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切削加工技術(機械加工、ウォータージェット加工、レーザー加工)

4. 自動車関連部品に係る CFRP の加工技術及び加工装置の技術開発動向

4.3 CFRP の 2 次加工に関する技術開発動向

4.3.1 切削加工技術(機械加工、ウォータージェット加工、レーザー加工)

CFRP の切削加工にはエンドミル等の機械加工やアブレイシブウォータージェット(AWJ)

を使用するのが一般的である。航空機等に使用されるオートクレーブ成形による CFRTS の製 造方法を図表 4.3.1-1 に示す。2 次加工としては、成形後周囲に残る余剰部分のトリミング 等の仕上げ加工や穴開け加工が必要となる。CFRP の各加工方法の長所、短所を図表 4.3.1-2 に示す。エンドミル等の機械加工は CFRP 繊維の層間剥離が発生しやすく加工能率が上げられ ない、工具寿命が短いという問題があり、ウォータージェット加工は、加工可能な形状に制 約があり初期投資や維持費が高いという問題がある。自動車部品への CFRP の適用を考えた場 合、更なる加工法の改善、改良が必要である。ここでは、CFRP の切削加工技術に関する最近 の技術開発動向について紹介する。

図表 4.3.1-1 CFRTS のトリム加工、穴開け加工

ウォーター ジ ェッ ト

エ ンドミ ル

ドリル 穴開け加工 トリミング加工

積層 加圧

真空引き

気密性バッグ

加熱 オートクレーブ

樹脂含浸炭素繊維

冷却

材料の余剰部分

図表 4.3.1-2 CFRP の加工方法の比較

加工方法 メリット デメリット

AWJ ・加工面品質が良い ・加工可能な形状に制約がある

・高コスト(初期投資、維持費)

エンドミル ・汎用機械加工設備で加工可能 ・層間剥離が発生しやすい

・工具寿命が短い

ダイヤモンド電着工具 ・汎用機械加工設備で加工可能 ・チップポケットが狭く、高送りができない

・工具寿命が短い

(1) 機械加工技術

① CFRP の切削加工の課題

炭素繊維の硬さと炭素繊維シートの積層構造により、CFRP の切削は非常に困難である。

具体的な問題点としては、切削時に生じる炭素繊維を含んだ切り粉が非常に硬いことが挙 げられる。このため通常の超硬工具などでは摩耗の進行が極めて早く、加工が非常に困難と なる。また、炭素繊維シートは積層構造を樹脂で固めた組織となっているため、切削を行っ たときに、デラミネーションや、バリが発生するという課題がある。実際の部品加工では、

トリミング(輪郭削り)と穴開けが主となるが、ここで生じやすい品質上の不具合の代表的 なものがデラミネーションである。積層された繊維が穴の出入口やトリミング時の端部で剥 離することで、表層剥離や盛り上がりのような毛羽立ち、炭素繊維の切断不良などの様々な 形態となる。こうした切削不良を防ぐためには、切削抵抗が低く繊維を切断するためのシャ ープな刃と高い耐摩耗性を備え、切削抵抗の分散に配慮した専用工具を使用することが必要 である。

② 切削工具30

CFRPの切削加工における最も大きな問題点は切削工具の寿命にある。工具の交換、工具数 の増加、工具交換による実効加工時間の減少等により、生産コストは大幅に増加する。

CFRPに含まれる炭素繊維は切削工具に対する摩耗性が高く、いかに有効な手段によって工 具寿命を延ばしていくかが、CFRPを加工する上での大きな課題である。工具メーカー各社に おいて、工具の材質や切り刃形状の検討により、長時間にわたり高品質な切削が維持できる 切削工具の技術開発が行われている。

CFRPの加工では、工具摩耗が急速に進行するため工具材質には多結晶ダイヤモンド(PCD)、

ダイヤモンドコーティング、ダイヤモンド電着など、ダイヤモンド工具が適している。

PCD工具は、切れ刃形状をシャープにすることができ、工具直径の精度も良く、良好な切削 面品位が得られ、再研磨も可能であるが、欠けやすく、形状の自由度が限られるという欠点 を有する。電着工具は他の工具と比較して安価であるが、耐摩耗性も低くカッターとして切 断や軽負荷な面取りなどの用途に適用される。ダイヤモンドコーティングは、ねじれ角やね じれ方向、すくい角、刃数などの工具形状の自由度が高く、形状最適化が可能で、優れた費 用対効果が期待できる。

工具材料の選定には、加工内容と工具の交換時期などを工程ごとに考慮して、最適な材種 を選定する必要がある。

30 羽生,滝川:NEW DIAMOND, Vol.27, No.3, p.17(2011)

③ 切削加工装置

CFRPを切削加工すると切りくずは非常に細かい粉塵となり、環境や健康への被害、機械停 止などの問題が発生する。こうした課題を解決するために森精機製作所により最近開発され た、切削加工装置「ゼロチップ®」(森精機製作所の登録商標)について紹介する。

