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補遺 : 熱放射

ドキュメント内 物理学I教材 (ページ 119-122)

第 9 章 力学的エネルギー保存則 (2) 91

11.7 補遺 : 熱放射

比(I/M) が小さいほど転がる速さは大きい。I/Mは,

質量が回転軸に近い部分に集中するほど小さい。鉄球A は内部が空洞なので,質量は回転軸から遠い部分に分布 するが, 鉄球Bは質量が回転軸に近いところにも(鉄球 Aに比べると)多く分布する。従って, I/M は鉄球B の方が小さい。従って,鉄球Bの方が速く転がる。

答150略。(3)は1012/s〜1013/s程度の量になるはず。

答151

(1) 剛体の振動運動は,ごく短い時間を切り出して考え れば, 軸を中心とする回転運動の一部とみなすこと ができる。その角速度ωは,単位時間あたりに変化 する角なので,θを時刻tで微分したものに等しい。

従って,ω=dθ/dtである。これを式(11.7)に代入 して,与式を得る。

(2) 剛体の(重力による)ポテンシャルエネルギーは,基 準点からの重心の高さと全質量, そして重力加速 度をかけたものに等しい。題意より, 定点(軸の位 置)Pから原点Oまでの距離はlである。Pから重 心Gまでの距離もlだが, 剛体が角θだけ傾いて いるときは, PとGの高さの差は, lcosθとなる。

従って,原点Oと重心Gの高さの差はl−lcosθと なる。従って, ポテンシャルエネルギーは与式のよ うになる。

(3) 力学的エネルギー保存則より, T(t) +U(t)は時刻 によらぬ定数である。従って,T(t) +U(t)をtで微 分したら恒等的に0になる。従って,

d

dt{T(t) +U(t)}

= d dt

{1 2I(dθ

dt )2

+M g l(1−cosθ)}

=I(dθ dt

)(d2θ dt2

)+M g lsinθdθ dt = 0 この式から与式を得る。

(4) 略(式(11.28)を使って式(11.27)からIを消去す ると式(11.29)を得る)。

(5) sinθ=θと近似すれば与式を得る。

(6) 注: 以下のωは(1)で出てきたωとは別物である。

θ=θ0cosωtを式(11.30)に代入すると,

−ω2θ0cosωt=−g

0cosωt (11.47) となる。これが全てのt について成り立つから,

ω2=g/l。振動の周期T は, T = 2π/ωより, 与式 を得る。

(7) 式(11.31)をg=の形に式変形すれば与式を得る。

答152 地球の角運動量Lは一定なので, 自転の角速度 ωが大きくなったということは,式(11.33)より,自転軸 まわりの地球の慣性モーメントIが小さくなっているは ず。おそらく,地震に伴う地殻変動によって地球がわず かに変形し,Iがわずかに小さくなったと考えられる。

よくある質問84 私はクラシック・バレエをやっています。

バレエでも,フィギュアスケートで言うスピンと同じことを地 表で行い(踊り)ますが,腕をうまくタイミング良く体の中心 に引き寄せると速く且つ安定して回れます。...これは問152 と同じ原理です。回転現象は本当に不思議で楽しいですね。

11.7 補遺 : 熱放射

我々の身の回りは, 光に満ち溢れているが, その光は どこでどのように発生するのだろうか? 例えば太陽, 白 熱電球,蛍光灯,レーザー,発光ダイオードなどの光源は どのような仕組みで光るのだろうか?

物体を構成する分子や原子は, 前述したように固有エ ネルギーを持つ。そのエネルギーとは, もとをたどれば, 分子・原子・電子等の持つ運動エネルギーやポテンシャ ルエネルギーだ。

固有エネルギーは, 低いものから高いものまで, 離 散的に(階段状に)存在する。それらをエネルギー準位 と呼ぶ。そして, 個々の分子や原子のエネルギーが, 高 い順位から低い順位に移り変わることがある。これを

「遷移」と言う。原子や分子が遷移するとき, そのエネ ルギーの差は, 何らかの形で原子や分子から放出され る(でなければエネルギー保存則が成り立たない)。そ の「何らかの形」のひとつとして光を出すのが,蛍光灯, レーザー, 発光ダイオード等だ。

太陽や白熱電球も,結局はそのような仕組みで光るの だが, 他とはちょっと違う。太陽や白熱電球は, 「熱が 光に転化する」という仕組みで光るのだ。

先述のように, 物体を構成する粒子は, その温度に応 じたエネルギーを, 平均的に持つ。「平均的」というこ とは,実際にはそれよりも大きなエネルギーを持つ粒子 も多少あれば, それよりも小さなエネルギーを持つ粒子 も多少はある。その状況で, 粒子が遷移すると, 光が放 出され, 粒子のエネルギーは若干下がる。そしてエネル

