1.効果的な連携方法を行う上での課題
学校場面で行動問題を示す発達障害児の指導・支援を行う支援者の連携方法を検討した 結果、教師と大学スタッフ、あるいは教師、保護者と大学スタッフが連携している傾向が 示された。保護者は、教師や大学スタッフと発達障害児の行動問題に関する協議を行った り、支援会議の一員として参加したりしているケースの多いことが明らかになった。さら に、保護者自身が学校に赴き、発達障害児の指導・支援に直接的に関与することにより、
教師との情報を共有しやすくなることが示唆された。このように、教師が学校で直接的に 指導・支援を行うだけではなく、保護者も発達障害児の行動問題の低減を喫緊の課題と判 断した場合、つまり、保護者と教師の行動問題に対するニーズが一致している場合には、
上記のような連携方法により支援者の一員として参加して指導・支援が行われることが想 定される。
一方、保護者と教師の連携の難しさが指摘されている(池田・安藤,2012;井坂・中井・
増田,2009;Minke & Anderson,2005;岡村,2014;瀬戸,2013)。この要因として、
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保護者と教師で、子どもの行動の捉え方(馬場・田中・船橋・冨田・藤尾,2007;Handen, Feldman, & Honigman, 1987;Lane, Stanton-Chapman, Jamison, & Phillips, 2007;
三田村,2011;Murray, Ruble, Willis, & Molloy, 2009;上村・石隈,2010)の違いが考 えられている。このことから、支援対象とする行動問題の優先順位が双方で異なることが 想定される。また別の要因として、子どもに問題があった際に保護者が学校側の指導力の 問題にしたり、学校に過剰・理不尽な要求を行ったりするなど、保護者の学校に示す否定 的な態度が挙げられる(平田,2015)。教師や学校側の問題として、子どもの行動問題など を親の躾や養育態度の問題にしがちなことや、教師自身が発達障害の指導の仕方がわから ないこと、否定的な情報のみを保護者に提供することなどが指摘されている(平田,2015)。
これらの保護者や教師の問題として取り上げられる共通点は、互いに子どもの行動問題を 正しく捉えずに相手に責任転嫁し、解決には至らないと考えられる点である。これら以外 には、教師と保護者では役割・立場が違うこと(安藤・上村,2012)や、保護者は家庭での 困ったことを教師に話しにくいことが指摘されている(安藤・上村,2012)。
これらのことから、保護者と教師の連携を困難にする一つの要因として、双方では支援 対象の行動問題の優先順位(支援のニーズ)が異なることや、互いが子どもの行動問題を正 しく捉えずに解決にまで至らないことなどが考えられる。
上記のことから、教師と保護者の連携の現状では、保護者と教師の行動問題に対する支 援のニーズは一致している場合と一致しない場合とが考えられるが、いずれの場合も保護 者と教師の効果的な連携方法は示されなかった。文部科学省(2009)の指摘からも、今後、
教師と保護者の連携による重要性は増すことから、教師と保護者の連携方法を明らかにす る意義があり、重要な検討課題であると思われる。対象児の生活全体を改善という視点か ら考えると、対象児の行動問題は学校場面だけで低減すれば良いのではなく、家庭場面で も低減する必要がある。また、適応行動の増加に関しても同様である。このことから、行 動問題を示す発達障害児をもつ保護者と教師による「効果的な連携方法」とは、教師と保 護者の連携方法をとった結果、対象児の行動問題が低減、あるいは、適応行動が増加し、
及び、保護者が教師の実施する指導・支援に対して肯定的な評価を行った場合と捉える。
2.行動問題を示す発達障害児をもつ保護者と教師の連携時におけるツールの検討 前節では、行動問題を示す発達障害児の指導・支援の連携時のツールの用途や様式の特 徴が示された。ツールの活用によって、関係者の指導・支援手続きの共有(Gomi & Noro,
2010;Hawkins et al. ,2011;関戸,2004)や役割の明確化(福原ら,2008)などが示され
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たことから、連携を行う上で必要であると考えられる。教師と保護者が連携時に活用した ツールとして、記録用紙(清水・小田,2001)、個別の指導計画(福原ら,2008)、個別の教 育支援計画(佐藤ら,2007)が挙げられた。清水・小田(2001)では、学校と家庭での行動問 題の変容を検討するために両場面で共通した記録用紙を用いた。福原ら(2008)では、個別 の指導計画に教師や保護者の指導・支援で遂行する役割が明記された。佐藤ら(2007)では、
個別の教育支援計画に学校生活や家庭生活での支援目標や担当者が明記された。以上のよ うに先行研究では、行動問題を示す発達障害児をもつ保護者と教師の連携のツールは、お もに指導・支援の遂行時に活用されたことが示された。
しかし、指導・支援の遂行時以外の実態把握、指導目標の選定、指導・支援の選定及び 評価の各過程では、教師と保護者のそれぞれが何をどのように遂行すれば、対象児の行動 問題が低減、あるいは、適応行動が増加するか、また、保護者が教師の実施する指導・支 援に対して肯定的な評価を行うかは明らかにされなかった。姉崎(2003)は、個別の指導計 画を作成する目的の1つに、保護者と教師の連携を挙げている。また、金・園山(2007)は、
保護者が個別の指導計画の作成や評価に積極的に参加し、保護者との連携を深めていくた めの工夫の必要性を指摘している。しかし、井坂ら(2009)は、個別の指導計画の作成の効 果として、「保護者との連携が深められた」とする項目は他の項目に比べて高くはなかっ たと指摘している。さらに、池田・安藤(2012)は、個別の指導計画の作成の聞き取り調査 を実施し、保護者との連携を図る上での課題として、「作るのはいいけど、どういうふう に了解して機能させていくのかに壁がある」「親御さんとの関係が難しい」を挙げている。
以上のように、教師と保護者の連携方法を検討する上で、個別の指導計画の活用は重要 である一方で、本節の1.の理由から教師と保護者の連携に困難を示すことが想定される。
発達障害児の実態把握、指導目標の選定、指導・支援の選定及び実施、指導・支援の評価 までの各過程における教師と保護者の役割、すなわち、行動問題を示す発達障害児をもつ 保護者と教師の連携方法が明示され、行動問題を示す発達障害児の保護者と教師のそれぞ れが具体的にどの場面で何を遂行すれば良いかが明確になるツールが存在すれば、行動問 題を示す発達障害児をもつ保護者と教師との効果的な連携が促進される可能性があり、そ のようなツールを開発する意義がある。
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