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耐久性試験の結果と臨床試験との結果比較に関する 考察

本研究で報告された耐久性試験は,前臨床試験として2002年に開始し,以降休止・

移設期間も含めて2014年まで実施された試験である.国内の臨床使用は2005年に治 験として開始され,製造販売承認は2009年に得ているため,本耐久性試験の後半は臨 床使用と並行して行われた.

現在まで臨床使用の経験が増え 180 例の経験があり,最長で 7 年を超える補助をし ているが,血液ポンプの停止や,ポンプ交換を要する故障は経験していない.血液ポン プ部にはメカニルカルシールや軸受という潤滑機械があり,摩耗や焼きつきなどの故障 モードが予測されたが,本耐久試験でその徴候は見られず,その徴候も見られなかった.

その結果と一致するように,実際の長期間の臨床使用でもこれまでのところメカニカル シール,軸受の摩耗や焼き付きは見られなかった.またそれ以外にも,防水部の破綻に よる電気部品への浸水とショートや,樹脂部品の劣化によるクラックなど化学的な劣化 も,臨床使用の結果からは見られなかった.

J-MACSが毎年不具合を集計し,報告しているが,2012年からの装置不具合の集計

結果を表4.1に示す48 51).血液ポンプの機械的な故障は少なく,コントローラ,クー ルシールユニットなど体外部の故障が多い.

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表4.1 EVAHEARTの臨床使用における装置不具合の内訳

不具合発生 部位

発生事象 件数(C01) 件数(C02)

クール シールユニット

フィルタ目詰まりによる FPin 圧力の上昇 37 件 (20症例) 21 件 (9 症例) ダイアフラムポンプのネジの緩みによる水漏れ 2 件 (2症例) -

管路ブロックからの水漏れ 3 件 (3 症例) - リザーバポートからの水漏れ 5 件 (5 症例) - ダイアフラムポンプ停止 1 件 (1 症例) - ダイアフラム耐久性低下による FPout 圧力の低下 - 7 件 (5 症例)

リザーバ内の浮遊物 1 件 (1 症例) -

FPout 圧力低下,クールシールユニット周囲の水滴 1 件 (1 症例) -

O リング変形によるカプラ部からの水漏れ 2 件 (2 症例) 制御基板浸水によるクールシール液圧力値の誤検出およ

び水漏れ

- 1 件 (1 症例)

金属部品表面の脱脂不備による FPout 圧力の低下 - 2 件 (2 症例) 駆動音異常 - 1 件 (1 症例) クールシール液減少 - 7 件 (3 症例) リザーバ赤変 - 1 件 (1 症例) リザーバー内のクールシール液減少,水滴および結露 - 1 件 (1 症例)

E-45 アラーム,ケース内結露発生 - 1 件 (1 症例)

フィルタ IN 側チューブ接続箇所からの水漏れ - 1 件 (1 症例)

外部コントロー

E-20 台,E-30 台アラームの発生 191

(21症例)

82 件 (12 症例) フィルタ目詰まりによるFpin 圧力の上昇(E-40 アラー

ムの鳴動)

- 6 件 (3 症例)

バッテリ容量アラームの異常 1 件 (1 症例) - 回転制御 IC 部品故障による消費電力値波形の異常 1 件 (1 症例) - モータ制御 IC 部品故障による回転数の計測誤差 1 件 (1 症例) - 回転制御 IC 部品の故障 2 件 (2 症例) - モータ制御電子部品の故障 3 件 (3 症例) - 摺動面の回転抵抗増加による消費電力の上昇 9 件 (2 症例) - データ通信機能の異常 1 件 (1 症例) - IC 接触不良による駆動状況データの欠落 - 1 件 (1 症例) データダウンロード中の通信途切れにより設定値の意図

しない変更

- 1 件 (1 症例)

落下による外装ケース破損 1 件 (1 症例) - クールシールユニット停止 1 件 (1 症例) - クールシール液減少に伴うアラーム発生 - 51 件 (8 症例)

