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4-1長期戦略の位置づけ

➢ 本戦略は「クリーン成長」、すなわち経済成長の強化及び排出量の削減のペースを 加速化させることを目指す総合的な政策及び提言を打ち出すものである。

This Strategy sets out a comprehensive set of policies and proposals that aim to accelerate the pace of “clean growth”, i.e. deliver increased economic growth and decreased emissions.

4-2排出削減目標(部門別、位置づけ)

➢ 英国議会は2008年に気候変動法を通過させ、英国の2050 年目標及びそれを支え る炭素目標の枠組みを設定した。気候変動法の下で、英国は2050年に1990年水

準比80%以上温室効果ガスを削減することが法的に義務付けられている 。

The Climate Change Act, passed in 2008, committed the UK to reducing greenhouse gas emissions by at least 80 per cent by 2050 when compared to 1990 levels, through a process of setting five year caps on greenhouse gas emissions termed ‘Carbon Budgets’.

➢ 気候変動法の下、英国は2050年までに排出量を80%削減しなければならない10。

これは、1990年に一人当たり約14トンであった排出量を2050年に一人当たり約 2トンまで削減しなければならないことを意味する。2050 年目標に向けて順調な 進展を確保するために、気候変動法は政府に中間目標、すなわち「炭素予算」を設 定することを義務付けている。これは5カ年の期間の間に英国全体で排出できる 温室効果ガスに上限を設けるものである。今日まで5期の炭素予算が策定されて おり、2008年から2032年までの温室効果ガスの排出量に上限を設けている。2016 年7月に、2028年から2032年にかけて英国全体で 1990年の基準年比平均57%

の削減を義務づける第5期炭素予算を設定した。

The Climate Change Act requires the UK to reduce its emissions by at least 80 per cent by 205035. This means greenhouse gas emissions falling from around 14 tonnes per person in 1990 to around 2 tonnes per person in 2050.To ensure steady progress towards our 2050 goal, the Climate Change Act requires the Government to set intermediate targets – ‘carbon budgets’. These are caps on the greenhouse gas emissions that can be emitted across the UK during a five-year period. Five carbon

10 1990年水準

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budgets have been set to date, putting in place caps on greenhouse gas emissions from 2008 out to 2032. In July 2016, we set the fifth carbon budget, which requires a 57 per cent average reduction in emissions over 2028-32 across the UK compared to a 1990 baseline.

図 4-1 英国の炭素予算と2050年目標

出 所 :DECC (2015) “Updated energy and emissions projections 2015”, DECC (2016)

“Impact Assessment for the level of the fifth carbon budget”, BEIS (2017) “Clean Growth Strategy”

4-3想定される産業・エネルギー需給構造、対策、技術

○ 産業・企業

 企業のエネルギー生産性を 2030 年までに少なくとも 20%改善させることを支援 する政策パッケージを策定する。そのために下記を含む対策を講じる。

 建物:建物規制及び火災安全に関する独立調査の発表後、その結論に従い、新規及 び既存の商業ビルのエネルギー効率の改善について協議する予定である。賃貸商 業ビルのエネルギー効率の最低基準の引き上げについて協議する。自主的な建物 基準によって商業ビルのエネルギー性能の向上をどのように支えることができる か、及びエネルギー効率に関する情報及び助言の中小企業への提供をどうしたら 改善せることができるかについて検討する。

 企業がエネルギー消費量を測定及び報告する必要事項を簡素化し、光熱費をどこ

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 産業部門のエネルギー効率化計画を設定し、大企業によるエネルギー消費量及び 光熱費を削減するための取り組みの導入を助ける。

 7 つのエネルギー集約型産業と共に産業の低炭素化及びエネルギー効率化を組み 合わせた行動計画を発表する。

図 4-2 クリーン成長経路を考慮した、業務・産業部門における排出量の実績と予測

(1990〜2050)

○ 家庭

 「エネルギー企業義務(ECO: Energy Company Obligation)」を通じて、約100万 家庭における性能改善に必要な約36億ポンドの投資を支援し、エネルギー効率改 善のためのECOによる現行水準の拠出を2028年まで延長する。

 我々はすべての燃料不足の家庭が 2030 年までにエネルギー性能証明書(EPC:

Energy Performance Certificate)バンドCまで引き上げられていることを願って

おり、EPCバンドCの取得が現実的で費用効果的で、手の届くコストである場合 に、できる限り多くの家庭が2035年までにEPCバンドCを取得してことを熱望 している。

 EPCバンドCの取得が現実的で費用効果的で、手の届くコストである、できる限 り多くの民間賃貸住宅を、2030年までにEPCバンドCに引き上げることを目的 に、民間の賃貸住宅のエネルギー性能の改善に向けた長期の経路を開発する。

 この期間に公営住宅が類似の基準を満たすことができる方法について協議する。

 建物規制及び火災安全に関する独立調査の結果発表後、その結論に従い、新規の住

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宅は低炭素暖房システムの将来的な導入に備えることを含め、新規及び既存の住 宅のエネルギー性能基準の強化を建築規制の下で実施することについて協議する 予定である。

