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第二章 やさしい日本語ニュースと一般ニュースの語彙特徴

1. 品詞別の特徴

1.4. 副詞・連体詞・接続詞・感動詞

やさしい日本語ニュースと一般ニュースで使われた品詞別の傾向について、ここでは名 詞・動詞・形容詞に比べ出現数の少なかった副詞・連体詞・接続詞・感動詞について一括し て述べる。まず、上記の4種の品詞の使用がニュース語彙全体の中で非常に限られたもので あることを図16に示す。

図 16 副詞・連体詞・接続詞・感動詞の使用率

図16に示したのは、やさしい日本語ニュース・一般ニュースで使用された自立語の延べ語 数・異なり語数をそれぞれ100と換算したときの副詞・連体詞・接続詞・感動詞が使用され た比率である。4種類の品詞の中では最も数の多い副詞でも全体の1.6% から3% 程度の比率 でしか使われておらず、最も数の少ない感動詞に至っては使用率は 0.05% 以下である。次に、

やさしい日本語ニュース・一般ニュースにおける副詞・連体詞・接続詞・感動詞1語あたり の平均使用回数を表28に示す。

表 28 副詞・連体詞・接続詞・感動詞 1 語あたりの平均使用回数(回)

副詞 連体詞 接続詞 感動詞 一般ニュース 4.3 28.0 16.9 2.0 やさしい日本語ニュース 9.0 56.6 28.4 1.5

表28に示したように、連体詞・接続詞はやさしい日本語ニュース・一般ニュースともに、

1語あたりの平均使用回数が非常に多い。特に連体詞は、やさしい日本語ニュースでは自立語 平均約7語の約8.1倍の56.6回、一般ニュースでは自立語平均約6語の4.7倍の28.0回であり、

1語が繰り返し用いられる回数が極めて多い。このため、上記の4種類の品詞のうち、連帯詞 と接続詞については延べ語数・異なり語数ともに自立語に占める語数が決して多くはなく、

かつ使用回数が非常に多いことから、高い頻度で使用される語彙を特定しやすい品詞だと言 える。また、副詞の平均使用回数はやさしい日本語ニュースでは自立語平均より高いものの、

一般ニュースでは自立語平均を下回っている。感動詞はいずれのニュースでも平均使用回数 が最も少ない自立語である。以下、4種類の品詞について使用率の高い副詞から順に述べる。

副詞の延べ語数は本節冒頭で表15「品詞別使用数(語)」に示したように、やさしい日本 語ニュースで546語、一般ニュースで612語であり、2種類のニュースではその使用数に大差 はない。しかし、やさしい日本語ニュースと一般ニュースとではその語彙量が大きく異なる ため、使用率でみた場合、図16に示したようにやさしい日本語ニュースの使用率は一般ニュ ースの使用率の約2倍となっている。このように使用率に差が出た一因として、(11) (12) に示 したように一般ニュース文では「程度」「およそ」という名詞が使用されていた箇所がやさ しい日本語ニュースでは副詞「約」に書き換えられていた点が挙げられる。

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5

感動詞 接続詞 連体詞 副詞

延べ語数 一般ニュース 延べ語数 やさしい日本語ニュース 異なり語数 一般ニュース 異なり語数 やさしい日本語ニュース

%

(11) a. 日本ハムはハムやソーセージ、レトルト食品など、合わせて284品目を、伊藤ハムは2 30品目を対象に値上げや実質的な値上げを行い、上げ幅は平均で10%程度になるとい うことです。(般: 3)

b. 日本ハムと伊藤ハムは200以上の品物の値段を平均で約10%上げます。(や: 3)

(12) a. ひょうは、およそ3分間、集中的に降ったということです。(般: 5)

b. 一部の場所で約3分の間、ひょう(=小さな氷の塊)が強く降りました。(や: 5)

