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第2章 積立金

4 ソルベンシー・マージン比率

民間保険会社の経営の健全性を判断する基準の一つに「ソルベンシー・マージン比率」があ

41給付日数や給付率などの制度そのものの変更はここでは含めない。ただし保険料率については、複数のケースを置 いて計算した(第 3 章)。

42他の要素、例えば被保険者数や賃金、資格喪失の割合(離職率)などは、基本的に、時系列モデルの考え方で将来 値を置いた。離職率についてのみ、時系列モデルで得られる将来値の信頼区間の上限、下限で推移するとした場合の 計算も行った(第 3 章)。

43いずれも再保険である。例えば、農業共済再保険は、風水害、病虫害などによる損失補てんを目的に、全国各地域 にある農業共済組合又は市町村が行っている農業共済事業に係る再保険である。この再保険は二段階から成る。まず、

各農業共済組合等は、‘通常標準被害率’を超える異常災害分を全国に 41 ある農業共済組合連合会が負担するように、

農業共済組合連合会に再保険を付す。さらに、各農業共済組合連合会は、‘異常標準負担率’を超える分を政府の農 業共済再保険特別会計から負担するように、政府に再保険を付す。再保険を引き受ける側にとっては、事故の発生率 が異なるものの、保険を引き受けるのと変わりはない。(再保険に付する側にとっては、責任準備金の算定の仕方が 変わるなどの違いが出てくる。)

第2章

る。保険会社のソルベンシー・マージン比率についてみた後、これにならって雇用保険の積立 金のソルベンシー・マージン比率を求めるとすれば、どのような計算が考えられるか、考え方 を整理してみた。

ア 保険会社のソルベンシー・マージン比率

民間保険会社のソルベンシー・マージン比率は、財務省「平成 23 年版特別会計ガイドブック」

によれば、保険金等の支払能力の充実の状況を示す比率であって、

「民間保険会社が、大規模災害による保険金支払いの急激な増加や運用環境の悪化など「通 常の予測を超えるリスク」に対して、どの程度自己資本・準備金などの「支払余力(マー ジン)」を有するかを示す経営健全性の指標」

である。この比率が 200%以上であることが、民間保険会社の保険金等の支払能力の充実の状況 が適当であるかどうかの基準とされている。

(法令の規定)

保険業法及び保険業法に基づく規則、告示に、保険会社のソルベンシー・マージン比率に関 する規定がある。平成 4 年保険審議会答申「新しい保険事業のあり方」において、金融自由化 の進展等を背景に、保険会社が直面する諸リスクが増大する中、リスク管理体制整備の一環と して諸外国で受け入れられているソルベンシー・マージン基準の考え方を導入し、早期警戒シ ステムの一環として行政監督上活用するため、法令上の根拠を設けることが適当とされたこと を受けて、平成 7 年保険業法(施行は平成 8 年)に設けられた。現在の規定振りは次のとおり である。

第 130 条(健全性の基準) 内閣総理大臣は、保険会社又は保険会社及びその子会社等に係る 次に掲げる額を用いて、保険会社の経営の健全性を判断するための基準として保険金等の 支払能力の充実の状況が適当であるかどうかの基準を定めることができる。

一 資本金、基金、準備金その他の内閣府令で定めるものの額の合計額

二 引き受けている保険に係る保険事故の発生その他の理由により発生し得る危険であっ て通常の予測を超えるものに対応する額として内閣府令で定めるところにより計算した 額

(他に外国保険会社等、免許特定法人、保険持株会社の子会社である保険会社に関しそれぞ れ 202 条、228 条、271 条の 28 の 2 に同様の規定がある。)。

内閣総理大臣の定める基準は、「保険業法第 130 条等の規定に基づく保険金等の支払能力の充 実の状況が適当であるかどうかの基準等(平成 11 年 1 月 13 日金融監督庁大蔵省告示第 3 号))」 にある。次のとおりである。

保険業法(平成 7 年法律第 105 号)第 130 条、第 202 条、第 228 条及び第 271 条の 28 の 2 の規定に基づき、保険金等の支払能力の充実の状況が適当であるかどうかの基準等を次の ように定め、平成 11 年 3 月 31 日から適用する。

一 保険業法(以下「法」という。)第 130 条の規定により定める保険金等の支払能力の充 実の状況が適当であるかどうかの基準(保険会社に係る同条各号に掲げる額を用いて定 められるものに限る。)は、次の算式により得られる比率について、200 パーセント以上 とする。

法第 130 条第 1 号に掲げる額

―――――――――――――――――――――――――――――

(1/2)×(法第 130 条第 2 号に掲げる額)

(二号以下略)

法第 130 条第1号に掲げる額の計算方法は、保険業法施行規則 86 条(健全性の基準に用いる 単体の資本金、基金、準備金等)と 86 条の 2(健全性の基準に用いる連結の資本金、基金、準 備金等)に、第 2 号に掲げる額の計算は同 87 条(通常の予測を超える危険に対応する額)に、

