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自動車業界における CFRP の取組状況

2. CFRP の加工技術、加工装置技術を保有する企業の実態調査

3.3 自動車業界における CFRP の取組状況

技術革新による低コスト炭素繊維の開発、高効率成形プロセスの導入により、CFRP の自動 車用途への本格採用が期待され、日系炭素繊維メーカー3 社は欧米企業との連携を強めてい る。ここでは、日系炭素繊維メーカーと欧米自動車メーカーの自動車部品への CFRP の適用に 関する取組について、各社からプレスリリースされた情報について紹介する。

(1) 東レとダイムラーの提携状況

2008 年 12 月、東レは、炭素繊維複合材料の自動車分野における事業拡大を企画し、欧州 に CFRP 部品の現地開発と生産拠点を設置するために、ドイツの CFRP 部品メーカーの ACE(ア ドバンスト・コンポジット・エンジニアリング)社に資本参加した。自動車分野で CFRP 部品 の採用が先行している欧州市場で現地開発、生産を手掛けることにより、今後成長が期待さ れる自動車用 CFRP 部品事業の本格拡大を目指すと発表した。

(ACE 社:高級車やトラック等の CFRP 部品を開発・生産・販売。自動車用 CFRP の部品設計、

成形加工、金型治具製作、機械加工などにおいて高い技術力を有する。)

2011 年 1 月、東レとダイムラーAG は、東レが開発した CFRTS の成形技術である「ハイサイ クル RTM 成形技術」を活用して CFRTS 製の自動車部品を製造販売する合弁会社を設立した。

東レが炭素繊維素材と中間基材の開発、CFRTS 部品の構造設計、成形プロセスの技術開発を、

ダイムラーは主に部品設計と後加工、接合技術の開発を行い、CFRTS 部品を短サイクルで製 造できる量産技術を開発する。

新会社で製造される CFRTS 製自動車部品を 2012 年に発売するメルセデスベンツ『SL』クラ スのデッキリッドインナーシェルに使用し、同部品を CFRTS にすることで従来品に比べて 45%

軽量化できるとしている。CFRTS の採用に伴うコストについては「製造コストの削減などで 吸収し、販売価格には反映しない」としている。

ダイムラーは燃費向上と排出ガス削減に向けて「メルセデスベンツの全モデルにおいてホ ワイトボディ重量を 10%軽量化する」という開発目標を設定、目標達成に向けて CFRP 部品の 適用と対象車種の拡大を積極的に進めていくこととしている。

2012 年 3 月、東レは、日本・米国・フランス・韓国の世界 4 極で炭素繊維の生産能力を増 強することを発表した。4 拠点にて合計年産能力 6,000 トンの生産設備を導入し、2014 年か ら 15 年にかけて順次生産を開始する予定である。現在の年産 1 万 7,900 トンの炭素繊維生産 能力を、15 年 3 月に年産 2 万 7,100 トンまで拡大する計画である。炭素繊維市場の本格拡大 に向け、用途開発を加速するとともに、生産体制を強化し炭素繊維複合材料事業を拡大して いく。

(2) 帝人とゼネラルモーターズ(GM)の提携状況

2011 年 3 月、帝人は、熱可塑性樹脂を使用することで CFRTP を 1 分以内で成形する量産技 術を世界で初めて開発したと発表した。これによって熱硬化性樹脂を用いる従来の CFRTS で は困難だった量産自動車への適用の可能性が出てきたという。

従来の CFRTS では、最短 5 分程度で成形可能な技術が開発されているが、1 分前後での成 形が求められる量産車向け材料としては適していない。このため、素材としての採用は一部 の高級車用などに限られており、短時間成形を実現するため新たな材料や、量産化が可能と なる技術が検討されている。帝人は、炭素繊維に熱可塑性樹脂を含浸させた中間材料をプレ ス成形することにより、高速で CFRTP の成形を可能とした。さらに、CFRTP 同士の接合や CFRTP と異素材間の接合技術により、部品点数の大幅な低減にも成功している。

2011 年 8 月、帝人グループの東邦テナックスとドイツ子会社のトーホウ・テナックス・ヨ ーロッパ(TTE)が、新規熱可塑性プリプレグの量産技術を確立し、9 月からサンプル供給を 開始すると発表した。CFRTP 普及のための技術開発を推進し、日・欧・米 3 極で川中・川下 への展開を強化していく計画である。

2011 年 12 月、帝人は、炭素繊維からコンポジット製品の成形加工までを 1 分以内で連続 一貫生産するパイロットプラントを松山事業所(愛媛県松山市)に設置すると発表した。自 動車業界が求める 1 分以内のタクトタイムで、CFRTP を連続一貫生産できることから、コン ポジット製品の量産車への採用に向けて大きく貢献することができるとしている。今回の設 備投資額は 20 数億円で、早期に着工し稼働を開始するとしている。

2011 年 12 月、帝人と GM とは、自動車用 CFRTP を共同開発すると発表した。2012 年に、米 国に共同開発拠点を設け、世界各国で自動車の燃費規制が厳しさを増している中、自動車用 CFRTP の共同開発により燃費規制に対応していく計画である。

2012 年 3 月、帝人は、CFRTP による自動車構造材への用途開発及び GM との共同開発を本格 化するための研究開発センター「テイジンコンポジットアプリケーションセンター(TCAC)」

を米国に新設すると発表した。

2012 年 12 月、帝人は、松山事業所内に「炭素繊維からコンポジット製品の成形加工まで を 1 分以内で連続一貫生産するパイロットプラント」が完成し稼動を開始したことを発表し た。これにより、CFRTP の試作から性能評価までが迅速に実施でき、さらに複雑形状や大型 のコンポジット製品の量産試作も可能となるとしている。

