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各種促進試験方法が塩化物イオンの拡散に与える影響に関する考察

第 5 章 塩化物イオンの拡散に与える促進評価の影響

5.3 各種促進試験方法が塩化物イオンの拡散に与える影響に関する考察

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90 図 5-7 試験方法別の塩化物イオン浸透挙動

(浸せき法)

(非定常電気泳動)

(定常電気泳動)

91 5.3.1 各種促進試験結果の整理

表5-5に、促進試験方法別の結果を整理するため、各促進試験において得られる特定時 間での塩化物イオン浸透深さおよび塩化物イオン溶出速度を用い、混和材を使用しない N 配合を基準とした場合の比率として示した。なお、抽出した特定時間は、浸せき法におい ては浸せき材齢48週時点、非定常電気泳動法はN配合の通電を終了した48時間時点とし た。また、定常電気泳動試験では、陽極側への塩化物イオン溶出量が定常状態になった後 の溶出速度の傾きを用いた。

表5-5より、定常電気泳動試験と非定常電気泳動試験を比較した場合、浸せき法により 得られる比率と対比すると、CA2を用いた配合では大きく異なる傾向にあり、BB配合では 概ね一致しているのに対し、非定常電気泳動試験では逆の傾向を示し、CA2を用いた配合で 概ね一致するものの、BB配合では大きく異なる結果となっている。この原因としては、定 常電気泳動の場合、イオンが硬化体を完全に通過するため、固定化などの影響を排除した 空隙構造に由来するイオンの移動しやすさを表しているものと考えられ、空隙構造の変化 が主体となるBBのような材料においては比較的適切に表現できる一方で、化学的固定化の 影響が反映されない CA2配合では適正な評価ができないと考えられる。また、非定常電気 泳動試験においては、イオンが硬化体中を浸透している途中段階での浸透深さにより評価 するため、固定化と空隙構造の両方が反映されることになり、CA2配合の塩化物イオンの浸 透性評価として浸せき法に近い傾向を示したものと考えられる。

ここで、本研究の別シリーズにて実施した異なるセメント種、コンクリート配合におけ る浸せき法と非定常電気泳動法の試験結果を示す。使用したセメントは普通セメントと低 熱セメントの2 種類であり、いずれも水結合材比が50%のコンクリートである。また、配 合種としては、混和材を用いない配合(N またはLと表記)と、膨張材とCA2をそれぞれ 15kgずつセメント置換にて混和した配合(N15-15または L15-15 と表記)の2水準として いる。それぞれの結果を図5-8に示す。また、普通セメント配合においては、浸せき期間 8週時点と通電時間24時間時点、低熱セメント配合においては浸せき期間 8週時点と通電 時間12時間時点における塩化物イオン浸透深さの比率を算出し、表5-6に示した。

表5-6より、セメント種や配合が異なった場合においても、特定時間における浸せき法 浸せき法 定常法 非定常法

N 1.00 1.00 1.00

N+CA2 0.69 0.83 0.70

N+CA2+Ex 0.54 0.75 0.56

BB 0.45 0.48 0.21

表 5-5 塩化物イオン浸透深さ(溶出速度)の比率

92 および非定常電気泳動法での塩化物イオン浸透深さ比率が近い値を示しており、両者に一 定の関係があることが確認された。

図 5-8 試験方法別の塩化物イオン浸透深さ

(N 配合:浸せき法) (N 配合:非定常法)

(L 配合:浸せき法) (L 配合:非定常法)

表 5-6 塩化物イオン浸透深さの比率

浸せき法 非定常法

N 1.00 1.00

N15-15 0.58 0.67

L 1.00 1.00

L15-15 0.90 0.94

93 5.3.2 設計への反映方法に関する検討

前項より、浸せき法と非定常電気泳動法により得られる塩化物イオンの浸透深さから、

混和材を使用しない基準配合との比率にて表した場合に、両者に一定の関係が認められる ことが確認された。これは、現在のコンクリート標準示方書においては、耐久性照査にお いて混和材等の材料の効果を“塩化物イオンの拡散係数”としてしか反映できないのに対し、

本手法により得られる比率を基準となるコンクリートの塩化物イオンの浸透深さに対して 乗じることで、混和材を使用した場合の“塩化物イオンの浸透深さ”を直接的に求めることが できることを意味する。すなわち、混和材を用いないコンクリート配合での特定年数にお ける塩化物イオンの浸透深さが分かれば、非定常電気泳動試験を行って混和材有無におけ る比率を算出しておくだけで、混和材の効果を反映することができることになる。本手法 に基づき、構造物の設計段階で混和材の効果を反映させるための方法(フロー)を図 5-9 に示す。本手法を用いることにより、CA2のように固定化が卓越し、その効果を塩化物イオ ンの拡散係数として表現することが困難な場合においても、特定時間における浸透深さと して反映させることができるため、設計段階における耐用年数やかぶり厚の検討において も有用であると考える。

以上より、本手法を用いることで、新規混和材が開発された場合や、示方書に規定され た範囲外で混和材を使用する場合などにおいては、非定常電気泳動法による比率を求める ことで設計へ反映できる可能性が示唆された。一方で、より長期の浸せき期間におけるデ ータとの整合性や異なる通電時間・浸せき期間における関係性などの検証には課題が残っ ていることから、実構造物データとの対比を含め、今後更なるデータ蓄積により、本手法 の適用妥当性検証を進める必要があると考える。

図 5-9 材料的効果の設計反映方法の提案

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