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4. インタビュー分析からの考察

4.3. SCATによる分析結果

4.3.3. 東急電鉄の事例

(1) 運営者・推進者の事例

東急電鉄の運営者梶浦ゆみ氏と推進者野﨑大裕氏、片山幹健氏の事例(東急電鉄 2019, 以下T1とする)のSCATによる分析結果から得られた要因連関図を図 4-14に示す。

図 4-14 要因連関図 東急電鉄運営者・推進者(T1)

東急電鉄運営者梶浦氏の事例(T1)の SCAT により得られた「理論記述」を表 4-14 に示 す。

表 4-14 理論記述 東急電鉄運営者(T1)

理論記述 事例 No. 区分 立場

制度の目的は[面談でのフィードバックによる人材育成]にある。 T1 264 制度 運営者 [落選者への面談]は[提案内容への共感]による[提案価値の再発見の可能性]をも

たらす。 T1 265 運営者

[書類審査による評価の限界]が見られる。 T1 266 制度 運営者

[評価ポイントとしての提案者の本気度]は[面談による提案者の想いの汲み上げ]

により確かなものとなる。 T1 267 意識 運営者

[制度定着への手応えと運営者のやりがい]が見られる。 T1 269 意識 運営者 [スタッフの共感による提案の支持]は[評価における主観と客観の交差]といえ

る。 T1 270 意識 運営者

制度は[ポジティブ・フィードバックによるチャレンジ精神の醸成]をもたらす。 T1 273 意識 運営者 [起業活動による学び]は[会社の資産を活かした自己実現のチャンス]である。 T1 275 制度 運営者 [制度利用によるチャレンジの奨励]が行われる。 T1 276 制度 運営者

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また、東急電鉄運営者の意識の変化について示したのが図 4-15 である。

梶浦氏は「この制度の目的は事業をたくさん生み出すことではなくて、あくまでも『人材 育成』」(T1)だという。面談でのフィードバックによる提案者の想いへの共感から提案価 値の再発見と支持がもたらされる(T1-265)。同氏は「応募数はトータルで 160 件くらいで す。初年度が一番多くてだんだんと減ってきていますが、今もコンスタントに応募を頂いて います。制度として定着してきたのかなと感じています。」(T1)ともいい、運営者自身の やりがいにもつながっていることがわかる(T1-269)。梶浦氏は、「事業を形にするのももち ろん大切ですが、そこまでのプロセスを経験できることが、この制度のもっとも有意義な部 分と考えています。・・・フィードバックには真摯に取り組み、次にチャレンジする意欲を 持っていただくよう努めています。」(T1)とも話し、ポジティブ・フィードバックによる チャレンジ精神の醸成(T1-273)を意識している。自分の仕事の再定義といえよう。

図 4-15 意識の変化 東急電鉄運営者(T1)自分の仕事の再定義

(2) 経営者の事例

東急電鉄の経営者の事例(Forbes Japan 2017a, 以下T2とする)のSCATによる分析結果 から得られた要因連関図を図 4-16に、「理論記述」を表 4-15に示す。

安定したサラリーマン生活との決別への逡巡と企業でできる事業規模と個人の力の格差 が意欲ある社員への支援の必要性を社長の野本に感じさせた(T2-278)。「創業者がいなく

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なって20年、30年と経ってくると、どうしても社内が“サラリーマン化”してきます。」

(T2)と語るように、事業規模拡大に伴う意識のサラリーマン化を背景に、創業当時の開 拓者精神の覚醒のために提案しやすい環境づくりの必要性が制度発足のもととなった(T2-279)。制度はビジョンの提示と、部分最適から全体最適への発想深化を可能とする大局観 に基づく判断力、想像力によるリスクマネジメントを備えた経営人材育成の仕組み化でも ある(T2-280)。野本氏は「社内起業はあくまで当社の事業として行っていくことを想定し ています。一方で、社外と組むTAPの場合、当社の事業とすぐに結びつかないものであっ てもいいという考え方です。」(T2)と述べている。また、「自分たちでは発想できない 社外のアイデアと組み合わせることで、『気づき』の連鎖を起こしていく。」(T2)とも いう。内からと外からの双方向のアプローチと、主観と客観の融合、俯瞰的視点の涵養を 目的とする2つのアプローチによる新規事業育成は価値連鎖による最大化を期待されてい る(T2-281)。

制度における事業化の判断基準を聞かれ、「1つ目は世のため人のためになるか、つま り、こういうものがあったらいいよね、と思えるか。2つ目は面白いか、面白くないか。

楽しそうかどうかも重要な判断基準の1つです。最後はやはり儲かるかどうか。儲かると いうと語弊がありますが、要するに持続可能かどうかということですね。」(T2)と3つ を挙げている。社会貢献とわくわく感、事業の存在価値と持続可能性という評価基準に基 づく社内外の相互補完性による創発的戦略である(T2-282)。また、制度の今後について

「部分最適ではなく、全体最適で考えられる人材を発掘したり、育成したりできる仕組み に育ってくれればいいと思っています。」(T2)とも語っている。

図 4-16 要因連関図 東急電鉄経営者(T2)

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表 4-15 理論記述 東急電鉄経営者(T2)

組織の多様性が生む協働活動への意識改革へのきっかけとして経営人材の発掘と育成の 仕組みとしての期待(T2-284)と、保有財産の時代に応じた価値向上をもたらすイノベーシ ョン創出のプラットフォーム化への期待(T2-285)が持たれている。