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血液ポンプのポンプ性能の変化が生体に与える影響に関する実験

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緒言

Implantable LVADには様々な種類があるが,近年では拍動型の補助人工心臓よりも

定常流型が脳梗塞の非発症率や2年間のデバイス交換が少ないということで優位性が 示されており,特にDTではContinuous flow pumpのみが使用されている.42)43)

Continuous flow pumpはモータの回転運動によりインペラを回転し,その運動エネ

ルギーを流体に伝達することにより流れを作る.血液ポンプに使用される形式は,イン ペラの形状と流れの向きから,遠心型,軸流型に大別される.44)

このうち遠心ポンプは,密閉したケーシングの中でインペラを回転し,それによって 生ずる遠心力により血液に運動エネルギーを与える.遠心型は低揚程域で流量が大きく,

高揚程域との流量差が大きいため,一定回転数で運転していても拍動流が出る傾向があ る.一方の軸流ポンプは,高速回転で回転するインペラが軸方向に流れを作る.軸流型 は揚程に対して流量の変化が少なく,拍動負荷下でもポンプの流量変化は少ないという 特徴がある(図1.5 参照).これらのポンプ性能の違いが生体に与える影響については 多くの議論がなされているが,臨床成績に差があるという報告はない.

目的

ポンプ性能は,図 1.2~1.3 に示すように揚程と流量の関係で表現される(HQ カー ブ).インペラやハウジングの形状など血液ポンプの重要な設計要素がこの特性を決め るが,これらの設計内容は流れを作る機能とポンプの内部抵抗を決める.本研究では,

この内部抵抗を変えることにより一つの血液ポンプを使いながら異なるポンプ性能を 実現する.

さらに拍動条件下では,動作点はHQ カーブの上を動くが,実際は動作点はHQ カ ーブに沿ったループを描く.本研究では,このループの大きさを,モータ制御を変える ことによって変えることとする.

このように動作点の動きを変えることによって,血行動態にどのような影響があるか を急性動物実験を通じて確認する.

EVAHEART の血液ポンプ

EVAHEARTの血液ポンプはオープンベーンを持つ遠心ポンプ型で,流体力学的な高

効率を実現している.45) 効率的に大きな運動エネルギーを得た流体は,出口側に後負 荷が小さければスムーズに出口に運ばれるため,低楊程域で流量が大きくなる.

EVAHEARTの血液ポンプは,10から30㎜Hg の低揚程領域で20L/minの大流量を

吐出する.収縮期に揚程が下がるときに,一時的に高い流量が流れて大動脈圧が高くな

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り,拡張期では左心室と大動脈の圧力格差は最大になるので,流量は最小になる.それ ゆえ,ポンプ流量は拍動流となり,また収縮期ピーク流量が大きいために平均流量が大 きくなる.46)

本研究では,以下の方法により,同じ血液ポンプを使いながら血液ポンプの動作点を 変える.まず初めに,吐出口の断面積を変えることにより,みかけの血液ポンプの内部 抵抗を変え,低揚程域での流量が低くなるように調整して,内部抵抗が小さい状態と大 きい状態との比較を行う.次に,モータの制御の係数を変え,拍動負荷下における回転 数の変化の度合いを変えることで,血液ポンプの動作点を変える.

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図3.1 EVAHEARTのオープンインペラ型のインペラ

インペラの上部,下部に流れの方向を整えるための側板がない.内部抵抗を低減す るとともに,血液の淀むスペースを無くして血栓形成のリスクを下げている.

- 81 - HQカーブの傾きの変更

前述のとおり,HQカーブは流れを作る能力と,内部抵抗によって決められる.流れ を作る能力は,インペラとハウジングの設計によって決まる.また内部抵抗は,吐出口 の断面積とポンプハウジング内の空間の広さで決まる.

本研究では,吐出口の断面積を変えることで,HQカーブの傾きを変える.本研究で は,コンデュイットは内径16㎜のチューブを用いた.クランプを解放した状態(t=0) と,クランプを占めた状態(つぶし幅8㎜,管路の幅5㎜)の2種類を設定した(図3.2). この結果,静的条件下でHQカーブの傾きが図3.3に示すように変化した.

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(a) アウトフローグラフトクランプ位置

図 3.2 アウトフローグラフトの狭窄による見かけの内部抵抗の増加

アウトフローグラフトにクランプを配置して狭窄を作り,血液ポンプの見かけの内部 抵抗を増加させる.

(c) Steep HQ (b) Flat HQ

22mm

t=1.5mm

8mm Clamp

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図 3.3 Flat HQ とSteep HQ 条件

見かけの内部抵抗を上げると HQ カーブの傾きが大きくなり,軸流ポンプに近くな

る.2200rpmでは締切揚程が100mmHgで,Flat HQの条件では低揚程時に20L/min

程度駆出されるが,Steep HQの条件では低揚程時に6~7L/min程度となる.

