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3-1長期戦略の位置づけ

➢ 本文書は、中期および長期的な国家気候変動方針の指針となる文書である。本文書 は、指針となる文書として、国家および地方レベルでの行動の指針となる政策の戦 略的な面を説明する。また、社会参加と共同責任の推進を目指す。MCSは、具体 的な短期的措置を定義する意図はない。

This document is a guiding instrument of the national climate change policy, both in the medium and long-term. As the guiding instrument, it describes the strategic lines of action guiding policy at national and sub national levels. It also aims to encourage social participation and co-responsibility. The MCS does not intend to define concrete short-term actions6.

➢ 今後10年、20年および40年間のマイルストーン

the milestones for the next 10, 20, and 40 years to build our envisioned country7

➢ 2012年に施行されたメキシコの気候変動法(GLCC, General Climate Change Law)

は、同国の主要な気候政策手段である 。GLCCは、計画立案・政策手段、制度的 取り決めを定め、気候政策の履行に関する一般的指針を提示する。また、適応・緩 和措置に対する、長期的、体系的、分散的そして参加型の統合的アプローチが組み 込まれている。連邦政府は、GLCCに基づいて国家気候変動政策を策定し、指導す る義務を負う。州レベルのインベントリおよび気候プログラムの精緻化を含めて、

地方政府の役割も明確に規定されている。GLCCは、国家気候変動体制(National Climate Change System)を確立し、気候政策の設計において従うべき政策原則を 規定する。

Mexico’s General Climate Change Law (GLCC), issued in 2012, is the main climate policy instrument in the country. 3 The GLCC defines planning and policy instruments, institutional arrangements, and provides general guidance for the implementation of climate policy. It also incorporates a long-term, systematic, decentralized, participatory and integrated approach into adaptation and mitigation actions. Under the GLCC, the Federal Government is mandated to formulate and guide national climate change policy. Subnational governments role is also clearly

6 Mexico’s Climate Change Mid-Century Strategy P.3

7 Mexico’s Climate Change Mid-Century Strategy P.21

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specified, including the elaboration of State level inventories and climate programs.

The GLCC establishes the National Climate Change System and provides policy principles that should be followed for climate policy design.

➢ GLCCは、主な気候計画立案手段を3つ定めている。

a) 国家気候変動戦略:10年、20年および40年後のメキシコの長期ビジョンを規 定する。

b) 特別気候変動プログラム:特定のプログラム、目標およびリソースを考慮した 各部局の計画立案が組み込まれる。

c) 州気候変動プログラム:州ごとの能力、リソースおよび気候を考慮した州レベ ルの規制の計画立案が組み込まれる。

The GLCC establishes 3 main climate-planning instruments:

a) The National Climate Change Strategy: provides the long-term vision for the country with a time horizon of 10, 20 and 40 years.

b) Special Climate Change Program: incorporates the planning for each administration, considering specific programs, goals and resources.

c) State Climate Change Programs: incorporates the planning of each state, considering their specific competences, resources and climate state level regulations.

3-2排出削減目標(部門別、位置づけ)

目標:2050年に温室効果ガス排出量を2000年比50%削減 (LULUCFを含む)

 基準年排出量(2000年):6億3966万t-CO₂

 目標水準(2050年):3億1983万t-CO₂

 発電量に占めるクリーンエネルギー(原子力、CCS付き火力を含む)の割合を2050年に 50%

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図 3-1 メキシコのGHG排出量の推移と目標水準

出典:GHG排出量はOECD統計、2030年の予測値は長期戦略における推計値(ベースライン非22%減 の水準)、2050年の水準はGHG排出量実績に基づく試算

3-3想定される産業・エネルギー需給構造、対策、技術

メキシコのMCSには具体的なエネルギーミックスの数値が記載されていないが、以下の将 来のエネルギー源別一次エネルギー供給の見通しが推計されている。

561

640

760

320

0 100 200 300 400 500 600 700 800

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2030 2050

Mt-CO

Energy Industrial processes and product use Agriculture Land use, land-use change and forestry (LULUCF) Waste target level

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図 3-2 メキシコの一次エネルギー供給の見通し

クリーンエネルギーへの移行(M1)

 M1.1 クリーンエネルギー源および効率の互い技術を有効に利用するために、規制的・

制度的な枠組み、ならびに経済的手段の活用を強化する。

 M1.2 化石燃料を置き換え、環境的・社会的影響を最小限に抑えるために、汚染の少な

い発電および効率技術を推奨する。

 M1.3 国内の電力網でスマートグリッドおよび分散型発電を利用することで、再生可能

エネルギーを普及し、エネルギーロスを軽減しやすくする。

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 M1.4 国有の電力企業を気候変動に立ち向かうための中心的なプラットフォームに変

えて、再生可能エネルギーおよび省エネを発展させる戦略を促進する。

 M1.5 再生可能エネルギー源および効率的な熱電併給を通じて、発電における民間部門

の参加を促す。

 M1.6 ポテンシャルが高く経済的な実現可能性を有する国内地域における発電所と再

生可能エネルギープロジェクトの連係を促進する。

風力

 M1.7 風力発電を推進するとともに、その技術的、社会的、および環境的な適合性を確

保するために、海上・オフショアのポテンシャルから便益を享受する。

太陽光発電

 M1.8 国内のポテンシャルが高い地域における太陽光発電システムの投資を推進する。

 M1.9 産業、住宅およびサービスセクタで太陽光発電システムを使用し、分散型発電を

推奨する。

地熱

 M1.10 探査リスクを減らし、資源権益を保証するために、地熱エネルギープロジェク

トの技術開発を推進する。

水力発電

 M1.11 新たに大規模な水力発電所を設置することで、既存の電力の潜在力を効率的に

利用する。これらの大規模水力発電所は、社会的・環境的影響を補償することができる 区域にのみ建設される。同様に、これらの設備に貯蔵される水を、灌漑、洪水に対する 防御、都市、道路、娯楽、環境サービス、景観および観光向けの給水など、他に利用す る。

