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5. 新規事業提案制度の動態モデルの提案

5.1. 自分事エリア拡大モデルの提案

一般に仕事では以下の3つの要素を満たすことが大切と言われる。やりたいこと、やれ ること、役に立つこと。この3つが重なる部分にあたる仕事がやりがいのある仕事になる

(図 5-1)。

図 5-1 やりがいとは

新規事業提案制度の中で、参加者はどのような意識を持って関わっているのだろうか?

4 章で示した要因連関図(図 4-21)を簡略化したものを図 5-2に示す。図 4-21は新規事 業提案制度の中で起きている相互作用を説明した図であると説明したが、図 5-2において は推進者を真ん中に置いて主人公と設定し直して、「新規事業提案制度のメカニズム」を 表す動態モデル①とする。この主人公と経営者、運営者、支援者、評価者といったそれぞ れのアクターの間にはどのような関わりがあり、どのような相互作用が働いているのだろ うか?

4.3.節で既にふれたように、横軸に主観―客観、縦軸に内部―外部の2軸でとらえると 意識の変化を図 5-3のようにとらえることができる。「主観と客観の分離を超えた相互主 観性」は「相互に他者の主観と全人的に向き合い、受け入れ合い、共感し合うときに成立 する」が、この「二人称の相互主観を媒介にして、より大きな組織や社会レベルでの三人 称の客観」(野中・山口 2019: 229-230)が構築されるという。内から外への行為の広が りは支援を通じて、あるいは支援を受けることにより起きる。この一連の流れは認知的共 感の後に起きる共感的感情反応は適切な社会的行動に結びつきやすいとする櫻井・村上

(2015)の主張にも当てはまる。一歩踏み出して行った行為に対する評価だけでなく、内 面に起きる自己への有用感が、その行為をプラス方向に強化する。共感―支援―評価―自 己有用感というサイクルがプラスに回る結果、“自分事”エリアが拡大する。またもとも と抱いていた思いの原点回帰が行われ思いを強化したり、自分の仕事の再定義が行われた

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りする。ここで、2軸の向きは上方向、右方向がプラスの作用、逆方向の場合はマイナス の作用と考える。新規事業提案制度という開かれた場において起きた個人の意識変化は、

そのオープン性ゆえに周囲の人に伝播する。いいね!という共感の輪が広がり、組織全体 の意識変化につながり、組織活性化をもたらすと考えられる。図 5-3は「自分事エリア拡 大モデル」でありこれを動態モデル②とする。

図 5-2 動態モデル① 新規事業提案制度のメカニズム

図 5-3 動態モデル② 自分事エリア拡大モデル

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他の事例として3.6.2.のデンソーの「moina」でも触れた池部氏のケース(LIGARE 2017, 以下D3とする)を図 5-4に示す。補助職の立場にあった女性の自主的なプロジェク ト参加が新規商品の開発を推進した。プロジェクト参加の経験を本業にも活かしたいとい う意識が生まれており自分事エリアの拡大の例と言える。

図 5-4 自分事エリア拡大モデル デンソー支援者 池部氏(D3)の例

また、図 5-5に示すコクヨの山崎篤氏の事例(Biz/Zine 2015, 以下K1とする)では、

非公式組織のプロジェクト活動を正当化する過程において、自分事エリアの拡大が図られ ていることがわかる。本業との両立を可能にするため参加自由の原則をうちたて流動性の 担保に配慮する一方で、名を刻む行為によりサラリーマン冥利に訴えるなど活動の継続性 と正当化獲得のための苦心が見られる。非主流派意識から出たつながる文具という発案が ノートらしさという原点回帰という形でデジタルノート「CamiApp」に結実する。

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図 5-5 自分事エリア拡大モデル コクヨ推進者 山崎氏(K1)の例