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第Ⅱ章 デジタルコンテンツの制作環境調査

2 調査の結果

2.1 制作事業者のヒアリング調査

2年前のヒアリング先と同じ事業者にこの2年間の変化についてヒアリングを行った。ヒアリング は、ポストプロダクション2社(大規模・小規模)、アニメーション制作会社3社(大規模・中規模・

小規模)、CG制作会社2社(大規模・中規模)、VFX制作会社・アニメーション/CG制作会社それぞ れ1社の計9社に実施した。主なヒアリング内容を以下に示す。

(1)デジタルコンテンツ制作に関する設備の増強

・ソフトウエア、ハードウエアに関する設備の変化について

・スタッフの拡充や制作体制(人材配置、制作フロー)、教育体制の変化について

(2)デジタル化に伴う環境の変化

・入稿データ、納品データの変化について

・受注、発注元の業種などの変化について

(3)業界についての予測

・今後の業界の見通し、対応予定について

・その他、現状の問題点、対応が必要な点について

ヒアリング結果は、2年前のヒアリング概要を追加し、現在の状態・今後の対応と業界に対するデ ジタル化への意見にまとめ、整理した。

なお、ヒアリングした内容は、対象者の職務(管理職・技術職)や業務内容、関わった作品などで意 見が異なることもあり、各社、各業種を代表する意見ではないことを付記しておく。

2.1.1 ポストプロダクション A社

業種と規模

大規模ポストプロダクション 資本金:5億円未満

大手のポストプロダクションで、設備はあらゆるものが揃っている。

CM・アニメ・イベント展示映像・DVDパッケージ用マスタ制作等多岐に渡る業務をこなし、

デジタルシネマやアニメーションの専門部署もある。

2年前の状況

HD化はアナログの 80 年代から積極的に取り組んでおり、今後もその方向性は変わる事はな いという。HDの受注割合はSDに比べ全体の1/3程度であった。

各プロダクションのポスプロにおけるHD制作費の認識はいろいろで、コスト高に理解をしめ す会社もあれば、SD と同料金でいいのではないかと考える会社もあり意識はまちまちであっ た。

現在の状況

現在ではSDとHDの境がなくなっていると感じる。

・SDのみのノンリニア編集室は2部屋

・HD&SDのノンリニア編集室は11部屋 HD編集は増えてはいるがSD編集もまだある。

扱う素材としては 6:4くらいでHDが多く、納品は番組についてはほぼ100%、CMについ ては2:8くらいでSDの方が多い。

パッケージの中でもブルーレイが増えてきている。

CMの場合、仕上げはまだSDが多いが、フィルムのテレシネはHDで行われる事が多く、デ ジタル撮影やCG素材もHDが多くなってきている。

今後の対応

機材は今後も最新のものを揃えておく必要があるが、低価格な機材でも高価な機材と同じ品質 のものができるようになっているので生き残るための方法を模索しなければならない。

そのためにも、編集者はある特定の機種に特化するよりもマルチな知識をもっていろいろでき るようになっていく必要がある。

劇場用映画は、現在ではまだ最終的にフィルムになっているが、デジタルスクリーンも 100 を超えており、コンサート・ライブ・スポーツなどの分野でのデジタル上映も含めて多くなっ ていくと思われる。

ブラウン管のない現在では、HD基準となるマスターモニターは各メーカーの開発に期待して いる。

その他意見

HDは運用コストや作業時間がかかるため、HDは損をしている感じがある。

インフェルノは、LINXベースだが、専用ストレージやグラフィックボードが高い。

しかし、HDDの価格などはだいぶ安くなった。

FinalCutの編集室もあるが、安価なFinalCutと高価なインフェルノで作成した映像は最終的

に同じ品質となる可能性がある。

アナログであれば安価な機材と高価な機材の差がなくなるような事はなかったが、このデジタ ルゆえの問題点は、今後ポスプロというビジネスモデルに影響を及ぼす事になるかもしれな い。

また、編集機材の低価格化は別の問題を引き起こす場合がある。

デジタル機材を良く理解している演出家であれば問題は少ないが、事前編集をして持ち込まれ るデータなどが特定の環境下でしか使えないなどの事例があった。

また、ウイルス感染の心配もあるため、AVID/FinalCutなどの手軽な編集室はセキュリティ のためにネットワークに接続をしていないスタンドアローン環境になっている。

その他、メールや FTP で送られてくる素材データも一旦安全なメディアに移してから編集機 材にかけており面倒が多い。

他の機材もフロア毎に分断した構造でネットワーク化して、万が一被害が出ても最小になるよ うに工夫している。

ビジネスモデルとして、ポスプロは時間単価だけと思われがちだが、CM/アニメ/映画など 業種により請け方を柔軟に変更している。

アニメは差し換えが多く、グロス請けが適している。

また、機材の空き状況をみて編集する場合などはディスカウントを行っている。

昨年10月以降、CMの案件は1~2割落ち込んでいる。

不況の煽りから予算制限のため、広告メディアとして WEB に流れているのではないだろう か?

