3.1 概要
衛星に搭載される燃料タンクや、LNGタンクなど、種々の工業製品において球形タンクが利用 されており、厳しい振動環境にさらされる機種もあるが、第 2章において説明したように円筒タ ンク[64][65]や矩形タンク[2][25]と異なり球形タンクの振動挙動について詳細に解析され、報告さ れている例は尐ない(たとえば[32][66])。球形タンクでは液面の位置によって自由表面の面積が 変化し、それに伴う振動挙動の変化も複雑なものとなる。また、自由表面上部にある空気が液体 の注入孔などを通して大気に開放されている場合と、自由上部の空気が完全に外気と遮断されて 自由な行き来が制限されている場合とでは、境界条件の違いにより振動挙動が変わるといわれて いる。本章ではこれらの条件の違いによるタンクの挙動の変化を明らかにするため、球形のアク リルタンク模型を用いて実験を行い、実際に振動挙動の確認を行った結果について述べる。また、
併せて NASTRAN の仮想質量法(VFM)と音響要素を用いた流体構造連成解析(CA)を用いて振動
解析を実施し、試験結果との比較、考察を行った。
3.2 アクリルタンク振動試験
3.2.1 試験模型
試験に用いたのは図3.2.1に示すアクリル製の球形タンクである。タンクの外径は300mm、板
厚は2.8mmである。タンクの諸元はアクリルを用いて製作可能で、満水近くまで水を入れて加振
しても壊れないこと、なおかつ振動台に搭載可能で実機に固有振動数が近くなること、製作のし やすさなどから決定した。タンク上部には水を注入するための穴を設け、その孔にはタップを切 った内径10mmのアクリル製の円筒を接着し、プラスチック製のボルトで栓をすることで外部と の空気の流出入を妨げることができるようにした。アクリル球殻は射出成型で製造された半球の 球殻同士を接着して作られており、ほぼ均一な板厚となっている。またタンクの側面4箇所には 加振治具にマウントするために板厚10mmのアクリル製のタブが均等間隔で設けられている。
上面図 側面図
(a) タンク概要図
(b) タンク写真
図3.2.1 アクリル製球形タンク試験体
外径300mm、板厚2.8mm
3.2.2 加振用治具
球形タンクは赤道上の4箇所を円筒型の治具で支え、その治具を加振器のヘッドに取り付けた。
加振に用いた治具は鋼製であり、着目するタンクの 1次固有振動数(300Hz 程度)において共振し ないよう、1 次の固有振動数が 1kHz 以上になるように有限要素法による固有振動解析を実施し て設計した。試験治具に試験体をセットした写真を図 3.2.2 に示す。治具のみで加振したときの タンクマウント部 4箇所の上下方向加速度パワースペクトルを図3.2.3に示す。図から分かるよ うに治具の1次の固有振動数は1,170Hz程度となっており、本試験に必要な剛性を有しているこ とが分かる。
図3.2.2 試験体、加振治具
タンクマウント、
周方向4箇所に等間隔 で配置
0 1 2 3 4 5 6 7
0 500 1000 1500 2000 2500
Frequency(Hz)
Power Spectrum CH-1(V)
CH-2(V) CH-3(V) CH-4(V)
図3.2.3 治具のみを加振したときのマウント部4箇所の上下方向加速度パワースペクトル
3.2.3 試験方法
試験は千葉県産業支援技術研究所にあるエミック社製の振動試験機(F-1000BDH)を用いて実 施した。加振機の为な使用および性能を表3.2.1に示す。タンクは4箇所のタブでボルトを用い て治具に固定し、鉛直方向の調和加振を行った。加振加速度振幅は 2.45m/s2である。加振方法は
10Hz-1000Hz程度までのSweep加振、およびこのSweep加振で得られた固有振動数近傍での周
波数一定加振の2種類を行った。加振試験の概念図を図3.2.4に示す。計測項目は図3.2.4に示す ようにタンク殻の加速度、タブの上下方向加速度、およびタンク内側の接水部動液圧である。タ ンク内側の圧力はひずみゲージ式の圧力変換器をタンクの殻にあけた穴に通して計測した。計測 システム全体の写真を図3.2.5に示す。また、計測位置の詳細を図3.2.6に示す。試験条件は、表
3.2.2に示すように水位を種々の値に変更させて加振を行った。また、自由表面が大気開放されて
いる影響を見るためタンク上部の栓が有る状態及び無い状態の両方で加振を行った(図 3.2.7)。 ただし満水時のケースについては栓が無いと内部の水が飛び散る可能性があったため、栓有りの ケースのみ実施した。
表3.2.1 加振機の为な仕様及び性能 最大加振力 1,000kgf(9,800N) 最大振動数範囲 (DC)~2,500Hz
最大振幅 51mmP-P 最大速度 2m/s
最大搭載質量 200kg(運用上 100kg)
Support
