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認知症グループホームの介護職におけるストレスの実態と虐待の 認識との関連

ドキュメント内 介護職の虐待防止に関する研究 (ページ 45-114)

第1節 本章における調査の背景と目的

今後の日本において、日常生活に支障をきたし介護が必要となる認知症高齢者が増加し、

介護従事者の確保や施設サービス等の充実が求められる。その中で認知症高齢者を支援す る地域密着型サービスである認知症グループホームは、重要であり必要不可欠なサービス である。認知症グループホームの特徴は、少人数で共同生活を行っていることである。そ して、自立度が高い認知症高齢者が多いことから、利用者自身の生活役割を探し維持する ことや、利用者同士の関係性の確保や維持等が特徴的と言える。そのような特徴を持つ認 知症グループホームの介護職は、他の養介護施設の介護職と比較してやりがいも大きいが、

個々の関わりが多様であり精神的ストレスは高いと考える。

一方、高齢者虐待は介護従事者によるものが年々微増している。また、認知症高齢者の 日常生活自立度が低い高齢者への虐待が増加しているという報告もある。このような現状 を鑑みると、24 時間認知症高齢者の日常生活と社会生活を支援する認知症グループホーム の介護職は、多様なストレスを感じているのではないか。そして、そのストレスが高い場 合、認知症高齢者に対する虐待発生の重要な因子となるのでないか、また、介護職の虐待 に関する適切な認識が乏しい場合においても、虐待発生につながる可能性あるのではない かと考えた。

そこで、本章では、認知症グループホームの介護職に対する、ストレスの実態と虐待の 認識との関連を明らかにすることを目的とした。それが明らかになることによって介護職 のストレスを低減を図るための提案ができ、認知症高齢者を尊重した介護につながるので はないかと考え調査を行った。

以下に、その調査の概要と結果について述べる。

第2節 本章における調査全体の概要

1)調査対象者

本調査の対象者を、平成26年9月1日現在における全国介護事業所介護サービス情報 公表システム137から、北信越地域5県の認知症対応型共同生活介護事業所全808事業所 で働く介護職とした。対象地域の選定については、研究者の居住する地域を中心として、

5県の認知症グループホームを対象とした。研究対象の県は、北陸3県(富山、石川、福 井)と信越地方(新潟、長野)を合わせた 5 県である。全国を地域分けした際に、細分 化過ぎずかつ数的に著しく片寄らないようにするために形成された地域。行政や国政選

137 厚労省が介護事業所・生活関連情報検索として公表しているシステムである。都道府県別に情報が提示されている。

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挙、スポーツ競技の地方予選大会等で地方区分や名称として使用される場合が多い。地 域の規模で人口・面積・GDPは5県を合わせると中国圏5県をやや上回る規模となる。

以上のことから、この地域性を考えて研究対象とした。認知症グループホームの介護 職を対象とした研究は、多県にわたる研究は少なく地域性から見ても有意義と考えため、

5県の認知症グループホームを対象とした。

また介護職の選定について、まず、事業所の管理者宛てに文書で研究参加の有無を確 認した。そして、参加協力可能な場合に、管理者宛に協力人数分の調査用紙を郵送し、

介護職へ配布を依頼した。その後の介護職個人の協力は自由意思とし、調査用紙が返送 されたことで研究に同意したとみなし、本研究への同意が得られた介護職とした。

さらに、対象者から管理者を除くとし、資格は問わないこととした。これは、管理者 は職員と同様に日常生活への介護は行っているが、管理職としての意識がバイアスとな ってデータに影響を及ぼす可能性があると考えたため、除外した。資格については、前 章でも述べたとおり資格がなくても介護職として従事できること、資格の有無もストレ スの一因となる可能性も考えられため、対象として除外した。

2)調査期間

調査期間は、所属機関において倫理審査委員会の承認を受けたのち、平成26年11月1 日から平成27年2月末日とした。これは、施設に対して調査の協力を得ること、調査用 紙の郵送、返送までとした。

3)調査方法

調査方法は、無記名自記式質問紙調査(巻末資料:調査用紙参照)とし、下記の調査項 目について選択肢別、数値記入等、できるだけ簡便に回答できる方法とした。無記名自 記式質問調査としたのは、ストレスや虐待の認識等個人のプライバシーに関する内容が 多く、無記名にすることで自分の意思や認識について記載ができると考えたためである。

そして、調査用紙の回収方法は、管理者に事業所で一括して研究者に返送してもらうこ とを依頼した。管理者からの一括郵送という方法について、調査参加の有無が管理者に わかるので、回答は記入の有無を問わず、調査用紙は無記名で返送個人用封筒に入れ厳 封するよう依頼した。そして、糊つき封筒を使用し開封が困難な状況にし、介護職の意 思を尊重した方法とした。

4)調査項目(調査用紙参照)