0 20 40 60 80 100 120 140 160

0 5 10 15 20 25

2600rpm 2400rpm 2200rpm 2000rpm 1800rpm 1600rpm 1400rpm 1200rpm 1000rpm

(a) Flat HQ

(b) Steep HQ

0 20 40 60 80 100 120 140 160

0 5 10 15 20 25

2600rpm 2400rpm 2200rpm 2000rpm 1800rpm 1600rpm 1400rpm 1200rpm 1000rpm 流量 L/min

揚程 mmHg 揚程 mmHg

流量 L/min

- 84 - モータ制御の変更

EVAHEARTの血液ポンプは,ブラシレス・センサレスDCモータを持ち,回転数一

定制御で駆動される.回転数はBack EMF信号を測定することで計測し,設定回転数 になるようPI制御で駆動を行う.

実際の拍動負荷下では,収縮期にインペラに圧力負荷が加わり拡張期に圧力負荷が取 り除かれるため,回転数が変動する.PI 制御の定数を変えることにより,この回転数 の振れ幅を変える.

コントローラは,血液ポンプの回転数の計測を行い,設定回転数との差を詰めるよう に制御を行う.この偏差に比例した修正動作を行う比例動作(P機能)と,過去の偏差 を積算保持しオフセットを取り除く積分動作(I 機能)を備えている.この制御では,

入力に対して出力が以下の式で表される.

(3.1)

Δy(t): Input Δx(t): Output

Kp: Gain for proportional action Ki: Gain for integral action

本研究では,PI 制御の定数を書き込み自由としたコントローラを用意する.コント ローラのPI定数の設定を,次の2種類に変更する.その2種類とは,回転数の目標値 に対して追従性がよく自己心の拍動の影響を受けにくい条件と,追従性が低く自己心の 拍動に対して影響を受けやすい条件である.言い換えると,それぞれ入力に対して最も 出力が安定する自己心の拍動により回転数の振れ幅が小さくなることが期待される設 定と,収束が遅くなり自己心の拍動により回転数の振れ幅が大きくなることが期待され る設定である.

それぞれのPI制御の定数と,拍動シミュレータで駆動した時の回転数の振れを図3.4 に示す.

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図3.4 高追従性条件と低追従性条件

式(3.1)のKp,Kiの値を表中の通りに設定し,追従性が高い条件と追従性が低い条

件として定める.拍動シミュレータで機械的に負荷を与えた場合,追従性が高い条件 では設定回転数に対して回転数の振れ幅が±50rpm程度であったが,追従性の低い条 件では回転数の振れ幅が±170rpm程度となった.

Low Responsiveness

With Low Kp/Ki High Responsiveness

With High Kp/Ki

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急性動物実験

動物実験はすべて山羊を用いて行い,東北大学動物実験委員会に承認されて実施した.

血行動態を測定する前に,2.5%プロプラノロール塩酸塩(イソフルラン)の通常麻酔 を使った通常の手術主義で EVAHEART の血液ポンプを左心室心尖部から下行大動脈 の間に接続した.

アウトフローグラフトの中間には製品と同じ内径16㎜のPVCチューブを接続し,

流路を狭窄するためのクランプを取り付けた(図3.5).

血流は,血液ポンプバイパス回路の流量(Pump Flow),大動脈流量,腎動脈流量を

Transonic社製超音波流量計で計測した.また,左心室圧力,大動脈圧力,血液ポンプ

入口圧力,出口圧力を日本光電製圧力トランスデューサで計測をした.

ここで,血液ポンプの駆動を以下のように変える.

1.まず,血液ポンプ補助を1600rpm,PIの定数を通常値,血液ポンプのアウトフ ローグラフトを開放してHQカーブをFlatにした状態と,血液ポンプバイパスを閉塞 し,自己心の動きだけで流量を得た状態を比較する.自己心はプロプラノロール塩酸塩 を投与し,不全心を模擬した状態とする.

2.次に,モータのPI制御の定数を,前述の高追従性条件と低追従性条件の2種類 に変える.このとき,血液ポンプの回転数は1600rpmで固定とする.

3.前述の方法で,見かけの内部抵抗を変え,ポンプ性能をFlat HQとSteep HQに 変える.血液ポンプを1600rpmで駆動したまま,ベータブロッカーを投与して,安定 した状態を作る.PIの制御定数は,中間とする.

この流量と圧力の結果から,総合流量,ポンプ流量,腎動脈流量の結果からインピー ダンスを求める.動脈のインピーダンスは動脈内の血圧,血流の周波数分析によって求 められる. 両者を平均血圧,平均血流に上下する波動現象としてとらえ,1 心周期を 1 ハーモニクスとしてフーリエ変換を行い,それぞれ周波数分析された sinusoid 波の角 周波数に対する振幅比(modulus)および位相差(phase)で表現する. つまり,インピ ーダンスはそれぞれ周波数に対するmodulusとphaseのスペクトラムで表現される.

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