第1章 総説
第4節 指導計画の作成と幼児理解に基づいた評価
2 指導計画の作成上の基本的事項
の見通しの下に改善の努力をしなければならないものもある。また,個 々の部分修正にとどまるものもあれば,全体修正を必要とするものもあ る。さらに幼稚園内の教職員や設置者の努力によって改善できるものも あれば,家庭や地域の協力を得つつ改善の努力を必要とするものもある。
それらのことを見定めて教育課程の改善を図り,一層適切な教育課程を 編成するように努めなければならない。
(2) 教育週数
幼稚園において教育課程を編成し,これを実施するに当たっては毎学 年の教育課程に係る教育週数は,特別の事情のある場合を除き,39 週を 下ってはならない。
特別の事情とは,台風,地震,豪雪などの非常変災,その他急迫の事 情があるときや伝染病の流行などの事情が生じた場合のことを指してい る。
(3) 教育時間
教育課程に係る1日の教育時間については,幼稚園教育要領に示され ているとおり,幼児の幼稚園における教育時間の妥当性及び家庭や地域 における生活の重要性を考慮して4時間が標準となっている。
それぞれの幼稚園においては,幼児の年齢や教育経験などの発達の違 いや季節などに適した教育時間を定める必要がある。この場合,保育所 の整備が進んでいない地域においては,幼稚園の実態に応じて弾力的な 対応を図ることが必要である。このように4時間を標準としてそれぞれ の幼稚園において定められた教育時間については,登園時刻から降園時 刻までが教育が行われる時間となる。
(1) 幼児の生活は,入園当初の一人一人の遊びや教師との触れ合い を通して幼稚園生活に親しみ,安定していく時期から,他の幼児と の関わりの中で幼児の主体的な活動が深まり,幼児が互いに必要な 存在であることを認識するようになり,やがて幼児同士や学級全体 で目的をもって協同して幼稚園生活を展開し,深めていく時期など に至るまでの過程を様々に経ながら広げられていくものであること を考慮し,活動がそれぞれの時期にふさわしく展開されるようにす ること。
教育課程の編成や指導計画の作成においては,入園から修了まで幼児 の生活する姿がどのように変容するかという発達の過程を捉え,発達の 見通しをもつことが大切である。発達には個人差があり,様々な道筋が あることはいうまでもないが,大筋でみると同じような道筋をたどるも のである。
入園から修了までの発達の過程を大きく捉えてみると,次のようにま とめられるであろう。入園当初においては,一人一人が好きなように遊 んだり,教師と触れ合ったりしながら,幼稚園生活に親しみ,安定へと 向かう。安定した生活が得られると次第に周囲の人やものへの興味や関 心が広がり,生活の仕方やきまりが分かり,自分でいろいろな遊びに興 味をもって取り組むようになる。さらに,他の幼児との関わりの中で,
イメージを伝え合い,共に生活する楽しさを知り,友達からの刺激を受 けて遊びを広げていくようになり,幼児の主体的な活動が深まっていく。
このような過程を経て,友達関係を深めながら,よさを相互に認め合 い,友達とは違う自分のよさに気付き自己を形成していく。そして,集 団生活の中で,友達を思いやったり,自己を抑制しようとしたりする気 持ちが生まれる。さらに,幼児同士や学級全体で目的に向かって活動を 展開しながら,一つのものを作ったり,それぞれが役割を分担して一つ のことを成し遂げることを通して仲間意識が深まる。
このような入園から修了までの幼児の生活する姿は,幼稚園の実態に よって様々であり,それぞれの幼稚園においてその実態に即した方法で 捉えることが大切である。
また,発達はそれぞれの時期にふさわしい生活が展開されることによ って促されるものである。例えば,入園当初において,自分の好きなも
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のに関わって過ごすことによって新しい生活の中で安定感をもつように なる。さらに,その安定感をもつことによって,周囲の環境に対して興 味や関心をもって関わるようになり,いろいろな遊びを知っていく。必 要な経験を積み重ねることによって初めて望ましい発達が促されていく ので,先を急ぎ過ぎたり,幼児にとって意味ある体験となることを見逃 してしまったりすることのないようにすることが大切である。
なお,入園当初においては,幼稚園生活がこれまでの生活と大きく異 なるので,家庭との連携を緊密にすることによって,個々の幼児の生活 に理解を深め,幼児が安心して幼稚園生活を送ることができるよう配慮 することが必要である。このため,例えば,家庭のように安心できる雰 囲気のある保育室の環境をつくることなどが考えられる。一人一人のそ の幼児らしい姿を教師が受け止め,きめ細かく関わることによって,幼 児は安心して自分を表出できるようになり,次第に周りにいる他の幼児 の存在に気付き,関わりがもてるようになっていき,幼児は充実した幼 稚園生活が送れるようになっていく。したがって,幼児の行動や内面を 理解する教師の役割は極めて重要である。
