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0.307206  0.17136 上級  一α493750.17136

IV. 考察

 1.「試合による実験結果」についての考察

 まず,「簡易試合法」では,「国際規定」よりも「技の掛け数」が,全てのグ ループで増加していた.このことから,「簡易試合法」の方が,「国際規定」よ

りも「技のやりとり」という点において,誰でもが楽しめる可能性のあること

が示唆される.

 次に,「一本の数」をみた場合,「中級」グループにおいてのみ,「簡易試合法」

の方が「国際規定」より増加していた.

 「簡易試合法」では,「試合場を12畳と狭くする」や「組み手争いを禁止す る」といった制限を加えてあり,「相手との間合いを近くし,力を感じやすくす る」,「相手を捉える事が容易になる」といった配慮をしている.一方,「国際規 定」では,試合場が広く(50畳),動き回ることができるため,相手との間合い が遠くなり,力を感じとりにくくなる.また,組み手も自由にできるので,し っかりと相手の道着を掴んで技を掛けることが「簡易試合法」に比べて困難で ある.これらのことから,「中級」グループでは,「国際規定」よりも「簡易試 合法」で試合を行った場合に「一本の数」が増加したと考えられる.

 ただし,「初級」グループのようにまだ技術レベルが低い段階では,力の伝わ りを感じやすく,相手を捉えやすいような「簡易試合法」を設定し,その結果,

「技の掛け数」が増加しても,技術が未熟なために,「一本の数」が増加しなか ったものと考えられる.

 また,「上級」グループの「一本の数」が増加しなかったことに関しては,技 術が向上すると,相手と組んでいる時間が長い「簡易試合法」では,相手の力 や体の動きがわかりすぎてしまい,技に対する防御力が高まっていることがあ

ると考えられる.

 「技の種類」の比較では,「初級」グループおよび「上級」グループで,「国 際規定」よりも「簡易試合法」の方が,「手技・足技・腰技」ともに増加してい た.このことは,先にみた「技の掛け数」とともに,発揮される技の種類も増 えたことを示している.特に「初級」グループでは,背負投げ等の手技,払腰 等の腰技といったいわゆる大技が増えており,「簡易試合法」においてより「一

本」を奪取しようとする意欲の高まっていることが伺える(ただし,先にも述 べたように,技術の未熟さから結果的に「一本」を取った回数は増えていない).

 なお,「中級」グループでは,「手技・足技・腰技」ともに「簡易試合法」よ りも「国際規定」の方が増加していた.この点については,先にもみたように,

「中級」グループでは「簡易試合法」において「一本」の回数が多く,試合時 間が全体に短くなったため,結果的に多様な技が発揮されなかったことによる.

 以上のように,「簡易試合法」では,「技のやりとり」という点で誰でもが楽 しむことができる可能性のあること,相手を捉えやすくすることで,ある程度 の技術レベルがあれば「一本」を取れる可能性が高まることが示唆された.

2.「質問紙による調査結果」についての考察

 質問紙調査から得られた結果として,まず,「中級」グループでは,各項目に 対する得点平均値が「簡易試合法」,「国際規定」共に他のグループに比べ,肯 定的な傾向にあった.次に質問項目に対する評価次元を捉えるために因子分析 を施し,算出された標準因子得点について分散分析および多重比較を行った結 果,「中級」グループは「簡易試合法」において,「相手に対する気づき」とい

う点で他のグループよりも「気づき」を得ており,「相手との一体感」という点 においても「上級」グループより「一体感」を感得していた.

 また,「国際規定」においても「上級」グループと同様に,「相手との技のや りとり」という点で「満足感」を得ており,「相手との一体感」という点では,

他のグループより「一体感」を感得していた.

