第Ⅰ章 コンテンツ産業の市場規模と構造変化
3 コンテンツ市場の動向
3.1 映像系
3.1.1 映像ソフト市場
日本映像ソフト協会の出荷統計調査(図表Ⅰ-26・27)によると、2008年(1月~12月)のビデ オソフトの総売上は、2860億9,800万円(前年比88.9%)となった。ビデオソフトの市場規模は、DVD ビデオの登場により、1999年頃より堅調に増加したが、2004年(3753億9,300万円)をピークに減少に 転じている。映画のビデオソフトの販売が、公開時から数ヶ月後という時期のずれはあるものの、2008 年の洋画市場におけるヒット作が少なかったことも影響を与えたと考えられる。
ビデオソフトの内訳についてみると、DVDビデオが総売上のうち96.4%、数量のうち97.0%を占めて いる。日本映像ソフト協会は、2008年より新たにブルーレイ(HD-DVDを含む)とUMD(プレイステ ーションポータブル用ソフト)の実績を加算している。両者を合算すると、総売上のうち3.5%、数量の うち2.9%を既に占めており、新しい媒体として今後の普及が期待される。
ビデオカセットを除く全メディアについて流通チャネル別にみると、図表Ⅰ-28のとおり「販売用」
は1,847億600万円(前年比87.0%)となっている。「レンタル店用」については、996億9,600万円(前 年比93.5.%)となっており、うちDVDは989億3,400万円(前年比92.8%)である。DVDのレンタル用 売上として過去最高の実績となった2007年と比べるとやや減少気味である。レンタル店におけるDVD ビデオの在庫整備はほぼ完了してきたと考えられる。しかしながら、DVDのレンタル店用売上の数量に ついてみると、前年比111.2%となっており昨年より増加している。これは、レンタル店へのセット販売 等により売上金額との傾向の差が生じたと考えられる。
DVDビデオの「販売用」売上をジャンル別にみると、日本映像ソフト協会の2008年統計調査報告書 によれば、「日本のTVドラマ」が好調で前年比110.4%と2桁の伸びとなった。一方で、映像ソフトの売 上構成比の中では最も高い、「日本のアニメーション(一般向け)」が前年比81.2%となり、全体の売上 の減少に影響を与えている。同ジャンルについては、定期的に新作の発売は続いているものの、旧作の 活性化等が課題となっている。また、その他のジャンルでは、「洋画+アジアの映画」が前年比60.6%と 大きく割り込んだ。前述したとおり、2008年は洋画のヒット作が少なかったことに加え、“2枚買ったら 3枚目は無料”などの洋画の販促キャンペーン効果もあり、旧作の拡販が頭打ちになったと考えられる。
他方、DVDビデオの「レンタル用」売上金額をジャンル別に見ると、同調査報告書によれば、「洋画
+アジアの映画」が前年比86.8%と2年連続で前年割れとなったが、「海外のTVドラマ+アジアのTVド ラマ」は前年比120.2%と好調が続いている。海外TVは依然として人気が高い。「Tsutaya Online8」に よれば、海外TVは現在34作品(同タイトルをシーズン別に数えた場合)が並んでおり、根強い人気が 伺える。また最近ではネットレンタルを中心に、定額制以外にも枚数に応じた割引も提供されており、
一度のレンタル枚数が多ければ一枚当たりの割引率が高くなる仕組みになっている。これらは、数量の 増加に寄与すると同時に、単価の低下、売上と数量の伸び率に差として現れる。その他に、「日本のTV ドラマ」は年々売上が増えており、2008年は前年比107.7%と伸長した。
ブルーレイ(HD-DVD含む)については、現状では全体の売上の92.3%が「販売用」となっている。
「販売用」をジャンル別にみると、48.0%が「日本のアニメーション(一般向け)」、43.7%が「洋画」
となっており、まだ他のジャンルに大きな動きがない状況である。一方、「レンタル店用」においても 売上金額の79.7%を「洋画」が占め、「日本のアニメーション(一般向け)」が11.4%となっているが、
8 http://www.tsutaya.co.jp/doramafan/db/index_rev.html
今後のジャンルの広がりが期待される。
図表Ⅰ-26 ビデオソフトの売上金額(日本映像ソフト協会調べ)
2008年 2007年
区分 合計金額
(単位:億円) 構成比 前年比 合計金額
(単位:億円) 構成比 前年比
DVDビデオ 2757.27 96.4% 86.9% 3172.47 99.8% 97.5%
ビデオカセット 2.58 0.1% 33.2% 7.77 0.2% 14.1%
