2.6.6 毒性試験の概要文
2.6.6.9 考察および結論
2.6.6.9.1.1 ラット反復投与毒性試験でみられた変化について [1] 毒性変化
ラット3ヵ月毒性試験および12ヵ月毒性試験でみられた毒性変化を、それぞれ、表
2.6.6-7および表 2.6.6-8に示した。
表 2.6.6-7 ラット3ヵ月毒性試験でみられた毒性変化
投与量 80単位/kg/日 400単位/kg/日 血液学的
検査
雌雄:赤血球数↓、ヘマトクリット↓、 ヘモグロビン↓、血小板数↓
雌雄:赤血球数↓、ヘマトクリット↓、 ヘモグロビン↓、血小板数↓ 雄:白血球数↓
骨髄検査 雌雄:赤芽球系細胞合計比↑、リンパ球比↓
雌:骨髄球系細胞総数/赤芽球系細胞総数比↓
雌雄:赤芽球系細胞合計比↑、リンパ球比↓
雌:骨髄球系細胞総数/赤芽球系細胞総数比↓
血液生化 学的検査
雄:A/G比↓、蛋白分画におけるアルブミン分画↓ 雌雄:A/G比↓、アルブミン↓
雄:BUN↑、蛋白分画におけるアルブミン分画↓、
総蛋白↑
雌:総蛋白↓
器官重量 − 雄:腎臓↑
無毒性量 雌雄:16単位/kg/日
16単位は4.5 μg、80単位は22.6 μg、400単位は113.0 μgに相当する
−:特記すべき変化なし ↑:増加 ↓:減少
表 2.6.6-8 ラット12ヵ月毒性試験でみられた毒性変化
投与量 16単位/kg/日 80単位/kg/日
血液学的 検査
雌雄:赤血球数↓、白血球数↓
雄:ヘマトクリット↓、ヘモグロビン↓
雌雄:赤血球数↓、ヘマトクリット↓、 ヘモグロビン↓、白血球数↓ 雌:血小板数↓
骨髄検査 雌:赤芽球系細胞合計比↑、リンパ球比↓ 雌雄:前骨髄球比↑
雌:赤芽球系細胞合計比↑、リンパ球比↓、 未熟好酸球比↑
血液生化 学的検査
雄:蛋白分画におけるアルブミン分画↓ 雌雄:蛋白分画におけるアルブミン分画↓、
A/G比↓
雌:総蛋白↓、アルブミン↓
無毒性量 雌雄:3.2単位/kg/日
3.2単位は0.9 μg、16単位は4.5 μg、80単位は22.6 μgに相当する
↑:増加 ↓:減少
主たる毒性所見について、その毒性学的意義あるいは発現機序を以下のとおり考察した。
赤血球数、ヘマトクリット、ヘモグロビン、白血球数および血小板数の減少
本薬の骨形成作用に伴う骨髄腔減少に起因する二次的な変化と考えられたが、その変 化の程度を踏まえて毒性変化と判断された。休薬により回復性が認められた。
骨髄検査における赤芽球系細胞合計比の増加、リンパ球比および骨髄球系細胞総数/赤 芽球系細胞総数比の減少
貧血(赤血球数、ヘマトクリット、ヘモグロビン等の減少)に伴い、骨髄での赤芽球 系細胞の造血が亢進し、相対的にリンパ球の比率が減少したと考えられた。
骨髄検査における前骨髄球比および未熟好酸球比の増加
本薬の骨形成作用に伴う骨髄腔減少に伴って、幼弱な細胞に比率がシフトした可能性 が考えられたが、明らかな原因は不明であった。
血液生化学的検査における総蛋白の変動、アルブミンおよびA/G比の減少
体重および摂餌量にも変化は認められず、明らかな原因は不明であった。これらの検 査値の変動に関連すると考えられる炎症性変化はみられず、また、肝臓および腎臓にも 病理組織学的変化は認められなかったことから、毒性学的には軽微な変化と考えられた。
BUNおよび腎臓重量の増加
113.0 μg/kg(400単位/kg)群の雄でBUNの増加(対照群の値の1.2倍)ならびに腎臓
絶対および相対重量の増加(対照群の値の1.2倍および1.1倍)がみられたが、腎臓の 病理組織学的検査において異常は認められず、休薬により回復がみられたことから、明 らかな腎障害を示唆する所見ではなく、毒性学的には軽微な変化と考えられた。