◇「ゼロチップ®」による炭素繊維複合材料の吸塵冷却加工31

CFRP を切削加工する上での課題としては、切りくずの粉塵による環境や健康ヘの被害、

機械停止などの問題と切削温度の上昇による CFRP 品質劣化等が考えられる。通常これらの 課題を回避する加工法はクーラントをかけながら粉塵を洗い流し、同時に冷却を行うもの であるが、この工法では加工後に後処理が必要で、用途によってはクーラントを使用でき ない場合もある。

そこで、クーラントを使用しないドライカットで、かつ切りくずが飛散しない「ゼロチ ップ®加工」が開発された。機外に設けたバキューム装置により切りくずの通る穴を設けた 工具を用いて、加工点で発生した切りくずを吸引排出する機構である。

切りくずを集塵するとともに、吸引による十分な吸気が切削点を通過することにより、

切削点の工具と被削材の熱を冷却することができる。この工法を「吸塵冷却加工」と呼ん でいる。フライスドリルやエンドミルを使用したCFRPの切削加工において、良好な集塵効 果と冷却効果が得られている。

ⅰ) 設備構成

ゼロチップ®仕様機として、主軸内径を拡大して主軸が回転しても一緒に回転しない固 定パイプを配置したマシニングセンタを開発した。固定パイプの中を切りくずが通過する ため、パイプ内の切りくずは遠心力の影響を受けずに吸引され、主軸内は切りくずによる 摩耗がなくなる。摩耗が予測されるパイプは、機上から簡単に交換できる構造としており、

さらに粉塵に触れることなく分別回収が可能な機能を備えている。

ⅱ) ドリルによる加工事例

中央に吸塵孔を設けたダイヤモンドコーティングされたドリルを用いて、CFRPの連続穴 加工を行った。吸塵オン時のワーク表面温度と吸塵オフ時の切りくず温度の測定結果で、

吸塵オンとオフの間で最大80℃の温度低下効果があった。また、工具の温度変化では、吸 塵オフの状態では、エポキシ樹脂軟化温度をはるかに超えた約180℃に達しているのに対 して、吸塵オンでは工具温度は90℃となり、穴加工後に急激に温度が低下することが確認 された。

今回開発された「吸塵冷却加工」は、CFRP切削加工において粉塵によるダメージと切削温 度上昇という二つの課題を同時に解消することができる。これにより、作業者の健康被害の 予防や機械保全性の向上、また、切削時の熱的影響による製品劣化の軽減が可能となる加工 技術である。

(2) ウォータージェット加工技術32

ウォータージェット(WJ)加工とは、加圧(数 MPa~数百 MPa)した水をノズルから噴射さ せ、高速(噴射速度が数十~数百 m/sec)の水噴流の破壊・分離・除去作用により各種材料 の加工を行う方法で、切断・洗浄・剥雛などに利用されている。

切断用途では、200~40OMPa の超高圧水を穴径 0.1~0.4mm のノズルから噴射する。ウォー タージェットによる切断には、ゴム、紙など軟質材の切断に用いられる水のみを噴射する「ア クアジェット切断」と金属、ガラス、セラミックスなどの硬質材の切断に用いられる噴射水 に研磨材を混入する「アブレイシブジェット切断」がある。

WJ 切断加工は、数年前までは材料の粗加工が中心であったが、近年、複合材など新素材で 採用事例が増加、高精度仕上げ加工も主流となりつつある。また、3 次元設計などにより製 品形状が複雑化する中で、WJ 切断による立体形状切断の要求も高まっており、他の工作機械 と同様に WJ 加工機にも多軸加工機や複合加工機の要望が増加している。

① WJ 切断加工の特徴

・非接触加工で、材料に対する変形、歪み、残留応力がない

・発熱を伴わないので熱変性がなく、切断面からガスが発生しない

・粉塵の飛散がなく作業環境が改善される

・切断開始、終了が任意で、複雑な切り抜き加工も容易である

・材料の歩留りが良く、高価な材料の切断に有効

② 従来の WJ 切断加工

被加工物の上面側と下面側の切断幅が一致する速度のことを被加工物に対する最適な送り 速度といい、最適な送り速度以外で加工すると切断面のテーパ状化、被加工物の下面側仕上 がり寸法の減少、ジェットの被加工物への貫通切断不能といった不具合が起こる。従来の 3 軸加工で精密切断を行う場合は速度を遅くし、粗切断の場合は、高速で切断面にテーパが入 ったままで使用されていた。

図表 4.3.1-3 WJ 切断加工(従来)における最適送り速度

●:ワーク下面切断幅

■:ワーク上面切断幅

材質 :アルミニウム(A5052)

厚さ :10mm 圧力 :300MPa 研磨材:ガーネット(#80)

0 0.05 0.1 0.15

送り速度[m/min]

切断幅mm]

3

2

1

最適な加工条件

32 尾嶋:機械と工具, Vol.52, No.5, p.26(2008)