テーマ
Ⅰ−7 − 読書への誘い(アニマシオンゲーム) −
ねらい 絵本を読み,読むことをゲーム化することによって読書への抵抗をなくすと ともに,読書への関心意欲を醸成する。
準備 絵本を1冊用意する。今回は「マッチ売りの少女」を用意した。
その本文を1〜2行ごとにカード化する。
【資料1】マッチ売りの少女(全文)
【資料2】マッチ売りの少女(カード化・40人分)
活動例
生徒の活動 指導上の留意点
1 【資料1】マッチ売りの少女(全文)を聞く。 ・ 資料1】を読み上げ【 る。
2 順番に感想を述べる。 ・簡単な感想を言わせ,
(質問例 「この物語はどうでしたか 」) 。 その全てを受容する。
・機械的に多くの生徒を 指名する。
・生徒の感想にはうなず
, 。
いたり 相づちを打つ
3 ゲームを行う ・ゲームの内容を言わず
机などを取り払ってクラスの全員が円形に1列に並び, に絵本を読む。
そこで,もう一度絵本を聞く。
4 用意しておいたカード【資料2】を無作為に配られる ・物語の本文を1行か2
ので,受け取る。 行ごとにカード化して
おく。
5 全員が受け取ったら,最初の者(適当に指名する)か ・カードは物語の順番通 ら配られたカードを大きな声で読む。 りにはなっていない 6 自分が読んだ後に,物語の構成に合わせ正しいと思わ ・このときは全員のカー
れる位置に移動する。最初は大体の位置だが,徐々に隣 ドを聞いていないので やその隣と交換するようにする。 予想で移動させる。
(読み進むうちに,少しずつ【資料1】マッチ売りの少 ・さらに隣と相談するこ 女(全文)に近づけていく )。 とも可能。ただしカー
ドを見せ合わない。
・移動するものがあれば 移動させる。
7 全員が正しいと思う位置に移動し終えたら最初からカ ・この時も相談すること
ードを読む。 は可能。ただしカード
「これでいいですか。訂正があれば移動しても構わな を見せ合うことはしな いですよ 」といわれたら,最終的な位置の確認を。 い。
する。
8 最後にもう一度【資料1】マッチ売りの少女(全文) ・慣れてくれば絵本から を聞き,自分たちの順番と合っていたかを確認する。 短編小説へと移行する
ことも可能である。
【資料1】
マッチ売りの少女
それは,ひどく寒いおおみそかの夜のことでした。あたりはもうまっくらで,こんこん と雪が降っていました。寒い夜の中,みすぼらしい一人の少女が歩いていました。ボウシ もかぶらず,はだしでしたが,どこへ行くというわけでもありません。行くあてがないの です。ほんとうは家を出るときに一足の木ぐつをはいていました。でも,サイズが大きく ぶかぶかで,役に立ちませんでした。実はお母さんのものだったので無理もありません。
道路をわたるときに,二台の馬車がとんでもない速さで走ってきたのです。少女は馬車を
, 。 。
よけようとして 木ぐつをなくしてしまいました 木ぐつの片方は見つかりませんでした もう片方は若者がすばやくひろって 「子供ができたときに,ゆりかごの代わりになる 」, 。 と言って,持ちさってしまいました。だから少女はその小さなあんよに何もはかないまま でした。あんよは寒さのために赤くはれて,青にじんでいます。少女の古びたエプロンの 中にはたくさんのマッチが入っています。手の中にも一箱持っていました。一日中売り歩 いても,買ってくれる人も,一枚の銅貨すらくれる人もいませんでした。少女はおなかが へりました。寒さにぶるぶるふるえながらゆっくり歩いていました。それはみすぼらしい と言うよりも,あわれでした。少女の肩でカールしている長い金色のかみの毛に,雪のか けらがぴゅうぴゅうと降りかかっていました。でも,少女はそんなことに気付いていませ んでした。
どの家のまども明かりがあかあかとついていて,おなかがグゥとなりそうなガチョウの 丸焼きのにおいがします。そっか,今日はおおみそかなんだ,と少女は思いました。一つ の家がとなりの家よりも通りに出ていて,影になっている場所がありました。地べたに少 女はぐったりと座りこんで,身をちぢめて丸くなりました。小さなあんよをぎゅっと引き よせましたが,寒さをしのぐことはできません。少女には,家に帰る勇気はありませんで した。なぜなら,マッチが一箱も売れていないので,一枚の銅貨さえ家に持ち帰ることが できないのですから。するとお父さんはぜったいホッペをぶつにちがいありません。ここ も家も寒いのには変わりないのです,あそこは屋根があるだけ。その屋根だって,大きな 穴があいていて,すきま風をわらとぼろ布でふさいであるだけ。小さな少女の手は今にも こごえそうでした。そうです! マッチの火が役に立つかもしれません。マッチを箱から 取り出して,カベでこすれば手があたたまるかもしれません。少女は一本マッチを取り出
