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第 3 章 規範意識と自己効力感に駆動されたコミュニティ活動の形成と拡大 44

3.7 議論

図 3.6: 規範意識と自己効力感の効果がある条件(下)と規範意識の効果のみあ る条件(上)での9エージェントの参加行動の推移

色に近い背景色で示したAttitudeが中立的に近いエージェントにおいて起こりや すいことが分かる.そこから,行動変容の連鎖は中立的エージェント間で広がる 傾向があることが示唆される.

図 3.7: 被介入エージェントを集団からランダムに選び出す条件(○),初期

Attitudeの値が中位1/3に位置するエージェントからランダムに選び出す条件

(△),中位エージェントの内で隣接する者を順に選び出す条件という,三つの介 入戦略を実験した結果

介入として,選択的にエージェントを選び出し,彼らだけ成功体験や失敗体験を得 られるよう配慮する状況を考える.成功失敗体験を得られるよう配慮されたエー ジェントを被介入エージェントと呼ぶことにし,被介入エージェントを選び出す 様々な方法を介入戦略と呼ぶことにする.被介入エージェントが参加した場合の 自己効力感の形成はこれまでと同様に(式3.8)に従う.

図3.7は,被介入エージェントを集団からランダムに選び出す条件(○),初

期Attitudeの値が中位1/3に位置するエージェントからランダムに選び出す条件

(△),中位エージェントの内で隣接する者を順に選び出す条件(×)での,コ ミュニティ活動の形成割合(100試行中)を示す.横軸は被介入エージェントと して選び出す者の割合である.全てが被介入エージェントである場合の形成割合 0.18を破線で示す.β = 0,δ = 0.01,γ = 0.05,ϵ = 0.5,初期Attitude分布の平均 は0.5である.図から,被介入エージェントを全体からランダムに選び出した場合

(○)に比べ,初期Attitudeの値が中位1/3のエージェントから選び出した場合

(△)の方が,より少ない人数への介入で形成割合を高められることが分かる.さ らに,中位のエージェントを被介入エージェントとして選ぶ場合でも,隣接する 者から選び出しクラスタが形成されるようにする方(×)が,ランダムに選び出

す場合より少人数への介入で形成割合を高められることが分かる.ここで,中位 エージェントから隣接する者を順に選ぶ条件では,互いに隣接する中位エージェ ントが形成するクラスタの中で大きいものから順に,ランダムに最初の一人を選 び出し,順次隣接するエージェントを選び出すというアルゴリズムを用いた.

この結果は,コミュニティ活動の形成を促進するためには,活動に対して様々 な態度を持っている人に公平に成功体験や失敗体験が得られる状況を作るという よりは,たまたま参加したような中立的な態度の人々が経験を得られる状況を作 り出すことが効果的であることを示す.その際に,少数名に対象を絞り,彼らが 新たに連れてくる友人や彼らと同調的な行動を取っている人々を含めたグループ に対して,成功体験や失敗体験を得られる状況を作り出すことがより効果的であ ることを示唆する.

3.7.2 コミュニティ活動の一時的形成と崩壊

初期Attitude分布の構成や配置の差違や,行動の確率的なゆらぎに起因して,

3種類の定性的に異なる結果が生じる.第一の類型は,図3.5の活動形成が起こ る場合で示した,コミュニティ活動が安定的に形成される場合である.このとき,

2/3以上のエージェントが参加することで参加エージェントのCBは正となる,

そのためAttitudeが上昇し参加行動は起こりやすくなる.一方で,参加をしな

いエージェントは,不参加行動に対して正のCBがフィードバックされるため

Attitudeは下がり参加行動は起こりにくくなる.結果として集団はAttitudeが高

い群と低い群に二分される.第二の類型は,図3.5の活動形成が起こらない場合 で示した,コミュニティ活動が一時的に形成され,その後に崩壊する場合である.

このとき,1/3以上2/3未満のエージェントが参加するため参加者CBが0以下 となり参加エージェントのAttitudeは下がっていく.しかし,活動が成功するた

めEfficacyが上昇し,一時的に参加行動を維持させる.参加をしないエージェン

トは正のCBがフィードバックされるためAttitudeは下がり参加行動は起こりに くくなる.結果として集団全体のAttitudeが低くなり最終的に活動は崩壊する.

第三の類型は,参加エージェント数が初期の段階で0になる不形成の場合である.

このとき,CBや成功体験失敗体験といったコミュニティ活動からのフィードバッ クが生じないため,集団のAttitudeは初期分布が維持される.

図3.5右の活動形成が起こらないケースで示した,コミュニティ活動の一時的

形成と崩壊は,現実でもしばしば見られる.NPOなどの活動は,震災復興など の社会的な要請や補助金の重点的交付を理由に半ば流行的に立ち上がることがあ る.このような活動は,流行の間は,世間からの賞賛や注目に動機付けられて活 動が推進されるが,流行が終わると,目的とする成果を十分に出せていなかった り採算を取れる運営体制が確立できなかったりという理由で,多くの場合は消滅 する.さらに,そうして一時的に立ち上がった活動は,地域に根付いていた同種 の活動を崩壊させる場合がある.例えば,持ち回りなどのルールで成立していた 地域の互助的活動が,NPOができたことにより彼らに金銭を支払う形に代替さ れ,崩壊する場合である.このとき,従来の活動は失われ,場合によってはコミュ ニティ活動への参加を動機付けていた,価値観や社会規範も地域から失われる.

図3.5右のケースは,このようなコミュニティ活動の一時的な盛り上がりと崩壊,

地域全体の疲弊という状況をよく表現する.

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 71-74)