ポンプスピード上限異常 - 2 件 (2 症例) 消費電力の上昇 1 件 (1 症例) - 消費電力上昇傾向 - 2 件 (2 症例)

FPout 圧力上昇 1 件 (1 症例) -

クールシール液減少 - 35 件 (3 症例) 駆動基板の異常による予備回路切替のアラーム発生 - 1 件 (1 症例)

ポンプケーブルキンクによる圧力上昇 - 1 件 (1 症例)

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AC/DC アダプタのコネクタ部破損 - 1 件 (1 症例)

AC/DC アダプタの破損 - 1 件 (1 症例)

外部バッテリ コネクタL 字部の破損 21 件 (16 症例) ロック機能不全 3 件 (3 症例) バックナット外れによるL 字コネクタ部の破損 1 件 (1 症例)

バッテリ切替不良による非常用バッテリの駆動 1 件 (1 症例) 非常用バッテリ駆動 1 件 (1 症例) L 字コネクタのバックナットの外れ 1 件 (1 症例)

血液ポンプ 装置内血栓によるE-30 アラームの多発

クールシール流路狭窄によるFPout 圧力の上昇 2 件 (1 症例) クールシール流路閉塞によるFPout 圧力の上昇 1 件 (1 症例) メカニカルシール摺動部乖離によるクールシールユ 1 件 (1 症例)

シールリングの面荒れ 1 件 (1 症例) ドライブ

ライン

ファブリック表面破れ 1 件 (1 症例) ポンプケーブル内部の塩ビ層の損傷 1 件 (1 症例)

AC/DC アダプタ

コネクタ部の破損 2 件 (2 症例)

流出グラフト 人工血管吻合部の狭窄 1 件 (1 症例)

非常用 バッテリ

コントローラ非常用バッテリ残量ランプFull 不点灯 1 件 (1 症例) 満充電にならない 1 件 (1 症例)

合計 294

(50 症例)

238 (43 症例)

注 1:( )内の症例数は,植込まれたLVAD のポンプ台数に基づき算出

注 2:合計欄の症例数は,合計件数に対する症例数であり,各有害事象の症例数を合 計したものではない.

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臨床における血液ポンプの故障としては,シールリングの面荒れ,メカニカルシール 摺動面乖離によるクールシールユニットへの血液漏れ,クールシール流路狭窄による

FPout圧力の上昇,装置内血栓によるE-30アラームの多発があった.

これらの血液ポンプにかかわる故障は,いずれも血液ポンプの恒久的な停止に至るも のではなく,ポンプ交換を要するものはなかった.ただし,メカニカルシールの面荒れ はメカニカルシールの密封性能の低下を引き起こし,想定量以上のクールシール液の血 液側への進入を招いた.クールシール液の補液頻度が増加し,特に退院患者や医療従事 者に迷惑を掛けたが,溶血など健康被害を招く事は無かった.メカニカルシールの面荒 れは,シールリングの原料の変化が疑われたが,製造元の品質管理のレベルが高く,そ の原因はつかめなかった.一方で,コントローラおよびクールシールユニットの小型化 に伴う設計変更直後から発生が見られたこと,ベンチテストでは発生せず臨床でのみ発 生したことなどから,複合的な要因が疑われた.シールリングは製造工程で消毒のため にエタノール浸漬を実施しているが,多孔性の焼成カーボン内に浸透する可能性があっ た.この工程を変更することにより面荒れは発生しなくなった.

メカニカルシールの摺動面乖離は,摺動面内の過大な血液成分の堆積によって発生し,

血液成分のクールシール液内への漏洩量が多くなり,クールシールユニットの交換頻度 の増加を招いた.フラッシングなどの作業により徐々に状態が改善し,患者に健康被害 を与えることは無かった.

クールシール液流路狭窄による FPout 圧力の上昇は,フラッシング作業(メンテナ ンス)の頻度を上げさせたが,やはり患者に健康被害を与えることは無かった.

