP06
140 120 100
図2 各種ポリルーブの示差走査型熱量分析結果 DSC thermogram of solid grease
写真1 一般用ポリルーブベアリング General-purpose bearings with solid grease
写真2 高温用ポリルーブベアリング Heat-resistant bearings with solid grease
写真3 食品機械用ポリルーブベアリング Bearings with solid grease for food processing machines ポリルーブベアリングは以下の特長を持つ。3種類の ポリルーブベアリングそれぞれの特長を表3,4に示 した。
①ポリルーブは,焼成により固化し,内部に潤滑剤を 保持する。この潤滑剤が軸受の使用に際し発熱し,
遠心力等により徐々に供給されるため,潤滑剤の漏 れが少ない。
②軸受に強い振動や大きい遠心力が作用する場合でも 潤滑剤が漏れにくく,長寿命である。
③外部からの浸入物(水,塵埃など)に対してポリル ーブは防壁となる。ただし,シールとしては不充分 であり,これらの浸入を防ぐには別途シール(接触 形ゴムシール)が必要である。
④ポリルーブは固形で水が浸入しても乳化して,流出 することがないので潤滑寿命が長くなる。
⑤一般的にポリルーブベアリングでは潤滑剤がグリー スのように撹拌されないので撹拌抵抗が少ない。封 入量(スポットパック仕様,フルパック仕様)によ りトルクの大きさを調整できる。
一般用ポリルーブベアリング 高温用ポリルーブベアリング 食品機械用ポリルーブベアリング
(LP03) (LP05) (LP06)
深溝玉軸受 深溝玉軸受 深溝玉軸受
ミニアチュア,小径玉軸受 ベアリングユニット ベアリングユニット 自動調心玉軸受
軸受形式 自動調心ころ軸受 ベアリングユニット 針状ころ軸受
封入仕様* スポットパック スポットパック スポットパック
フルパック
許容温度 −20〜80˚C −20〜120˚C −10〜110˚C
(長時間使用:60˚C以下) (長時間使用:100˚C以下) (長時間使用:100˚C以下)
表3 ポリルーブベアリングの特長 Property of bearings with solid grease
* ポリルーブベアリングは,その封入量によりスポットパック仕様とフルパック仕様の2仕様がある。
スポットパック仕様:深溝玉軸受の保持器上にポリルーブをスポット封入し焼成・固形化したもので,低トルク及び潤滑剤漏れ防止に主眼をおいた仕様である。
フルパック仕様:軸受の空間容積ほぼ一杯に,ポリルーブを封入し,焼成・固形化したもので,潤滑寿命に主眼をおいた仕様である。
燥状態であり内外輪・ころすべてにさびが発生し,茶 褐色となつた(継続使用不可状態)。
ポリルーブベアリング
軸受内部のポリルーブは,初期封入時の形態を保っ ていたが分析の結果軸受にさびが発生していた(継続 使用可能状態)。回転調子に,ごり感があったが,こ れは油分の減少とさびによるものと考えられる。
以上の通りであり,Li−鉱油系グリースとポリルー ブには明確な差異が認められた。この差異については,
前途のようにLi−鉱油系グリースが塩水により乳化し 軸受外に流出したのに対し,ポリルーブは固形潤滑剤 であり乳化や流出がおこらないこと,油分の劣化に対 してはポリルーブ内より絶えず清浄な潤滑油が供給さ れていたことなどのためと考える。この試験結果から 判断すると,通常の雨水や泥水のかかる状態で長期間 使用した場合でもポリルーブは潤滑剤流出に対して効 果があると推察できる。
2)潤滑剤の漏れ試験
図3に示す試験方法と表7の試験条件で,ポリルー ブベアリングの潤滑剤の漏れ量を測定した。軸受の取 付けは回転軸に対し平行及び垂直の2姿勢とした。
Li−鉱油系グリースを封入した軸受は,LUシール付 き,LBシール付きのいずれの軸受も約10分程度でグ リースが飛散し,シールがはずれた。これに対し,図 4に示すようにポリルーブベアリングは,オープン状 態で平行姿勢(A)で約2wt%,垂直姿勢(B)で約 5wt%の流出に留まっている。
このようにポリルーブベアリングは,外部より作用 する力に対して優れた潤滑剤保持能力を示しており,
漏れの少ない軸受といえる。
NTN TECHNICAL REVIEW No.67(1998)
一般用ポリルーブ 高温用ポリルーブ 食品機械用ポリルーブ ベアリング(LP03) ベアリング(LP05) ベアリング(LP06)
封入仕様 スポットパック フルパック スポットパック スポットパック 深溝玉軸受 20×104 5×104 12×104 12×104
ミニアチュア小径玉軸受 20×104 ― ― ―
軸受 自動調心玉軸受 ― 3×104 ― ―
形式 自動調心ころ軸受 ― 3×104 ― ―
ベアリングユニット 12×104 3×104 8×104 12×104
