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第Ⅱ章 デジタルコンテンツの制作環境調査

4 委員による提言

4.1 税制の問題

大手ポストプロダクションは、機材導入も最初に行うため、CPUパワーやメモリなどの償却が追い つかなくなる。

減価償却法が改正され、6~8年の減価償却は結局多くの税金を支払うだけで無駄であり、多くのPC 機材は2年程度が限度ではないかと感じている。

1 年で全部決算しなければならない日本の税制を変える必要があると思う。ゲーム、映画、アニメ制 作には実際2~3年以上必要となるものも多い。

売り掛け、買い掛けでは、経費計上ができない場合があり、制作委員会方式で資金を集めても定期的 に中間決済を必要とする。制作最中のものはいいかげんな数字しか出せない。また、10億の制作費が あったとしても1年で使わなければならないのであれば使い方に限界が出てくる。

プロジェクトを 2~3 年と決めたらその期間、税務は据え置いてくれるだけで、映画制作はかなり楽 になると思う。

または、アメリカの『フィルムマジック』という制作管理ソフトのようなものが主流になれば、その ソフトのデータを税務署に提示できれば良い。

上場した制作会社であれば株式で資金を集めて映画を制作できるため、1 作品毎の年度報告は必要な くなるが、それはほんの数社しかない。

文化事業への寄付を非課税にするなど、諸外国の文化事業への取り組みも見習いたい。

日本の文化支援制度には行政側の制作に対する認識がなく、審査や制作体制をクリアするだけで実際 のスケジュールにのらない事もあり見直す必要もあると感じる。

4.2 資金調達について

商工中金で制作融資を受けようとすると、申請書と一緒にクライアントへの請求書が必要になった 事があった。制作していない作品の請求書は出せないため、こういった融資には意味がない。

資金調達では、日本映像業協同組合では金融機関の商工中金や東京スター銀行と提携し、テレビ、CM など放送番組に携わる制作、配給会社向けの新しい融資を取り扱っており、テレビ局の発注があれば、

5%程度の金利で融資が受けられる制度もある。

このような制度を増やし、また告知して広く制作会社がゆとりをもてるようにしたい。

http://www.jvig.net/yusipage.htm

4.3 資本力の強化による変革

21世紀は20世紀の延長線上ではなく、過去のしがらみを断ち、自らの新しいビジネスモデルを作 り上げる必要があるが、そのためには資本力の強化も必要だろうと考える。

現場の改革だけでは大きな変革はおきないだろうが、小さな会社が統合合併を繰り返し、資本金が巨 大なプロダクションが生まれれば従来の制作体制も変わってくるかもしれない。

ゲーム業界は業界再編が進んでいるが、100万本を売るヒットゲームもあまり出てこない現状と制作 費の高騰も兼ねあって国内だけではリクープしなくなっている。最初から海外を意識して制作をしな ければ生き残れない状態にあるために資本力を強化しているのだろうが、制作者の環境はまだ良いと 思われる。特にアニメ、映画などは弱小プロダクションが多く、資金がない中でなんとか努力して制 作する体制が長く続いている中で、自分で製作資金を調達するくらいのスケールアップが求められる ようになるだろう。

4.4 ポスプロの構造変化

放送機材は池上通信機などの放送機材の専門メーカーが主流であり、寡占化された市場の VTR や スイッチャーなどの高価な機材を用いてプロの仕事をしていた。

CANONのEOS5Dなど、コンシューマ向け民生用機材がプロ用機材のスペックに迫るようになって

くる流れは加速しているように感じられる。

クライアントにとってみれば、HDCAM-SRで撮っていようが、CANONのデジカメで撮っていよう が安く品質が良いのであれば、コンテンツ制作のためのプロセスは問題ではない。

ポストプロダクションにおいても、このままハードウエア、ソフトウエアの機材がどんどん安くなり、

編集作業がポスプロでなくても可能になっていくならば、ポスプロとして生きていける道を模索しな ければならないだろう。

HD は SDと同料金になっている現状では、大手ポスプロは 4K サイズや立体映像など、次世代映像 で利益を得る事を期待している。

また、小規模なポスプロではそういう時代だからこそ、デジタル化でいかに低コストで制作会社に頻 繁に利用してもらえるかを考え、他社と異なる付加価値をもったサービスを提供する事により差別化 が図る事ができれば十分に生き残っていけるという意見も出た。

ネットワークのインフラを最大限活用して、ポスプロもサーバーをベースにしたビジネスに進化して いくのかも知れない。

4.5 20世紀型のプロダクションと21世紀型のプロダクション

20世紀は、いかにコストを安くして売値を下げるか、またいかに労働を集約して多量のものを作る かを求める時代であった。

21世紀はまったく違う体系でビジネスを行うかを考えなければならないが、いままで積み重ねてきた 経験や実績などもあり、20世紀型を捨て去るのは難しく悩ましいところである。

20世紀はひとりのクリエイターが最終イメージをもって仕上げていく工程が基本であったが、高度な 技術を要する 21 世紀型の制作ではピラミッド的な構造で分業していかざるをえないのではないだろ うか?映画制作においては、背景は完全にデジタル処理で架空の空間を利用するような方法も定着し、

確実にワークフローの変換はある。

デジタル化の最終形態として全員がクリエイターとなり、ネットから集金できる時代がくるかという と現在では想像しにくい。

4.6 制作者ユニオンについて

日本では、デジタル化によう構造変化で制作ラインが壊れ始めているが、アメリカではデジタル化 しても制作者の環境は守られているのはユニオン制度があるためではないかと考える。

ユニオンに属していない者はその職種(カメラマンやアニメータなど)にはなれず、ユニオンに属す るためには何本かの作品に関わるように良い意味での徒弟制度の中で揉まれてプロフェッショナルに なる事ができるのではないかと思われる。

日本には、このような制度がないためにデジタル化の中で安く速くを求められて、クオリティーの維 持ができないようになっているのではないか?

シナリオライタや監督の協会はあるが、もっと広い範囲で機能するユニオンも求められるだろう。

4.7 TV番組制作の現状

2011年に地上波デジタル放送に切り替わり、その空いた電波帯域に新しい事業者が入り、チャンネ ル数やコンテンツが増える事が期待されるが、それに伴い予算が増えるかどうかが問題である。チャ ンネルや番組数が増えても予算の総量は変わらないのでは、結果、単価が下がって、内容が薄まって いくのではないかと危惧する。

TV 局では、番組を二次使用するより新しい番組を作る方が時間枠として利益率が高いので、できる だけ二次使用はしたくないという考え方を持つ。キー局は、CS 放送を持つようになり再放送はそち らで流すようになった。また、ネットでもアーカイブ放送を始め、課金して視聴できる仕組みを作り、

利益をあげられるようにしている。コストを安く作るには生放送が一番良いが、4月の番組改編では 時勢的にもだいぶ生放送が増えるようだ。

現在は、HD レコーダなどが普及し、リアルタイムで放送を見る人も少なくなっている。先送りなど でCMを飛ばされればCMで課金するというモデルは崩れてしまうかもしれない。また、一家団欒の ゴールデンタイムも社会的な背景から少なくなりつつあり、必ずしもゴールデンタイムにTVを観る という時代でもない。

以上の不安材料があるが、それでもTVの広告宣伝効果は絶大なものがありTVがコンテンツ産業の 中心である事は間違いない。