吟味・修正 割追・開発
授業理論 て授業仮説)
授業モデル
(教授書)
I 学習材I
(授業実践支援機能)
授業計画
(掌習指導実〕
I 学習材I
(教授学習活動支援機能)
授業実践
研 究 の 世 界
実 践 の 世 界
図17 教育実践研究におけるr学習材」の位置づけと二つの機能
(筆者作成)
Iのr教授学習活動支援機能」は,すべてのr学習材」にみられる機能である。これ は,授業者と学習者の直接的なやり取りである教授学習活動を支援する機能である。そ のうち学習者の学習活動を支援することは学習材の本来的機能といえる。しかしそれと 同時に,「学習材」は授業者の教授活動を支援をする機能も持っている。事実,S教諭,
A教諭も,教授学習活動において「学習材」の資料を積極的に活用し,学習者に提示し ていた。特に,より教授書に忠実であるS教諭の場合,「学習材」の活用は教授学習活動 での活用に特化していた。このようなことから,「学習材」には「教授学習活動支援機能」
があり,それは研究の世界と実践の世界をつなぐ基本的かつ補助的な機能であるといえ
る。
一方,nの「授業実践支援機能」は,教授書を実践可能で現実的な授業計画に加工・修
正しようとする際に,「学習材」が授業者の自主的・自立的な授業計画・実践を支援する
機能である。事実,A教諭はカリキュラムの内容関連や制約を考慮して,教授書にも「学 習材」にもみられない学習内容を,「学習材」の資料と関連づけて取り入れ,教授書を実 現可能な授業計画に加工していた。ここでは「学習材」は教授書を実際の授業計画へと移 す中心的な役割を果たしていた。このようなことから,「学習材」には「授業実践支援機 能」があり,それは研究の世界と実践の世界をつなぐ現実的かっ実践的な機能であると
いえる。
11学問的課題の克服一授業モデルの修正課題一
学問的課題の克服については,「学習材」を活用した複数の検証によって,より広く授 業計画・実践の事実や学習成果,実際の実践者の声を得ることができた。それは同時に,
その結果からより一般性の高い教授書の有効性や修正課題を得ることができる,というフ ィードバック過程を示すことができたといえる。事実,S教諭,A教諭の授業計画・授業 実践からは,授業モデルの単元の最後に位置づく他の事象(中国)への応用・検証につい て,両者から同様の検討課題が提起された。
二 知識の獲得と社会認識形成
以上のような「学習材」を活用した追試によって,生徒はどのような知識を獲得し,社 会認識を形成したのだろうか。そして複数の中等社会科教師による単元「インド」の「学 習材」を活用した追試は,何を示唆するであろうか。
1 理論的知識(分析的理論としての消費社会論)の習得
S教諭,A教諭の「学習材」を活用した単元「インド」の授業を受けた生徒に,プレテ スト・ポストテストを行った。理論的知識(消費社会論による分析的理論)を習得してい るか,ということについての問題は,次の2問である。
問題Aは,消費社会論に内包される下位の理論となる「誇示的消費」を問う問題である。
問題Bは,消費の拡大による社会への影響についての消費社会論による説明を問う問題で
ある。
問題A
問題B
なぜ,人々は,ブランドのバッグや高級車を買ったり,海外へ旅行に行った
りするのでしょう?あなたの考えを述べてください。次の二つの図を見て下さい。図1は日本の耐久消費財の普及を,図2は日本 の大学・短大等進学率を示しています。これを見ると,今ではみなさんの家に 当たり前に見られる洗濯機,冷蔵庫やカラーテレビなどが普及し始めたころ
(1965〜75年ころ),大学・短大の進学率が上昇しています。なぜ,このよう な耐久消費財が普及したころ,大学・短大の進学率が上昇しているのでしょう?
