第3章 Monte Carlo Simulation による試算結果
8 被保険者資格喪失者(離職者)の決定プロセス
第3章
図3-7: 被保険者比率と被保険者数
同時に解雇が発生する.これも離職に含まれ,制度上,失業保険の給付期間も長く設定されて いる.市場賃金率よりも被保険者の賃金が割高であれば,雇い主は解雇する.このように同じ 変数でも,両方向の効果が考えられるため実際のモデルにするためには,より複雑な構造を考 えなければ成功しない.そのためには追跡調査をおこなった個票のパネルデータをもちいて得 られる理論モデルにもとづいた構造方程式の推定が必要である.マクロ的な動きのデータしか 得られないため,ここでは離職率の推定は時系列分析に頼らざるを得なかった.
t t
t t t
Quit NQ NI
NI p NQ
, 1 , 1
, ln 1 (12)
N MA
i
i t i AR
N
i
i t Quit i t
Quit p
p
_
0 _
1
,
,
(13)パラメターα,β は一般的には時間的に変化するものとして考えておく.誤差項ε については 統計的に処理される.仮に災害や予測できない経済的ショックがある場合には,誤差項が異常 な値をとると考えられる.雇用保険の被保険者が資格を喪失する率,離職率は季節性の高い変 数である. , の単位根検定の結果はつぎのとおりである.
Dickey-Fuller=-12.7225, Truncation lag parameter =4, p-value = 0.01
この結果から,離職率を logit 変換した , には単位根は含まれていないということができる.
AIC の値が最小になる自己相関と移動平均のラグの大きさを決めると,AR(8),MA(1)となること がわかった.さらに季節性に関する ARIMA は和分が 1 次,自己相関が 2 次,移動平均が 1 次と いうことになった.
残差の正規性の検定もほかのケースよりはかなり正規分布に近い形をしていることがわかる.
これについては,残差の正規 QQ-plot を見ればわかる.
この ARIMA 推計を利用して離職率の予測値をもとめたものが図 3-9 である.初期には変動が 非常に大きいが,長期的には中位推定では 0.015 程度で収束している.離職率が高い上限 95%
信頼限界でも,0.03 まで行く程度の上昇にとどまっている.離職率が低い場合は,ほとんどゼ ロになるが,さすがにこれはあり得ない状況である.右は 1000 回のシミュレーションを行った グラフである.左よりもより高い離職率が実現するケースが見られる.平均すれば 25 回程度に なるはずである.最終的なシミュレーションで,1.5%程度の離職率の上昇が大きな影響をもつ ので,右の図のようなケースも準備している.
第3章
表3-4: 離職率のlogit変換した変数についての時系列分析 1996年4月~2012年3月
ARIMA(8,0,1) ar1 ar2 ar3 ar4 ar5 ar6 ar7 Coefficients -0.052 0.3122 -0.3263 -0.559 -0.3517 0.4236 -0.3077 s.e. 0.0523 0.0437 0.036 0.037 0.036 0.0377 0.0429
ar8 ma1 seasonal(2,1,1) sar1 sar2 sma1 Coefficients -0.7356 -0.4039 Coefficients -0.0257 -0.9241 -0.4039 s.e. 0.049 0.0686 s.e. 0.0292 0.0272 0.0686 σ2 0.01664 AIC -201.81 log-likelihood 113.9
残差の正規性検定:JB-test, Shapiro-Wilk-test などの p-value=0.003, 0.008, 0.1182,
Skewness=0.0218,Kurtosis=0.0071
図3-8: 離職率をlogit変換した値の時系列モデルの残差の正規QQ-plot
図3-9: 離職率の将来推定値 注:右の図は1000回のシミュレーション値である.