「約」は一般ニュースでは2回しか使用されていないにもかかわらず、やさしい日本語ニ ュースでは122回使用された語である。その結果、やさしい日本語ニュースで使用された副 詞の延べ語数の5語に1語以上は「約」となり、この1語が副詞の使用率に与えた影響は大き い。また、「約」ほどには使用頻度は高くはないが、一般ニュースで副詞が使用されていな かった箇所で、書き換えにより副詞が用いられるようになったものとして「これから」が挙 げられる。(34) にその例を示す。

(34) a. 「今後はネガティブな感情を伴う記憶を多く持つ、うつ病のような症状のマウスで実験を

行い、さらに脳の詳しい仕組みの解明を進めていきたい」と話しています。(般: 208)

b. 「これからうつ病のようなマウスで実験をして、脳についてもっと研究していきたいです」

と話しています。(や: 208)

(34) bに示した「これから」は、やさしい日本語ニュースでは32回、一般ニュースでは5

回使用された副詞で、やさしい日本語ニュースのほうが使用回数が多い。やさしい日本語ニ ュースでは、(34) に示したように、名詞「今後」の書き換え語として「これから」が使用さ れる例が少なくなかった。このように、「約」や「これから」など、もともと一般ニュース では名詞が使用されていた箇所で使用される福祉が存在したため、やさしい日本語ニュース における副詞の延べ語数は一般ニュースと比べ、使用率が高くなったと考えられる。

続いて、連体詞について述べる。連体詞は4種類の品詞の中では2番目に延べ語数が多いが、

異なり語数では接続詞の使用数をわずかに下回っている。これは、連体詞の平均使用回数は 表28に示したようにいずれのニュースともに多く、延べ語数が多くても異なり語数はあまり 多くはなかったためである。特に、やさしい日本語ニュースにおいては連体詞は「この」

「大きな」「その」「どの」「小さな」の5語しか用いられていなかった。なお、最も使用 数が多い連体詞はいずれのニュースでも「この」であり、やさしい日本語ニュースでは182 回、一般ニュースでは257回使用されていた。なお、使用回数1回の連体詞はやさしい日本語 ニュースでは0語、一般ニュースでは6語あった。

接続詞の平均使用回数はやさしい日本語ニュースで約28回、一般ニュースで約17回であり、

連体詞ほどではないが、どちらのニュースでも比較的高い。なお、やさしい日本語ニュース

の接続詞の平均使用回数が一般ニュースよりも多かったのは、やさしい日本語ニュースでは 意味を損なわない範囲で複文を避け、文の長さを短くすることが原則(第一章「2.3. NHKや さしい日本語ニュースの実践」表 2「やさしい日本語ニュース書き換え原則と対応(抜粋)」)

とされているため、(35) に示すように一般ニュースで接続助詞が使用された文脈で接続詞が 使用されていたこと、また、(36) に示すように、動詞の連用形接続で文がつなげられた部分 に接続詞を挿入して2文にするような例がみられたことが背景にある。

(35) a. たばこを吸う人の割合は、ピーク時の昭和41年には49.4%とほぼ2人に1人でした

が、その後は徐々に減少し、(後略)。(般: 107)

b. 割合がいちばん高かった1966年は49.4%で、半分ぐらいの人が吸っていました。

しかし、そのあとはだんだん少なくなって、(後略)。(や: 107)

(36) a. ハスは朝の咲き始めが美しく見えるということで、公園の池には朝から大勢の人が見物に

訪れ、写真を撮ったり、ゆっくりと散策したりして花を楽しんでいました。(般: 17)

b. 蓮は咲き始める朝、特に美しく見えるため、池には朝から大勢の人が来ています。そして、

写真を撮ったり、花を見ながらゆっくり散歩したりしています。(や: 17)

また、やさしい日本語ニュースで用いられた接続詞は「そして」「しかし」「また」「で も」「次に」の5語だが、そのうち「次に」は1回しか使用されておらず、「でも」は (37) に示すような引用文の中でのみ使用された語である。そのため、やさしい日本語ニュースに おいて、接続詞はほぼ「そして」「しかし」「また」の3語しか用いられておらず、必然的 に1語の使用回数が上がったものと思われる。

