第八章 普遍的理論に基づく総合的理論を中核にした 地誌学習の教育内容開発の実際
第二節 単元rラテンアメリカ」の教授計画書
③学習者にとって,ブラジルは,コーヒーやサッカー,日系ブラジル人,環境問題と,
日常的に目や耳にする,身近な存在であろう。しかし,そのようなブラジルも,政治,
経済,社会,文化などについてはあまり理解されていない。表面的にはよく知っては いるけど,実のところよくわかっていない地域,社会である。ここにrなぜ」と問い かけることは,生徒の知的好奇心を喚起する可能性がおおいに高いと言える。
④ ラテンアメリカを説明する普遍的理論は,地域を越えて社会を説明することを可能
とする。それらは,日本での政治現象や日系ブラジル人住民と近隣の住民とのトラフ
ルの問題など,わが国が抱えている現状や課題を理解することを助ける可能性が高い。
(3)工業化は,資本集約的であり,多くの雇用を生みだすものではなかった。また農業 の近代化を進展させ,大土地所有者などの富裕層には恩恵をもたらしたが,零細農民 や農業労働者などの低所得者層にはその恩恵はなく,多くの都市流入者をもたらし,
インフォーマル・セクターに従事する劣悪な生活を強いた。このようなことから,工
業化は貧富の格差を拡大させた(従属論)。(4)ペルソナリスモという政府や法よりも人間関係を重視する価値観がブラジル社会に 深く根づいており,これが,政治においてもクライエンテリズムやポピュリズム的特 徴を生みだし,一部の利益集団を向くような政治や不合理な政治を生みだしている。
a ラテンアメリカの政治は,クライナンリズムというパトロン=クライエント関係 の特徴を持っており,部分的な利益の追求により合理的な政治・経済運営を不可能 にしており,広範な腐敗と結び付く傾向にある(クライエンテリズム)。
b ラテンアメリカの政治は,ポピュリズム的な政治スタイルがとられる場合が多く,
短期的な経済利益の約束で民衆に訴える指導者を特徴とする。これは,長期的な責 任ある政治と相反することとなる(ポピュリズム)。
C ラテンアメリカやブラジルでは,ペルソナリスモという法律など抽象的原理より は,特殊個人的な人間関係を重視する強い価値観がある。この価値観は,国や政府,
法といった非人格的なものを信用しない。それよりも,より人間関係的なネポティ ズムという身びいきやパトロン=クライエント関係を重視し,個人的な人気によっ て指導者が決まるポピュリズム的政治的特徴を生みだしている(ペルソナリスモ)。
(5)カトリシズムの世界観によって,階層間の不平等は世俗的なものとして受け入れら れ,サッカーやフィエスタに熱狂することによって日常性の苦しさから解放され,不
平等を忘れる(カトリシズム)。四 指導計画と単元構成
1 指導計画(言十10時間)【1】世界一のコーヒー生産国ブラジル… 2時間
【2】ブラジルの工業化と対外債務・・… 2時間
【3】ブラジルの工業化と貧富の格差・… 2時間
【4】ブラジルの社会的風土・・・・・… 2時間
【5】ブラジル社会とラテンアメリカ社会・・2時間
2 単元構成
過 程 習得する理論 限 主 な 間 い
一 ■ 一 ■ I . 一 一 一 一 一 1
◎ブラジルは、なぜ世界一のコーヒー生産国となっているのでし 1中心部一周辺部論
よう?
=(開発優先主義) 2
ノく 3 ◎ブラジルっていったいどんな国なのだろう?
ブラジルの総、合的理論の Il一一一.一一一.一一一一一一
◎なぜ,ブラジルは,工業化が進んでいるのに,国の借金(対外債
I 形成・検証 4 務)が多いのでしょう?
I
(ラテンアメリカの =従属論 5
ト ◎なぜ,ブラジルは,工業化を果たしても、貧富の差が大きくなっ
分析的理論の形成 i ているのでしょう?