Shaker Tank
Tab
Filling port Pressure gauge
Accelerometer
図3.2.4 アクリルタンク加振試験概念図
図3.2.5 計測システム全体図
加振機
図3.2.6 計測位置、半径方向の加速度計は面外方向を+方向として設置
表3.2.2 試験条件一覧
水位(%) 栓
空 有り
50 有り/無し 67 有り/無し 95 有り/無し 97 有り/無し 99 有り/無し 100 有り
*それぞれの条件においてSweep試験及び固有振動数付近の単一周波数加振試験を実施
x y z
z
x,y
(a)栓あり
(b)栓無し
図3.2.7 栓の詳細
3.3 試験結果
3.3.1 試験時のタンク及び液体の挙動について
今回の試験でターゲットとしているのはタンクの殻が変形する振動モードであり、周波数帯と してはおおよそ100Hz以上の領域にある。数十Hz以下の領域では自由表面にスロッシングのモ ードを確認できたが、100Hz以上の周波数領域では液表面は安定しており、近似的に液面での圧 力変動はないものと考えられる。
3.3.2 試験で計測したデータ
図3.3.1から図3.3.5にSweep試験から得られた加速度の伝達関数の一例を示す。伝達関数の
入力は4つあるタブのうち1箇所(図3.2.6の2番)の鉛直方向加速度である。出力は各センサ 位置での加速度である。図3.3.1は空のタンク殻の加速度伝達関数であり、おおむね600Hz以上 に固有振動数をもっている。空タンクの場合、圧力センサ等の質量影響が無視できず、複雑な振 動挙動をしているものと考えられる。
図3.3.2は栓無しの場合の液位50%における加速度伝達関数である。310Hz近傍に1次の固有
振動数があると考えられるが、タンク上下に設置した加速度計(Ch9,Ch14)が同方向に振動してい ることなどから上下方向の振動が为体となっていることが分かる。
図3.3.3は液位99%における応答について栓が無い場合、図3.3.4は栓がある場合の加速度伝達
関数である。これらの図から栓なしの場合、1次の固有振動数は約135Hz程度、応答倍率はタン ク上下の加速度センサとも約2.2倍であるのに対し、栓ありの場合では1次の固有振動数約211Hz、
応答倍率は上のセンサで約11倍、下のセンサで約8倍となっており、栓の有るときとないときで 振動挙動に大きな違いが有ることが分かる。2次モードにおいては、栓無しでは293Hz程度、栓
ありでは316Hz程度と大きく離れてはいないが、上部センサ(Ch.9)の位相が両者で約180度ずれ
ており、振動モードが異なっていることが分かる。
図3.3.5は満液状態でのタンク殻の加速度伝達関数である。260Hz近傍の最初のピークにおけ
るタンク上下に設置した加速度計の挙動をみると、ほぼ振幅が等しく逆位相(いずれの加速度計 も面外方向を+としている)となっていることから、この振動モードではタブ部分が弾性変形し、
タンク自体は剛体的に上下運動しているものと考えられる。
図3.3.6から図3.3.8はSweep試験から得られた動液圧の伝達関数の一例である。伝達関数の
入力は加速度の場合と同様、タブのうち一箇所の鉛直方向加速度である。これらの図では上下の 動液圧応答の比較を行っているが、たとえば図 3.3.7の液位99%で栓があるときとないときの比 較をすると、1 次の固有振動数近傍で比較すると位相はほぼ同じものの、上下のセンサ位置での 応答が栓の有るときとないときで大きく異なっていることが分かる。なお、下部センサはおよそ タンク高さの7%位置、上部センサは85%位置にある。
Frequency(Hz) 0000
0002 0004 0006 0008 0010 0012 0014 0016
0 200 400 600 800 1000
CH-5 CH-6 CH-7 CH-8
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 200 400 600 800 1000
CH-5 CH-6 CH-7 CH-8
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
Frequency(Hz) 0000
0002 0004 0006 0008 0010 0012 0014 0016
0 200 400 600 800 1000
CH-12 CH-13
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 200 400 600 800 1000
CH-12 CH-13
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
(a) Ch.5~Ch.8 (radial dir.) (b) Ch.12, Ch.13 (radial dir.)