「 」 , , ,
して―― シュッ! と こすると マッチがメラメラもえだしました! あたたかくて 明るくて,小さなロウソクみたいに少女の手の中でもえるのです。本当にふしぎな火でし た。まるで,大きな鉄のだるまストーブの前にいるみたいでした,いえ,本当にいたので す。目の前にはぴかぴかの金属の足とフタのついた,だるまストーブがあるのです。とて もあたたかい火がすぐ近くにあるのです。少女はもっとあたたまろうと,だるまストーブ の方へ足をのばしました。と,そのとき! マッチの火は消えて,だるまストーブもパッ となくなってしまい,手の中に残ったのはマッチのもえかすだけでした。
少女は別のマッチをカベでこすりました。すると,火はいきおいよくもえだしました。
光がとてもまぶしくて,カベがヴェールのように透き通ったかと思うと,いつのまにか部 屋の中にいました。テーブルには雪のように白いテーブルクロスがかかっていて,上にご うかな銀食器,ガチョウの丸焼きがのっていました。ガチョウの丸焼きにはリンゴとかん そうモモのつめ物がしてあって,湯気が立っていてとてもおいしそうでした。しかし,ふ
, ,
しぎなことにそのガチョウが胸にナイフとフォークがささったまま お皿から飛びおりて ゆかをよちよち歩き出し,少女の方へ向かってきました。そのとき,またマッチが消えて しまいました。よく見ると少女の前には,冷たくしめったぶ厚いカベしかありませんでし た。
少女はもう一つマッチをすると,今度はあっというまもありませんでした。少女はきれ
りもきれいでごうかでした。ショーウィンドウの中にあるあざやかな絵みたいに,ツリー のまわりの何千本もの細長いロウソクが,少女の頭の上できらきらしていました。少女が 手をのばそうとすると,マッチはふっと消えてしまいました。
たくさんあったクリスマスのロウソクはみんな,ぐんぐん空にのぼっていって,夜空に ちりばめた星たちと見分けがつかなくなってしまいました。そのとき少女は一すじの流れ 星を見つけました。すぅっと黄色い線をえがいています 「だれかが死ぬんだ……」と,。 少女は思いました。なぜなら,おばあさんが流れ星を見るといつもこう言ったからです。
人が死ぬと,流れ星が落ちて命が神さまのところへ行く,と言っていました。でも,その なつかしいおばあさんはもういません。少女を愛してくれたたった一人の人はもう死んで いないのです。少女はもう一度マッチをすりました。少女のまわりを光がつつみこんでい きます。前を見ると,光の中におばあさんが立っていました。明るくて,本当にそこにい
。 , 。
るみたいでした むかしと同じように おばあさんはおだやかにやさしく笑っていました
「おばあちゃん!」と,少女は大声を上げました 「ねぇ,わたしをいっしょに連れてっ。 てくれるの? でも……マッチがもえつきたら,おばあちゃんもどこかへ行っちゃうんで しょ。あったかいストーブや,ガチョウの丸焼き,大きくてきれいなクリスマスツリーみ たいに,パッと消えちゃうんでしょ……」少女はマッチの束を全部だして,残らずマッチ に火をつけました。そうしないとおばあさんが消えてしまうからです。マッチの光は真昼 の太陽よりも明るくなりました。赤々ともえました。明るくなっても,おばあさんはいつ もと同じでした。昔みたいに少女をうでの中に抱きしめました。そして二人はふわっとう かび上がって,空の向こうの,ずっと遠いところにある光の中の方へ,高く高くのぼって いきました。そこには寒さもはらぺこも痛みもありません。なぜなら,神さまがいるので すから。
朝になると,みすぼらしい服を着た少女がカベによりかかって,動かなくなっていまし た。ほほは青ざめていましたが,口もとは笑っていました。おおみそかの日に,少女は寒 さのため死んでしまったのです。今日は一月一日,一年の一番初めの太陽が,一体の小さ ななきがらを照らしていました。少女は座ったまま,死んでかたくなっていて,その手の 中に,マッチのもえかすの束がにぎりしめられていました 「この子は自分をあたためよ。 うとしたんだ……」と,人々は言いました。でも,少女がマッチでふしぎできれいなもの を見たことも,おばあさんといっしょに新しい年をお祝いしに行ったことも,だれも知ら ないのです。だれも……
また,新しい一年が始まりました。