114 第11章 慣性モーメント ギーが下がった粒子は周囲の粒子と衝突したり光を吸収

したりして, 再びもとのエネルギーに戻る。このような ことが無数に発生することで, その物体から光が出続け るのだ。このような仕組みを「熱放射」と呼ぶ。

実は, 太陽や白熱電球だけでなく, ほとんど全ての物 体は,それぞれの温度に応じて熱放射している。例えば, 君の体も熱放射している。君の体も光っているのだ!! た だし,その光は,人の肉眼で見える光(可視光)ではなく, 赤外線だ。だから, 赤外線を検知できるセンサーで人体 を調べれば, 君の体表面の温度がわかるのだ。赤外線体 温計はそれを利用している。また, 夜行性の動物を観察 するのに赤外線カメラというものをよく使う(NHKの 番組「ダーウィンが来た!」を見よ)。が, それも同じ事 だ。動物は体温が高いため, 周囲よりも多くの赤外線を 出す。それを検出するのだ。

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第 12 章

慣性系と慣性力

車がカーブする時に搭乗者は回転の外側にひっぱられ る力を感じる。エレベーターに乗ると, エレベーターが 動き始めたり止まったりするときに身体が重くなったり 軽くなったり感じる。このような力を慣性力という。慣 性力は,地球の気象現象を司る「コリオリ力」の源であ り, また, 農業機械の自動運転に欠かせない「慣性計測 装置」の原理でもある。この章では,慣性力について学 ぼう。

12.1 慣性系と慣性の法則

質点の位置(x, y, z)とは,どこかにある「原点」(0,0,0) と,どちらかに向かう座標軸(x軸,y軸,z軸)の組み合 わせ,つまり座標系を定めることによって初めて定量的 に定まる概念だ。つまり,座標系が無ければ位置は定ま らない。位置の(時刻による)微分が速度であり,速度の (時刻による)微分が加速度なのだから,位置が定まらな ければ速度も加速度も定まらない。加速度が定まらねば 運動方程式は意味を持たない。すなわち, 座標系が無け れば運動の法則も無いのだ。

では, 「座標系」というのは, どのようにして与えら れるのだろうか? たとえばつくば市のどこかの地点を

「原点」と定めて, そこから東西南北と上下に座標軸を 張れば, それはひとつの座標系だが, それ以外にも座標 系はあり得る。ハワイやフランクフルトあたりに原点を 置くこともできるだろう。あるいはつくばエクスプレ スの,走行中の快速電車の先頭車両の真ん中に原点を定 めて, 進行方向にx軸, 右方向にy 軸, などと定めるこ ともできるだろう。そんなのありか!?と思うかもしれな いが,座標系は静止していなくてもよいのだ。そもそも

「静止」という考え方が,何か特定の座標系を基準にした ときにのみ成り立つ概念であり, どれかの座標系で見れ ば静止している質点も, 別の座標系で見れば動いている, ということは十分にありえるのだ。

そういうわけで,座標系の与え方には任意性があるし, 座標系の与え方によって運動の様子も違って見える。実

は,我々がこれまで学んだ「運動の3法則」が成り立つ ように見えるのは, そのような多種多様な座標系の中で も一部の, 特別な座標系である。そのような座標系を, 慣性系という。

よくある質問85 えっ!? 運動の3法則が成り立たないなん てことがあるのですか!? なら運動の3法則は「基本法則」と は言えないじゃないですか! ... 運動の3法則は,「慣性系で 考える」ことが前提条件です。慣性系でない座標系で運動の3 法則が成り立たないことがあっても,それは運動の3法則が不 完全であるとか,間違っているとか,普遍性に欠けるというこ とではなく,単に前提条件を満たしていないだけです。

よくある質問86 でも運動の3法則には,「慣性系で考える なら...」みたいな前提条件は無かったように思いますが... い え,ちゃんと入っていますよ。第1法則,つまり「慣性の法則」

がそれです。「前提条件」でなく「法則」という形で入ってい るので読み取りにくいですけどね。もう少しこの続きを読ん でみて下さい。

実は, 運動の3法則の中でも, 慣性の法則が成り立つ かどうかが鍵である。つまり,

慣性系の定義

「力がつりあっていれば,質点が等速直線運動をす る」ように見える座標系, つまり, 慣性の法則が成 り立つ座標系を 慣性系 という。

後に示すように,慣性の法則が成り立たない座標系も 存在する。それを 非慣性系 という。

慣性の法則は, この世の中には, どこかに慣性系が存 在する,ということを保証する法則なのだ。つまり,「力 がつりあっていれば, 質点が等速直線運動をする」よう に見える座標系が, この世のどこかに必ず存在する, と いうのが, 慣性の法則の本当の意味(物理学における位 置づけ)なのだ。そして, そういう座標系で見れば, あ との2つの法則(運動方程式・作用反作用の法則)も成

116 第12章 慣性系と慣性力 り立つよ, ということを言っているのだ。そういう意味

で,慣性の法則は,運動の3法則の「舞台」を設定する法 則だと言えよう。

ドキュメント内 物理学I教材 (ページ 119-122)

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