ブルーレイ 98.60 3.4% 301.5% - -
-UMD 2.53 0.1% 59.1% - -
-ソフトの総売上 2860.98 100% 88.9% 3180.24 100.0% 96.1%
*1:2008年より、ブルーレイ(HD-DVDを含む)とUMDの実績が追加されている。
図表Ⅰ-27 ビデオソフトの売上数量(日本映像ソフト協会調べ)
2008年 2007年
区分 合計数量
(単位:本・枚) 構成比 前年比 合計数量
(単位:本・枚) 構成比 前年比 DVDビデオ 83,598,098 97.0% 86.3% 96,819,940 99.7% 93.2%
ビデオカセット 72,253 0.1% 21.4% 337,132 0.3% 26.3%
ブルーレイ 2,302,235 2.7% 223.0%
-UMD 202,944 0.2% 64.4% - -
-ソフトの総売上 86,175,530 100.0% 87.5% 97,157,072 100.0% 92.4%
*1:2008年より、ブルーレイ(HD-DVDを含む)とUMDの実績が追加されている。
図表Ⅰ-28 流通チャネル別ビデオソフトの売上金額(日本映像ソフト協会調べ)
2008年(※ビデオカセットを除く) 2007年(※ビデオカセットを除く)
区分 金額
(単位:億円) 構成比 前年比 金額
(単位:億円) 構成比 前年比 販売用(個人向) 1,847.06 64.6% 87.0% 2,089.57 65.9% 94.4%
レンタル店用(個人向) 996.96 34.9% 93.5% 1,066.29 33.6% 104.7%
業務用 14.38 0.5% 72.9% 16.61 0.5% 85.0%
図表Ⅰ-29 流通チャネル別ビデオソフトの売上数量(日本映像ソフト協会調べ)
2008年(※ビデオカセットを除く) 2007年(※ビデオカセットを除く)
区分 数量
(単位:本・枚) 構成比 前年比 数量
(単位:本・枚) 構成比 前年比 販売用(個人向) 55,735,857 64.7% 82.1% 66,827,479 69.0% 87.0%
レンタル店用(個人向) 29,451,633 34.2% 112.4% 26,200,106 27.1% 116.0%
業務用 915,787 1.1% 22.5% 3,792,355 3.9% 83.6%
3.1.2 映画市場
日本映画製作者連盟の全国映画概要(図表Ⅰ-30)によれば、2008年(1月~12 月)の映画市場 では、全体の興行収入は 1,948 億円と、昨年から 1.8%の微減となった。内訳を見ると、邦画が 1,159 億円(前年比22.4%増)と過去最高の成績を残し、一方の洋画は790億円(前年比23.9%減)と過去最 低の結果となった。両者の構成比はそれぞれ59.5%及び40.5%となり、昨年からみると邦画が洋画の興 行収入を上回る結果となった。平成18年実績において21年ぶりに邦画の興行収入が洋画を上回ったが、
以来2年間に渡り洋画と邦画の興行成績が逆転を繰り返している。
映画館数(スクリーン数)については、現在3,359(前年度比 4.3%増)スクリーンが営業している。
シネマコンプレックスの増加(2008 年で3,101 スクリーン)に伴い、全体のスクリーン数は増加傾向 にあったが、一昨年から昨年にかけての伸び率(5.2%増)と比べると、やや鈍化してきていることが分 かる。一方で、スクリーン当たりの収入及び動員数は減少傾向にある。
次に平均入場料金についてみると、昨年から2円下がり1,214円(前年比0.2%減)となった。1993 年以降の15年間で最安値である。しかしながら、平均入場料金が一昨年から昨年にかけて17円下がっ ていた結果と比べれば、この減少傾向も一旦は底打ちを迎えそうだ。競争が激化する中で繰り広げられ た割引キャンペーン等の値下げ競争が一巡し行き渡ったことと考えられる。
配給状況について映画の公開本数についてみると、邦画が 418 本(昨年から 11 本増)、洋画が 388 本(昨年から15本減)と合計で806本(昨年から4本減)であった。昨年と比較すると洋画の本数が 大幅に減少しており、その分を邦画の本数増が埋めた結果となっているが、3年連続で800本超えを維 持している。
興行収入10億円以上の邦画の上位10作品は、図表Ⅰ-32の通り、『崖の上のポニョ』『花より男子 ファイナル』『容疑者Xの献身』『劇場版ポケッモンスター ダイヤモンド・パール ギラティナと氷空
<そら>の花束シェイミ』『相棒 -劇場版-絶体絶命!42.195km東京ビッグシティマラソン』『20世 紀少年 第1章』『ザ・マジックアワー』『映画ドラえもん のび太と緑の巨人伝』『マリと子犬の物語』