Frequency(Hz) 0000
0002 0004 0006 0008 0010 0012 0014 0016 0018 0020
0 200 400 600 800 1000
CH-9 CH-14
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 200 400 600 800 1000
CH-9 CH-14
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
Frequency(Hz) 0000
0001 0002 0003 0004 0005 0006
0 100 200 300 400 500
CH-10 CH-11
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-10 CH-11
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
(c) Ch.9, Ch14 (radial dir.) (d) Ch.10, Ch11 (radial dir.)
図3.3.1 タンク殻加速度伝達関数の試験結果(空タンク)
Frequency(Hz) 0000
0001 0002 0003 0004 0005 0006 0007 0008 0009
0 100 200 300 400 500
CH-5 CH-6 CH-7 CH-8
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-5 CH-6 CH-7 CH-8
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
Frequency(Hz) 0000
0002 0004 0006 0008 0010 0012 0014 0016
0 100 200 300 400 500
CH-12 CH-13
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-12 CH-13
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
(a) Ch.5~Ch.8 (radial dir.) (b) Ch.12, Ch.13 (radial dir.)
Frequency(Hz) 0000
0005 0010 0015 0020 0025 0030
0 100 200 300 400 500
CH-9 CH-14
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-9 CH-14
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
Frequency(Hz) 0000
0001 0002 0003 0004 0005 0006 0007 0008 0009
0 100 200 300 400 500
CH-10 CH-11
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-10 CH-11
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
(c) Ch.9, Ch14 (radial dir.) (d) Ch.10, Ch11 (radial dir.)
図3.3.2 タンク殻加速度伝達関数の試験結果(水位50%、栓無し)
Frequency(Hz) 0000
0002 0004 0006 0008 0010 0012 0014 0016
0 100 200 300 400 500
CH-5 CH-6 CH-7 CH-8
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-5 CH-6 CH-7 CH-8
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
Frequency(Hz) 0000
0002 0004 0006 0008 0010 0012 0014
0 100 200 300 400 500
CH-12 CH-13
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-12 CH-13
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
(a) Ch.5~Ch.8 (radial dir.) (b) Ch.12, Ch.13 (radial dir.)
Frequency(Hz) 0000
0005 0010 0015 0020 0025
0 100 200 300 400 500
CH-9 CH-14
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-9 CH-14
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
Frequency(Hz) 0000
0001 0002 0003 0004 0005 0006 0007 0008 0009 0010
0 100 200 300 400 500
CH-10 CH-11
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-10 CH-11
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
(c) Ch.9, Ch14 (radial dir.) (d) Ch.10, Ch11 (radial dir.)
図3.3.3 タンク殻加速度伝達関数の試験結果(水位99%、栓無し)
Frequency(Hz) 0000
0002 0004 0006 0008 0010 0012
0 100 200 300 400 500
CH-5 CH-6 CH-7 CH-8
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-5 CH-6 CH-7 CH-8
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
Frequency(Hz) 0000
0001 0002 0003 0004 0005 0006 0007 0008 0009 0010
0 100 200 300 400 500
CH-12 CH-13
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-12 CH-13
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
(a) Ch.5~Ch.8 (radial dir.) (b) Ch.12, Ch.13 (radial dir.)
Frequency(Hz) 0000
0002 0004 0006 0008 0010 0012 0014 0016 0018 0020
0 100 200 300 400 500
CH-9 CH-14
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-9 CH-14
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
Frequency(Hz) 0000
0001 0002 0003 0004 0005 0006
0 100 200 300 400 500
CH-10 CH-11
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-10 CH-11
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
(c) Ch.9, Ch14 (radial dir.) (d) Ch.10, Ch11 (radial dir.)
図3.3.4 タンク殻加速度伝達関数の試験結果(水位99%、栓あり)
Frequency(Hz) 0000
0002 0004 0006 0008 0010 0012 0014 0016
0 100 200 300 400 500
CH-5 CH-6 CH-7 CH-8
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-5 CH-6 CH-7 CH-8
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
Frequency(Hz) 0000
0002 0004 0006 0008 0010 0012 0014
0 100 200 300 400 500
CH-12 CH-13
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-12 CH-13
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
(a) Ch.5~Ch.8 (radial dir.) (b) Ch.12, Ch.13 (radial dir.)
Frequency(Hz) 0000
0005 0010 0015 0020 0025
0 100 200 300 400 500
CH-9 CH-14
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-9 CH-14
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
Frequency(Hz) 0000
0002 0004 0006 0008 0010 0012
0 100 200 300 400 500
CH-10 CH-11
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-10 CH-11
Phase(deg.)Transfer Function (Acc./Acc.)
(c) Ch.9, Ch14 (radial dir.) (d) Ch.10, Ch11 (radial dir.)
