• 検索結果がありません。

−103−

庁に行った勧告、それを受け各省庁が打ち出した政策・

事業に関する資料をもってきていただいたので今回は政 策評価をするプロセスで考えたこと、苦労したことなど を話していただく。その後に、意見交換としたい。

※政策評価報告書については、以下のサイト参照

「児童虐待の防止等に関する政策評価書(24年1月)」

(http://www.soumu.go.jp/main_content/000142669.pdf)

「児童虐待の防止等に関する意識等調査結果報告書(22年12月)

(http://www.soumu.go.jp/main_content/000094684.pdf)

○山羽氏の話

〈児童虐待を取り上げた理由〉

・先行してDV防止についての政策評価(21年5月)が行わ れた。それに関連付けてシリーズ化するということで児 童虐待を扱うことになった。虐待防止法の見直しは約10 年で2回ほど行われたが、虐待問題がなくなることはな い。何らかの対応不足があるのではということで、政策 評価で取り上げることが決まった。

〈総務省が行う政策評価〉

・各省庁内の政策評価は政策評価法で定められている。総務 省の政策評価は、複数省庁にまたがる政策について、統一 性、総合性確保のための横断的な評価。省庁内での評価 は甘くなりやすいため、客観性担保評価というものもある。

〈有識者による研究会〉

政策評価の設計から取りまとめに至るまで、全体を通し て、有識者7名から成る研究会を行った。最終的に残った 評価の観点は、有効性、費用対効果の二つの観点。

【政策評価設計段階】

〈事前に行ったこと〉

①4か月かけて各省庁にヒアリングし、児童虐待の防止等 に関する各省庁の各政策(施策・事業)の体系化を行った。

厚生労働省は関係する政策が比較的まとまっていたが、

他省庁の場合は当事者意識に欠け、専門でやっていなかっ たため関係する政策がまとまっておらず体系化する上で 苦労した。虐待防止法に基づいて、[発生予防][早期発見]

[早期対応から保護・支援]というステージにわたって各 省庁の政策を一覧にまとめた。また、3つのステージに 共通するものとして、関係機関との連携(要対協の実施 状況)も位置付けた。

②今回は26都道府県の実地調査を行ったが、設計書の点検 という意味で水戸市でテスト調査を行い(22年1月、2 月)、設計書にゴーサインが出たところで、現場の実地調 査に入った。

〈評価基準設定の難しさ〉

・評価の観点・基準の設定が難しかった。

【現場の実地調査段階】

〈調査対象について〉

・児相、市区町村における個別案件の処理状況を把握する とともに、それを支える行政機関の体制について調査。

・体制的な問題を把握するために、児童福祉司、市区町村、

教職員などに対して意識等調査を行った(22年12月)。こ れは児童虐待防止の取組が現場からみて有効かというこ との調査。意識等調査の結果、実地調査結果のとりまと めに入った。

〈調査段階で苦労したこと〉

・政策の大枠は厚労省がつくっているが、実際の事務は自 治事務なので、総務省の調査権限に基づくものではなく、

飽くまで自治体の協力を得ながらの調査であったため限 界があった。現に一部の自治体には抵抗にあった。

・個別案件の処理状況については、プライバシーの問題も ありデータを提供してもらうことは難しかった。また、

データが整理できていない自治体もあった。

〈調査方法について〉

・各児相長に、調査票に書き入れてもらうという形をとった。

・具体的な案件について、児相、市区町村だけでなく、保 育所、学校などにもヒアリングを行った。学校には、問 題となった案件についてどう対応したかを調査。その案 件を児相が最終的にいつ受けたのか、どう対応したのか なども調査。さらに、そういった学校や保育所などで把 握した個別案件について、再度児相や市区町村に聞くこ とで連続性のある調査を行った。

【結果の取りまとめ】

〈取りまとめ段階で苦労したこと〉

・データについては、自治体によっては整理できていない ところもあり、まちまちであったため、取りまとめでは 苦労した。

・調査票の回収は早く終わり、回答率も良かったが、取り まとめに当たって議論が重なり、1年近く掛かった。

〈明らかになった課題〉

・学校や保育所で調査を行い、再度児相、市区町村に調査 した結果明らかになったのが、学校や保育所において問 題が深刻なレベルになるまで抱えていたということ。保 護者との関係で、学校や保育所が児相や市町村に通報で きない例があった。

〈政策目標がないこと〉

・取りまとめ段階で最も議論になったのは、政策目標がな いこと。政策目標が政府によって立てられていないと、

その目標がどの程度達成できているかなど客観的な判断 ができない。児童虐待は明確な目標を立てられない問題 なのかもしれないが、今回は目標が立てられていない状 況で最終結論を出すのが厳しかった。

〈政策評価の結論〉

・結論として、最終目標はないが、各政策について、パーフェ クトではないにしろ一定の評価ができるとした。しかし、

底上げするには改善を要するところはあると、何点か勧 告を行った。

〈政策評価をして分かったこと〉

−104−

業の中で行っているということ。これだけ児童虐待が騒 がれているので、児童虐待を主眼にした事業が立てられ ているだろうという思い込みがあったが、実際は児童虐 待専門の事業がなかった。「こんにちは赤ちゃん事業」も 実は様々な目的で行われていることが分かった。部分的 には児童福祉法で対応しているということもあり意外 だった。他省庁においては、既存の施策・事業の中で児 童虐待に対応している度合いが更に強かった。各省庁の 各政策の体系化を行った際に、法務省も文科省も、児童 虐待がメインではないが、広い意味で児童虐待につなが る施策・事業として出してきた。

