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熱可塑性炭素繊維複合材料(CFRTP)の成形技術の開発動向

4. 自動車関連部品に係る CFRP の加工技術及び加工装置の技術開発動向

4.2 CFRP の成形加工に関する技術開発動向

4.2.2 熱可塑性炭素繊維複合材料(CFRTP)の成形技術の開発動向

(1) 熱可塑性炭素繊維複合材料(CFRTP)のプレス成形加工技術

CFRTP のプレス成形について、NEDO にて実施されている「サステナブルハイパーコンポジ ット技術の開発」について紹介する。

① サステナブルハイパーコンポジット技術の開発20

・研究開発の実施期間:平成 20 年度~平成 24 年度までの 5 年間

・委託先:東京大学、三菱レイヨン、東洋紡績、東レ、山形大学、東北大学、京都工芸繊維 大学

・目的:従来の CFRTS(炭素繊維/エポキシ)に匹敵する界面接着強度及び低い線膨張係数 を保持しながら、従来の CFRTS の欠点であった高速成形性、易 2 次加工性及びリペア・リ サイクル性を備えた革新的な CFRTP を開発するとともに、自動車部材開発に必要な材料特 性を明らかにする。

◇技術開発最終目標(平成 24 年度)

ⅰ)易加工性 CFRTP 中間基材の開発

・ 等方性 CFRTP 中間基材の開発

等方性 CFRTP 中間基材(不連続繊維)から得られる平板において、任意の面内方向で 曲げ強度がどの方向でも 400MPa(比強度(√σ/ρ)で鋼材の約 6 倍以上)となり、曲 げ強度の方向による変動係数が 5%以内となる材料を開発する。

・ 一方向性 CFRTP 中間基材の開発

CFRTP プリプレグシートから得られる一方向強化材において、繊維直角方向の曲げ強 度 110MPa 以上、繊維方向の曲げ強度 1,600MPa(比強度で鋼材の約 10 倍)以上、繊維方 向曲げ破断ひずみ 1.3%以上の材料を開発する。

ⅱ) 易加工性 CFRTP の成形技術の開発

・ CFRTP 中間基材の高速スタンピング成形技術の開発

等方性 CFRTP 中間基材及び一方向性 CFRTP 中間基材(チョップドテープ、クロス等)

を用い、それぞれを単体で用いる場合と複合して用いる場合について、高速スタンピン グ成形により、それぞれの CFRTP 中間基材の力学特性を保持した部材を成形する技術を 確立する。

・ CFRTP 中間基材の高速内圧成形技術の開発

一方向性 CFRTP 中間基材のうちのブレード(三次元織物)を用い、高速内圧成形によ り、当該 CFRTP 中間基材の力学特性を保持した部材を成形する技術を確立する。

ⅲ) 易加工性 CFRTP の接合技術の開発

参照強度の 90%以上の接合強度を発現する接合方法を開発する。(参照強度:一方向 CFRTP 中間基材の繊維直角方向の引張強度)

ⅳ) 易加工性 CFRTP のリサイクル技術の開発

・ CFRTP 部材のリサイクル技術の開発

CFRTP 部材を 3 回リサイクル後に参照強度の 90%以上を保持するリサイクルプロセスに 必要な要素技術を見極める。環境影響評価(LCA)を実施して、開発技術が使用された場 合の環境負荷低減への貢献度を定量化する。

・ CFRTP 部材のリペア技術の開発

CFRTP 部材に対し、損傷後にリペアを行うことで、損傷前の曲げ強度の 90%以上まで回 復するために必要な要素技術を見極める。また、この開発技術に関する LCA を実施して、