さらにこれらを受けた平成 8 年大蔵省告示 50 号「保険業法施行規則第 86 条等の規定に基づく 保険会社の資本金、基金、準備金等及び通常の予測を超える危険に相当する額の計算方法等」

において規定されている。

(趣旨)

このように、保険金等の支払能力の充実の状況が適当であるかどうかの基準を設ける趣旨は 次のとおりである。

① 保険会社は従来、毎決算期において、保険契約に基づく将来における債務の履行に備える ため、責任準備金を積み立てなければならないとされている(保険業法 116 条)。責任準備金 については、保険業施行規則にさらに詳しい規定がなされている。生命保険会社は保険業法 施行規則 69 条に、損害保険会社については同 70 条である。

② しかし、予測を超える保険事故の発生や資産運用成績の悪化で、責任準備金だけでは保険 金等の支払いに対応できなくなった場合は、支払い責任履行のため、保険会社は自己資本や 準備金等を取り崩す。自己資本等は責任準備金を超える保険金支払いの最終的な担保である。

これをソルベンシー・マージン(支払い余力)と呼ぶ。ソルベンシー・マージンが通常の予 測を超えるリスク相当額に比して大きければ、保険会社は支払能力が充実していることにな る。

③ 金融の自由化の進展、保険事業の規制緩和、競争の促進に伴いリスクが増加する中で、保 険会社の経営の健全性を判断するための指標として、ソルベンシー・マージンをみる必要性 が増してきた。

④ そこで次の比率を、保険会社が、通常の予測を超えるリスクに対して、どの程度「自己資 本」等の支払余力を有するかを示す指標――ソルベンシー・マージン比率とすることにする。

支払い余力

─────────────────────×100 1/2×通常の予測を超える危険に対応する額

第2章

⑤ 行政は、保険会社の経営の健全性を確保していくための手法として、保険業法第 132 条第 2 項に基づき、ソルベンシー・マージン比率による早期是正措置を行い、保険会社の経営につい て早期事前チェックを期する(ソルベンシー・マージン比率が 100%以上 200%未満、同 0%

以上 100%未満、同 0%未満の区分に応じて、命令の内容が変わる(保険業法第 132 条、保険 業法第 132 条第 2 項に規定する区分等を定める命令(平成 12 年 6 月 29 日総理府・大蔵省令 第 45 号))。

イ 雇用保険の積立金のソルベンシー・マージン比率

ソルベンシー・マージン比率を規定する保険業法においては、雇用保険は適用除外であるが44、 雇用保険の積立金に、保険会社について使われる手法を当てはめ、

──────────────────────×100 積立金 1/2×通常の予測を超える危険に対応する額

を積立金のソルベンシー・マージン比率とする。

分母の通常の予測を超える危険に対応する額については、雇用保険の場合、保険会社に関す る規定である保険業法施行規則 87 条に挙げられている45第三分野保険リスク、予定利率リスク、

最低保証リスクは無関係であり、資産運用は財政融資資金法及び特別会計法に従って財政融資 資金に預託しているので、資産運用リスクはゼロと置ける。

そこで、通常の予測を超える危険に対応する額は、保険リスクと経営管理リスクの2つに対

44保険業法第 2 条(定義) この法律において「保険業」とは、人の生存又は死亡に関し一定額の保険金を支払うこ とを約し保険料を収受する保険、一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約し保険料を 収受する保険その他の保険で、第三条第四項各号又は第五項各号に掲げるものの引受けを行う事業(次に掲げるもの を除く。)をいう。

一 他の法律に特別の規定のあるもの

45保険業法施行規則 87 条では、次の額を基礎として計算するものとされている。

・保険リスク(実際の保険事故の発生率等が通常の予測を超えることにより発生し得る危険)

・第三分野保険の保険リスク 注 主に医療・介護分野

・予定利率リスク(責任準備金の算出の基礎となる予定利率を確保できなくなる危険)

・最低保証リスク(特別勘定を設けた保険契約であって、保険金等の額を最低保証するものについて、当該保険 金等を支払うときにおける特別勘定に属する財産の価額が、当該保険契約が最低保証する保険金等の額を下回る 危険であって、当該特別勘定に属する財産の通常の予測を超える価額の変動等により発生し得る危険)

・資産運用リスク(資産の運用等に関する危険であって、保有する有価証券その他の資産の通常の予測を超える 価格の変動その他の理由により発生し得る危険)

・経営管理リスク(業務の運営上通常の予測を超えて発生し得る危険であって、上期に掲げる各危険に該当しな いもの)

具体的には、それぞれ、平成 8 年大蔵省告示 50 号「保険業法施行規則第 86 条等の規定に基づく保険会社の資 本金、基金、準備金等及び通常の予測を超える危険に相当する額の計算方法等」に規定がある。いずれも保険年 度という 1 年間を期間とするリスクに対応する額である。

また、損害保険会社については、最初の「保険リスク」が、一般保険リスクと巨大災害リスクに分けられてい る。