第2章 ねらい及び内容
第2節 各領域に示す事項
3 身近な環境との関わりに関する領域「環境」
周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもって関わり,それらを生 活に取り入れていこうとする力を養う。
1 ねらい
(1) 身近な環境に親しみ,自然と触れ合う中で様々な事象に興味や 関心をもつ。
(2) 身近な環境に自分から関わり,発見を楽しんだり,考えたりし,
それを生活に取り入れようとする。
(3) 身近な事象を見たり,考えたり,扱ったりする中で,物の性質 や数量,文字などに対する感覚を豊かにする。
幼児の周囲には,園内や園外に様々なものがある。人は暮らしを営み,
また,動植物が生きていて,遊具などの日々の遊びや生活に必要な物が 身近に置かれている。幼児はこれらの環境に好奇心や探究心をもって主 体的に関わり,自分の遊びや生活に取り入れていくことを通して発達し ていく。このため,教師は,幼児がこれらの環境に関わり,豊かな体験 ができるよう,意図的,計画的に環境を構成することが大切である。
幼児は身近な環境に興味をもち,それらに親しみをもって自ら関わる ようになる。また,園内外の身近な自然に触れて遊ぶ機会が増えてくる と,その大きさ,美しさ,不思議さに心を動かされる。幼児はそれらを 利用して遊びを楽しむようになる。幼児はこのような遊びを繰り返し,
様々な事象に興味や関心をもつようになっていくことが大切である。
幼児は身近な環境に好奇心をもって関わる中で,新たな発見をしたり,
どうすればもっと面白くなるかを考えたりする。そして,この中で体験 したことを,更に違う形や場面で活用しようとするし,遊びに用いて新 たな使い方を見付けようとする。幼児にとっての生活である遊びとのつ ながりの中で,環境の一つ一つが幼児にとってもつ意味が広がる。した がって,まず何より環境に対して,親しみ,興味をもって積極的に関わ るようになることが大切である。さらに,ただ単に環境の中にあるもの を利用するだけではなく,そこで気付いたり,発見したりしようとする 環境に関わる態度を育てることが大切である。幼児は,気付いたり,発 見したりすることを面白く思い,別なところでも活用しようとするので
184 ある。
身近な事象を見たり,考えたり,扱ったりする中で,物の性質や数量,
文字などに対しての関わりを広げることも大切である。幼児を取り巻く 生活には,物については当然だが,数量や文字についても,幼児がそれ らに触れ,理解する手掛かりが豊富に存在する。それについて単に正確 な知識を獲得することのみを目的とするのではなく,環境の中でそれぞ れがある働きをしていることについて実感できるようにすることが大切 である。
185 [内 容]
(1)自然に触れて生活し,その大きさ,美しさ,不思議さなどに気 付く。
自然に触れて遊ぶ中で,幼児は全身で自然を感じ取る体験により,心 がいやされると同時に,多くのことを学んでいる。特に,幼児期におい て,自然に触れて生活することの意味は大きい。幼稚園生活の中でも,
できるだけ身近な自然に触れる機会を多くし,幼児なりにその大きさ,
美しさ,不思議さなどを全身で感じ取る体験をもつようにすることが大 切である。
自然と触れ合う体験を十分に得られるようにするためには,園内の自 然環境を整備したり,地域の自然と触れ合う機会をつくったりして,幼 児が身近に関わる機会をつくることが大切である。また,幼児が心を動 かされる場面は,必ずしも大人と同じではないことにも留意しなければ ならない。例えば,クモの巣に光る露に心を動かされたり,自分で育て た花から取れた種をそっとポケットにしまい込んだりなど,幼児は日常 の何気ない生活場面で心を揺り動かしている。このような幼児の自然と の 出 会 い を 見 逃 さ な い よ う に す る こ と が 教 師 の 関 わ り と し て 大 切 で あ る。
自然と出会い,感動するような体験は,自然に対する畏敬の念,親し み,愛情などを育てるばかりでなく,科学的な見方や考え方の芽生えを 培う上で基礎となるものである。テレビやビデオなどを通しての間接体 験の機会が増えてきている現代,幼稚園で自然と直接触れる機会を設け ることは大きな意味をもってきている。
186
(2) 生活の中で,様々な物に触れ,その性質や仕組みに興味や関心 をもつ。
