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第 3 章 流入境界条件

3.1 緒言

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3.1.2 血流シミュレーションの流入境界条件

以上のごとく、ヒト脳主幹動脈は血流量の恒常性を保持する特徴を有する。そして、この事 実は、ヒト脳主幹動脈における血流シミュレーションにおいて、有利に働く。すなわち、もし、

何らかの瞬間の脳血流量が測定できれば、その個体においては、ある程度、その血流量が保持 されているであろうと考えられるからである。すなわち、流入境界条件は、血流量として一定 に保持されていると仮定できる。

しかしながら、現在までの脳主幹動脈に関する血流シミュレーションは、それとは全く程遠 い流入境界条件で行われている。実は、正常ボランティアから入手された血流波形を用いる場 合がほとんどである [3,4]。一般的に、臨床現場で親動脈の血流量を測定することが困難であ ることが、その理由である。しかし、脳主幹動脈の血流シミュレーションにおいて、症例固有 の流入境界条件を用いる重要性を指摘する報告も散見されるようになった [5-7]。そこで、本 章の目的は、ヒト脳主幹動脈の血流シミュレーションを念頭に、流入境界条件となるべき脳血 流量を、内頚動脈および脳底動脈のそれぞれについて測定することである。

3.1.3 超音波測定の特徴

カラードップラーを用いた超音波診断装置は、心臓および頚部頚動脈の血流評価に有用であ る。また、頭蓋骨越しに頭蓋内主幹動脈の血流を評価する経頭蓋ドップラー(TCD: transcranial

Doppler)法も、臨床においては頻用されている。超音波測定の長所は、その低侵襲性と時間

的解像度の高さにある。一方、その短所は、測定の再現性の低さと空間的解像度の低さにある。

本研究では、主に頭蓋内主幹動脈における血流の評価を行うが、単純に解剖学的な理由により 探査子を置くことができず、超音波検査が困難な場所である。

3.1.4 位相コントラストMRの特徴

本研究では、MRI装置を用いた位相コントラスト法(phase contrast: PC法)によってヒト脳 主幹動脈における血流を測定する(図3.1)。その撮像原理は、双極傾斜磁場を用いて静止して いるプロトンと血流によって動いているプロトンの位相差を作り出し、その流速を計測すると いうものである。これを心電図同期することにより、心周期における各時相の画像を得る。PC 法の長所は、超音波検査の困難な頭蓋内内頚動脈および脳底動脈の血流測定が可能であること であり、その妥当性については数多くの先行報告がある [5-9]。一方、短所は、一箇所の撮像 に数分を要すため、測定時間中の平均値としてしか計測値が得られないことである。

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Fig 3.1: Phase-contrast magnetic resonance velocimetry

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