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コンテンツ産業のもたらす経済波及効果の分析

第Ⅰ章 コンテンツ産業の市場規模と構造変化

5 コンテンツ産業のもたらす経済波及効果の分析

5.1 調査研究の目的

近年のコンテンツ産業では、テレビ・映画・音楽・ゲーム・書籍を組み合わせたクロスメディアがビ ジネスの主流となりつつある。そして、ブロードバンドや携帯電話の普及を背景としたインターネット 配信も含め、コンテンツの流通チャネルも多様化してきている。また、映画やアニメの登場キャラクタ ーが玩具化されたり、洋服にプリントされたり、食品パッケージに利用されたりといったように、コン テンツ産業以外の各産業に新たな付加価値をもたらしている。

本調査研究では、コンテンツ産業が生み出した商品やサービスがコンテンツ産業以外の各産業に新た な付加価値をもたらす経済波及効果を定性的・定量的に解明することを目的としている。この分析によ り、コンテンツ産業の今後の成長と発展の可能性を示唆することを目指している。

5.2 先行研究例

コンテンツがもたらす付加価値の流れについての先行研究としては、総務省の「平成 17 年情報通信 産業連関表」(平成19年3月)と総務省情報通信政策研究所の「メディア・ソフトの制作及び流通の実 態」(平成20年7月)が、コンテンツ産業を全体的にとらえた事例として挙げられるが、近年、より詳 細な分析も見られるようになってきた。

人気コンテンツの多メディア展開の具体的事例を取り上げ、より詳細にコンテンツの制作・流通の実 態に迫った分析としては、木村[2007]13や木村[2008]14が挙げられる。クロスメディア的なコンテ ンツ展開の分析に重点が置かれているが、非コンテンツ産業が生み出すキャラクター商品も部分的に含 めて分析されている。

木村[2007]では、コンテンツが多メディアで展開された代表的な事例を取り上げながら、コンテン ツが原作から派生する過程を「M+3Sフリー特性」に基づいた「コンテンツ・エコシステム」という考 え方で整理している。

13 木村誠[2007]:「グッドウィルオーナーシップ戦略 コンテンツビジネスへのプラットフォーム理論の援 用」、経営情報学会『2007年春季全国研究発表大会予稿集』262~265ページ。

14 木村誠[2008]:「コンテンツビジネスのアーキテクチャー Windowing・Goodwill・慣性系」、財団法人 ハイライフ研究所『ハイライフ研究』Vol. 10 29~31ページ。

図表Ⅰ-44 多メディアでのコンテンツ展開の代表的な事例 コンテンツ・エコシステム事例名 原作型コンテンツ【メディア種類】 派生コンテンツ【メディア種類】 「ポケットモンスターアドバンスジェネレ ーション(ポケモンAG)」(2002~2005)

【ゲームソフト】「ポケットモンスター ルビ ー・サファイヤ」「ポケットモンスター ファ イアレッド・リーフグリーン」「ポケットモン スター エメラルド」 (パッケージ商品とし ての販売)

派生コンテンツ1 【テレビ放送】 アニメ番組「ポケットモンスターアドバンスジェネレーション」 (放映中) ⇒テレビアニメ用シナリオ(ストーリー変化) ⇒テレビアニメ用キャラクターデザイン(ス タイル変化) 派生コンテンツ2 【幻のポケモンをプレイするためのデジタルデータ】 「むげんのチケット」 幻のポケモン 「ジラーチ」 「しんぴのチケット」 ポケモン「ニャース」 幻のポケモン「ミュウ」「ふるび たかいず」 ⇒ビデオゲームのプレイ時における分岐(ストーリー変化) ⇒無線による データ配信(メディア変化) 派生コンテンツ3 【劇場映画】 「劇場版ポケットモンスターアドバンスジェネレーション 七夜の願い星ジラ ーチ・おどるポケモンひみつ基地」 「劇場版ポケットモンスターアドバンスジェネレーショ ン 裂空の訪問者 デオキシス」 「ポケモン3Dアドベンチャーミュウを探せ!」 「劇場 版ポケットモンスターアドバンスジェネレーション ミュウと波導の勇者ルカリオ」 ⇒映画 用シナリオ(ストーリー変化) ⇒映画用キャラクターデザイン(スタイル変化) 派生コンテンツ4 【ライブ・遊戯施設】 「ポケモンフェスティバル(ポケフェス)2003」 「ポケモンフェスティ バル(ポケフェス)2004」 「ポケモンフェスティバル(ポケフェス)2005」 ⇒アトラクション 用キャラクター縮尺調整(スケール変化) ⇒公演用シナリオ(ストーリー変化)

