提案した各単元の「理論を中核にした地誌学習」の総合的理論における消費した理論を位 置付け,さらに教育内容開発における科学的認識と教材研究における実現可能性と負荷を 示したものが,下の図18である。
単元
探求 オーストラリア イスラーム社会 ヨーロッパ インド ラテンアメリカ
・形成
。程 帰納的解釈 演繹的解釈
科学的知識
耳心部一再辺部一
ヨ△
O冊
普遍的 相対的剥奪論 経済の自由化 従属論
理論 ポピュリズム
分析的
一 ■ 一 一 . 一 一 一 一 一 一 ■ 一 . 一 . . 一 一 I 1 一 一
理論
ペルソユ土、砧 類型的
理論 消費キ立会論 カトリシズム
イスラーム
復興の構図 三空間並存 総合的理論
レンティア モデル 国家論
事実的知識 (事象σ)類似性)
科学的認識 地域認識形成
社会認識形成
教材研究 負荷
実現可能性
図18 総合的理論における消費理論と教育内容開発
(筆者作成)
図18をみると,開発された単元の知識の質が,図の左下から右上へと,すなわち,消費
した理論が事実的な事象からより普遍的な理論へと説明カの大きさを増していることがわ
かる。開発された各単元は,図のように,段階的に,その社会認識形成をより広く,より
体系的に科学的社会認識へと成長させるものであったことがわかる。すなわち,右に位置
付いている「理論を中核にした地誌学習」の方が,より教育的意味や意義の高い地誌学習
であると言える。
それは同時に,教師の教育内容開発においても,次のようなことが言えよう。それは,
より教育的な意味や,意義を求めれば求めるほど.その教材研究の負荷はかかり,その実 現可能性において困難を要す,ということである。具体的には,各単元の教育内容開発の 過程が示していたように,左寄りの単元は,総合的理論を教師が教育内容開発する際,そ の地域に限定して構造化する,あるいは中範囲の理論を探し当てる,という教師のための 教材研究を行うことで,その教育内容化は可能であった。しかし,右側になればなるほど,
その教師のための教材研究は,地域を越え,社会諸科学の諸理論の探求を教師自身が行わ なければならない。事実,単元「インド」では「消費社会論」が,単元「ラテンアメリカ」
では「従属論」や「ポピュリズム」などが取り上げられ,教育内容の中心に位置付けられ ていた。すなわち,右側になればなるほど,学習者に「総合社会科学研究」として,より 広く,より体系的に科学的な社会認識を形成することが可能となる反面,教師自身にも「総 合社会科学研究」が求められると言える。そこには,教師の自主的・自立的な教育内容開 発が保障され,教師の飽くなき探求による不断の努力こそが,より教育的な意味,意義の
ある地理の授業を生み出す,ということを表していると言えよう。
本研究の仮説は,以下の二つであった。
第一の仮説:地域の社会構造を説明する理論を教育内容の中核に位置づけ,科学的探求 の過程に沿って理論を批半1」・吟味させながら習得させ,その理論を活用して 生徒自身に地域の社会を解釈させる地誌の教育内容を開発すれば,開かれた 科学的な社会認識形成のための地理教育となる。
第二の仮説:自らの依拠する授業理論を明示して教授計画書を作成し,授業を通してそ の適否を吟味・検討してゆけば,開かれた教育内容開発を保証することにな
る。第一の仮説については,今日の中等段階の地理授業を社会認識形成の視点から再構成し,
地誌学習改革の方向性を導き出し,理論を中核にした地誌学習を提案し,具体的な教授計 画書と実験授業等で検証することができた。
第二の仮説については,理論を中核にした地誌学習を提案し,具体的な教授計画書およ
び実験授業等での吟味・検討を行っただけでなく,「学習材」の開発によって,教師の自
主的・自立的な授業計画・授業実践も保障し,その上で教授計画書の成否を問うことを可
能とすることができた。そして,これらを通して,より教育的意味,意義のある地理授業とはいったいどのよう なものか,そしてそれはどのように実現可能であるかを,「理論を中核にした地誌学習」
の教育内容開発によって,具体的に示すことができた。これが,本研究の最も大きな成果
であり,意義であろう。課題としては,大きくは,次の三点があげられよう。
①「類型的理論に基づく総合的理論を中核にした地誌学習」において,総合的理論 の応用・検証場面を学習過程に位置付けるかどうか。
②「普遍的理論に基づく総合的理論を中核にした地誌学習」において,探求,習得 した普遍的理論をどう総合化させるか。その際の問いをどう工夫するか。
③「学習材」を活用した追試も含め,開発した教授言十画書を,さらにより多くの授 業実践によって吟味・検討,修正していくこと。
今後も「理論を中核にした地誌学習」の教育内容開発とその吟味・検討を重ね,これら
の課題に応えていきたい。
<参考文献>
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岩田・・一・彦・米田豊編著
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鳥海 内海 梅津 梅津
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万
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