・法務省の啓発などは、期間を掛けて初めて効果が見えて くるものなので、今回は直接的に効果を把握できなかった。

・文科省の家庭教育については、事業仕分けでストップし ている状態だったため、その効果も明確には評価できな かった。

・当時は、厚生労働省以外の省庁は児童虐待に対する当事 者意識が薄いのではないかという印象だったが、勧告後、

文科省には変化が出てきたという印象がある。

〈勧告後の報告システムについて〉

・総務省が行った政策評価については、勧告後、評価結果 の関係政策への反映状況を国会に報告することになって いる(当日資料P7~)。勧告してから半年後にその後の 改善状況を勧告先の省庁に回答してもらい、それを踏ま えて更に1年後に第2回目の回答をもらう。政策評価に ついては、1回目の回答と2回目の回答の間に国会に報 告するというシステム。24年1月の勧告後、同年9月に 第1回の回答を厚労省、文科省からもらっている。その後、

国会報告するために、25年3月の段階で追加の改善事項 を厚労省、文科省に出してもらい、それを取りまとめて 同年6月国会に「政策評価の結果及びこれらの政策への 反映状況」ということで報告している。

(http://www.soumu.go.jp/main_content/000232394.pdf)

〈勧告後の各省庁の動き〉

・勧告後の政策への反映状況は以下のとおり。

・厚労省は、都道府県に対して乳児家庭全戸訪問事業及び 養育支援訪問事業を実施していない市町村への事業実施 の働きかけを要請した。また乳児家庭全戸訪問事業で訪 問できなかった家庭に対しては、訪問できなかった理由・

背景を調べて今後の支援や見守りの検討につなげるよう 依頼した。

・文科省は、24年3月に、「家庭教育支援の推進に関する検 討委員会」が親の育ちを応援する学習プログラムの充実、

親子と地域のつながりをつくる取組の推進、支援のネッ トワークをつくる体制づくりに関する方策を提言してお り、これを受けて24年11月に全国家庭教育支援研究協議 会を開催した。協議の成果として、地域人材によるアウ トリーチ支援が有効であること、また子どもの成長や発 達を理解するための親支援プログラムの提供が有効であ ること等が確認された。そのときの分科会の様子をDVD にして教育委員会に出している。また、「家庭教育支援チー ム」型の支援の推進、体験型ワークショップ形式の学習

を補助事業により行っている。加えて、中高生など将来 親になる世代に乳幼児と触れあう機会を提供するなどの 取組を行っている。文科省も児童虐待の発生予防に対し て、少し前向きに取組始めたという印象。

〈今回の政策評価で盛り込めなかった要素〉

・3歳児以降や被虐待児が多い小・中学校年齢層に対する 効果的な事業がない点。厚労省には3歳児以上や小中学 生を対象とした効果的な事業がないが、文科省のスクー ルカウンセラーやスクールソーシャルワーカーだけで十 分かという検証ができなかった。

・18歳以上の施設退所者に対する自立支援の実態。施設を 出た後の住居の確保、進学や就業への支援など。当初の 基本設計のときには入っていたが最終的にカットしてし まった。

・早期発見における医療機関との連携。データが少なかっ たため、深く掘り下げた検証ができなかった。

・乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業の実施と発生 予防の明確な相関関係。統計処理をするときに、他の要 因も入ってしまう。死亡事例の検証で明らかになった、

保護者の精神疾患、妊娠の届出が出されていないなどの リスク要因と、実際の児童虐待発生件数との関係を統計 的にみようとしたが、なかなか有効な数字が出なかった。

最終的に重回帰分析をしようとしたのが、3歳児健診受 診率、養育手帳発行、身障者手帳発行、双子、保護者の 年齢別の出生割合などだったが、結局有意性は出なかっ た。最終的には、文科省の事業、厚労省の3事業との相 関関係でしか出せなかった。ただそうするとサンプル数 が減っていくというジレンマがあった。

・児童福祉司の体制整備。充実させれば児相の業務がかな り改善されると思うが、予算を増やせという勧告は、行 政改革に取り組んでいる総務省の性質上しにくい。

○今後の制度全体を考える上での方向性についての意見

・保護者指導プログラムの開発。民間では開発されてきて いるようだが、厚労省でも是非やってもらいたい。保護 者指導プログラムの開発と保護実施機関への提供状況、

各機関の活用状況を明らかにし、これらの施策を推進し ていく必要がある。

・里親制度の改革。厚労省は、里親委託が進んでいない実 態を把握していなかった。

・児童福祉司の有効な負担軽減方策の開発・推進。このよ うな取組がもう少し必要なのではないか。

・政策体系の明確化とこれを強力に推進する組織体制の構 築。厚労省の児童虐待の担当者は5、6名程度であり、こ のような体制では関係政策の強力な推進は難しい。内閣 府は、部分的な啓発やとりまとめはするが、関係政策全 体を推進する組織ではない。内閣官房であれば、関係政 策を強力に推進する組織体制を構築できるかもしれない。

○意見交換

〈政策評価の対象として決めた経過〉

・各省庁が児童虐待の防止等に関する政策として挙げたも ののうち、多少なりとも効果がありそうな施策・事業を