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資料としての『中国青年』の利用方法

第2章 研究資料としての『中国青年』雑誌

第2節 資料としての『中国青年』の利用方法

本研究は、『中国青年』雑誌を研究資料とする。中でも、改革開放以降の 1978 年から 2000までに発行された『中国青年』雑誌を資料とする。

文化装置を観察する際に使用する資料は、『中国青年』雑誌の表紙や主要コラムである。

また、生活世界における人々の上昇志向を究明するのに使用する資料は、『中国青年』雑誌 に掲載された読者による投書など、読者の声である。

2-1『中国青年』の読者投書の内容の変化

『中国青年』に掲載された読者の声に関する研究は、「読者投書」欄の投書を対象に、呂 海燕(2004)による「『中国青年』雑誌の読者投書に関する内容分析」がある。

呂海燕(2004)は、1950~2003年に発行された『中国青年』雑誌に掲載された読者投 書を母集団に、1953~1957年、1962~1966年、1978~1980年、1984~1988年、1993

~1997 年、2000~2003 年という六つの時期に掲載された読者投書をそれぞれ、1950 年 代、60年代、70年代、80年代、90年代、00年代を代表するサンプルとした。

呂海燕(2004)は、読者投書を、以下の8つの種類に分けたうえで、違う時期における それぞれの占める割合の変化に注目した。

① 青年団の知識

② 政策、政治的観念の是非

③ 仕事や勉強など個人の発展

④ 結婚や恋愛

⑤ 健康(身体の健康、心理的健康)

⑥ 人間関係、処世術

⑦ 生活、生産に関する知識

⑧ その他

違う時期におけるそれぞれの種類の割合の変化を通して、呂は若者の注目点や関心の変 化が反映できるとして、①政治的投書の割合の減少、②個人の発展に対する関心の高まり、

③恋愛・結婚に対する関心の高まり、④健康問題への注目、⑤人間関係、処世術への関心 というデータの変化をもとに、この50数年以来中国社会の政治的雰囲気が徐々に薄らぎ、

個人の発展空間もどんどん広がり、若者たちは個人の幸福と自己実現をより積極的に求め るようになったとの結論を下した。

表2-2 1950年代から2000年代まで違う時期における読者投書の内容の内訳(%)

1950 年 代

1960年代 1970 年 代

1980年代 1990年代 00年代 青年団の知識 13.5 14.0 9.8 2.4 0 0 政治政策、政治

的観念の是非

35.4 42.7 19.6 11.6 11.6 4.1

仕事、勉強など の個人の発展

26.0 19.6 35.3 17.1 14.0 21.9

結婚、恋愛 4.2 4.2 11.8 23. 8 20.9 24.9 健康(心理的健

康 及 び 身 体 的 健康)

12.5 1.4 7.8 14.0 18.6 23.1

人 間 関 係 と 処 世術

3.1 4.9 3.9 15.2 14.0 2.4

生活、生産活動 の知識

3.1 4.9 3.9 10.4 14.0 2.4

その他 3.1 4.9 3.9 5.5 4.7 3.0

N (96) (143) (51) (164) (43) (169)

出所:呂海燕(2004)のデータを基礎に筆者作成

2-2 本研究における「読者の声」の選定と使用方法

本研究では、階層区分に対する人々の認知と態度、社会経済的格差をもたらすメカニズ ムへの態度及びその背後にある、社会のあり方に関する想像の究明を研究目的とするため、

以上8種類の投書の中で、仕事、勉強、恋愛・結婚という、階層区分や社会上昇移動に関 する人々の考え方が相対的に明確に観察できる読者の声に注目するのが基本である。

また、呂海燕(2004)とは違い、本研究において「読者投書」というコラムを研究対象 とするものではなく、あくまでも『中国青年』雑誌に掲載された投書を含めた読者の声を、

研究目的を達成するための資料として、利用するものである。そのため、「読者投書」と題 するコラムに限らず、読者の声を掲載した他のコラムも視野に入れる。

以上の研究目的を達成するために、読者の声に当たる資料を整理するに当たって、本研 究では、以下の作業を通して行った。

以下では、資料の選定について紹介する。

2-2-1読者の声となる資料の母集団の選定

本研究で主な資料として用いられる読者の声に当たる内容の選定や処理は、非常に悩む ものであった。理念的には、『中国青年』雑誌の「読者投書」コラムに掲載された読者に よる悩み相談を主とするが、1978~2000 年の『中国青年』雑誌を概観すると、読者の悩 み相談を掲載するある固定のコラムが一貫してあるのではなく、読者の声を扱うコラムの 名前や形式が常に変わるうえに、読者の利用の仕方、扱い方も時代によって変化してきた。

従って本研究では、読者の声に当たる資料の母集団を選定することが資料整理の第一歩 となった。読者の声は、下記の通り三つのリソースがある。

① 読者の声を掲載する古典的コラム

読者の悩み相談及びそれに対する回答を専門的に扱うコラムは、ここで「古典的コラム」

と名づけよう。基本的には、読者の悩み相談を受けて返答をするという形を取るが、時に は悩み相談の質問文が掲載されず、返答文のみ掲載される場合がある。また時期によって コラムの名前が「青年信箱(青年からの手紙)」「答読者問(読者の質問に答える)」など変 わったりするが、このような古典的コラムに掲載されたすべての投書が、投書の一つのリ ソースとなる。