コンテンツ・エコシステム事例名 原作型コンテンツ【メディア種類】 派生コンテンツ【メディア種類】 「機動戦士ガンダムSEED」(2002~ 2003)

【テレビ放送】 アニメ番組「機動戦士ガン ダムSEED」全50話

派生コンテンツ1 【ブロードバンド配信】 「機動戦士ガンダムSEED」各話テレビ放送6時間後にNTTフ レッツIP閉網内配信(1週間のみ) 【DVD】 「機動戦士ガンダムSEED」各4話分収録DVD全13巻 ⇒テレビアニメのパッ ケージ商品・広帯域配信(メディア変化) 派生コンテンツ2 【プラモデル】 1/144スケールプラモデル各種 1/100スケールプラモデル各種 1/60 スケールプラモデル各種 ⇒各種プラモデル用縮尺調整(スケール変化) 派生コンテンツ3 【コミックス】7巻 【小説】2巻 【フォトストーリー】1巻 「公式外伝機動戦士ガンダムSEEDASTRAY」 ⇒小説・コミックス用シナリオ(ストーリ ー変化) ⇒小説・コミックス用キャラクターデザイン(スタイル変化) 派生コンテンツ4 【ライブ・催事】 「機動戦士ガンダムSEED FESTIVAL」(東京で1日2公演) ⇒アトラク ション用キャラクター・メカデザイン縮尺調整(スケール変化) ⇒公演用シナリオ(ストー リー変化)

コンテンツ・エコシステム事例名 原作型コンテンツ【メディア種類】 派生コンテンツ【メディア種類】 「戦闘妖精雪風」(2001~2005)【小説】 「戦闘妖精・雪風(改)」 「グッドラック戦闘 妖精・雪風」 (ハヤカワSFマガジン掲載)

派生コンテンツ1 【コミック】 「YUKIKAZE1戦闘妖精」 ⇒コミックス用シナリオ(ストーリー変化) ⇒コ ミックス用キャラクター・メカデザイン(スタイル変化) 派生コンテンツ2 【DVD】 オリジナルビデオアニメーション「戦闘妖精雪風」DVD全5巻⇒アニメ作品用 シナリオ(ストーリー変化) ⇒アニメ作品用キャラクター・メカデザイン(スタイル変化) 派生コンテンツ3 【ゲームソフト】 「戦闘妖精雪風~妖精の舞う空~」 (MicrosoftXbox専用) (Microsoft Windows専用) ⇒ゲーム作品用シナリオ(ストーリー変化) ⇒ゲーム作品 用キャラクター・メカデザイン(スタイル変化)。 派生コンテンツ4 「戦闘妖精・雪風解析マニュアル」「EMOTION PLUS 戦闘妖精雪風 FAF 航空戦史」 ⇒アニメ作品用シナリオの書籍化(メディア変化) ⇒アニメ作品用キャラクター・メカデ ザインの開設(スタイル変化)

コンテンツ・エコシステム事例名 原作型コンテンツ【メディア種類】 派生コンテンツ【メディア種類】 「鋼の錬金術師」(2001~2005)【コミック】 「鋼の錬金術師」(月刊少年ガンガン連 載) コミックス「鋼の錬金術師」12巻刊行