調査項目は、①対象者の基本属性について、年齢、性別、介護福祉士資格の有無(学 歴を含む)、②就業状況について、経験年数、雇用形態、夜勤回数、③心身の健康につい て、主観的健康感(以後健康感)、心身の自覚症状(20 項目)、以上①から③は対象者の 基本的属性について確認した。④研修受講に関することとして、研修受講の有無、1 年間

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に受講した研修内容(7項目)、今後受講したい研修内容(9項目)、1 年間で年研修を受 講できなかった理由を確認した。⑤虐待の認識について、個人および職場環境に関する 虐待の認識の有無(13 項目)、介護行動に関する虐待の認識の有無(33 項目)について 質問した。⑥自己決定支援について、認知症ケアにおける重要な要点である自己決定支 の有無(支援必要、支援したい、支援している)を確認した。⑦ストレスを測る心理尺度 として、日本版バーンアウト尺度を測定した。

以上の調査項目の中で、調査において重要な項目として介護行動とバーンアウト尺度 の概要について、以下に具体的に述べる。

介護行動(表1参照)の概要について、33項目を抽出した。この介護行動33 項目の 選定基準は、先行研究138や調査139140141で虐待行動とされる項目を参考に筆者が抽出した。

身体的虐待・心理的虐待・ネグレクト・性的・その他(不適切なケア)の5分類にした。

身体的項目は、暴力や乱暴にするなど表面に出やすく理解し易いと考え少なくした。心 理的・ネグレクト項目は普段の介護場面に遭遇する10項目以上を選択した。経済的虐待 は明らかな犯罪となるものが多く、判断しやすいと考え今回は削除した。性的虐待は排 泄、入浴介助等身体の露出や接触等も含め、判断に迷う項目を選択した。

1 介護行動に関する虐待の認識の項目(33項目)

種類 介護行動に関する虐待の認識の項目

入浴時、声掛けもなく頭からシャワーをかけたり、着替えの時に何も言わずにズボンを下げた ベッドに長時間抑制・拘束した

手荒く寝具をかける

嫌がる利用者に無理やり食事をさせた 利用者に叩かれたので叩き返した

利用者から話しかけられても一切無視した

「ちゃん」付で呼ぶ 大声で怒鳴った

「おじいさん」「おばあさん」と呼んだ 他の人の前で排泄に関することを話した

認知症なので本人はわからないので「あだ名」で呼んでいた

「臭い」「ばっちい」と言っておむつ交換した

138 水上敦子(2009):看護師の患者に対する虐待の実態と要因,神奈川県立保健福祉大学実践教育センター看護教育 研究収録.No.34:9-16

139 神奈川県:「施設職員のための高齢者虐待防止の手引き」自己点検シート

140 高齢者処遇研究会編集・発行(1998):わが国における一般市民の高齢者虐待に関する意識調査 調査研究報告書.

東京.

141 高齢者処遇研究会編集・発行(2000):特別養護老人ホームにおける高齢者虐待に関する実態と意識調査 調査研 究報告書.東京.

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「頭を撫でる」など子どもに対するような対応や言葉かけをする

「あれが悪い」「これができない」など短所ばかり言う 説明や声かけをせずケアや処置をした

意思を伝えられない人に対し「もう食べないの」と聞いた

「今忙しいから」と言って、訴えを後回しにした

自分で食べられない利用者に配膳はしたが、食事介助をしない 失禁でシーツや下着等が汚れてもそのまま放置した

ナースコールが頻回な場合、ナースコールを使えないようにした 粉薬をご飯と一緒に混ぜる

運動させない

トイレで排泄できる人にオムツで対応する オムツ交換を時間で行う

日中車椅子に座らせたまま放置した 本人の返事を待たずに食事膳を片付けた

女性に対して男性介護者が入浴介助や排泄介助をした 下着をはているかどうか、安易にズボンを下げて確認した 元気づけるために安易に体に触れた

性的な冗談や身体について話題にする 他者に見える状態で排泄や入浴の介助をする

他の職員が見ていないと対応がぞんざいになる 利用者の前で職員同士が私的な会話をする

ストレスを測定する心理尺度(表2参照)として、日本版バーンアウト尺度142を使用 することにした。バーンアウト尺度は、ヒューマンサービスにおいてストレスを測る尺 度として取り上げられている。バーンアウト尺度は、マスラックを中心として開発され Maslch Burnout Inventory(MBI)として多くの研究に採用されている。そして、看護 師を対象とした研究が多く、近年では精神科看護業務や障がい者施設等一般病棟に従事 する看護職を対象として、暴力に対する影響や、看護職の特性、看護の対策に利用され ており多様な研究がなされている。

介護職においても、高齢者介護職員のストレッサーとの関連、介護職管理職の役割ス レッサーとの関連、特別養護老人ホーム職員を対象としているもの、介護職員の職場特 性による主観的ストレスの影響要因等ストレスについてバーンアウト尺度を用いて分析 した研究が多い。介護職とストレスに関する先行研究は多数発表されているが、介護職

142 久保真人(2014):バーンアウトの心理学 燃え尽き症候群とは、第4刷、21-61、株式会社サイエンス社.

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