開発技術が各種製品に使用された場合のライフサイクルでの環境負荷低減への貢献度を 定量化する。

【実用化技術】

ⅴ) 易加工性自動車用モジュール構造部材の開発

不連続繊維を使った等方性 CFRTP 中間基材を使用した革新的軽量モジュールの成形技術 を開発し、その自動車部材等への適用性を検証する。

ⅵ) 易加工性自動車一次構造材用閉断面構造部材の開発

閉断面形状を有する自動車一次構造材のモデル部材を得て、自動車一次構造部材への適 用性を検証する。

図表 4.2.2-1 サステナブルハイパーコンポジット技術の開発21

21 NEDO ウェブサイト:http://www.nedo.go.jp/content/100490842.pdf

② 海外における CFRTP の技術開発動向と成形方法について

炭素繊維熱可塑性プラスチックについては、オランダの Tencate Advanced Composites

(Tencate)社やドイツの Bond Laminates(BL)社等により開発され、製造販売されている。

Tencate 社はオランダのテキスタイル総合メーカーで、熱可塑性複合材料(CETEX®(商標))

を 1987 年よりデルフト工科大学と航空機向け構造材として研究開発を進め、現在では Airbus A350 や A380、ボーイング 787 などの部品として採用されている。2012 年 10 月には、BASF と 戦略的提携に合意し、自動車用途に適した熱可塑性複合材料の開発、製造、商業化について 共同開発することを発表している。

一方、ドイツの BL 社は、1997 年に Dupont 社が開発(1992 年)した連続熱可塑性プラスチ ックの商権を買い取り、TEPEX®の商標で航空機、自動車等の一般産業用に製造販売している。

2012 年 9 月にランクセス社が、自動車部品軽量化のために、熱可塑性プラスチックを開発、

製造している BL 社を買収したと発表した。

TEPEX®(連続繊維熱可塑性プラスチック(CFRTP/GFRTP))は、従来のプレス成形の応用に より 60 秒で成形が可能な技術である。ここでは、TEPEX®(連続繊維熱可塑性プラスチック)

について紹介する。

ⅰ) TEPEX®の概要22

連続繊維に熱可塑性樹脂が完全に含浸された材料で、積層板の状態で供給される。TEPEX® の CFRTP 関連材料は、連続繊維熱可塑性プラスチック(Dynalite)と不連続繊維プラスチッ ク(30mm~50mm)(Flowcore)の 2 種類がある。

積層板は、以下のカスタマイズが可能である。

a.厚み: 0.05~6.0mm、 幅: 620 or 860mm、 長さ: 調節可能 b.繊維ボリューム: 35%~85%

c.繊維構造: 織物と UD

d.積層構造: 2 種以上の繊維の組合せも可能、織物と UD の組合せも可能である。

ⅱ) TEPEX®の成形方法

TEPEX®の成形は、基本的には IR ヒータやコンタクトヒータで加熱処理を行いプレス機にて プレス成形を行う。以下、各種成形方法について説明する。

a. プレス成形

プレス成形法が最も一般的な成形方法で、ハンドリング性の確保やしわ防止のためにフ レームなどで積層板を固定する。15~60 秒の成形サイクルタイムと安定した品質を得るた めには型温度の管理が重要である。

図表 4.2.2-2 プレス成形

金属型

樹脂型 型ベース TEPEX®

IR Heater

b. ダイヤフラム成形

型コストが安価でサイクルタイムが短いため、比較的簡単な部品形状の製造に適してい る。2 枚の離形シリコンラバーシートに積層板を挟んで加熱し、樹脂が軟化したところで、

型の上に素早く置き、3~5bar の空気圧をかけて成形する。

図表 4.2.2-3 ダイヤフラム成形

hot plate

シリコンラバーシート

TEPEX®

型 圧力

ラバーダイアフラム

c. 圧縮成形

TEPEX® Flowcore(30~50mm 不連続繊維プラスチック)を用いて、加熱後素早く高圧力プ レス(100bar 以上)で成形する。積層板が圧縮される間、樹脂は型中で高流動性となるこ とにより、細部までの厚み調整が可能である。

図表 4.2.2-4 圧縮成形

TEPEX® Flowcore

IR Heater 金属型

シェアエッジ付金型 型ベース

d. ハイブリッド成形

TEPEX®を射出成形や Glass Reinforced Thermoplastic (GMT)/ Long Fibre Thermoplastic (LFT)の圧縮成形のインサート材として使用することにより、成形体の部分的な補強や複雑 なデザインの成形が可能となる。ハイブリッド成形の型の中で樹脂同士が融着し統合され た部品が成形できる。

