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Ⅱ . 研究結果

3. その他の動向

1)FTDM(FamilyTeamDecision-Making)

・親族、友人、家族などといったインフォーマル資源や保護者や子どもも含めた専門職との合同会議 を意味する。意思決定過程への当事者の参画効果に基づき積極的に活用されている。

・こうした会議の実施によりインフォーマル資源の有効活用、インフォーマル支援体制の創造と社会 的支援の促進がなされ、親族への子どもの委託も促されている。

・当事者参画を促す上で会議の招集準備や当日の司会を行うファシリテーターの質に大きく依存する 面がある。

・当事者だけでの話し合いを行わないFTDMはそうした話し合いを行うFamily・ Group・ Conferenceよ り効率的であるという認識がもたれている。

・ワシントン州では裁判においてFTDMの実施について問われることが多く、他州に比較してFTDM の実施が定着している傾向にある。近年は話し合う枠組みがより具体化したSolution・Based・Casework を活用しており、FTDMからSBC会議と言われるようになってきている。

2)CASA(CourtAppointedSpecialAdvocates)

・アメリカの基本的システムとその意義

アメリカでは日本と異なり、虐待に対応する児童保護機関による実践過程がいわば裁判所により審 査される仕組みとなっている。子どもを中心として裁判の手続きにおいて親と福祉機関は対等な訴訟 当事者として位置付けられる。親には弁護士が付き、調査権限をもつ州の児童保護機関との力の不均 衡が補われている。子どもにも付き添い弁護人(GAL=Gurdian・ ad・ litem)や弁護士が付けられる。

ワシントン州では12歳以下の子どもにはCASAのみが付き添い、13歳以上には弁護士のみが配置され る。一方カリフォルニア州ではCASAが活用されておらず、基本弁護士が子どもの代理を務めている。

しかし49州でCASAが何らかの形で子どもの代理として活用されている。また、親や子どもあるいは そのインフォーマルな支援者が集い子どもの養育計画の作成に参画する過程においてFTDMが活用さ れ、意思決定過程への当事者参画が保障されている。

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え、各々の立場の利益を考慮しながら、援助が遂行される仕組みとなっている。こうしたあり方の意 義としては、①親は期限内での状況の改善に向けより積極的に対応する意識を高めること、②福祉機 関として一定の期限のなかで、援助計画を確実に実行することが求められることがあげられ、親にとっ ても福祉機関にとっても各々責任主体として厳格な対応が求められる。アメリカではパーマネンシー 保障の原則に基づき、援助方針の優先順位が明確である。したがって裁判においても、この優先順位 に基づき、不必要な分離がなされていないか、あるいは親分離後家族の再統合に向け、適切な努力が なされているかが審査される。

日本では子どもの独立性を担保するという視点への認識は希薄である。また当事者の意思決定参画 に関しても、リスク管理を目的とした専門職主導の過程が優先され、当事者の参画を促す実践まで関 与できない実情がある。こうした問題意識に基づき、近年の動向やCASA,FTDMを取り上げ評価する ことを今後の研究目的としたいと考えている。

・ワシントン州におけるCASA

先に述べたようにワシントン州では、児童保護手続きにおける子ども付き添い弁護人(訴訟後見人)

(Gurdian・ ad・ litem=GAL)として12歳以下の場合、CASA(Court・ Appointed・ Special・ Adovocates)

が付けられ、13歳以上は弁護士が付けられる。前者は子どもの利益を代理し、後者は子どもの意思を 代理すると捉えられている。CASAは一般市民が一定の研修を受けたボランティアによってなされて いる。CASAにはあらゆる個人情報にアクセスする権利が認められている一方で、弁護士に関しては それが極めて限定されている。たとえば後者の場合、個人名の記述箇所は全て隠され、児童本人以外 に関する情報は入手できないし、情報はつねにその担当者を通して提供される。

基本的に州が子どもの利益を代表するとは考えられてはいない。行政機関には固有の利害関係があ り、子どもの利益がつねに優先されるわけではない。CASAはそうした状況を統制する役割も与えら れている。CASAの意義について整理すると、以下のようになる。

役割~子どもの利益についての評価、子どもの意思決定過程への参画の保障、子どもの安全確認→州 活動の監視(cp.イギリスのindependent・advocate)

導入背景~不必要な親子分離、フォスターケアの長期化1977年シアトルにCASAが設立され、全米49 州(2011)約75,000人のボランティアが240,000人の子どもに提供されている。

意義~当初から子どもに一貫したかかわりをもつことで、子どもにとって重要な支援者として機能す る傾向にある。専門職が見過ごしがちの子どもの内面について深く理解し、専門職にアドバイスでき る。複数の子どもを担当する専門職より、一人の子どもに寄り添うことができる訓練されたボランティ アの方が効果的であると評価されている。