『L change the WorLd』となった。上位の常連であるアニメ作品の中では、特に『崖 の上のポニョ』が根強い人気を博し、155億円という興行収入を達成した。また同作品の主題歌は音楽 市場においても好成績を残し、幅広い世代に親しまれた。
一方、邦画ではテレビ民放各局による製作・出資作品の中からヒット映画が多く生まれ、『花より男 子』(TBS)、『容疑Xの献身』(フジテレビ)が挙げられる。このように、テレビ局が中心となった製作 委員会等、テレビ局が地方の系列局も加えて映画ビジネスを活性化させている状況が傾向として続いて いる。また、製作委員会方式では、テレビ局の他、映画化原作を保有する出版社、広告代理店、新聞社、
IT企業等が参加しており、こうした各メディア事業者の協力で制作される作品が増えることにより、雑 誌や映画、テレビ等との間のクロスメディア型のビジネス展開は一層広がりを見せつつある。同一原作 作品の映画化やテレビドラマ化や、映画公開からDVDパッケージ化及びテレビ放送化のサイクルの短 縮化は既に定着化しているといえる。
また、2008年では惜しくもトップ10 に入らなかった『おくりびと』は、2009年に入り米アカデミ ー賞の外国語映画賞を受賞した。この結果が話題を呼び、国内ではその受賞直後から動員数が増加して おり、国内市場の喚起に貢献している。邦画の国内での成長をバネに今後も海外市場への展開が期待さ れる。
洋画の興行収入10億円以上の上位10作品は、図表Ⅰ-33のとおり、『インディ・ジョーンズ ク
リスタル・スカルの王国』『レッドクリフPart1』『アイ・アム・レジェンド』『ライラの冒険 黄 金の羅針盤』『ハンコック』『ナルニア国物語/第2章 カスピアン王子の角笛』『魔法にかけられて』『ナ ショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記』『ウォンテッド』『アース』となっている。10億円以 上の作品は合計24作品で、興行収入が559億円となった。昨年では、22作品に対して興行収入が760 億円であったため、今年は相対的にヒット作品が少なかったといえる。また昨年と比べ、一定の動員が 見込める、いわゆるシリーズものの作品が少なかった。
参考までに海外市場に目を向けると、2008 年の米国映画興行成績では、『ダークナイト』『アイアン マン』『インディー・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』がトップ3となった。特に、『ダークナ イト』についてはアメリカで歴代2位の大ヒットを記録したが、日本国内では16位に留まっている。
アメコミを題材とした作品を日本の市場は受け入れなかった可能性もあり、こうしたミスマッチも国内 の洋画興行成績に影響したと考えられる。
こうした状況において、洋画市場では異業種からの参入もみられた。例えば、音楽業界大手のエイベ ックス・エンタテイメントは興行成績3位に食い込んだ『レッドクリフPart1』を東宝東和と共同 配給している。今後はこうした動きも映画市場全体の活性化につながると考えられる。
近年では、映画の配給のみならず、制作現場におけるデジタル化も進んでいる。例えば、最大手の東 宝は、自社のスタジオにおける先端デジタル機器の導入に多額を投じ、また、都内の主要なポストプロ ダクションや現像所との間をネットワークで結んでいる。このように急速に普及しているブロードバン ド化により、撮影した映像がリアルタイムで編集スタッフへ伝送される等、多くの場面でICTを活用し た協働作業が導入されており、撮影期間の短縮化につながっている。他にも、東映が撮影所において新 鋭デジタル設備を導入するなど、邦画各社ともデジタル化を進めることで制作能力を強化している状況 である。また配給においては、引き続きデジタルスクリーン(又はデジタルシネマ)の導入が進められ おり、現在では合計173スクリーンであり昨年から倍増している。こうしたコンテンツをデジタル受信 し上映できる映画館では、映画以外のコンテンツとして、ライブコンサートや演劇、舞台等を上映する 企画も行っている。こうした新たな映画鑑賞スペースの活用ビジネスにより、映画館へ新たな利用層を 呼び込むことが期待される。
またハリウッドでは、映像の臨場感があふれる3D映画の新たな制作技術が開発されており、対応し た作品が2009 年以降数多く公開される予定である。全ての映画作品がこの3D技術と親和性があると は限らないという声もあるが、過去の作品のリメイクなど、市場の活性化につながることが期待される。