第 4 章 材料特性が塩化物イオンの浸透挙動に及ぼす影響
4.3 材料特性と塩化物イオンの浸透挙動
4.3.2 塩化物イオンの固定化・吸着性能に関する検証
(1)生成水和物
各配合における塩化物イオンの固定化性能を把握するため、XRD および熱分析による水 和生成物の検証を行った。XRDの測定結果を図4-3に、熱分析の測定結果を図4-4に示 す。また、熱分析の結果に基づき、400~500℃付近の質量減少割合から定量したCH量をま とめて図4-5に示す。
図4-3より、普通セメントにCA2単独およびCA2と膨張材を併用して混和した場合にお いて、セメント水和物の水酸化カルシウム(CH)のピーク強度が無混和の場合と比較して 減少し、一方で 10°~11.5°付近にピークが発現していることが確認された。また、図 4-4 および図4-5から、膨張材有無に関わらず、CA2を混和した配合のCH量が2~3%減少し ていることが分かる。これは、CA2の水和反応によってCHが消費され、ハイドロカルマイ ト(HC)およびモノカーボネート・ヘミカーボネートの AFm(C)が生成したことを意味す る。CA2の反応由来でHCとAFm(C)が混在している原因は、セメントの少量混合成分に由 来するものと考えられる。また、膨張材と併用した場合においても、CA2単独混和の場合と 同様にハイドロカルマイト(HC)およびモノカーボネート・ヘミカーボネートの AFm(C) の生成が確認されている。一方で、膨張材の水和生成物であるエトリンガイトについては、
そのピークが確認されない。これは、CA2と併用することで硬化体中のAl2O3モル比が高く なったことにより、SO3/Al2O3モル比が小さくなり、エトリンガイトの生成条件に満たず、
安定なAFm層の生成が優先的に進んだためと推察される。
N+CA2 配合と N+CA2+Ex配合とを比較した場合、いずれにおいても生成される水和物
が同じで、そのXRDピーク強度が概ね同等であり、且つCHの減少率も同程度であること から、固定化に寄与するHCおよびAFm量に差異はないものと推察される。
図 4-3 ペースト試験による生成水和物(XRD)
62 図 4-4 熱分析(TG-DTA)
図 4-5 CH 量
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(2)塩水浸せきに伴う水和物の変化
図4-3に示した各配合のペースト試験体を10%のNaCl水溶液に2ヶ月間浸せきし、塩 水浸せきに伴う水和物の変化を確認した。図4-6に、塩水浸せき後のXRD 測定結果を示 す。
図 4-6 より、配合種類によらず、塩水浸せき前に 10°~11.5°付近で確認されていた HC
やAFm等のピークは、塩水浸せき後に全て消失し、フリーデル氏塩に変化していることが
分かる。従って、HC や AFmは、塩化物イオンが作用した際にフリーデル氏塩として固定 化する機能を有していることが明らかとなり、AFmもモノカーボネートやヘミカーボネー
トなどのAFm(C)だった場合においても、同様に固定化能力を有しているものと考えられる。
また、塩水浸せき後のフリーデル氏塩量を定量するため、同一配合のペースト試験体を 用いて熱分析を実施した。フリーデル氏塩の定量方法は、純合成したフリーデル氏塩を用 いた熱分析結果から得られた 247℃~387℃の質量減少を 100%とし、各配合のペーストに おける同一温度領域での質量減少の割合との対比により求めた。なお、フリーデル氏塩の 純合成品は、試薬の炭酸カルシウムと酸化アルミニウムから合成した3CaO・Al2O3とCaCl2
をモル比で1:1となるように混合し、水粉体比が 1:2となるように練混ぜを行い7日間 水和させることで作製し、XRDおよびSEMによりフリーデル氏塩であることを確認した。
熱分析の結果を図4-7に、配合別のフリーデル氏塩生成量を図4-8に示す。
結果より、N 配合を基準とした場合、N+CA2配合で1.5倍、N+CA2+Ex配合で1.45倍、
BB配合で 1.2倍のフリーデル氏塩量が確認され、CA2を配合した系では著しく高い塩化物 イオンの固定化能力を示した。また、膨張材有無による塩化物イオンの固定化能力への影 響はないことが確認された。
図 4-6 塩水浸せき後の水和物(XRD)
64 図 4-8 フリーデル氏塩量
図 4-7 塩水浸せき後の熱分析(TG-DTA)
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