幼児は,様々な物に囲まれて生活し,それらに触れたり,確かめたり しながら,その性質や仕組みなどを知っていく。初めは,感触を試し,
物との関わりを楽しんでいるが,興味をもって繰り返し関わる中で,次 第にその性質や仕組みに気付き,幼児なりに使いこなすようになる。物 の性質や仕組みが分かり始めるとそれを使うことによって一層遊びが面 白くなり,物との関わりが深まる。物の性質や仕組みに気付くことと遊 びが面白くなることが循環していく。例えば,土の団子作りに興味をも っている幼児は,何度も作りながら,同じ土であっても,湿り気の具合 によってその性質が異なることを体験的に理解し,しんにする土,しん の周囲を固める土,湿り気を取るための土など,うまく使い分けている。
このように,遊びを通して,物の性質の理解が深まっていく。
さらに,遊びの深まりや仲間の存在は,幼児が物と多様な関わりをす ることを促す。幼児が周囲にある様々な物に触発されて遊びを生み出し,
多様な見立てを楽しむと,その遊びに興味をもった仲間が集まり,新し いアイデアが付加され,その物の性質や仕組みについて新たな一面を発 見する。その発見を生かして更に遊びが広がり,深まるといった過程を 繰り返す。このような流れの中で,幼児が自分のリズムで遊びを展開し,
興味をもった物に自分から関わる,多様な見立てや関わりを楽しむ,試 行錯誤をする,仲間と情報を交流するといったことを通して,物の性質 や仕組みに興味をもち,物との関わりを楽しみ,興味や関心を深めてい くことを踏まえることが大切である。
187
(3) 季節により自然や人間の生活に変化のあることに気付く。
幼稚園内外の自然や地域社会の人々の生活に日常的に触れ,季節感を 取り入れた幼稚園生活を体験することを通して,季節により自然や人間 の生活に変化があることに幼児なりに関心をもつようにすることが大切 である。
春の草花や木の芽,真夏の暑い日差し,突風にさらされて舞い散る落 ち葉など,幼児は日々の生活の中で季節の変化を感じる場面に出会うこ とが多い。また,幼児が意識する,しないに関わらず,その変化に伴い,
食べ物や衣服,生活の仕方などが変化している。大切なことは,日常的 に自然に触れる機会を通して,幼児が季節の変化に気付いていくように することである。そのためには,園内の自然環境を整備したり,季節感 のある遊びを取り入れたりするなどして,幼稚園生活の自然な流れの中 で,幼児が季節の変化に気付き,感じ取れるようにすることが大切であ る。
季節により変化のあることに気付くということは,必ずしも,変化の 様子を完全に理解したり,言葉に表したりするということではない。夏 の暑い日に浴びるシャワーの水は心地よいが,冬の寒い日に園庭で見付 けた氷混じりの水は刺すような冷たさを感じるなど,何気なく触れてい るものでも季節によって感触や感じ方が異なるといったように,幼児自 身が全身で感じ取る体験を多様に重ねることが大切である。
幼稚園の外に出掛けると,季節による自然や生活の変化を感じる機会 が多い。幼児が四季折々の変化に触れることができるように,園外保育 を計画していくことも必要である。かつては,地域の人々の営みの中に あふれていた季節感も失われつつある傾向もあり,秋の収穫に感謝する 祭り,節句,正月を迎える行事などの四季折々の地域や家庭の伝統的な 行事に触れる機会をもつことも大切である。
188
(4) 自然などの身近な事象に関心をもち,取り入れて遊ぶ。
幼児の身の回りにある自然などの様々な事象に触れる機会を多くもつ ようにし,それらを取り入れて遊ぶ楽しさを十分に味わうことが必要で ある。幼児は自然の様々な恵みを巧みに遊びに取り入れて,遊びを楽し んでいる。どんぐりなどの木の実はもちろん,それぞれの季節の草花,
さらに,川原の石や土なども遊ぶための大切な素材である。
また,幼児は,目に見えるものだけではなく,見えないものと対話し,
幼児の遊びの中に取り入れている。例えば,風の動きを肌で感じ,自分 で作った紙飛行機や凧た こなどを少しでも高く,遠くに飛ばそうと高い所を 見付け,飛ばしたり,風の向きを考えたりして遊んでいる。
このような遊びが幼児の興味や関心に基づいて十分に繰り返されるよ うに援助しながら,幼児の自然などの身近な事象への関心が高まるよう にすることが大切である。単に自然の事象についての知識を得ることで はなく,自然の仕組みに心を動かし,ささいなことであってもその幼児 なりに遊びの中に取り入れていくことが大切である。