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エージェントモデル

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 63-67)

第 3 章 規範意識と自己効力感に駆動されたコミュニティ活動の形成と拡大 44

3.5 エージェント・ベース・モデル

3.5.2 エージェントモデル

Ajzen (1991)は,規範意識と自己効力感の影響を強く受ける状況での意思決定

モデルとして,計画的行動理論を提案している.そこで,計画的行動理論に基づ いたエージェントの設計を行う.図3.3はエージェントの意思決定過程の概略図で ある.計画的行動理論では態度,規範意識,自己効力感という三つの信念の重要 さが指摘されている.そこでエージェントは,三つの信念を表現する,Attitude,

Norm,Efficacyという内部変数を持つものとしてモデル化する.三つの信念がコ

ミュニティ活動への関与や社会的相互作用を通して形成される過程をモデル化す るために,エージェント集団はコミュニティタスクゲームに繰り返し取り組む.

図 3.3: エージェントモデルの概略 ここでt回目のゲームをstep tと呼ぶ.

意思決定過程

態度は,主体が持つ当該行為に対する好みや結果への合理的期待に基づいて 形成される信念である.コミュニティ活動への参加を肯定的に評価しているのか 否定的に評価しているのかを表す.Attitude(エージェントiのstep tにおける AttitudeをAtiで表す)は0から1の実数でモデル化し,0は参加に対して否定的,

1は肯定的であることを表すことにする.自己効力感は,当該行為を完遂する能力 が自身にあるかについての認識である.コミュニティ活動へ参加したとして,自 分がそれをやり遂げられるだろうかという自信の高低を表す.Efficacy(Eit)は-1 から1の実数でモデル化し,-1は活動をやり遂げる自信が低いこと,1は自信が 高いことを表す.

参加に対して強い肯定的態度や否定的態度を持つ者は,自己効力感の高低にか かわらず自身の信念に従った行動を取るだろう.一方で,弱い肯定的態度や否定 的態度である者ほど,自己効力感が高ければ参加をしやすく,自己効力感が低け れば参加をしにくいというように行動が変化すると考えられる.つまり,態度が 中立的に近い者ほど,自己効力感の高低が意思決定に強い影響を及ぼすと考えら れる.以上の態度と自己効力感の関係を表現し,AtiとEitは(式3.1)(式3.2)に

従い内的動機(IMit)を形成するものとしてモデル化する.

IMit =AtiXit (3.1)

Xit=

1

αEit+1, Eit ≥0

α(−Eit) + 1, Eit <0 (3.2) ここで,自己効力感が持つ影響力の強さがパラメータαにより表現される.本論 では標準的な状況として,自己効力感が態度と同等程度の影響力を持つ場合を考 える.具体的には,態度が完全に中立的であるとき(Ati=0.5)に,自己効力感が態 度と同じ程度の影響力を持つ場合を考え,α を2と設定する.このときEit= 0.5 でIMitはおよそ0.75,Eit=−0.5でおよそ0.25となる.

規範意識は,当該行動が社会的に望ましいのかについての主観的認識である.

コミュニティ活動へ参加すれば社会的に高く評価されるだろうと考えていれば肯 定的な規範意識を持つことを意味し,コミュニティ活動へ参加すれば社会的に非 難されるだろうと考えていれば否定的な規範意識を持つことを意味する.そこで,

Norm(Nit)は0から1の実数としてモデル化し,0は参加が社会的に望ましくな いと否定的に認識している状態,1は望ましいと肯定的に認識している状態を表 すことにする.

自身の価値観や経験に基づいて形成される態度や自己効力感は,行動を内発的 に動機付ける内的動機である.周囲の状況から強く影響を受けて形成される規範 意識は,行動を外発的に動機付ける外的動機である.内的動機が参加を動機付け るときは,基本的には参加行動が引き起こされ,規範意識が不参加を強く動機付 ける場合にのみ不参加行動が起こるはずである.内的動機が不参加を動機付ける ときも同様だろう.この内的動機(IMit)と規範意識(Nit)の関係を単純にモデル 化するならば,(1−Nit)≤IMit の場合にのみ参加行動が起こる,というものにな る.しかし,本論で明示的に扱う,態度,自己効力感,規範意識以外の要因の影 響も考慮する必要がある.特に,内的動機と外的動機である規範意識が拮抗する とき,その他の要因の影響が顕在化すると考えられる.その影響を考慮して,内 的動機と規範意識の関係をモデル化したのが(式3.3)である.

Iit= 1

1 + e(1/β)((1Nit)IMit) (3.3) ここで,Iitは行動意図である.その他の要因が行動に及ぼす影響は,行動の確率的 なゆらぎとしてモデル化される.パラメータβは,行動の確率的なゆらぎの程度を

表す.標準的な状況として,内的動機と規範意識が−0.1<(1−Nit)−IMit <+0.1 の範囲で拮抗するとき,三つの信念以外の要因からの影響が行動に現れる場合を 考える.すなわち,この範囲にあるとき,その他の要因に起因する不確実な行動 が統計的に有意なほど(5%以上の確率で)現れる場合を考え,βを1/30と設定 する.

Iitを行動確率とした,(式3.4)に従い各エージェントは参加の意思決定を行う.

参加数が集団全体の1/3を超えれば(式3.5)に従いタスクは成功する.

Pt={i|i∈L, Iit >rand(0,1)} (3.4) taskt =

success, |Pt|/|L|≥1/3

failure, |Pt|/|L|<1/3 (3.5) ここで,rand(0,1)は0から1の一様乱数(0以上1未満)である.Ptはstep t における参加エージェント集合であり,Lは全エージェント集合である.taskt は steptにおいて活動が成功し公益が供給されたか(success)失敗したか(failure)を 表す.

態度・自己効力感・規範意識の形成

各エージェントはタスクの結果から報酬を得る.報酬(CBit で表す)は表3.1 に従いCostとBenefitの和として計算される.Attitudeは報酬に基づき,単純な 強化学習(Bush and Mosteller, 1955)で形成されるものとしてモデル化する.step tでのゲームの結果に基づき参加者は(式3.6)に,非参加者は(式3.7)に従い Atiを更新する.パラメータδはAtiの変化のしやすさ表す.

At+1i =

Ati +δCBit(1−Ati), (CBit ≥0)∧(iparticipate at stept)

Ati +δCBitAti, (CBit <0)∧(iparticipate at stept) (3.6)

At+1i =

Ati−δCBitAti, (CBit ≥0)∧(inot participate at stept)

Ati−δCBit(1−Ati), (CBit <0)∧(inot participate at stept) (3.7) Bandura (1997)によれば,Efficacyは強い自信を持つ,あるいは全く自信を失っ た状態からは変化しにくく,中立的状態からは変化しやすい.これを踏まえ,参

加者のEfficacyは,活動における成功体験と失敗体験の影響を受け(式3.8)に

従い形成されるものとしてモデル化する.パラメータγはEitの形成のされやす さを表す.

Eit+1 =

Eit+γ{1−(Eit)2}, taskt = success

Eit−γ{1−(Eit)2}, taskt = failure (3.8) Norm は,隣接する8エージェントの行動(それぞれの行動をNBijt で表す)を 観察することを通して形成される.8エージェントのうちで参加行動をとった者 の割合から集団の規範を推察して,規範意識を形成するものとしてモデル化し,

(式3.9)(式3.10)に従いNitを更新する.パラメータϵは周囲の行動への追従の しやすさを表す.

Nit+1

%

jNBijt

8 + (1−ϵ)Nit (3.9)

NBijt =

1,neighborj participate at stept

0,neighborj not participate at stept (3.10)

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