人材教育は、職場巡回で行っている。アニメは作品に対する理解力と体力のある若者を配置し ている。作業時間を特定することが難しい面もあり、労務管理を厳格にできないなどの悩みが あるのも事実である。

2.1.2 ポストプロダクション B社

業種と規模

小規模ポストプロダクション 資本金:1,210万円 社員数:10名以下 行政・企業などのイベントや販促用ビデオの制作業務などを手がける。

内部に3D制作チームを持ち、ポストプロダクションとしての付加価値をもつ。

2年前の状況

MacG5 HDD2TB FinalCut / Shake / After Effects を組み替えて作業をする。

SD作業が中心であり、映像業界全体のHD化へのシフトと技術の進歩を見て機材投資を考え ている。

HD制作が増えてくるとディスク容量が増えるので、SDより高い予算が必要と考える。

ビデオ制作のタイトルやちょっとした演出を加えるためにCG制作も行っており、ディレクシ ョンを含めた業務として利便性を図っている。

現在の状況

1年に1回のペースでMacG5からIntelMac(XEON×4デュアル)へと機材を入れ替えた。

B社は企業の販促やイベント用DVD制作が業務の中心にあり、一般家庭にブルーレイがまだ 多く普及しない現在では、必然的に最終納品形態もSDのDVDとなる。

主な作業ツールはMac上で動作する『FinalCutPro』である。

納品はSD(DVD)でも、撮影素材などはHDのものが多くなっているという。

以前はVHS納品などもまだあったが、現在ではほぼなくなった。

一般家庭での映像記録メディアがVHSテープからDVDに完全移行した為と思われる。

今後の対応

素材はHD化しているため、CPUもHDDも足りなくなる傾向にある。

Apple社のソリューションの上でビジネスを行っているので、Apple社の製品リリースや対応

に会社の成長がかかわっているため、注目している。

事業拡張は良い人材の確保、育成にかかっている。

その他意見

CM 制作会社から同じ素材を使った VPを依頼される事が多かったが、WEB制作を本業とし ている会社のビデオ制作部門から依頼される事も多くなった。

広告代理店も、CMにWEBを最初から組み込み、WEB制作会社がCMを作るケースがある。

オンエアでなく代理店を通さないケースなど、構造変化が一部では起こっているのではないか と感じる。

HD 素材がテープでなくなり、メモリや CPUが速くなれば、リニア編集室よりも小さなスタ ジオが多くなる方が、放送も利便性が高くなるのではないか思う。

ポスプロも、どういう機材を持っているかではなく、編集者の技量やセンスですみ分けされる 時代になると思う。

編集者は、ひとつの機材を極めた者でなくPCやCGがわかる人間を教育した方が良いのでは ないかと思う。しかし、センスがあるかどうか潜在的な能力は最初からわかるわけではなく、

CGをやる人は編集に興味を示さない傾向にあるように思われる。

教育機関で編集作業を教えても良いのではないかと考える。

2.1.3 アニメーション制作会社 C社

業種と規模

大規模アニメーション制作会社 年商:200億 社員数:300~500名

国内最大手のアニメーション制作会社で、関連する海外事業所やMAスタジオ会社を持つ。

2年前の状況

2001年からHD作品を制作しているが、この年は2本のテレビシリーズをHDで制作してい る。他のSD作品も16:9のワイド画面に移行しつつある。

PCは100台以上あり、背景、演出、撮影、3Dなどの部署がある。

ツールとして『RETAS!PRO』を基本的に使用しているが、合成は『After Effects』を主に使 用している。背景は紙に描いて『Photoshop』でデジタル処理する事が多い。

3DCGはツールとして基本的に『MAYA』を使用している。

すべての工程はデジタル化されているが、映画作品は最終的にフィルムレコーディングをして いる。

現在の状況

HD化作品は、4月より帯番組が1本増え3本となるが、C社で扱う他の作品はSDサイズで あり、2年で大きく動いてはいない。

その他のSD作品だが、16:9の画面サイズで制作しており、4:3の画面サイズは現在では制 作していない。

HDで制作する作品は作画用紙を少し大きくしている。

CELSYS 社の製品『STYLOS』を使い、タブレットを用いてベクトル入力で作画している作

品が昨年1ラインあった。

デジタル機材は日々入れ替えが必要となる。

HD-CAMで始めた作品も現在では。HD-SRへの切り替えを完了している。

特に3DCG関係のソフトウエアの入れ替えは多い。

今後の対応

立体アニメ映画の企画などもあがっているが、制作のためにはコンピュータの負荷はかなり高 いだろう。

HDはコストの問題があるが現在では十分に対応できる。

CGを充実させる方向にあるが、人材の確保・機材の充実・外注先の確保が必須となる。

クリエイター養成機関を運営しているが、2年制なのでアニメータとして生活できるだけの力 量を育てる事は無理であろう。