I ・検証 6
■ 一 一 一 I 一 一 一 一 一 一 一 一
。
1クライエンテリズム
◎なぜ貧富の差を是正するような政策が行われないのでしょう?
1ポピュリズム 7
1一 一 一 一 一 一 . . ■ 一 一
=ペルソナリスモ ◎なぜ,人々は,自分の貧しさや階層間の格差を受け入れることが
I
■Iカトリシズム 8 できるのでしょう?
ブラジル ◎ブラジルっていったいどんな国なのだろう?
ラテンアメリカの の総、合的理論
ノく
1 総合的麟念の形成・検証 9 ◎ブラジルにみられるこのような特徴は,ラテンアメリカの他の国
ト (ブラジルの総合的理論 ラテンアメリカ ・ にもみられる特徴だろうか?
H
の応用・検証 の総、合的理論 10 ◎ラテンアメリカっていったいどんなところだろう?
五 授業展開
第1・2限
発 問 教授・学習活動 資料 生徒から引き出したい知識
コ]ビーのラベルを複数示す。 T:提示する。 1 ・インスタントコーヒーの裏側一」のラベル。
導 リービーのラベルからどんなことがわかるで T=発問する。
し.しう? P1答える亡 ・原材窄パ・j生産国{ブラジル,コロンビアなど)など。
・資料を見てください。世界の主なコーヒーの T=資料を示し 2 生産国です。どんなことがわかりますか? 発間する。
入 P1答える。 1位ブラジル.2位コロンビア など
・今回は,世界一のコーヒー生塵国ブラジルに T=学習主題を ついて学習していきましょう。 提示する。
◎ブラジルは,なぜ,世界一のコ]ビー生産国 T=発問する。
となっているのでし.にう? P1推預ける。 (・気候がよいから,土地が広いから,など〕
展 ○それでは,ブIラジルのコーヒー生産について、 T:調査主題を グノトプに分かれて,調べてみましょう。 提示し,指示
歴史調査グノトプ】 する由
◇いつ頃から、なぜ.生産されるようになった P=調査し,ま 噺訂増補ラテンアメリカを知る舌鞍U平凡杜。1999
のカ㌔ とめ,発表す 腕図説大百科世界の地理5南アメリカ』朝倉書店、1997
【自然条件調査グノトプ】 る。 『ゲィゾユ丁州一プ世界再発見3南アメリカ』同朋舎出版、1992
◇どのような自然条件で、生産されているのれ 『世界各国のくらし20ブラジルのくらし』ポプラ社1996
開 【統計調査グノトブ】 『きみにもできる国際交流24ブラジル・ベノト』情成杜2001
◇輸出量や生産量などは,どのようになってい 『世界国勢図会2001/2002年版』矢野恒太記念会 2001
るカ㌔ ○南部の気候や土壌などの自然科牛がコーヒー生産に適しており,南部に
○調査の結果とのようなことがわかったか、ま I1I=発問する。 コーヒーのプランテーションがつくられ、大農場で生産された独立後、
とめてみましょう。 P=まとめる。 コーヒーは,欧米諸国へ輸出され,ブラジルを代表する輸出晶となった 現在も.先進国を中心に輸出され,生産・輸出量とちに世界一となって
いる。
1 ○ところで,なぜ,ブラジルのコーヒーが,よ T=発問する、 :{
く売れるのでしょう?資料を読んでみまし.ヒ P1答える。 ○プーラジルのコーヒーはブレンド豆として欠カせないという強みがあるカ
う。 ら、よく売れる。
◎ブラジルは.なぜ、世界一のコーヒー生産国 T=発間する。
ま となっているのでし.tう? P1答える。 ◎ブラジルは,コーヒー生産に自然条件が適しており,とくに19世紀以降,
と 大農場で生産されたコーヒーは,欧米を中心に輸出されるようになった
め 現在でも.先進国を中心に輸出され,ブレンド豆としての需要も高いた
め、世界一となっている。
第3・4限
発 問
導
入
・前時で,■統計調査グループ】が調べてくれ たデータをもう一度みてみまし.Lう。
・ブラジルの貿易の統計{1998年)をみてくだ さし 。どσ)ようなことがわかりますか?