帝人では今後、複合材料開発センター(御殿場)を研究開発の中核としながら、松山事業 所内に稼動を開始した CFRTP の連続生産パイロットプラントや、TCAC との連携により、CFRTP のマーケット開拓を強力に推進し、早期にコンポジット製品事業を本格展開していく。2020 年頃には 1,500 億~2,000 億円の事業規模を目指している。

(3) 三菱レイヨンと BMW の提携状況

2010 年 4 月、三菱レイヨンと SGL Technologies GmbH(以下 SGL 社)は炭素繊維プレカー サーの製造・販売を目的とする合弁会社「MRC-SGL プレカーサー(以下 MSP 社)」の設立を発 表した。

BMW が SGL 社との間で設立した「SGL Automotive Carbon Fibers(以下 SGL-ACF 社)」へ炭 素繊維原料であるプレカーサーを供給することを目的としたプレカーサー製造の合弁会社で ある。SGL-ACF は供給されたプレカーサーから、BMW が 2015 年までに発売を予定している電 気自動車向けの炭素繊維を製造する予定である。

2011 年 4 月、MSP 社は、大竹事業所にて炭素繊維の原料であるポリアクリロニトリル(PAN)

系炭素繊維プレカーサーの量産を開始した。SGL-ACF 社に全量供給され、米国にある炭素繊 維焼成工場でラージトウ炭素繊維に加工された後、ドイツの同社中間材工場で各種織物に加 工される。ラージトウ炭素繊維織物は、BMW 部品工場で CFRTS に成形加工され、BMW が 2013 年に発売予定の次世代環境対応車“Megacity Vehicle”の「i3 シリーズ」の構造材料として 全面的に採用される予定である。

2011 年 9 月、SGL-AFC 社は、CFRTS を製造する工場を開設したと発表した。新工場は年産 1,500 トンの生産能力を持つラインを二つ設ける。BMW の電気自動車「i シリーズ」に採用さ れる CFRTS を生産する。工場で今後生産する CFRTS は、まず電気自動車 BMW『i3』に採用さ れる予定で、電気自動車の軽量化に貢献する。

2012 年 10 月、BMW は BMW のサブブランド「i」シリーズの電気自動車で、量販車として初 めて CFRTS を車体の主材料に採用し、欧州にて 2013 年に発売すると発表した。CFRTS 製の車 体とアルミベースのシャーシは、4 か所程度がボルトで締結され、後は接着されている。普 通のエンジン車に比べて部品点数は 3 分の 1(約 1 万点)で、生産工程も非常に簡単であり、

生産段階でのコストダウンも図れるという。

2012 年 11 月、三菱レイヨンはドイツの炭素繊維ファブリック開発製造会社「TK Industries GmbH(以下 TK 社)」の全株式を取得し 100%子会社化した。ドイツを中心とする欧州自動車市 場では、CFRTS を車体構造材に使用した電気自動車 BMW i3 が 2013 年秋に販売開始される予 定であるなど、自動車部品への採用が加速しており、高級車の中規模量産自動車向けには CFRTS の成形技術として RTM 工法が採用されていくものと予想される。今回 RTM 工法の基材 となる多軸ファブリックの開発に強みを持つ TK 社を子会社化することにより、自動車メーカ ーへの提案力を強化していく。

(TK 社:2008 年創業、ラージトウを用いた CF 多軸ファブリックの設計、開発に優れた技術 を有する。)

(4) 国内自動車メーカーの軽量化の取組

国内主要自動車メーカーの自動車軽量化への取組について、図表 3.3-1 に示す。

各社は、既存の高張力鋼鈑やアルミ材の使いこなし及び部品点数の削減の検討を行うこと と並行して、CFRP の量産車への適用のための技術開発が進められている。

図表 3.3-1 国内主要自動車メーカーの軽量化の取組13

メーカー 軽量化方針 主な軽量化の取組

トヨタ自動車

主要車種ごとに重量削減目標を設定 まずはカローラ、カムリなど 3 車 種 で 100kg/台の軽量化を実現し、2010 年代 半ばまでに順次、各モデル改良時に水 平展開する

高張力鋼鈑、アルミ材、マグネシウム、樹脂複合材な どの使用拡大(CFRP も含まれる)

部品、ユニットの設計変更

日産自動車

2015 年以降に市場投入する新型車の 車 両 重 量 を 、 同 一 車 両 旧 モ デ ル の 2005 年時点に比べ 15%軽量化する

高張力鋼鈑、超高張力鋼鈑の適用範囲の拡大 鉄 か ら ア ル ミ 合 金 や 樹 脂 な ど の 軽 量 材 料 に 拡 大

(CFRP も含まれる)

複数部品の一体化や構造の最適化

ホンダ 2015 年に、全車種平均で現行比 5~

10%の軽量化

高張力鋼鈑、アルミ材、樹脂材料などの使用拡大

(CFRP も含まれる)

車両骨格構造の最適化

三菱自動車 2010 年以降に市場投入するモデルに つき、前モデル比で車両重量 10%削減

樹脂製ウィンドウの実用化

アルミ材、高張力鋼鈑、樹脂の採用拡大

(CFRP も含まれる)

マツダ

2015 年までに、市場投入する新型車の 重量を現行モデルより 100kg 削減 2016 年以降は、2015 年までに市場投 入したモデルの重量を更に 100kg 削減 する

構造、設計の最適化 接合要素技術の改良 高張力鋼鈑の採用拡大

13 アイアールシー,「自動車軽量化と低コスト対策 2011 年版」