図表 4.2.2-5 ハイブリッド射出成形

TEPEX®成形品 をインサート TEPEX®

射出成形

連続繊維プレス成形 長繊維射出成形

③ 国内における CFRTP のプレス成形技術

国内で検討されている CFRTP のプレス成形技術について紹介する。

ⅰ) 広島県「炭素繊維加工産業創出プロジェクト」23の取組

a.「炭素繊維加工産業創出プロジェクト」の概要

広島県内自動車関連産業支援を主な目的として、広島県総合技術研究所が中心となり、

低コストかつ生産性の高い「広島県独自の炭素繊維複合材料加工技術」の開発に取り組ん でいる。このプロジェクトを通して、

・広島県を炭素繊維複合材料加工産業の拠点とすること

・自動車部品製造のインフラを利用した CFRTP の利用促進と新たな産業創出を行うこと を目指している。

■ 研究開発テーマ(平成 21 年度~平成 23 年度)

「炭素繊維熱可塑性複合材料(CFRTP)の低コスト成形加工技術の開発」

■ 研究目的

自動車分野で使用される軽量かつ高強度な「炭素繊維複合材料」を開発する。

成形速度が速く、リサイクルが容易な CFRTP を対象に、低コストでハイサイクル成形が 可能な加工プロセスとして、「プレス成形」に関する設計開発技術、成形技術の開発を目指 す。

b. 炭素繊維複合材料のプレス成形方法

CFRTP のプリプレグシートを所定の大きさに切り出し積層し、プレス板状に成形する(1 次プレス)。これを再度加熱して柔らかくし金型でプレス成形(2 次プレス)することで成 形体を得る。

c. 炭素繊維複合材料の製造コスト削減検討

炭素繊維複合材料について自動車部品への実用化を考える場合、いかに製造コストを下 げるかが課題となる。そこで、製造コストを下げるための技術開発が検討された。

製造コスト削減の技術開発は、以下の製造プロセスにおける 3 項目について検討が行わ れた。

・ 中間材料(プリプレグシート)製造技術

炭素繊維への樹脂の接着性を改良することにより、中間材料の強度を向上し、炭素繊 維の使用量低減が可能となった。

・ 製品設計・積層技術

細いテープ状のシートを使用して、工業用ミシンで積層することにより、材料の歩留 りが高まり、材料コスト削減が可能になった。

・ 高速成形技術

プレス成形の加熱、冷却のサイクルの時間を短縮するために、加熱、冷却サイクルを 高速化しても温度ムラの生じない金型を開発し、従来 22 分掛かっていた成形サイクルを 10 分に短縮することが可能となった。

d. 自動車部品を試作

自動車部品への適用検討として、マツダ RX-8 用のトランスバースメンバーを試作し性能 評価を行った。CFRTP 製のトランスバース使用により、現行品に比べて 60%の軽量化が可能 となり、実車走行試験でも軽快なハンドリングが確認できた。

(トランスバースメンバー:車の底面に取り付け車体のねじれ剛性を高め、ひずみを少な くし、コーナリングでのハンドル操作の応答性を高める部品)

ⅱ) 石川県「いしかわ炭素繊維クラスター」の取組

a.「いしかわ炭素繊維クラスター」について24

石川県内で進む炭素繊維の技術開発に対して、国の支援を強化するために文部科学省、

経済産業省、農林水産省各省が地域の特性をいかした技術革新を期待できる「地域イノベ ーション戦略推進地域」として石川県を選定した。

文部科学省の地域イノベーション戦略支援プログラムの認定を受けて、2012 年 8 月から 石川県で「いしかわ炭素繊維クラスター」の活動が本格化、研究開発を加速して、2020 年

24 (財)石川県産業創出支援機構ホームページ:http://www.isico.or.jp/soshiki/gijyutsu/carbon-c