3. 新規事業提案制度実施企業の事例研究
3.4. 事例研究その1
3.4.4. まとめ
歴史的経路依存性という視点で創業の精神、制度設立の背景について、リクルート、パ ナソニック、ソニーの3社についてまとめたのが表 3-2である。
リクルートにおいては、リクルート事件で一時休止はあったものの、制度自体を継続し たえず仕組みを見直しているところに特徴がみられる。起業家精神を維持し育むための制 度でもある。
パナソニックにおいては「PSUF」と「GCカタパルト」という二つの制度が異なる形で併 存している。「PSUF」は最初から起業して独立することを前提とし事業創造を主目的と し、併せて組織活性化を目指しているのに対し、「GCカタパルト」はアイデア提案をし、
ビジネス検討をしていく中で人材を育成することに主眼が置かれている。
ソニーにおいては、内部のアクセラレーション・プログラムとして始まった「SAP」が 組織活性化という一定の役割を果たし、「SSAP」という形で新規事業を生み出すソニーの ノウハウを外部へ解放することで新たなビジネスに発展させていこうとしており、事業創 造と人材育成を目指している。
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表 3-2 歴史的経路依存性(1)
企業 創業の精神 制度設立の背景
リクルー ト
創業:1960 年 創業者:江副浩正 大学新聞広告の営業から就職情報誌へ
「自ら機会を創り出し、機会によって自ら を変えよ」
社内制度の改善方法を検討する「QC サーク ル」が起源
1982 年「RING」リクルート事件で一時休止 1990 年「New RING」と改称して毎年継続 2014 年「Recruit Ventures」に
パナソニ ック
創業:1918 年 創業者:松下幸之助 アタッチメントプラグ・砲弾型ランプ
「水道哲学」いい物を安くたくさん 企業理念:「事業を通じて世界中の皆様の
『くらし』の向上と社会の発展に貢献す る」
2001 年「PSUF」中村社長時代の「破壊と創 造」の中、「社員の挑戦意欲をかき立て、
社内活性化に役立てるものが欲しかった」
2016 年「GC カタパルト」「新たな 100 年に 向け、社員が自由な発想でビジネスを創造す る企業へ進化したい」
ソニー 創業:1946 年 創業者:井深大、盛田昭夫 トランジスタラジオ
“自由闊達にして愉快なる理想工場”
「人のやらないことをやる」というチャレ ンジ精神
構造改革、リストラ続きの中、“構造改革は 終わったんだ、あっちに行くんだ”と示すプ ロセス
2014 年「Seed Acceleration Program」
2018 年「SSAP」に 外部への開放を本格化
相互補完性という観点でまとめたものが、表 3-3になる。「見える化」、「場」、「外 部の目」、「人材流動性」、「評価制度」、「教育制度」という視点で整理している。
各社とも社内での情報公開に積極的で、「場」の設営にも腐心している。特に人材の流 動性を担保する制度が整備されていることが着目される。
表 3-3 相互補完性(1)
企業 見える化 場 外部の目 人材流動性 評価制度 教育制度 リクルー
ト
ノウハウ を公開 社内報
社内イベント を頻繁に実施
外部の著名人 による事業化 審査会
「キャリアウ ェブ制度」
「人材開発委員 会」「ミッション グレード制」
「Recruit Ventures College」
パナソニ ック
社内 SNS 「サウス・バ イ・サウスウ エスト」
事業投資会社
「ビーエッ ジ」
「社外留職」
「社内複業」
「役割等級制度」
「グローバル人事 部」「クロスアポ イントメント」
経営、採用、
人材育成など の支援
ソニー ”オーデ ィショ ン”とい う仕組み 社内 SNS
「First Flight」
「Creative Lounge」
ワークショッ プ
起業家 外部の有識者
社内募集制度
「特別募集」
「大募集」
「キャリアプ ラス」「キャ リアリンク」
FA 制度
職能給から職務給 へ
すべて自分た ちで面倒を見 る、SAP の仕 組みで人を育 てる キャリア開発 支援
新規事業推進パターンについて示したものが、図 3-1から図 3-3になる。形を変えたえ ず進化し続けるもの、異なる形態で併存するもの、企業内での一定の役割を終えたのち外
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部解放へと役割を変えていくものとさまざまなパターンが見られる。
特に支援組織として、リクルートにおいては「Media Technology Lab.」が、またソニ ーにおいては「加速支援者」という存在が実装段階で重要な役割を果たしている。
図 3-1 新規事業推進パターン(1) リクルート
図 3-2 新規事業推進パターン(2) パナソニック
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図 3-3 新規事業推進パターン(3) ソニー