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美術教育が生涯学習から学ぶこと

ドキュメント内 美術教育の理念と生涯学習 (ページ 73-83)

第3章  生涯学習と美術教育

第1節  美術教育が生涯学習から学ぶこと

1,Jrk 道高校開放講座におけるアンケート調査より

 このアンケートは、菟道高校開放講座において、第二:二期の初ill(8月5日)に 実施したものである。当講座の基礎資料および第一・期の評価の部分(Q.1〜9)

については、第2章においてすでに述べた。ここでは、当研究の基礎資料の部分

(Q.10〜〉を基に、かつて子ども(児童・生徒〉であった受講者にとって、美 術教育がどのような姿に映っていたのかを探ってみたい。

 この講座への参加者は、当然のことながら、美術に対しては好意的であろうし、

また、過去における美術との関わりも、おそらく良好なものであったと想像され る。したがって、この調査の結果は一般的な傾向を探るというよりも、どのよう

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な子どもたちに美術というものが受け入れられていったのかを探るものだといえ よう。つまり、崖涯にわたって美術に親しんでいるおとなの、子どもの頃の姿を 見ることといえる。このことを念頭に、質問事項の順(太字にて表記)を追って 特筆すべき点をあげていくこととする。

 回答者は32名{A22名(男3名 女19名) B10名(男2名 女8名)}であっ た。なお、途中でAコースに変更した方については、Aコースに数えている。以 後、文中の『』はアンケートの回答の引用である。 (圓答内容の詳細については 資料⑫1〜7参照)

Q.10:あなた御自身の学校時代(幼稚園から高校まで)での美術との関わりは

①授業でならった程度であまり興味はなかった………一・一……10(A:7 B:3)

②クラブ等には入っていなかったが、美術に対しては興味はあった…15(A:11 B:4)

③クラブ等に入って活動した…………一…・一………・……・…………・5(A:2 B:3)

 回答者30名中「授業でならった程度であまり興味はなかった」とするものが 10名であった。このような講座の参加者から得られた数字としては、あまり小さ いものとはいえないであろう。逆に言えば、そのような子どもたちであっても、

将来においては、美術との関わりを持つ可能性があるということである。

QA1=あなた御自身の美術に対する歴史を振り返ってみて下さい。

     (詑号を選んで下さい)

 幼児()→小学校低学年()→小学校高学年()→中学()→高校()→現在()

①下手だと思っていたし自信もなかった

②下手だと思っていたが嫌いではなかった

③上手いとは思わないが、好きだった

④まあまあ上手い方だと思っていたし好きだった

⑤得意であったし自信もあった

⑥その他

 この設問は、それぞれの年代における美術に対する関心度を問うものである。

選択肢の①〜⑤は、数字が大きくなる程、好意的となるように設定した。一・・般的 な傾向として、年代が上がるにつれ数字が小さくなることを予想していたが、そ のような傾向は特には見られなかった。このことは、美術に対する関心が安定し ていることを意味するともいえる。

 一方、変化の激しいものでは、次の3例をあげることができる。

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 幼児→小低→小高→中学→高校→現在

(a> 4一一. 4一 3一+ 1一+ 1一+ 2

(b> 4一+ 4一 4一〉 4一・ lo 3

(c) 2一+ 2一 5一 5. 5一〉 5

 (a)は、Q.12において『先生が嫌い(中学校)。…君と、(b)も、同じく『高校 の選択授業。先生の指導も質問する機会も少なく興味も持てなかった。』と述べ ている。教師の姿勢によって、興味・関心が削がれ、自信も失ったという例であ

る。

 (c)は、これらとは逆に、Q.15において『小学校5年の時に、静物画や写生画 を選ばれたりして、これでいいのかなあと思って大変好きになった。』と述べて いる。ここではこのように数が少なかったが、対象を広く…般にとれば、このよ

うな例はさらに大きな割合を占めることであろう。

QA2:美術を一時的に嫌いになった経験はありますか。何が原因でしたか。

 美術嫌いをつくる原因については、子どもたちの発達にともなって備わる客観 的にものを捉える能力と、それを表現することの間に生じる差に起因するという ごとがよく指摘される。この講座への参加者では、そのような回答が占める比率 は低くなるであろう。要するに、「うまく描けない」以外の理由があがってくる

ものと考えられる。

 その中で、顕著な傾向は回答18例中9例にのぼった教師に起因するものである。

直接的な回答としてはQ.Uで述べた2例の他に『指導者がクセの強い人。丑と いうものがある。指導法などについては『一度習いに行った先生に全く直されて

しまうので…。先生とものの見方が違ったのでしょう。丑 『中学の頃そっくりに 描く人がほめられていて、…。君 『先生が決めたものを全員が…斉に…。』など の言葉に現れている。  t