◎ブラジルって,いったいどんな国なのだ
1%5年のブラジルの貿易の統書十をみてくださ い。1998年の貿易の統計と比べてどんなこと がわかりますか?
展この統計は国の借金(対外債務〕がどのくら レ減っているかを示していますが,どういう ことがわかりますか?
◎なぜプラノルは,工業イω進んでいるσ)に,
国σ糟金(対外債務)が多いのでし一ヒう?
いつ頃から借金が増え始めたのでし.Lう?資 料から.どんなことがわかりますか?
○なぜ.ブラノルは,借金をしたのでし仁っワ 資料から、どんなことがわかりますか?
○なせ.プラソルがめざした工業化は 対外債 務(借金〕が返せないσ)でし、仁う?資料から,
どんなことがわかりますか?
○なぜ,債務の膨らむ政府主導の工業からの転 換を図らないのでし.ヒう?資料から.どんな ことがわかりますか?
◎なぜ,ブラジソレは、工業地]帷んでいるのに,
国州昔金(債務〕が多いのでし.止う?
教授・学習活動
T1提肘る。
P=確認する。
T1発汗る。
P:答える。
T:発問す る。
P1推預1ける。
T1発吊昨る。
P1答える。
T1発田肝る。
P1答える。
一II1発田作る。
P=推測する。
.r1発卍昨る。
P1答える。
.r1発田胴一る。
P1答える。
Ir=発問する。
P1答える。
T=発吊庁す る。
P1答える。
/ =発間する。
P1答える工 資料
2 4
5
6
9〜
12
13
14 15
生徒から引き出したい知識
コーヒーの生産量,輸出量ともに、ブラジルは世界1位である.コ
ブラジルは,世界のなかではコーヒーの生産量,輸出量とも1位なのに,
ブラジルの貿易のなかでは輸出品の第5位である。
1965年は,コーヒーが貿易品の1位だったのに,今では,機械類や自動 車1など工業製品が上位を占めている。
ブラジルは,工業地]帷んだ
ブラジルは.世界一の債務国である。
ラテンアメリカは借金(債務〕が残っている国が多い。
(工業化しても追いつけないほど州昔金をしているから、、借金をしなが ら工業化をしているから。わからない…)
・ブラジルは、1970年代から80年代に急激に借金が増えた
○ブラジルは.工業化を進めるため.政府主導で積極的な外国からの資金 を投入したそして,アマゾン道路の開発やダム建設.鉱山の開発など 大規模プロジェクトをおこなった(中心部_周辺部團制。
○大規模プロジェクトでは,投資をはじめてから実際の生産活動がおこな われるまでに長期間を必要とし,輸出財産業・v〕関連効果が間接的であ った
○また,国家の大規模プロジェクトに投資が偏ったため,ブラジルに比較 優位な製造部門や農業部門への投資が希薄になり,対外債務が直接的に 輸出財産業の生産能力拡大と生産向上などに結びつかなかった ゆえに、外貨樹早に効果は薄く、伯務返済につながらないものであったコ
O r小さな国家」を指向し.国営企業の民営化を進め.自由経済政策〜〕
転換を図っている。
○国内でほとんど技術開発が行われていないため、海外に技術を依存して おり,その技術使用料支払いσ墳担は重いものとなっている。また最新 の技術は容易に移転されないため.輸出に強い高師口価値の製品を輸出 することは容易ではない{従属論〕。
◎ブラジルは,外資を導入して,国家主導の大規模プロジェクトを行い.工業化を進めた(中心部_周辺部理論〕。しかし,外資の投入は.ブ ラジルにb燃立な産業よりも大規模プロジェクトに偏っていたため,外貨を獲得するような輸出財産業には結び付かず,多額σ狛務を抱 えることとなったまた,近年,経済転換が図られ,国営企業の民営化なども行われ国際競争力σ)向上をめざしているが,技術を海外に依