派生コンテンツ1 【ゲームソフト】 「鋼の錬金術師翔べない天使「鋼の錬金術師2赤きエリクシルの悪 魔」 「鋼の錬金術師ドリームカーニバル」 「鋼の錬金術師迷走の輪舞曲」 「鋼の錬金 術師想い出の奏鳴曲」 ⇒ゲーム作品用シナリオ(ストーリー変化) ⇒ゲーム作品用 キャラクター・メカデザイン(スタイル変化) 派生コンテンツ2 【小説】 小説「鋼の錬金術師」4巻刊行⇒小説用シナリオ(ストーリー変化)⇒小説 用キャラクターデザイン(スタイル変化) 派生コンテンツ3 【テレビ放送】 「鋼の錬金術師」全50話 【DVD】 「鋼の錬金術師」テレビ放送各4話分収録DVD 全13巻 【劇場映画】「劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」 ⇒テレビアニメ・映画用シ ナリオ(ストーリー変化)⇒テレビアニメ・映画用キャラクターデザイン(スタイル変化) ⇒テレビアニメ・映画のパッケージ商品(メディア変化) 派生コンテンツ4 【ライブ・催事】 スペシャルイベント「鋼の錬金術師FESTIVAL - Tales of another もう ひとつの物語-」(東京・大阪)⇒アトラクション用キャラクター縮尺調整(スケール変化) ⇒公演用シナリオ(ストーリー変化)

原作からコンテンツが派生するカギは、「M[メディア]+3S[スケール、スタイル、ストーリー]

フリー特性」にある。ライツビジネスはこうした特性を利用している。

„ メディアフリー特性:原作に適用されたメディアと異なるメディアに原作をそのまま展開する ことが可能な特性

„ スケールフリー特性:原作のキャラクターあるいはメカデザインが本来持ちうる寸法の伸縮お よび重量の増減が可能な特性

„ スタイルフリー特性:原作のキャラクターあるいはメカデザインが本来持ちうるプロポーショ ンの洗練化、誇張、変形、配色と彩度の変更が可能な特性

„ ストーリーフリー特性:原作のストーリーに基づいて、その過去や未来、あるいは異なる時空 間におけるストーリーの創作が可能な特性

こうした特性にしたがって、原作と派生コンテンツとの関連性を二次使用権(商品化権)とともに とらえると、図表Ⅰ-45のように分類・整理することができる。キャラクター商品等のコンテンツ 関連商品が派生的に生み出されている際には、原作型コンテンツを基準としたスケールフリー特性と スタイルフリー特性が重要となる。例としてプラモデルやアパレルが挙げられているが、実際にはこ のほかにも家庭用品やアクセサリー、文具等がキャラクター商品の主力となっており、スケールフリ ー特性とスタイルフリー特性に基づいた商品化はさまざまな展開が見られる。

図表Ⅰ-45 サービス別二次使用権

関連サービス

コントロールする 派生コンテンツの

M+3S 特性

原作型コンテンツと 派生コンテンツ間の関連性

関連する 主な二次使用権

メディア関連

サービス メディアフリー特性

原作型コンテンツをほぼ変えずに異なるメディア に記録・蓄積することで複数種類のメディア間に 関連性をもたせる(メディアの関連性)。

アナログメディアあるいはデジタルメディアを使用 として同じコンテンツを別商品として配給する。

例)Windowing の実現(映画興行→セル・レンタル DVD→テレビ放送→映像配信)

映画化権 ビデオ化権 テレビ化権 配信権

キャラクター関連 サービス

スケールフリー特性 スタイルフリー特性

原作型コンテンツに登場するキャラクターやメカ デザインの名称、形状、配色、音声等の商品化、

あるいは商品パッケージにキャラクターおよびメ カデザインを表示・彩色して複数種類の商品間に 関連性をもたせる(キャラクターの関連性)。

例)アパレル商品。プラモデル。

キャラクター商品化権 プラモデル化権

アトラクション関連 サービス

スケールフリー特性 スタイルフリー特性 ストーリーフリー特性

原作型コンテンツを題材とすることで、現実の場 で開催される各種アトラクション間に関連性をも たせる(アトラクションの関連性)。

例)ミュージカル。催し物。展示会。遊園地。

ミュージカル化権 上演権

興行権