 また、『小学校の頃、私の人物画を見て、先生、生徒がドッと笑いました。今 思えば悪意はなかったと思いますがその時は不即決でした。』 (67歳:女性〉と いう回答のように、何気ないことが(この場合は何:気ないとも思えないが)子ど

もたちに深い傷を残すことについても、今一度、心にとどめ直しておかなければ

ならない。

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◎.13:あなた御自身の学校時代の美術(図画・工作)の授業の様子をお聞かせ 下さい。内容、方法教師の様子、などを踏まえてお書き下さい。

 [小学校〕楽しかった思いでとして、プラスの評価をしているものが5例であっ たのに対し、マイナスの評価をしているものが7例にのぼった。 (その他、どち

らともいえないもの10例)特に、『あまり自由に描けなかった…聾『全員が同じ 課題を描くパターンばかりだった…寿というような、型にはまった授業に対する 批判が複数見られる。

 [中学校、高校]同様に、プラスと評価するものが8例に対し、マイナスと評 価するもの7例であった(その他7例〉。ここで注目すべきは、発達段階の特性

ともいえようが、教師の人格について言及しているものが、プラスで4例、逆に マイナスでも3例見られることである。

Q.i4:美術(図薗・工作》の授業はあなたにとってどのような存在でしたか。

 『楽しいひととき。cllというようなプラスの評価をしているものが22例。マイ ナスの評価のものは『時間に制限があった…。』『ノルマをこなす時間…』『息 抜きの退屈な時間。蛭『勉強しなくてすむ。丑などがあげられる。これらの言葉 の中に、今の子どもたちの声も聞こえてきそうである。

◎.15:美術に関して褒められたことはありますか。いつ頃、誰から、どのよう に褒められましたか。そのことがあなたにどのような影響を与えたと思いますか。

QA6=コンクール入賞(どんなに小さな賞でもかまいません)などの経験をお 持ちですか。そのことがあなたにどのような影響を与えたと思いますか。

 Q.15は、学校現場において子どもたちを褒めるということが、その後どのよ うな影響を与えているのかを知る手がかりを得るための設問である。

 Q.16は、コンクールなどの賞が褒める形の一つとなりうるのか、また、どの ような影響を及ぼすのかについて探ろうとするものである。

 何らかのかたちで褒められた経験を述べているものは21名にのぼった。授業を 通して先生にというものが多数を占めるが、身近な人(周りの大人達、近所の人、

クラスメート、父、等〉をあげているものも多い。

 一一方、受賞経験者は16名である。比較的似た数字であるが、内容を比較すると、

褒められたことが今日の自分につながっているとするものが多いのに対し、受賞

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の方ではその数が少なくなる。賞という「物」によってより、やはり、「人」に よって褒められることの方が子どもの心の中に深く刻まれ、その後に及ぼす影響 が大きいといえるのであろう。

Q.17 :学校時代の経験で現在の美術活動に役立っていることがありますか。直 接間接は問いません。(成功感や溝足感を味わった経験などをお聞かせ下さい。》

 この設問は、受講者が受けてきた学校教育と彼らの現在を結びつけるものが見 えてこないかという意図のものである。美術以外のことも含め、その少年期に得 られた成功感や満足感が、生きる力として今日に影響を与えているのではないか ということを念頭に置いて設定した。しかし、このような意図に即した回答は見 られず、比較的表面的な回答・が多かった。設問の文言が、こちら側の意図が伝わ りにくい表現になっているためと思われる。

◎A8:学校卒業後の美術との関わりは

①まったく関わりがなくなっていた………一・…………・・……・……・…3(A:2 B:1)

②絵筆を持つことはなかったが、展覧会に行くなど開心は持っていた。…9(A:9 B:0)

③我流だが、たまに絵を描いたりすることがある。………・………・・………4(A:3 B:1)

④塾や市民講座などで絵をならいに行ったりしたことがある。……・・…一5(A:4 B:1)

⑤サークルなどに入って日常的(定期的)に活動している。・…・……・……8(A:2 B:6)

⑥その他……一………・………・………・・…………・・……・一3(A:2 B:1)

 結果については、上の通りである。やはり、AコースとBコースとでは、その 傾向に違いが見られる。Bでは日常の生活の一一一 一部として美術が関わっているよう

にうかがわれる。

◎.19:他の講座やサークルに参加されている(した)方は、その様子をお教え 下さい。

 他の講座の様子を知り、この講座の運営や指導の参考にするという意図の設問 であったが、その回答の中に次のようなものがあった。

 『暇な時間が撮来た、ボケ防止のために、という人達もいる中で制作活動をす るということは、根気のいることである。』

 この言葉の中には、深い意味を読みとることができる。これは、現在の生涯学 習の実態を如実に表しているものといえる。つまり、内発的な動機によって主体 的に取り組んでいる者と、外的な要因によって受動的に取り組んでいる者とが、

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