81 (2) 入園当初の配慮
(2)入園当初,特に,3歳児の入園については,家庭との連携を 緊密にし,生活のリズムや安全面に十分配慮すること。また,満3 歳児については,学年の途中から入園することを考慮し,幼児が安 心して幼稚園生活を過ごすことができるよう配慮すること。
入園当初の幼児について,中でも特に,3歳児については,自我の芽 生え始める時期であること,家庭での生活経験などの差による個人差が 大きい時期であることなどの発達の特性を踏まえ,一人一人に応じたき め細かな指導が一層必要である。また,一人一人の生活の仕方やリズム に配慮して1日の生活の流れを考えることが必要である。さらに,3歳 児は周囲の状況を顧みず,興味のままに動いてしまうこともあり,安全 については十分な配慮が必要である。
また,満3歳児は学年の途中から入園するため,集団での生活の経験 が異なる幼児が共に生活することになる。この頃の幼児はありのままの 自分を出しながら幼稚園生活を始めており,教師は心の動きに寄り添っ た関わりをすること,一人一人の幼児の生活の仕方やリズムを尊重する ことが大切である。なお,満3歳児の入園に関しては,幼稚園の実態に よって様々であることから,その実態に即した配慮がなされる必要があ る。
幼稚園型認定こども園においては,一人の幼児について考えてみると,
まず保育機能の施設に在籍し,その後幼稚園に入園することがある。こ の場合,家庭から幼稚園に入園する幼児とは異なった生活経験をしてい る点を踏まえ,その生活経験を生かした活動を展開することが大切であ る。しかし,その際に忘れてはならないのは,保育機能の施設で集団で の生活を過ごしていても,例えば,生活のリズム,集団の大きさなど,
幼稚園での生活は異なる点もあることである。その変化を十分に把握し つつ,幼児の実情に応じた幼稚園生活を送ることができるように配慮す ることも必要である。これらの点に配慮して幼稚園生活を展開するため には,幼稚園の教育活動を担当する教師と保育機能の施設における保育 士が連携し,円滑な接続を図ることが大切である。また,家庭から幼稚 園に入園する幼児と保育機能の施設に在籍し,その後幼稚園に入園する 幼児では,家庭や地域での生活の経験や集団生活の経験などが異なるこ とを考慮して,幼稚園の1日の生活の流れや環境を工夫することが大切 である。
82 (3)安全上の配慮
(3)幼稚園生活が幼児にとって安全なものとなるよう,教職員によ る協力体制の下,幼児の主体的な活動を大切にしつつ,園庭や園舎な どの環境の配慮や指導の工夫を行うこと。
幼稚園においては,幼児が健康で安全な生活を送ることができるよう,
担任の教師ばかりでなく,幼稚園の教職員全てが協力しなければならな いことはいうまでもない。幼児の事故は,原因は様々だが,そのときの 心理的な状態と関係が深いといわれており,日々の生活の中で,教師は 幼児との信頼関係を築き,個々の幼児が安定した情緒の下で行動できる ようにすることが大切である。(第2章 第2節 1 心身の健康に関 する領域「健康」 [内容](10),[内容の取扱い](6)を参照)
また,幼児期は,発達の特性として,友達の行動の危険性は指摘でき ても,自分の行動の危険性を予測できないということもあるので,友達 や周囲の人々の安全にも関心を向けながら,次第に幼児が自ら安全な行 動をとることができるように,発達の実情に応じて指導を行う必要があ る。
幼児に安全な生活をさせようとするあまり,過保護になったり,禁止 や叱責が多くなったりする傾向も見られるが,その結果,かえって幼児 に危険を避ける能力が育たず,けがが多くなるということもいわれてい る。
幼児が自分で状況に応じて機敏に体を動かし,危険を回避するように なるためには,日常の生活の中で十分に体を動かして遊ぶことを通して,
その中で危険な場所,事物,状況などが分かったり,そのときにどうし たらよいかを体験を通して学びとっていくことが大切である。このよう に,遊びの中で十分に体を動かすことを通して安全についての理解を深 めるためには,幼稚園の園庭や園舎全体が幼児の遊びの動線や遊び方に 配慮したものとなっていることや指導の工夫を行うことが大切である。
特に,3歳児は危険に気付かずに行動したり,予想もしない場で思わぬ 動き方や遊び方をしたりすることから,3歳児の動き方や遊び方に沿っ た園庭や園舎全体の環境を工夫する必要がある。
なお,遊具等の安全点検は,教職員が協力しながら定期的に行う体制 を整え,不備を発見した場合は直ちに適切な対処をすることが重要であ る。
また,災害時の行動の仕方や不審者との遭遇など様々な犯罪から身を