第 3 章 膨張材とカルシウムアルミネート系混和材を併用したコンクリートの特性
3.5 ひび割れ抵抗性に関する検討
3.5.1 膨張材によるひび割れ低減効果
35
36 本試験では、各コンクリート配合における荷重-ひび割れ幅の関係性を検証することを 目的とし、鉄筋を内部に設置したコンクリート供試体を用いて曲げ試験を実施した。各々 のコンクリート配合における膨張率を予め確認するため、試験には、JIS A 6202の拘束膨張 試験(A法)の供試体を用いた。また、拘束鉄筋の中央に鉄筋ゲージを貼付した。型枠およ び拘束棒の外観を写真3-3示す。
拘束供試体は、コンクリート打設後、翌日に脱型を行い、材齢28日まで20℃水中養生を 施し、材齢 7 日時点では長さ変化率の確認も実施した。水中養生終了後、供試体下面に π 型ゲージを取付け、3等分載荷による曲げ試験にて荷重とひび割れ幅との関係性を検証した。
なお、検証方法としては、以下手順にて実施した。
①基準となるN配合の供試体を用いて曲げ試験を実施し、π型ゲージの変位量から、ひび 割れ幅と荷重の関係を確認する。
②他配合の供試体で曲げ試験を実施する。なお、N配合の曲げ試験にて得られたものと同 じ荷重を載荷し、最大荷重におけるひび割れ幅をπ型ゲージの変位にて確認する。
π型ゲージの設置状況および曲げ試験の実施状況を写真3-4および写真3-5に示す。
写真 3-3 拘束鉄筋および型枠 写真 3-4 π型ゲージ設置状況
写真 3-5 曲げ試験状況
37
(1)ひび割れ発生荷重
各配合における代表的な荷重-変位曲線を図3-13~図3-17に、また、平均ひび割れ発 生荷重を図3-18に示す。膨張材を使用したN+Ex配合およびN+CA2+Ex配合において、
ひび割れ発生荷重がやや大きくなる傾向が認められた。膨張材配合では収縮補償の目安で
ある200×10-6の膨張ひずみが導入されているため、それがケミカルプレストレスとして作
用し、ひび割れ発生荷重を高めたものと推察される。しかしながら、収縮補償の 200×10-6 程度の膨張では導入される圧縮応力としては小さいため、ひび割れ発生荷重の大幅な増大 にはつながっておらず、1~2kN程度の増加となっている。また、N+Ex配合およびN+CA2+Ex 配合を比較した場合、両者にひび割れ発生荷重の差異は認められないことから、CA2との併 用による悪影響はなく、膨張材の効果は十分に発揮できるものと推察される。
図 3-13 荷重-変位(ひび割れ幅):N 配合
図 3-14 荷重-変位(ひび割れ幅):N+CA2 配合
38 図 3-15 荷重-変位(ひび割れ幅):N+CA2+Ex 配合
図 3-16 荷重-変位(ひび割れ幅):BB 配合
図 3-17 荷重-変位(ひび割れ幅):N+Ex 配合
39 図 3-18 平均ひび割れ発生荷重
40
(2)同一ひび割れ幅における荷重
図 3-19 に、同一ひび割れ幅における荷重を取り纏める。ひび割れ幅は、構造物のかぶ りが 5 ㎝と7 ㎝の場合を想定し、コンクリート標準示方書において示されているかぶり厚 さ別のひび割れ幅限界値(0.005c)である 0.25mm と 0.35mm、さらに過大なひび割れが発 生した場合を想定した0.5mmの3水準にて各々荷重を取り纏めた。また、N配合において ひび割れ幅が 0.5mmとなるときの荷重を元に、同一荷重下におけるそれぞれの配合でのひ び割れ幅を取り纏めて図3-20に示す。
本結果より、膨張材を混和したN+Ex配合およびN+CA2+Ex 配合において、基準となる N 配合よりも同一ひび割れ幅に達する荷重が 30~40%程度増加していることが分かる。ま た、BB配合と比較しても同程度の差異が認められている。また、N配合が0.5mmのひび割 れ幅に達する荷重と同一荷重下において、膨張材配合では 0.2mm 程度までひび割れ幅が 抑制されている。すなわち、膨張材を混和することにより、耐久性上で考慮すべきひび割 れ幅の限界値に達するまでの荷重が大きいことから、混和材を用いない N 配合および BB 配合よりも優位であることが言える。これは、コンクリート中に導入されたケミカルプレ ストレインにより、変位に対する抵抗性が高まったことに起因していると考えられる。ま た、ひび割れ発生荷重と同様に、CA2との併用による影響はないことが確認されている。
図 3-19 同一ひび割れ幅における荷重
41 図 3-20 同一荷重下におけるひび割れ幅
42