[2] 薬理作用に関連する変化
ラット3ヵ月毒性試験および12ヵ月毒性試験でみられた変化のうち、本薬の薬理作用に 関連する変化を、それぞれ、表 2.6.6-9および表 2.6.6-10に示した。
表 2.6.6-9 ラット3ヵ月毒性試験でみられた薬理作用に関連する変化
投与量 3.2単位/kg/日 16単位/kg/日 80単位/kg/日 400単位/kg/日 一般状態 − 雄:耳介、四肢の発赤 雌雄:耳介、四肢の発赤 雌雄:耳介、四肢の発赤
摂水量 − − − 雌雄:↑
血液学的 検査
− − 雌:網状赤血球↑ 雌雄:網状赤血球↑
血液生化 学的検査
雄:リン↓
雌:カルシウム↓
雌:カルシウム↓、
ALP↑
雄:リン↓
雌:カルシウム↓、ALP↑
雌:カルシウム↓、ALP↑
尿検査 雄:尿量↑ 雌雄:尿量↑ 雌雄:尿量↑ 雌雄:尿量↑ 雄:カルシウム↑
器官重量 − − − 雌雄:脾臓↑
病理組織 学的検査
− 雄:脾臓髄外造血↑
雌:骨梁肥厚、
骨髄腔↓、
骨髄脂肪↓
雌雄:脾臓髄外造血↑、
骨梁肥厚、
骨髄腔↓、
骨髄脂肪↓
雄:骨芽細胞活性化
雌雄:脾臓髄外造血↑、
骨梁肥厚、
骨髄腔↓、
骨髄脂肪↓
雄:骨芽細胞活性化 3.2単位は0.9 μg、16単位は4.5 μg、80単位は22.6 μg、400単位は113.0 μgに相当する
−:特記すべき変化なし ↑:増加 ↓:減少
表 2.6.6-10 ラット12ヵ月毒性試験でみられた薬理作用に関連する変化
投与量 3.2単位/kg/日 16単位/kg/日 80単位/kg/日 一般状態 − 雌雄:耳介、四肢の発赤 雌雄:耳介、四肢の発赤
摂水量 − − 雄:↑
血液学的検査 − − 雌雄:網状赤血球↑
血液生化学的検査 − − 雄:ALP↑
尿検査 − − 雄:尿量↑、浸透圧↓
器官重量 − − 雌雄:脾臓↑
病理組織学的検査 − 雌雄:骨梁肥厚、骨髄腔↓、
骨髄脂肪↓
雌雄:脾臓髄外造血↑、骨梁肥厚、
骨髄腔↓、骨髄脂肪↓
3.2単位は0.9 μg、16単位は4.5 μg、80単位は22.6 μgに相当する
−:特記すべき変化なし ↑:増加 ↓:減少
上記変化の発現機序を以下のとおり考察した。
これらは毒性として重視すべき所見ではないと考えられた。
耳介および四肢の発赤
本薬の利尿作用に起因する変化と考えられた。
網状赤血球の増加
本薬の骨形成作用により骨髄腔減少が生じたため、末梢血において赤血球が減少した ことに対する代償性の変化と考えられた。
血清ALPの増加
ASTおよびALTの増加を伴わず、病理組織学的検査において肝臓に変化が認められ ないことから、本薬の薬理作用による骨形成の亢進状態で骨芽細胞の細胞膜に局在する ALPが増加し、それが血中に遊離したものと考えられた。
血清カルシウムの減少
本薬は、腎臓におけるPTHの薬理作用として遠位尿細管でのカルシウム再吸収を促 進する5, 6)ことにより、血清カルシウムを増加させる。しかし、本薬投与による血清カ ルシウムの増加は一過性の反応であることから、最終投与翌日に行われた採血時には、
前日の投与による血清カルシウム増加作用はみられなかった。3ヵ月毒性試験の0.9、4.5、
22.6および113.0 μg/kg(3.2、16、80および400単位/kg)群の雌でみられた血清カルシ
ウムの減少(それぞれ対照群の値の0.94、0.94、0.94および0.90倍)は、全身のカルシ ウムバランスの調節を図るための生体の適応反応に関連する変化と考えられた。
血清リンの減少
本薬は、近位尿細管における水酸化物イオンおよびリンの再吸収を抑制(リンおよび 炭酸水素イオンの尿排泄促進)し、血清リンを減少させたものと考えられた。
