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中国の雑誌業界の状況から見た『中国青年』

第2章 研究資料としての『中国青年』雑誌

第 1 節 中国の雑誌業界の状況から見た『中国青年』

上記の以下では、雑誌業界における『中国青年』雑誌の位置づけを見るために、現在の 中国の雑誌業界の状況を見てみよう。

1-1中国雑誌業の規模と分類

1978 年から 2008年まで、30 年間における中国雑誌のタイトルが大幅に増加した。中 国雑誌協会13の統計によると、1978年の930誌から、2008年の9851誌と増加した14

12 陳刚(2004)の中で、「青年雑誌通常国際的に使われている雑誌のカテゴリーの中にない分類であり、

雑誌をめぐる縦型構造の中国の行政管理体制の下で出来あがった中国特有の雑誌の種類である」と指 摘した上で、「青年団組織の機関誌との性格を持つ青年雑誌」 であるとした。

13 1992年 5月に成立。19991月に国家新聞出版署の許可を得て、北京印刷学院と共同で雑誌研究所

「期刊研究所」を設立。2002年から隔年か毎年『中国期刊年鑑』(2002)を出版している。2007年に 国際雑誌連盟総会を中国北京で共催した。

『中国期刊協会通信』2010 4

下記の図から、改革開放前及び改革開放後の雑誌タイトルの増加の状況が伺える。

図2‐1 1949~1978年の雑誌タイトルの増減状況

出所:『中国出版年鑑』(1985)データより筆者作成 図2‐2 1978~2008年雑誌タイトルの増加

出所:『中国出版年鑑』(1980~2009各年版)データより筆者作成

『中国出版年鑑』(2008)によれば、2008年現在の時点で中国で公式的に出版されてい る雑誌は 9851 タイトルあるが、分野別による分類で見ていくと、それぞれの種類の雑誌 の占める割合は表1と図3から伺えるように、自然科学・技術誌が全体の半分を占めてお り、その次が哲学・社会科学誌で25%、さらには文化・教育誌で12%、文学・芸術誌で6%、

総合誌5%、児童向け雑誌で1%、絵・写真誌で 1%という状況である。その中で、『中国

青年』などの青年雑誌の入る雑誌は、5%を占める総合誌に属する。

表2‐1 2008年中国雑誌全体の分類及びそのタイトル数、比率

雑誌の類別 タイトル数 全体に占める比率 前年比

総合誌 479 5.02% 0

哲学・社会科学誌 2339 24.49% 0

自然科学・技術誌 4794 50.2% 1.72%増 文化・教育誌 1175 12.3% 0

文学・芸術誌 613 6.42% 0 児童向け雑誌 98 1.03% 0 絵・写真誌 51 0.53% 0

全体 9551 0.86%

出所:『中国出版年鑑』(2009)より筆者作成

図2‐3 中国雑誌全体の分類及びその比率

出所:『中国出版年鑑』(2009)データより筆者作成

一方、出版産業の観点による分類もある。徐昇国(2006)は出版産業の観点から雑誌業 界の分類を試みた。徐の分類では、商業的雑誌、業界誌、専門誌を「業界誌」としてまと められ、2005年時点では業界誌が4984誌あり、全体の50.95%を占めている。その次に 多いのがアカデミック誌で 3522誌あり、36%を占めている。それ以外の大衆消費者個人 の好みに合わせて作られる雑誌を消費類雑誌(consumer magazine ,B2C雑誌ともいう)

と名付けたうえで、現在中国で発行されている消費類雑誌は1276誌あり、全体の13.04%

を占めていると指摘した15

本研究で取り上げる『中国青年』雑誌の属する文化総合大衆誌は、徐が指摘した消費類 雑誌に当たる。これらの消費類雑誌に関して、徐はさらに娯楽レジャー誌、生活サービス 誌、文学芸術誌、時事・社会誌と四つの種類に分けたが、その中で青年雑誌(94種類)は

徐(2006)では、分類の基準及びそれぞれ包括する雑誌名が明示されていない。

娯楽・レジャー誌に属すると指摘した。

図2‐4 消費類雑誌の内訳とその数

出所:徐(2006)より筆者作成

1-2 中国の雑誌業全体の特徴

以上では、青年雑誌の歴史的変容、現在中国の雑誌業界における青年雑誌の位置づけな どを見てきた。青年雑誌の特徴に近づくために、以下では、中国の雑誌業の全体としての 特徴を見てみよう。

(1)雑誌社の運営資金から見れば、全体として市場化の程度が低い。

『中国出版年鑑』(2009)によると、2008年に登録されている9549種類の雑誌の中に、

大学の学報、政府の各部門による公報、政報、年鑑など、1742種類を含むとの説明があっ たが、これらの雑誌は事実上、雑誌社自らの経営活動のよる利益で運営している雑誌では なく、国の財政援助によるものが多い。なお、「休眠誌」といって、名前のみで実際に流通 していない雑誌が3000タイトル前後あるという見方がある(神田高志・山村正一2004)。