 M1.12 小規模、ミニおよびマイクロ水力発電所における発電を推奨する。この技術の

適所は、産業の自給、農村生産、および電力網への連系コストが高い地域である。これ らの適所は、小規模水力発電所の生態学的・社会的な適合性を保証する。

原子力

 M1.13 発電施設の多様化に関する計画において、化石燃料利用の代替となる可能性の

ある、原子力プログラムの実施を考慮する。

太陽熱

 M1.14 サービス、産業、住宅および観光セクターにおける温水向けの利用を含めて、

39 太陽熱ネルギーの利用を推奨する。

エネルギー効率および持続可能な消費(M2)

 M2.1 国内のエネルギーシステム、ならびに経済に寄与するあらゆる活動におけるエネ

ルギー効率と節減を推進する。

 M2.2 効率的な熱電併給、照明、空調、冷蔵および給湯のエネルギー効率化を含めた措

置の緩和ポテンシャルを利用する。

消費習慣および認証

 M2.3 最終使用者の慣行および行動の変化を促す。これは主に、住宅、サービス、観光

および産業セクターで行う。このような変化は、経済的手段、エネルギー効率および節 電キャンペーンを通じて刺激できる。

 M2.4 エネルギー効率および GHG 排出量に関する信頼性の高い情報を適時消費者に

提供するメカニズムの開発を促進および推奨する。このような取り組みの例として、ラ ベリングおよび認証が挙げられる。

 M2.5 高効率基準およびグリーン調達基準を使って、公的部門および民間部門における

持続可能な慣行を実施する。

最先端技術

 M2.6 公式基準およびロジスティクス・技術向上プログラム(燃費および排出量削減の

ためのモーダル・シフトを含む)を定めることで、公的および民間の旅客/貨物輸送の エネルギー効率を高める。

 M2.7 車両の最新化および非効率的な装置の除去・処分を通じて、排出量を削減する。

 M2.8 効率的な灌漑システムを含めて、農業における水の効率を高める。これにより、

エネルギー消費が減ることになる。

 M2.9 プロジェクトの実施を目的とした、炭素回収・隔離(CCS)技術の開発を継続す

る。これには、炭化水素の回収強化にCCSを活用する可能性が含まれる。

変換過程

 M2.10 セメント、鋼鉄、石油、化学、および石油化学産業など、エネルギー集約的な

産業における高効率技術、燃料の代用、産業過程の再設計、およびCO2回収技術を推 進する。

 M2.11 石油、産業および電力セクターにける包括的なエネルギー監査から情報を得た

エネルギー効率プロジェクトを実施することで、エネルギー消費と GHG 排出量を削 減する。

 M2.12 電線と変電所を最新化し、配電網を改善することで、送電損失を削減する。

40 規制および基準

 M2.13 GHG排出量を削減するために、燃料に適用される法的・規制的枠組みを採用し、

必要に応じて設計する。これはとくに、燃料油や船舶用ディーゼルなど、現在規制され ていない燃料に重点を置き得る。

 M2.14 管理機構を含めて、車両検査の義務的な国家体制を創出する。さらに、輸入中

古車を含めて、国内の全車両の高いエネルギー効率を確保するために、3つのレベルの 政府が参加して、車両の排出基準を見直し、調整する。

持続可能な都市(M3)

持続可能な都市開発

 M3.1 用途混合開発と高層ビルを推進し、緑地開発ではなく、高密度化を刺激し、都市

森林を接続し、都市成長の限界を定義するために、都市乱開発を減らし、都市内の土地 へのアクセスを保証することで、計画的で効率的な土地利用を増やす。

建物

 M3.2 以下の分野における新規および既存の建物の効率技術を高める規制、基準および

法律の強化、採用および適用を推進する。水、エネルギー、ガス、断熱、再生可能エネ ルギーおよび炭素回収手法(例:屋上緑化、バーチカルガーデンおよび都市果樹園)。

モビリティー

 M3.3 安全、クリーン、低排出、アクセス可能および快適な公共輸送システムに向けた

発展を推奨する。これは、連邦政府が支援するマルチモーダルな効率ネットワークの創 出を通じて、地域と国の相互接続性を強化することで達成できる。高い相互接続性は、

移動時間と距離を縮小する都市開発と輸送政策の文脈において起こる。

 M3.4 国内および地域の需要を理解した上で、輸送規制事業体を開発する。この規制事

業体は、輸送システムを最適化して移動時間と距離を縮小する。

 M3.5 在宅勤務、学問の場および仕事場に近くなるための住宅交換やリース、企業向け

の一括輸送サービス、および柔軟な仕事スケジュールなど、輸送のニーズを減らすプロ グラムを推奨する。これを達成するために、メキシコは、用途混合開発エリアにおける 都市サービスと設備を多様化し、優先する。

 M3.6 効率的な低排出輸送システムを推進し、再投資と継続的な改善を助長するために、

規制および価格設定枠組みを修正する。

 M3.7 歩行者および自転車利用者が優先される包括的な輸送システムの一環として、非

電動輸送向けのインセンティブ、インフラおよびプログラムを創出する。これによって、

環境上・健康上の直接的な利益が生まれる。

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