尿量の増加および尿浸透圧の減少
本薬の利尿作用に起因する変化と考えられた。すなわち、本薬は近位尿細管における 水の再吸収を抑制し、また、本薬の細胞内カルシウム増加作用により尿細管内のカルシ ウムが増加し、尿濃縮力が低下したものと考えられた。
カルシウム尿排泄量の増加
本薬は、腎臓におけるPTHの薬理作用として遠位尿細管でのカルシウム再吸収を促 進する5, 6)ことによりカルシウムの尿排泄を減少させる。しかし、113.0 μg/kg(400単 位/kg)群の雄では、本薬の大量投与により血清カルシウムが一過性に増加し、これに伴 いカルシウムの尿排泄が増加したものと考えられた。また、病理組織学的検査において 骨梁肥厚等がみられていることから、全身のカルシウムバランスの調節を図るための生 体の反応性の変化としてカルシウム尿排泄量が増加したとも考えられた。
脾臓の髄外造血亢進および脾臓重量の増加
本薬の骨形成作用に伴い骨髄腔減少が生じたため、末梢血において赤血球等が減少し、
その代償性の変化として脾臓における髄外造血が亢進し、脾臓重量が増加したものと考 えられた。
病理組織学的検査における骨梁肥厚、骨芽細胞活性化および骨髄脂肪減少 本薬の骨形成作用に基づく変化と考えられた。
[3] 本薬投与に関連しない死亡/切迫屠殺
ラット3ヵ月毒性試験および12ヵ月毒性試験でみられた死亡/切迫屠殺例について、以 下のとおり考察した。
(1) ラット3ヵ月毒性試験
113.0 μg/kg(400単位/kg)群の雄1例が投与59日目に死亡した。主な所見を表 2.6.6-11
に示した。
表 2.6.6-11 ラット3ヵ月毒性試験の死亡例(400単位/kg群)の所見 一般状態 耳介および四肢の発赤
剖検 胸腺の赤色斑、空・回腸の赤黒色巣、膀胱内白色固形物
病理組織学的検査 脾臓髄外造血↑、骨梁肥厚、骨髄腔↓、骨髄脂肪↓、骨芽細胞活性化、胸腺髄質の出血、
うっ血性肺水腫、肝細胞の萎縮および血漿性封入体 400単位は113.0 μgに相当する
↑:増加 ↓:減少
一般状態の観察では、耳介および四肢の発赤以外には異常はみられず、また、体重、摂 餌量および摂水量の推移にも異常は認められなかった。病理組織学的検査では、脾臓にお ける髄外造血亢進、腰椎における骨梁肥厚/骨髄腔減少、骨髄脂肪減少および骨芽細胞活 性化がみられたが、これらは同一群内の生存例にみられた所見と同様であった。その他、
胸腺髄質の出血、うっ血性肺水腫、肝細胞の萎縮および血漿性封入体がみられたが、これ らの所見は衰弱動物でしばしばみられる非特異的変化であり、死因を推定するに足る所見 は得られなかった。同一群内において他に死亡例は認められなかった。
以上のことから、113.0 μg/kg(400単位/kg)群の雄1例の死亡は、本薬投与とは無関係 と考えられた。
(2) ラット12ヵ月毒性試験
対照群および0.9 μg/kg(3.2単位/kg)群の雄各1例を投与301日目に切迫屠殺した。
また、4.5 μg/kg(16単位/kg)群の雄1例が投与266日目に死亡した。
対照群の切迫屠殺例でみられた主な所見を表 2.6.6-12に示した。
表 2.6.6-12 ラット12ヵ月毒性試験の切迫屠殺例(対照群)の所見 一般状態 呼吸の異常
体重 ↓
血液学的検査 赤血球数↑、ヘマトクリット↑、ヘモグロビン↑ 血液生化学的検査 カルシウム↑、リン↑、ナトリウム↑、ALT↑
剖検 肝臓白色巣
病理組織学的検査 肝細胞脂肪化、尿細管上皮の扁平化、脾臓動脈周囲リンパ鞘および濾胞辺縁帯萎縮、
腸間膜リンパ節萎縮、下垂体去勢細胞出現、前立腺腺房上皮の扁平化
↑:増加 ↓:減少