図3.3.5 タンク殻加速度伝達関数の試験結果(水位100%、栓あり)
Frequency(Hz) 0
0.0005 0.001 0.0015 0.002 0.0025
0 100 200 300 400 500
CH-16
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-16
Transfer Function (Pressure.(Pa)/Acc.(m/s2))Phase(deg.)
図3.3.6 タンク内動液圧伝達関数(水位50%、栓無し)
Frequency(Hz) 0
0.0002 0.0004 0.0006 0.0008 0.001 0.0012 0.0014 0.0016 0.0018 0.002
0 100 200 300 400 500
CH-15 CH-16
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-15 CH-16
Transfer Function (Pressure.(Pa)/Acc.(m/s2))Phase(deg.)
Frequency(Hz) 0
0.0005 0.001 0.0015 0.002 0.0025
0 100 200 300 400 500
CH-15 CH-16
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-15 CH-16
Transfer Function (Pressure.(Pa)/Acc.(m/s2))Phase(deg.)
(a)栓無し (b)栓あり
図3.3.7 タンク内動液圧伝達関数(水位99%、)
Frequency(Hz) 0
0.0005 0.001 0.0015 0.002 0.0025
0 100 200 300 400 500
CH-15 CH-16
-180 -120 -060 000 060 120 180
0 100 200 300 400 500
CH-15 CH-16
Transfer Function (Pressure.(Pa)/Acc.(m/s2))Phase(deg.)
図3.3.8 タンク内動液圧伝達関数(水位100%、栓有り)
3.4.仮想質量法を用いた振動解析
3.4.1 固有振動解析
今回の試験と比較するため、NASTRANの流体構造連成解析機能として提供されている仮想質 量法(VFM)[62]をもちいて固有振動解析を実施した。解析モデルを図3.4.1に示す。仮想質量法は 流体部には特異点分布法[61]を用いて付加質量マトリックスを作成して、構造部は有限要素法を 用いて連成させた解析手法であり、図 3.4.1 に示すように流体を要素分割する必要がない。計算 に用いたアクリルの材料定数はヤング率3,100MPa、ポアソン比0.31である。図中△の記号で示 す位置で完全拘束した。固有振動解析においてはモードの確認が为目的であり、加速度計等の質 量の影響は小さいとしてモデル化していない。
計算結果として、図3.4.2に空タンクの固有振動モードを、図3.4.3に水位50%での固有振動モ ードを、図3.4.4に水位89%での固有振動モードを、図3.4.5に水位99%での固有振動モードを 示す。
図3.4.2から、空タンクでは低次に軸対称モードは現れないことがわかる。液位が 50%程度の
ときの1次振動モードは、図3.4.3から液が入っている部分を中心に横揺れするn=1のモードと なる。また、2次モードは液が入っている部分が上下に振動するn=0のモードとなる。試験で確 認された1次のピークは(図3.3.2参照)、固有振動解析における2次モードに相当するものと考 えられる。
液位が 99%と満液に近い時は、図 3.4.5(a)から接水部全体が膨張・伸縮する、面内膜変形が中
心のモードとなっていることが分かる。このモードは、試験での栓無しの条件での134Hz付近の 1次モードに相当すると考えられる。また、試験で2番目のピークとして生じている293Hz付近 のモードが、固有振動解析で4次モードとして生じている鉛直方向の振動モードだと考えられる。
2次モード、3次モードは重根であり横方向に振動するモードとなっているため、鉛直方向加振試 験では表れなかったものと考えられる。
液位に対する固有振動数の変化をn=0、n=1のそれぞれに対して図3.4.6に示す。この図から、
n=0のモードでは満液付近で急激に固有振動数が低下していることがわかる。
3.4.2 周波数応答解析
NASTRANのVFMを用いて周波数応答解析を実施した。図3.4.7に周波数応答解析に用いた
解析モデル図を示す。周波数応答解析ではタブからの入力加速度とタンク殻の加速度の関係をよ り正確に表現して試験との比較を行うためにタブをモデル化し、各ボルト位置を剛体要素で接続 し、剛体要素に対して上下方向に正弦波の強制変位加振を行うことで試験を模擬した。また、加 速度計、圧力計を集中質量でモデル化している。周波数応答で用いた材料定数は固有振動解析で 用いたものと同様である。解析ではモード減衰として一律に減衰比ζ=0.068を与えた。この減衰
比は液位 99%、栓無しの試験で得られた周波数応答における1次のピーク(図 3.3.3(c)の最初の
ピーク、135Hz)をもとに半値幅法、即ち共振の山の最大値の 0.707倍におけるハーフパワー点 での共振曲線の幅fnとピーク周波数fnをもとに以下の式により近似して得た値である。