実際の雑誌業界の規模は 9549 種類という数字を大幅に下回ることが想定できる。これに 関する正確なデータが公表されていないが、中国人民大学メディア学院喩国明教授は、中 国の雑誌業界はその市場化の程度が非常に低く、党や政府部門によって発行されている業 務指導型の雑誌、教育やアカデミック類の雑誌を含めて、中国雑誌全体の75%は市場化さ れず、財政資金の支給をもって運営されており、それに対して、発行利益や広告収入等の 雑誌社自らの経営による利益で運営されている雑誌は25%しかなく、2000誌前後にとど まっていると指摘した(喩国明2005)。

市場化の程度が低いという特徴は、平均印刷部数の最も多い雑誌ランキングからも伺え る。公表された2006年のデータを例に見ると、2006年毎号平均印刷部数top20ランキン グの中では、党の業務指導型雑誌、小中学生向けの教育雑誌、大衆総合誌と三つの種類に 大きく分けることができるが、図 2-5(2006 年毎号平均印刷部数ランキング top20)か ら伺えるように、前二者、つまり公費による購読が雑誌の発行方式の一つになっており、

公的機関から購読が指定、或いは推奨されていることを筆者が確認できた読み物16は11種 類(党による業務指導型9種類(☆印)、小中学生向けの教育誌5種類(※印))、個人の購 読による大衆総合誌は6種類とわずかしかない。

図2‐5 2006年毎号平均印刷部数ランキング上位2017

出所:徐(2006)より筆者作成

(☆印は党刊及び政府各部署の業務指導型雑誌、※は中小学生向け教育誌)

(2)大衆雑誌の運営は、発行収入主導型と広告収入主導型と二つの陣営に分かれている。

喩国明の研究によると、全体から見れば、雑誌業界の総売上高は約 154 億元であるが、

その中の広告収入が15.2%であり、発行収入が80.5%である。近年、雑誌広告の売上高が 急速に増えたが、雑誌広告の売上高がメディア全体に占める割合は、2%しかない(喩国明 2005)。

市場経済のシステムを導入して運営している雑誌=市場化された消費類の雑誌では、雑

16 5、6「2006年毎号平均印刷部数ランキング上位20」に登場した党の業務指導型雑誌(☆印)、小中 学生向けの教育誌(※)計13種については、いずれも、公的機関から購読が積極的に推奨されている ことが確認できた。具体的には、資料1を参照。また、内容からすれば「総合誌」に入るが、公的機関 による購読の推奨或いは半強制的な購読が確認できた場合、ここでは総合誌からはずし、「業務指導型」

雑誌に分類した。例として『人之初』『家庭』の2誌が挙げられる。前者は国家人口と計画生育委員会 所管で、その外郭団体である中国人口と計画生育協会の機関誌であり、後者は広東省婦人連合会の機関 誌である。両誌は大衆総合誌として知られるが、それぞれ人口と計画生育委員会系統の公的機関による 推奨、婦人連合会系統の公的機関による推奨が確認できた。

17 中国には、ABC、BPAなどのような雑誌の発行部数を監査する機関がなく、これらの部数はおそらく 自己申告によるものであると思われる。200311月にアメリカの発行部数監査機関BPA(Business Publication Audit of Circulation)のラインセンスによって「汎華東方媒体顧問有限会社」という新聞 発行部数の認証販売代理が成立し、中国で30余りのメディアが参加している。中国独自の発行部数監 査機関として20054月に「国新出版物発行データ調査センター」が設けられたが、2005年現在の時

誌の発行収入を主な収入源とする雑誌社が多く、広告収入で雑誌運営をしている雑誌社が 少ない。この点は、表2-6(中国雑誌広告収入ランキング上位20)から伺える。

図2-6中国雑誌広告収入ランキング上位20(2009)

出所:『梅花網広告監測』(2009)中国媒体広告市場研究(2001)

表2-6から伺えるように、中国雑誌広告収入ランキング上位20(2009)に登場したの は、ファッション誌(◆印、9誌)、財経雑誌(●印、2誌)、時事生活雑誌(▲印、1誌)、

写真誌(*印、2誌)、航空機内無料雑誌(○印、3誌、)が殆どであり、特にファッション 誌が9誌も登場しており、半分近く占めている。これらの雑誌は、いわゆる広告収入を主 な運営資金とする雑誌である。これらの雑誌はそれほど発行部数が多くなく、『時尚』など の雑誌はほぼ25万冊前後である18。一方、毎号平均印刷部数ランキング上位20に登場し た8種類の大衆誌は、このランキングには全く登場していない。これらの大衆誌は発行部 数による売上高を主な収入源とする雑誌が殆どである。

このように、中国で発行されている大衆文化総合雑誌は、発行収入で運営されている雑 誌――雑誌従業者や研究者によっては「伝統的雑誌」=旧スタイルで運営されている雑誌と 呼ぶ場合があるが――と、広告収入で運営されている雑誌――「伝統的雑誌」に対して「近 代的雑誌=国際通用のスタイル」と呼ばれる雑誌と二つの陣営に大きく分かれている。こ の二種類の雑誌にそれぞれ典型例がある。前者にはダイジェスト雑誌の『読者(READER)』

がある。ピーク時の発行部数が600万部、最も発行量の多い雑誌である。その発行部数は、

雑誌全体の発行部数の20%を占めている。発行部数はファッション系と経済誌よりダント ツ多いが、広告の売上額は、発行量の少ないファッション雑誌と経済誌よりずっと低い。

18 『中国出版年鑑』各年版のデータを参照。