(37) a. 「僕の夢はワールドカップの決勝を戦うことだった。でもそれはもうできない。しかし、神

が望めばみんなが次の試合を勝ち抜き、優勝を達成してくれる。(後略)」(般: 24)

b. 「僕の夢はワールドカップの決勝に出ることでしたが、もうできません。でも39、ブラジル

は優勝すると思っています。(後略)」(や: 24)

感動詞はやさしい日本語ニュース・一般ニュースでは異なり語数がそれぞれ2語・1語と非 常に少なかった。これは「呼び掛け・応答や感情の動きを表す」(『日本語文法がわかる事 典』2005: 75)という感動詞の性質が、ニュースという報道文においては格別必要とはされな いためだと考えられる。それでも異なり語数・延べ語数で一般ニュースよりもやさしい日本 語ニュースのほうが使用が多い背景には (10) に示すように、一般ニュースでは「感謝する」

39 先述の「僕」同様、今回対象としたニュース文において接続詞「でも」が用いられたのはやさしい日本語ニュース・一般ニ ュースともに外国人の発話を翻訳引用した箇所に限られ、日本人の発話の中では全く使用されていなかった。

という動詞を使った表現が、やさしい日本語ニュースへの書き換えで「ありがとう」という 感動詞を含む表現に置き換えられた、という1例が存在したためである。

(10) a. ネイマール選手は「(中略)僕のために書いてくれたメッセージなどすべての応援と愛情 に感謝したい」と心境を話しました。(般: 24)

b. ネイマール選手は「(中略)皆さんからの応援と愛情、ありがとうございます」と話しま した。(や: 24)

また、やさしい日本語ニュース・一般ニュースに共通して用いられた感動詞は「わっしょ い」であり、(38) のように使用されていた。

(38) a. 23日は気温が33度を超えて厳しい暑さとなりましたが、女性たちは「わっしょい、わ

っしょい」と大きな声を出したり、(後略)。(般: 79)

b. 23日の大阪はとても暑くて、気温は33°C以上になりました。女性たちは「わっしょい、

わっしょい」と大きな声を出して元気に歩きました。(や: 79)

こうした (38) のような掛け声であれば、ニュースの中でも臨場感を出す目的で用いられる こともあるだろうが、明らかに掛け声であるとわかる書き方がされていれば、知らない語で あっても意味がわからないと混乱することはないと思われる。また、「感謝する」を「あり がとう」に置き換えたような例については、今回調査対象としたのニュースでは上記の1例 しか見当たらなかった。しかし、NHKニュースではやさしい日本語にする過程で、「ありが とう」に書き換えられた例のように、ほかの品詞に属する難易度の高い語を感動詞で代用す るという手段がとられるという可能性は考えられる。

このように、副詞・連体詞・接続詞・感動詞はいずれも全体に占める比率は小さいが、そ れぞれに特徴があった。副詞はやさしい日本語ニュースと一般ニュースの延べ語数に大差が なく、使用率ではやさしい日本語ニュースが一般ニュースの約2倍であった。その一因とし て、元のニュースで名詞が用いられていた箇所が副詞に置き換えられていた例を挙げた。連 体詞は1語あたりの平均使用回数が非常に多く、やさしい日本語ニュースでは62回、一般ニ ュースでは28回であった。接続詞も連体詞ほどではないが、使用回数が多い。なお、接続詞 の使用回数はやさしい日本語ニュースのほうが一般ニュースよりも多い。その原因として一 般ニュースで接続助詞が使用されている箇所、動詞の連用形接続で文が続く箇所が書き換え で接続詞にされていた例を挙げた。感動詞は非常に数が少なかったが、やさしい日本語ニュ ースでは一般ニュースでは動詞を含む表現が使用されていた箇所が感動詞を含む表現に書き 換えられていた例があった。

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