② 擬似コラムA

読者の悩み相談を掲載する古典的コラムの他に、読者による悩み相談の質問文が掲載さ れたり、読者本人ではなく第三者による原稿が掲載されたりするいわゆる非典型的なコラ ムがある。このようなコラムには、1978~1984 年の時期を例にすると、青少年の権益保 護を主旨とする「青年の呼び声」コラムがあるが、ある公的なことについて意見を述べた り、事件解決のサポートを求めたり、問題告発をしたり、地元の良いことを宣伝したりす る文章が掲載される。また、当事者本人による原稿もあれば、記者やその他の第三者(例 えば地元の青年団支部)による原稿もある。また、当事者本人による原稿の中にも、自分 自身の出遭った納得の行かないことに関して問題告発する原稿もあるし、地元の良い事を 宣伝するプロパガンダの色彩の強い原稿もある。

この類のコラムの場合、本研究では、当事者本人による、当事者本人の悩み相談に関す る原稿のみ、資料と当たると判断するが、ここでは「擬似コラムA」と名づけよう。

1978~1984年の間の雑誌にあった擬似コラムAは、「読者来信(読者からの手紙)」「青

年呼声(青年の呼び声)」「鼓与呼(青年の意見)」などのコラムがある。また、1985~1991 年、1992~2000 年の時期では「私の秘密」「成長の悩み」「青年広場・青年権益の保護」

コラム、「青年広場・青年の声」コラムなどがあり、これらのコラムでは、読者の自分自身 の経験について反省する文章もあるが、一方で単純に自分自身の悩みを述べる文章もある。

そこでは、悩みを述べる読者本人の文章のみ、資料として計上する。

③ 擬似コラムB

読者の声のもう一つのリソースは、いわゆる「問題討論」系のコラムである。『中国青年』

では、雑誌編集の手法の一つとして、ある個別の読者からの手紙で提起された問題をめぐ って、読者に問題討論の参加を呼びかけて、一定の時期に連続して意見表明の読者の声を 掲載する、という手法が慣用される。このようなコラムできっかけを作った読者の投書及 び、議論参加の文章の中の、単なる抽象的、理論的な意見表明ではなく、個人の体験談が 述べられた投書は、本研究の読者の声として使用する。このようなコラムを「擬似コラム B」と名づけよう。

また、擬似コラムの場合、一つの話題について何号かにわたって連続して読者の意見を 掲載するのが大多数であるが、ここでは、一つの話題を1件として計上する。

以下表3には、年代別に、古典的コラム、擬似コラムA・擬似コラムBに属する読者の 声の全体の文章の数を提示した。

表2-3年代別「古典的コラム・擬似コラムA・擬似コラムB」読者の声の文章数 年代 /リソース 古典的コラム 擬似コラムA 擬似コラムB

1978-1984 298件 83件 10

1985-1991 176件 86件 11

1992-2000 117件 29件 5

出所:『中国青年』の掲載内容をもとに筆者作成21

2-2-2 1978~1984年 読者の声を掲載するコラムの紹介 1古典的コラム

1978~1984年読者の声を掲載する古典的コラムは、時期の違いによって「青年信箱(青 年からの手紙)」「答読者問(読者の質問に答える)」)」「思想通信(思想の通信)」「婚恋難 題諮問(恋愛・結婚に関する諮問)」「服務台(サービス台)」「你会自我分析嗎?(あなた は自己分析できますか)」「青年修養問題征答(青年の教養問題に関する答え)」「難題征答

(難題の回答)」「婚恋参謀(恋愛・結婚のアドバイス)」「生活与法律諮問(生活と法律の 諮問)」「問答之頁(質問と答え)」と12個のコラムが登場していた。これらのコラムに掲 載された読者の悩み相談のすべてが、本研究で資料である読者の声のリソースになる。

(1)「青年信箱」コラムは、読者による悩み相談の本文を掲載せず、タイトルでその悩み を表現して、その上で返答文を掲載するという形が1978年、79年に多用されたが、そ の後の時期において、質問文が掲載される場合もある。返答文のみ掲載の場合、投書 者の氏名や出身地などの情報が不明となる。このようなコラムは、ほかに1984年の「答 朋友問」がある。

(2)それに対して、「答読者問(読者の質問に答える)」コラムは、読者による悩み相談 の質問文が掲載され、その上で返答文があるという形をとる。読者の氏名と出身地と いう個人情報が明記される。「答朋友問(読者の質問に答える)」「思想通信(思想の通 信)」「你会自我分析嗎?(あなたは自己分析できますか)」「婚恋難題諮問(恋愛・結 婚のアドバイス)」「婚恋参謀(恋愛・結婚のアドバイス」「生活与法律諮諮問(生活と 法律の諮問)」などのコラムも同じような形をとる。

(3)「青年修養問題征答(青年の教養問題に関する答え)」「難題征答(難題の回答)」コ ラムは、読者による悩み相談の文章を掲載して回答を読者に募集するが、その後の号 に読者による返答を同時に多数掲載する形を取る。本研究で投書の数の統計に関して、

一つの悩み相談の投書に多数の返答文がある場合、1件として計上する。

(4)「為你服務(あなたにサービスする)」及びその後の「服務台(サービス台)」コラム は、その内容から言うと、特に生産や生活の知識に関する悩みに答えるコラムである。

21分類時に、以下の点に留意した。1)一部の「青年信箱」コラムでは、回答文のみ掲載される場合があ る。本研究の資料として認める。2)ある号に悩み相談の原文を掲載してその後の号において回答文を 掲載する場合は、1件として数える。1980 年に掲載された「どうして私はぼうっとしてしまうだろう か」との相談に対して、1981年第3号に読者による回答文7篇が掲載されたが、このようなケースの 場合、1件として計上する。