 2020年末までにすべての家庭にスマートメーターを導入する機会を提供し省エネ を助ける。

図 4-3 クリーン成長経路を考慮に入れた排出量の実績及び予測(1990〜2050)

○ 低炭素熱供給システムの市場導入

 2021年まで、公共資金(「2015年歳出見直し(Spending Review 2015)」において 予算配分)に裏付けられた熱供給網を構築し、英国中に拡大する

 新規の住宅をはじめとして、2020 年代に現在ガス供給網と接続していない新規及 び既存の住宅における炭素含有量の多い化石燃料を利用する熱供給システムの設 置を段階的に廃止する。

 毎年イングランドで 120 万台新規設置される給湯器の基準を改善し、省エネを可 能にする制御装置の導入を義務付ける。

 再生可能熱インセンティブ(Renewable Heat Incentive)を改革し、2016 年から 2021 年の間に住宅及び企業における革新的な低炭素熱供給技術の導入支援に 45 億ポンドを支出することにより、低炭素熱供給システムに投資する。

 イノベーション:公的資金1億8,400万ポンドを投資する。それには低炭素住宅の コスト削減を実現するエネルギー効率化及び熱供給技術を開発するための 1,000

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万ポンド規模の新たなイノベーションプログラム2件を含む

○ 運輸

 従来型のガソリン車及びディーゼル車の新車の販売を2040年までに終了する。

 超低公害車(ULEV: ultra low emission vehicles)の導入に10億ポンド投入する。

電気自動車の初期費用の消費者負担の軽減を含む。

 世界で最良の電気自動車充電網を以下により開発する。ハイウェイズ・イングラン ド(Highways England)による1,500万ポンドとあわせて、追加的に8,000万ドル を投資し、充電インフラの導入を支援する。

 自動運転自動車及び電気自動車法案(Automated and Electric Vehicles Bill)の下で 新たな権限を創出し、政府に対して充電スポットの提供に関する規制を策定する 権限を付与する。

 低炭素タクシー及びバスの導入を以下により加速化する。

 「プラグインタクシー(Plug-in Taxi)」プログラムに向けて5,000万ポンドを提供 し、タクシーの運転手がULEVタクシーの新車を購入する際に最大7,500ポンド の値引きを行うと同時に、タクシー専用の充電スポットの設置を支援するために 10地域に対して1,400万ポンドを拠出する。

 イングランド及びウェールズにおいて低炭素バスの改良及び新規導入を支援する 国のプログラムに1億ポンド提供する。

 業界がゼロエミッション自動車への移行を促進するための自動車業界の「セクタ ー・ディール(Automotive Sector Deal)」を策定するにあたって協力する。

 ゼロエミッション自動車への移行を公共部門が先導するための計画を公表する。

 短距離の移動の際には自転車及び徒歩が自然な選択となるように12億ポンドを投 資する。

 貨物輸送を道路輸送から鉄道に移行するための費用対効果の高い選択肢を実現す るための取り組みを行う。都市部への輸送に低炭素の鉄道貨物輸送を利用し、最終 目的地への配達にはゼロエミッションの手段を用いることを含む。

 コネクテッドカー・自動運転車両センター(CCAV: Centre for Connected and

Autonomous Vehicle)の設立及び2億5,000万ポンドの投資も含め、コネクテッ

ドカー及び自動運転自動車技術の研究、開発及び実証において英国を最前線に立 たせる。

 イノベーション:低炭素運輸技術のイノベーションに向けて以下の取り組みに公

的資金8億4,100万ポンドを投資する。

➢ 英国がその強みを生かし、最大2億4,600億ポンドを「ファラデー・チャレン ジ(Faraday Challenge)」に投資することにより、電池の設計、開発及び製造 において世界を牽引することを保証する。

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➢ 大幅な燃料及び排出量の削減を実現しうる、重量積載物車両(HGV: Heavy Goods Vehicle)の車両群の実証実験を行う

図 4-4 クリーン成長経路を考慮した運輸部門の排出量の実績及び予測(1990〜2050 年)

○ 電力

 家庭及び企業の光熱費を削減するために以下の取り組みを実施する。

➢ スマートシステム計画を実施し、消費者のより柔軟なエネルギー利用及び 2050年までに最大400億ポンドの節約を助ける。

➢ ガス・電力市場局(OFGEM)及びナショナル・グリッドと協力し、独立系統 運用機関(ISO)の独立性をさらに強化し、システム全体における競争、調整 及びイノベーションの拡大によって光熱費を下げる。

➢ 予定されているディーター・ヘルムCBE(Dieter Helm CBE)教授が率いるエ ネルギーコストに関する独立調査に回答する。

➢ 市 場 全 体 に お い て 標 準 変 動 料 金及 び 基 本 料 金 に上 限 を 設 定 す る こ と を

OFGEMに義務付ける法案を出す。

 2025年までに未対策の石炭火力発電所を段階的に廃止する。

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