前節で述べた設計指針に基づき,780nm帯用短波長透過フィルタ,880nm帯用 バンドパスフィルタ,940nm帯用長波長透過フィルタの3種を試作し,その特性を 計測した.
4.4.1 短波長透過フィルタ
試作した780nm帯短波長透過フィルタの透過光吸収特性を図4.1に示す.フィ
ルタは基板であるポリイミドフィルムの減衰を加えて表示してある.図には中心
発光波長780, 880, 940nmのLEDの発光スペクトル分布の実測値をあわせて示し
てある.図内の90mmは,蒸着器中心側からの資料の距離を示している.試作し たフィルタは最悪の特性の場合でも隣接チャンネルである880nmのLEDに対し て,830nm以上の波長において9.5dB以上の損失を与えていることがわかる.これ により隣接チャネルの信号は聞こえるものの,気にならない程度の音量比に抑え ることができた.
図4.1: 780nm帯LED用短波長透過フィルタの特性
4.4.2 中間波長帯域通過フィルタ
試作した880nm帯バンドパスフィルタの光吸収特性を,図4.2に示す.820nm
以下の波長において11dB以上の損失が得られており,発光波長780nmのLEDに 対しては十分な分離特性が得られていることがわかる.一方,900nm以上におい
らかな混信が聴取できた.3波長並列動作で多重信号の分離を行う場合には,フィ ルタの透過帯域を20〜40nm程度短波長側に移動すれば等しい分離比を得ること ができるようになるが,940nmのLEDの発光スペクトル幅が広いため,光源側の スペクトル分布を制御しない限り混信からは逃れることはできない.
図4.2: 880nm帯LED用バンドパスフィルタの特性
4.4.3 長波長帯透過フィルタ
試作した930nm帯バンドパスフィルタの特性を図4.3に示す.890nm以下の波
長において,隣接チャネルのLEDの発光スペクトルに対して3dB以上の損失が得 られていることがわかる.隣接チャネルとの信号分離が悪いのは,隣接チャネル のLEDの発光波長が近接していることと,930nm帯LEDの発光スペクトルの半 値幅が広いためである.
4.4.4 可視光カットフィルタの効果
880nm帯バンドパスフィルタの可視光帯域も含めた光透過特性を図4.4に示す.
隣接したLEDの発光波長帯域では透過率が抑圧されているものの,誘電体多層膜
図4.3: 930nm帯長波長透過フィルタの特性
フィルタの性質上,可視光領域では再び光が透過するようになることがわかる.そ こで,可視光領域の雑音の影響を低減するため,可視光カットフィルタを基板裏 面に蒸着した.試作したフィルタの特性を図4.5に示す.信号光の透過率はほとん ど変化なしに可視光帯域の透過率が抑圧されていることがわかる.また,基板の 両面に蒸着することで基板にかかる応力は緩和されたものの,成膜総数などが異 なるため,基板の反りは緩和されたものの歪は残存したため,完全な平面にはな らなかった.
4.4.5 面内均一性
図4.6に試作したフィルタのピーク波長および透過率についての面内均一性を 示す.透過ピーク波長は871nm±20nm以内に,透過率は-0.76dBから-0.8db
(84%±1%) にそれぞれ収まっていることがわかる.光源であるLEDの発光波長
が広いため,これらの特性のばらつきは実用上大きな問題にはならないと考えら れる.
図4.4: 可視光帯域を含めた880nm帯バンドパスフィルタの特性
図4.5: 可視光帯域を含めた可視カット層つき880nm帯バンドパスフィルタの特性
図4.6: 880nm帯バンドパスフィルタの均一性評価