 次に,「各因子の質問項目に対する肯定・否定」についてz2検定を施し,有 意差のみられた項目には残差分析を施した結果,「簡易試合法」において,「中級」

グループが他のグループよりも「力や動きのやりとり」について満足感を得てお り,「相手に対する気づき」や「相手との一体感」についても肯定率が高かった。

「中級」グループの生徒では,「力や動きのやりとり」について,「試合場がせま いので自分から下がっていくことがあまりなく逆に技が入りやすくて自分から 回りこめた」という自由記述もみられた.

 以上のことから,特に「中級」グループにおいて,「簡易試合法」で設定した

「試合場を狭くして組んだ状態からはじめる」といった条件づけにより,「力や

動きのやりとり」をより実感することができ,「相手との一体感や相手に対する 気づき」が得られたと考えられる.

 ただし,「簡易試合法」の自由記述において,「普通(講道館規定)よりもや りにくかった」や「試合場がせまいので相手をふりまわせない」,「いつもどお りやっている試合場と全く違うので動きにくかった」等の制限が多いことに対 しての否定的な記述もみられた.そのため,ある程度技術レベルが発達した段 階にある「中級」グループでは,「技のやりとり」については,「簡易試合法」

だけでは十分に満足できていない様子も結果から伺えた.

 「初級」グループでは,まず,「簡易試合法」の「技のやりとり」について,

「技のかけ合いを楽しめた」と「技を返されるのが不安だった」という内容が 相反する2項目の得点平均値が他のグループよりも高かったことから,「技」に ついては技術レベルが未熟なため,楽しさと不安の入り交じった段階にあると

捉えられる.

 また,標準因子得点について分散分析・多重比較を施した結果,「国際規定」

における「満足感」は他のグループよりも低かった.さらに,κ2検定と残差分 析の結果でも,「国際規定」において,「相手との力や動きのやりとり」という 点で他のグループよりも「満足感」が低く,「対応力」の項目群に対する肯定率 も全体的に低かった.一方,「簡易試合法」においては,「相手に対する気づき」

という点について「国際規定」よりも肯定率が高かった.

 このようなことから,「初級」グループでは,技の習得が未熟な段階であると 考えられるため,「簡易試合法」よりも高度な試合技術を要する「国際規定」に

は十分に対応できておらず,「満足感」も低くなってしまうと考えられる.その 点については,「国際規定」について「疲れた」,「技がかけにくい」,「全力を出

し切れなかった」という自由記述がみられたことからも示唆される.

 さらに,「簡易試合法」について,「技のよけ方がわかって勉強になった」,「今 回やった試合法の方がとてもやりやすかったと思うこの方法でまたやりたい」,

「この試合のおかげでなぜか相手の動きがわかってきた」という肯定的な自由 記述がみられたことからも,「初級」グループでは,「国際規定」よりも「簡易試合 法」に対して好意的傾向にあることが伺えた.

 「上級」グループでは,z2検定と残差分析の結果,「簡易試合法」における「満

足感」,「相手に対する気づき」,「相手との一体感」という点について肯定率が低 かったが反面,「相手に対する勝負意識」については肯定率が高かった.また,「国 際規定」においても,「相手に対する気づき」,「相手との一体感」の肯定率は他 のグループに比べ低かったが,「技のやりとり」という点については,「初級」グ ループよりも「満足感」の肯定率が高かった.自由記述では,「簡易試合法」で,

「奥襟がないから厳しかった」,「試合場がせまかったら思い切った技がかけれ ない」,「奥襟,寝技が無いからやりにくかった」等の「簡易試合法」の制限の 多さに対する否定的な記述が多くみられた.一方,「国際規定」でも「簡易試合 法」と同様に,「寝技はやっぱり必要と思った」,「寝技が無かったからやりにく かった」といった「寝技」の制限に対する否定的な記述が多くみられた.

 このことから,「上級」グループは「相手に対する気づき」や「相手との一体 感」といった柔道を通じての他者との交流よりも「技」や「勝敗」といった試 合場面での結果を重視するような傾向がみられ,それだけ「技による勝負の内 容・結果」に主な関心が向けられている様子が結果から伺えた.

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