あなたの考えを述べて下さい。
S教諭のO中学校からは,最初のクラスの最初の男女ということで,2年1組の1番男 子(A男)と31番女子(I女)を抽出生徒とした。また,A教諭のK高等学校からは,
最も記述のあったS子を抽出生徒とした。O中学校生徒よりもK高等学校の解答(記述)
の量が全体として少なく,特に文系クラス(受験で地理を必要とする生徒の多いクラス)
での記述の量が少なく(無回答も多い),逆に理系クラス(受験で地理を必要とする生徒 の少ないクラス)の方が記述が多い。原因ははっきりしないが,クラスによってのばらつ きが大きく,授業とは別の要素が大きく働いていることが予想され,形式的な数値での処 理があまり意味をなさない可能性が高いので,最も記述の多いS子を抽出生徒とした。
抽出生徒の回答は,表10・表11の通りである。問題Aのr誇示的消費」という理論につ いて,授業前(プレテスト段階)では,A男は持っていないが,1女,S子は,具体的な 思考のレベルで既に持っていることがわかる。しかし,授業の後のポストテスト段階では,
A男はr誇示的消費」を習得し,I女,S子は,抽象的な表現で,概念レベルで理論を習
得したことがわかる。問題Bの「耐久消費財などが普及すると,豊かな生活を維持・発展させるため,より高 級な就職先へ就職できるよう,高学歴化が進む。」という消費活動が及ぼす社会的影響に ついての消費社会論からの説明について,授業前(プレテスト段階)では,A男とS子は,
主に情報の獲得から大学進学率が上昇すると考えている。I女は,耐久消費財の普及によ って家庭の電気代などの光熱費が抑えられ,それによって家計に余裕ができて大学へ行け る人が増えた,と考えていると思われる。このように,いずれの抽出生徒も,授業前では,
耐久消費財の普及と大学進学率の関係について上手く説明することができていない。しか
表10 問題Aについてのプレテスト・ポストテストの回答例
学校
○中学校 K高等学校
生徒
A男 I女 S子
プレ お金があるから。 お金持ちだと思われたいか ブランドのバッグや高級車を買うこ
ら。 とによって,周りと差をつけると感
じており, ブランド という名前に 特別な意識を持っているから。
海外旅行へは,働いていた疲れをい やす目的や家族や友人との思い出を 作るなどといった目的で今までいた 日本をはなれることによって開放感 があると思う。
ポス 優越感にひたるため。ブラ 人に見られるという優越 消費への欲求と優越性の確認という
ト ンドのバックなどを持てい 感。自まんするため。 ものが人問の精神にあるから。
るとすごいまわりの人は,
お金持ちなんだなと思うと 思います。それで持ってい る人はそういう風に見られ たいからブランドバックな とを買うんだと思います。
(プレテスト・ポストテストから筆者作成)
表11問題Bについてのブレテスト・ポストテストの回答例
学校
○中学校 K高等学校
生徒
A男 I女 S子
プレ テレビが見れるようになっ 電気代が昔よりかからなく 冷蔵庫やカラーテレビなどが普及す たので,テレビで大学とか なって,大学へ行ける人が ることによって子供たちは,いるい しょうかいしていてそれで 増えたから。 ろなことに興味を示す。特にカラー
いきたいなと思うようにな テレビなどといったものは,外部か
った。 ら多くの情報を得ることができる。
そのように,子供たちはいろいろな ものに興味を持ち,情報を得ること によって大学や短大に進学したいと いう気持ちになり,進学率が上昇し
たと考える。
ポス それは,日本が発展したか 耐久消費財を普及してか 耐久消費財の普及が大きくなるにつ
ト らだと思います。色々な物 ら,売っているが側がもう れて.経済が発展しており,子ども が買えるようになった人が けて,そのお金で大学等に を大学へ進学させることで,よい職 増えてきてそれでお金がな
行かせられるからだと思
業に将来就職できるから。いと大学には行けなくてだ う。
から日本人にお金持ちの人 が増えたから大学に行く人 も増えたんだと思います。
(プレテスト・ポストテストから筆者作成)