E−30アラームは,血液成分によりメカニカルシールの摺動抵抗が突発的に上昇する ことによりモータが脱調し,停止再起動を起こした際に発生するアラームである.コン トローラが4秒以内に再起動をするアルゴリズムを持っているため,継続的な停止や循 環不全には至らなかった.しかしながら最悪の症例では1日あたり1000件のアラーム 発生があり,患者や医療従事者に多大な迷惑を掛けた.

メカニカルシールの面荒れおよび E−30 アラームについてはコントローラおよびク ールシールユニットの設計を変更した後に多発したことから,クールシールユニットの 設計変更が影響している可能性が高かったが,詳細な原因を特定するには至らなかった.

しかしながらクールシール液が摺動面全体に供給されず,潤滑不良となっている可能性 が高かったため,摺動面の平面度管理を厳しくし,さらには摺動面間の距離を摺動面内 側の方を大きくすることで,クールシール液が十分に摺動面にいきわたるような設計変 更を行った.その結果,E-30アラームはほぼ発生しなくなった.

このように,臨床で発生したメカニカルシールの不具合は予定外のメンテナンスを要 し,患者の日常生活に迷惑を掛けることはあったが,血液ポンプの停止による補助循環 停止や溶血など健康被害を起こすことはなく,ポンプ交換なども要さなかった.

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これらの故障は,耐久性試験では発生しなかった.いずれも,ヒトの血液がその原因 に影響しているためである.メカニカルシールの摺動面間距離は正確な計測ができない ものの一般的には0.5μmと言われており,非常に高いせん断応力が加わる.この摺動 面間に血液成分が入ることにより,血液タンパクが摺動面に堆積し,潤滑不良をはじめ 様々な不具合につながる.この現象は,臨床以外では現象の再現が難しく,原因解明が 遅れた.

臨床で発生した血液ポンプの不具合は,臨床使用を始める前に In Vitro で確認する ことは難しい故障モードであったと言える.しかしながら臨床で不具合を起こしたもの と耐久性試験で使用したものの摩耗の程度や形状を比較したり,表面の状態を比較する ことで臨床使用では摩耗の進行がマイルドであり,焼き付きなど壊滅的な故障モードに つながる可能性を否定することができた.

耐久性試験で臨床におけるすべての故障モードを再現することはできないが,このよ うな制約を認識して試験を設計し,実施することが重要である.

ISO13485 の中での位置づけ

医療機器の品質マネジメントシステムを定めた ISO13485 では,開発の過程におい て行う評価は,ユーザー要求に対する設計バリデーションと,要求仕様に対する設計検 証試験に分けられる.ユーザー要求は,システムの耐久性を記載し,要求仕様ではそれ を実現するための仕様が記載される.要求仕様で,構成要素の耐久性を評価する.

本研究で実施した耐久試験は設計バリデーションとして位置づけられる.様々な構成 要素を持った血液ポンプを実使用を模擬した負荷で連続運転を行い,ユーザー要求を満 たしているかを確認する.

構成要素の耐久性を評価するうえでは,ISO14971 リスクマネジメントにもとづき,

潜在的なリスクを洗い出すことが必要である.個別の構成要素に分けてそれぞれの構成 要素の故障モードを推定し,過酷な条件を定め,加速試験を行う事が理想的である.複 数の構成要素を含むシステムでは,ひとつの構成要素に対して過酷な条件を設定した場 合,ほかの構成要素にとってはマイルドな条件になることがある.このため,設計検証 試験で個別の構成要素に対して過酷な条件で試験を行う必要がある.

例えば,電子部品に対しては大きな電流が流れることが過酷な負荷になるため回転数 を大きく設定することが過酷な負荷になるが,メカニカルシールや軸受にとっては,回 転数が低い方が潤滑膜に生じる圧力が高くなり,潤滑状態が良くなり摩耗は起きにくく なるため、マイルドな条件となる.

このため,本試験のような複数の構成要素を持つシステムの耐久性試験では,実際を 模擬した条件で試験を行い,一方で各個別の構成要素ごとに別途耐久試験を行う必要が

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