課題~研修時間数が十分ではなく専門性を有して主観を排除して適切に発言できる者が相対的に少な く、熱意が先行する者が多い。

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文献

原田綾子(2008)『虐待大国アメリカの苦闘』ミネルヴァ書房

Lawson,J.,Berrick,J.,・and・Maynard,B.,(2013)Court・Appointed・Special・Adovocates・as・an・Intervention・for・Improving・

Key・Child・Welfare・Case・Outcomes:A・Systematic・Review,The・Campbell・Collaboration

Myers,John,E.B.,(2006)Child・Protection・in・America:Past,present,and・Future,Oxford・University・Press.(=庄司順一他 訳(2011)『アメリカの子ども保護の歴史』明石書店)

山口亮子(2006)「アメリカにおける子どもの代理人制度」『判例タイムズ』1208号、33-39

謝辞

・本資料の作成に辺り粟津美穂氏(International・ Foster・ Care・ Alliance)の多大なるご協力を得た。

心より感謝申し上げる。

(文責:林 浩康)

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1)ThreeCorePracticeModelsinWashingtonStateワシントン州の三つのアセスメント・モデル

M od el T he or y/ M et ho do lo gy  

B ac kg ro un d/ C om m en ts  

R es ou rc e 

a) S ol ut io n B as ed C as ew or k ( S B C )

1)・Family・Development・Theory・(Carter・and・ McGoldrick) 2)・Cognitive・Behavioral・Theory(CBT)/Relapse・ Prevention(再発予防) 3)・Solution・Focused・Theory 1)家族とのパートナーシップの確立; 2)家族の毎日の生活と、子どもと親の発達段階/ 課題を基礎にしたアセスメントとケースワーク; 3)家族全体の、また、個々の家族メンバーの別々 のスキル習得がこのモデルの重要点なので、ケース プランをすべて「家族プランFLO*」と「個人プラン ILO**」に分別する。(:家族がSWの助けをかりて 家の中の整理整頓=FLO、母親は飲酒のリラプスを 防ぐための対策をたて、実行=ILO。)

●ストレングスベーストのプログラム (EBP***) ●ワシントン州(以下WA)では、2010年から2011年 に導入。 ●チルドレンズ・アドミニストレーション(以下CA・ 州の児相の監督機関)が,モデル導入のためにコー チングチームを結成。すべてのソーシャルワーカー (以下SW)がトレーニングを受けモデル実践。 ●モデル実践に関する専門家の評価は良好。(虐待や ネグレクトの再発防止、ウェルビーイングの向上な ど。)WAの実践への批判としては「コーチの登場に より、スーパーバイザーのエンパワーメント効果の 減退がみられる」などがある。 ●SWたちの意見「このモデルは今までの実践と較べ て目新しいことはあまりない。・法廷書類やケース ノートをFLOをILOの使用を徹底したモデル実践に 切り替えたことにより、実親へのサービスプランが 簡略・明確化された。」

ビデオ: ・http://vimeo.com/50313504 WA一般HP: ・ http://www.dshs.wa.gov/ca/about/pmS asp モデルの評価: ・ http://www.solutionbasedcasework.com wp-content/uploads/2013/10/Washing State-Implementation-Article.pdf

b) S af et y F ra m ew or k

1) リスクを判断する時、Safetyを最も重視する方 法を、ケースの始めから終わりまでつかうアセスメ ント法。;  2)  Present Danger Imminent Danger 「 3)・17・Safety・Threats・ 子どもの安全をおびやかす 「17の脅威」に基づいて、アセスメントを実施する。 4)・子どもの“安全状態”の査定を上記の方法でシ ステム化することにより、SWの・措置場所の判断を 迅速、的確なものにする。 5)アセスメントは、Gather,・Assess,・Analyze,・Plan の4つのステップをケースの開始から終了まで、一 貫しておこなう。

●これは、リスク・アセスメント・ツール ●WAでは、2011年から2012年に導入。 ●CAが,モデル導入のためにデータベースの一部を 改造。すべてのSWがコーチからトレーニングを受け モデル実践。2008年に導入されたEBPのリスクアセ スメントツール、Structured・Decision・Making・ (SDM)はそのまま活用し、その上にこのモデルをさ らに積みあげたかたちの2重構造にした。子どもの 措置の必要性を見極めるのに「安全性」だけに目を 向け、SW個人の偏見や潜入意識を極力排除しようと したモデル。 ●専門家の適切な評価がみつからないので、モデル の効果が不明。他の州でも使われているが、EBPで はない。モデルに対するSWの評価は人それぞれ。

WA資料:・ 1) 17・Threats: ・ http://www.dshs.wa.gov/pdf/ ca/17SafetyThreats.pdf 2)・Safety・Terms・and・Definitions http://www.dshs.wa.gov/pdf/ca/ SafetyFrameworkDefinitions.pdf パワーポイント: http://www.dshs.wa.gov/pdf/ca/ ChildSafetyFramework.pdf