針状ころ軸受 ― 3×104** ― ―
表4 ポリルーブベアリングの許容回転数(dn値*)
Critical speed of bearings with solid grease
* dn値:(d=軸受内径寸法,mm)×(n=使用回転数,rpm)
** Fwn値:(Fw=ころ内接円径寸法,mm)×(n=使用回転数,rpm)
テスト結果 A:良好 B:やや不良(劣化が見られる) C:不良
A軸受 B軸受
軸受荷重 157N{16kgf}
回転数 50rpm(外輪) 144rpm(内輪)
放水量 9R/min
塩水濃度 5wt%
運転サイクル 総運転時間 500h
(5h回転+3h停止)×62サイクル 表5 塩水試験条件
Conditions of salt water spray test
ポリルーブ Li−鉱油系グリース A軸受 B軸受 A軸受 B軸受
回転調子(ゴリ感) B B C C
潤滑剤残存状況 A A C C
潤滑剤劣化状況 B B C C
水滴浸入状況 A A C C
表6 塩水試験結果 Results of salt water spray test 3. 2. 性 能
1)塩水試験
表5に示した試験条件で塩水試験を行い,ポリルー ブベアリングの耐水性能を評価した。試験軸受はニー ドル軸受・内径φ65×外径φ115×幅36(A軸受)
と内径φ22×外径φ40×幅25(B軸受)にLP03を 封入し,焼成・固形化したものを用い,各々の軸受に 9R/minの塩水をかけた。500h後の試験結果を表 6に示す。試験結果をわかりやすくするため,ABC評 価を行った。
500時間後の内部状態の詳細については,以下の 通りである。
Li−鉱油系グリース封入軸受
軸受内部には全くグリースの残存が認められず,乾
A軸受 B軸受 6201(ポリルーブはスポット封入,オープン)
試験軸受 6201LLU(Li−鉱油系グリース封入,接触ゴムシール付き)
6201LLB(Li−鉱油系グリース封入,非接触ゴムシール付き)
遠心加速度 3 000G(公転5 000rpm)
軸受回転数 静止状態
軸受の姿勢 遠心加速度の作用する方向が 遠心加速度の作用する方向が
軸受のラジアル方向 軸受のアキシアル方向
試験時間 4h:1時間ごとに軸受重量を測定し,潤滑剤の漏れ率(重量比)を求める。
NTNポリルーブ®ベアリングの種類と特長
図3 潤滑剤漏れ試験方法 Grease leakage test rig
A軸受
試験軸受 試験軸受装置状態 遠心加速度の作用する方向
が軸受のラジアル方向
遠心加速度の作用する方向 が軸受のアキシアル方向
B軸受
図4 潤滑剤漏れ試験結果 Oil leakage vs time
0 2 4 6 8 10 12
1 2 3 4
G
G B軸受
時間 h
漏れ率: wt(%)注)
A軸受
表7 潤滑剤漏れ試験条件 Conditions of leakage test
3)トルク試験
図5に示すトルク試験機装置Aを用いて,表8の試 験条件で,ポリルーブベアリングのトルクを測定した。
試験結果を表9に示す。ポリルーブベアリングスポ ットパック仕様は各回転数で,一般に低トルクといわ れるLi−ジエステル系グリースより低トルクであっ た。ポリルーブベアリングフルパック仕様は,初期よ りトルクが大きく,発熱も多い。1800rpm以上は発 熱が大きく,測定できなかった。フルパック仕様は低 速回転向きである。
注)漏れ率:NTNポリルーブ封入量を100として漏れた潤滑剤の重量比
回転数(rpm) 1 800 3 600 7 200 Li−鉱油系グリース 230 385 550 Li−ポリオールエステル系グリース 145 265 383 Li−ジエステル系グリース 90 315 403 ポリルーブ スポットパック仕様 63 113 190 フルパック仕様 340 ― ―
図5 トルク試験装置A Torque test A equipment
試験軸受 ハウジング
軸 ロードセル
ラジアル荷重 負荷用ばね
エアスライド
試験軸受 6204ZZ
ポリルーブおよびLi系各種グリース 試験グリース (ポリルーブフルパック仕様以外は,
空間容積の30%封入とする)
軸受荷重 ラジアル荷重 39N{4kgf}
軸受回転数 1 800,3 600,7 200rpm 表8 トルク試験条件
Torque test condition
表9 トルク試験結果
Results of torque test (10-4Nm)
試験軸受 6204LLB
LP03(スポットパック封入)
試験グリース LP05(スポットパック封入)
LP06(スポットパック封入)
食品機械用グリース1)
軸受荷重 アキシアル荷重 39kN{4kgf}
軸受回転数 1 000, 2 000, 4 000, 5 000, 6 000, 7 000, 8 000 rpm NTN TECHNICAL REVIEW No.67(1998)